クローズアップ現代

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No.39352017年2月15日(水)放送
「稼げる大人」になる!? 過熱する受験競争

「稼げる大人」になる!? 過熱する受験競争

「稼げる大人」になる!? 過熱する受験戦争

子役の芦田愛菜さんの私立中学合格がニュースになったり、受験の実話がドラマ化されたりと、今、中学受験が話題となっています。
中学受験というと、かつては一部の人のものというイメージでしたが、今では、私立中などへの進学率が50%を超える自治体もあり、クラスメートのほとんどが中学を受験したという小学校も少なくないといわれています。
低年齢化が進み、ますます加熱する受験競争。
その最前線を取材しました。

過熱する受験戦争 “フツーの人々”の不安と焦り

今年(2017年)も各地でピークを迎えた中学受験。
今や都市部では、お金持ちに限った話ではないんだとか。

「1日に10時間ぐらい勉強しました。
周りもいろいろやっているので、僕もそれに刺激されて。」

「お金がないっていうのもあったので、普通に公立中に行ってと思っていたんですけれども、一人っ子というのもあったので。」

中卒の両親が、娘を人生の負け組にするまいと、中学受験に挑んだ実話もベストセラーになりました。

受験のために公立小えらび “フツーの人々”の不安と焦り

中には、より早く準備するため、公立小学校選びにこだわって、転居しようという人も出てきました。

田中美鈴さんは、長男の誕生を機に、千葉県から東京への転居を決意。
決め手は、私立中学への進学率の高さでした。

田中美鈴さん(仮名)
「中学校からは私立を狙いたい。
でもそのためには、中学受験が普通である、自然といい子たちがそろっているような地区に行きたいなと思いました。」

どの地域の小学校がいいのか。
自治体の公式情報では足りず、ネットの掲示板を参考にしたといいます。
中学受験率の高さや保護者の雰囲気など、内情を知る人にしかできない書き込みが大量にあふれているからです。

田中美鈴さん(仮名)
「港区の色がついている学校。
白金小学校、青南小学校、赤羽小学校。
あとは文京区も、すごく有名です。」

実際に目星をつけたエリアは、何度も足を運びます。
ポイントは…。

田中美鈴さん(仮名)
「塾です。
中学校受験に強い塾。
通塾に時間がかかっちゃうと、勉強の時間が削られちゃうので、歩いていける範囲の方が、本人も楽かなと。」

塾ならどこでもいいわけではなく、中学受験に強いとされる大手有名塾がそろっているかどうかが重要なんだそうです。
都内では、塾に入る競争も過熱。
大手塾に入るための塾や、塾についていくための塾もあります。
さらに田中さん、とあるデータを参考にしていました。

こちらの企業は、小学校の学区ごとの平均世帯年収を独自に算出。
公立小をランク付けしたそうです。

スタイルアクト 沖有人代表取締役
「これは1都2県、小学校別の年収のランキングになります。」

2か月前に公表された、首都圏の公立小学校ごとのランキングです。
国勢調査や住宅・土地統計調査の数字などを組み合わせて算出した推計値ですが、公表直後から、ネットなどで話題になっています。

スタイルアクト 沖有人代表取締役
「年収が高い人ほど親の学歴が高い。
学歴が高い人ほど、教育熱心ということも分っていまして、直接的に小学校のレベル感を表している。」

例えば品川区の場合、トップクラスの学区の平均世帯年収は1,000万円以上とされ、同じ区内でも、エリアによっては2倍近い年収の差があるとされました。
数字が実際の学力をじかに反映しているわけではないと慎重な意見もありますが、データへの要望は今も強まっているといいます。

スタイルアクト 沖有人代表取締役
「正直ここまで反響が出るとは思わなかった。
もう小学校は選ぶ時代だと思います。」

なぜ、そこまでするのか。
取材で接触できた、ほかの公立小移民にも事情を伺いました。

声:東京 文京区に住宅を購入した男性
「郊外だと特に私の実家の辺だと、学級崩壊がひどかったりとか、そういう話もしてたので、中学校の受験率が非常に高いところにしようと思いました。
5割とかは超えているという話だったので。」

声:千葉市内で最も年収の高いという公立小を選んだ父親
「子どもが塾に行っても抵抗がない所が大きいところでした。
『何曜日に塾だから遊べない』となったときに、『何とかちゃんだけ塾に行って』とか『抜け駆けして』というエリアはやめたい。」

声:東京 文京区へ転居を検討中の男性
「子どもが少なくなっていくなかで、親が少ない子どもに対して、時間なりお金なり労力をかけていくなかで、競争がどんどん激しくなっていくと思っているので、そのなかで勝ち抜くためには、時間的に早い段階で手を打つと。」

実際、公立小移民の動きは、どこまで広がっているのでしょう。
教育熱が高いエリアの1つ、東京・文京区にある不動産業者です。

「学区が書いてあるんですか?」

不動産会社 営業部長 児玉竜司さん
「やっぱり売り文句になるので、チラシのほうに入れさせていただいております。
学区で誠之小学校とか窪町小学校、昭和小学校、千駄木小学校とありまして、小学校の頭文字を取って『3S1K』って、みなさんおっしゃっているんですけれども、そこに入れたいっていうお客様が結構、ファミリータイプの中では、2〜3割はいらっしゃると思います。」

こちらの賃貸マンションでも、つい先日、4人家族が入居することが決まったばかり。
家族には少し手狭で、家賃も高めですが、契約はすぐにまとまったそうです。

不動産業者
「他区で持ち家を持たれていて、小学校6年間だけ、こちらに賃貸で借りて、お子さんのためだけにという方もいらっしゃいますね。」

千葉県から、わが子の小学校探しをしていた、あの田中美鈴さんです。
検討の末、東京・中央区の、ある地域にマンションを購入しました。
中学受験は9年後。
まだ先は長いですが、今回の選択には満足しているといいます。

田中美鈴さん(仮名)
「データに振り回されている感はある。
いい環境をお金で買うじゃないですけれど、ゴールは大学とか就職先なので、そこまで見据えた場合は、2歳3歳から動き出しても、早くはなかったかもしれないって感じでした。」

「稼げる大人」になる!? 過熱する受験戦争

ゲスト 鈴木おさむさん(放送作家)
ゲスト 尾木直樹さん(法政大学教授)

評判がいいとされる公立小学校目当てに引っ越しまでするということからも、受験競争が過熱していると感じる 鈴木さんは、どう見た?

鈴木さん:公立小のために引っ越す人は、周りでも結構います。
ただ、うちは共働きだったりするので、今後の生活のスタイルとか、安全とか、いろんなことを聞いて、しかも、ネットでいろいろ調べていくと、学校で努力というか、そういうことをアピールしているところも正直あるので、そういう情報を聞いていくと、公立を選ぶという時代になっているのは免れないし、僕自身もそれはいいとは思うんですけど、受験のためにというのは、どうなんだろうという気持ちはあります。

尾木さんは、どう思う?

尾木さん:中学の教員も長年やっていましたから、公立の学校の教員の立場から言えば、昔はどこも同じだったんですよ。
特に、小学校は同じでした。
(今は同じ公立小でも違う?)
今、すごく変わってきたんです。
学校側も、ちょっとでも学力テストの点数を上げて、高い評判を得て、それから学校の行事でも、運動会ですてきなのをやってみたり、あるいは文化祭も力を入れてみたりとか、いろんなので個性というのか、売りを出すわけです。

鈴木さん:500メートルとか1キロしか離れてないのに、その隣に行きたいがために引っ越すって人も結構いるんですよ。
尾木ママが言っていたみたいなことを、本当にネットで調べられるので、今。
評判とか、校長先生がこんなことを言っているとか。

尾木さん:でも問題なのは、教師の立場から言うんですけども、均質な子どもばかりが集まってくるんですよ。
いわゆる、いい学校といわれるところは親の考え方も同じだし、年収も似てくるし。
それは、教育にとっては非常にやりにくいことなんです。
一般的には、同じぐらいの子が集まれば、授業もやりやすいんじゃないか、けんかも起きないんじゃないか、その通りなんですよ。
その通りなんだけど、だいたい小学校の6年間というのは、多様な子どもたちとぶつかりあって、こんな経験している子もいるんだとか。
これが、また子どもの気持ちを刺激したり、社会貢献しようだとか、いろんな気持ちにつながっていって、土台としてはすごい重要なんです。

鈴木さん:均質な子が集まると、実は子どもの経験値が下がりますよね。

尾木さん:そうなんです。
同じような経験しかしてないから、話がおもしろくないんですね。

鈴木さん:情報量が、実は少なかったりするでしょうね。

尾木さん:いちばん大事なのは、これは首都圏の問題であり、それから近畿圏、大阪、京都を中心とした、近畿圏の問題。
本当に一部なんですよ。
だから、東京でも一部の自治体は、私立中学受験が40%を超えています。
ただ、全国的にいえば、例えば東北の方は0.2〜0.3%なんです。
ここらへんの議論をきちっと分けてやらないといけないなって思います。

将来への不安から、大学や就職をゴールとして目指しているということだが、偏差値や学歴だけで人生が決まるというわけでは決してないと思うが?

鈴木さん:僕も大学を中退していますし、僕らの周りには中学でこの世界に入ったりとか、高校出て会社の社長になったり、ITを立ち上げたりとか、すごくいるんです。
それで成功している人もいるから。
ただ、いろんな企業に入るには、受けるのすら、4大出ないとだめというのが現実じゃないですか。
だから、選択肢が広がるのがいいかどうかは、また別の問題ですけど、選択肢が広がるのは事実なので、もし子どもがそれを求めたりとか、親が選択肢を広げてあげたいなという思う気持ちは分かります。

こうして親の不安が高まっている中、学力だけではなく、トータルな人間力まで身につけられるという学習塾まで登場しています。

学力も人間力も総動員! ゴール見えない子育て競争

朝7時過ぎ、新宿に集まった40人の小学生たち。
これから、学習塾が主催する人気授業が行われるというんですが、大きな荷物に厚手の帽子?
実は、親と離れ、子どもたちだけで1泊2日の雪国体験に出かけるんだそうです。
子どもの半数は小学1年生。
ほとんどが初対面どうしです。

この塾のモットーは「魅力的な人、メシが食える大人」を育てること。
さまざまな野外体験を通じて、たくましく生きる力を身につけられるといいます。
参加費用は1人、2万5,000円かかりますが親たちに大好評。
野外体験の参加者は、この3年で倍増しています。

娘が野外体験に参加
「今回は7回目。
家族で出かけるだけでは体験できないことも、いろいろしてきますし、それによって成長してくるのが楽しみ。」

息子が野外体験に参加
「親元を離れて集団のミニ社会を体験させるのも、子どもにとって、いいんじゃないかと。」

親と離れ、バスで5時間。
知らない子どうし、最初は不安そうにしていましたが、次第に打ち解けていきます。
こうして社交性などが高まるといいます。

「楽しい。
雪で、ブズッて(足が)はまるところ。」

「雪にたくさん触れてよかった。」

夕食の時間。
嫌いな食べ物がある子には、スタッフが諦めずに口にしてみるよう促します。
困難に立ち向かう力などをつけることがねらいです。
小さな成功体験を重ねて心に刻むことで、自分に自信を持てるようになっていくといいます。
こうした教育プログラムを提供する事業者は、今、都市部を中心に増えています。

花まる学習会 高濱正伸代表
「目標として、メシが食えて、モテる人間っていう人間作りだったときに、何とか中学・高校に合格することがゴールみたいなことをやっていても話にならない。
社会人になれる、家庭を持ったときに、ちゃんと相手を幸せにできるとか、周りの人を幸せにできるとか、そこに焦点を当てた教育をしようと。」

一方、こちらは少人数やマンツーマンで体育を教える教室。
小学校の授業を先取りした指導を行っています。
わが子に体力をつけさせたいという親たちから人気ですが、それだけでなく、実は意外なニーズもあるそうです。

保護者の声
“保育園のリレーで惨敗しました。”

保護者の声
“鬼ごっこに自信が持てない。”

壁にぶつかって、子どもの心が折れないよう、早くから手を打つ。
家庭だけで対応するのは難しいという親は増えているようです。

父親
「何かひとつ自分で自信が持てるようなもの、他人と比較したときに自分にできることがあると自信になると思う。」

この教室には、就学前の幼児の親からも予想を超える申し込みがありました。
売り上げも毎年1.5倍のペースで伸びているそうです。

スタートライン 中村和基執行役員
「(運動が)できるようになることで精神的にも安定するといいますか、自信を持つような効果もありますので、そういった要望で来られているのではないかなと。」

こうした体験は、実際に人間力や生きる力に結び付くのでしょうか。
専門家の調査で、驚きの事実が明らかになってきました。

教育学者の明石要一さんです。
幼いころの体験格差は、確かに、その後の人生を大きく左右するというのです。

自然体験や地域活動などの多様な体験を積んだ子どもほど、成人した後の年収が高くなっていました。

同様に子どものころに豊かな体験をするほど、結婚率も高くなっていたのです。

千葉敬愛短期大学 明石要一学長
「体験が人生とか学力に影響するのは、ショックなんです。
年収1,000万円の家庭のお子さんは、放課後、塾に行ってお稽古に行って、夏は海に行き、冬はスキーに行ける。
年収300万円を切った家庭のお子さんは、お父さんお母さん、頑張っていらっしゃるけれども、なかなか、お稽古も塾も行けない。
家でテレビと漫画とテレビゲームを見て、言葉で言うと“貧困な体験”しかできない。」

「稼げる大人」になる!? 過熱する受験戦争

体験の多さで、人間力にも差がついてしまうという驚きの調査結果だったが、体験格差は、将来の年収や結婚だけではなく、こんなものにも影響を及ぼしているんです。
習い事や自然体験などにかける学校以外の教育費が高い家庭の子どもほど、人間力の基礎となる、自己肯定感も高くなるそうなんです。
幼いころの体験で、人生や人格にも差が出るというこの結果、鈴木さんはどう思った?

鈴木さん:体験によって差が出るのは当然だろうと思います。
でも、それは、お金を払っていい経験をしている人だけじゃなくて、例えば、僕は自営業なんですけど、いろんな大人が入れ替わり立ち替わり来て、いろんな大人としゃべったことが、自分の経験になっているんですよね。
だから僕も、子どもにとにかく今のうち、周りに変な大人がいっぱいいますから、それに合わせたりとか、そうやって、子どものころにいろんな人と会って、いろんな経験をするのは、絶対差が出るだろうなとは思います。

尾木さんは、どう思う?

尾木さん:こういう生活体験、あるいは遊び体験、それから自然体験というのは極めて重要。
それは、未知数の中での経験だからです。
そこで対応力がいっぱい付いてくるんです。
(今は、なかなか親ができない部分を、こうした学習塾や民間の企業がやってくれているという状況については?)
悪く言えば、塾任せというんですか、外注みたいにして、ぱっと、お金がある人はできちゃうわけですけど、経済格差が学力格差になり、学歴格差になって、それが幸せ格差になるなんて、これはとんでもない。

経済力のある家庭と、そうでない家庭で広がってしまう格差。
では、どうすればいいのか、VTRに出演されていた明石さんにヒントを提供していただきました。
体験といっても、さまざまあり、釣りやキャンプなどの自然体験は、親の経済力の影響を受けがちだが、祭りや外遊びなどの社会体験、家のお手伝いなどの生活体験というのは経済力の影響を受けにくいので、どの家庭でもしやすい体験です。

鈴木さん:親がいろんな状況でできない人もいるのかもしれないですけど、そこに対して、親がどう時間を割いて向き合うかということが大事だと思います。
例えば、テーマパークとかに行ってしまえば、それはそれで楽なんですけど、何もない公園で、親がどれだけ向き合っておもしろく遊ぶかって結構考えないといけないし、時間もかかるし、体力もいることなんですけども、それを、空いた時間で、別に長くやればいいってことでもないと思うので、それを向き合ってあげることが大事なのかなって、僕は今、意識はしてるんですけど。

でも、なかなか、それができない時代になってきているが?

尾木さん:共働きだけではなくて、ダブルワークのお母さんは帰ってきてから、またお仕事で帰ってくるのは夜の11時、12時と。
そうすると、子どもたちは家庭でごはん作りがお手伝いではなくて、重要な労働になってしまっているんですよ。
体験とは全く違って、そういう子どもたちも、全国に今たくさんいるのであって、俺のこんなところから自己肯定感なんか出てこないよと、自己否定感ばかり大きくなるなんていう子も、たぶんいると思います。
だから今こそ、逆に言えば、これだけバラバラになってきましたから、いったい公教育とは何かという原点をもう1回見つめ直して、全面的にバックアップしていく。
貧富の差で、差が出てこないようにするのは最低限、僕は重要だと思います。

いろんなものに惑わされがちですけれども、子どもの教育にとって何が大事なのかを見落とさないようにしたいですね。

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