クローズアップ現代

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No.39302017年2月7日(火)放送
フェイクニュース特集 あなたは被害者?加害者?

フェイクニュース特集 あなたは被害者?加害者?

あなたも知らぬ間に… ネットで拡散“デマ情報”

日本でも毎日のようにフェイクニュースが発信されている。

「海水温の急激な変化はマグニチュード7の大地震の予兆だ」。
「福岡の陥没事故で出来た穴は放射能に汚染された土で埋められた」。
あなたも知らないうちに、ウソの情報を拡散しているかもしれない。
フェイクニュースは、どのようにして生まれるのか。
社会はどこへ向かうのか。
特集シリーズで迫る。

ネットで拡散“デマ情報” あなたのスマホにも…

ゲスト デーブ・スペクターさん(放送プロデューサー)
ゲスト 池上彰さん(ジャーナリスト)

インターネットを通じて、事実ではないことを発信する偽のニュース「フェイクニュース」。
日本でも、不確かな情報が拡散しています。
例えば、「マイナンバーは役所で手続きをすれば抹消できる」「WHOが大麻が有害だという根拠はないと発表した」。
これは、先週の木曜日、この番組で大麻について特集したところ、このフェイクニュースを見た視聴者から「大麻は有害ではないのではないか」という問い合わせが相次いでいるんです。
ですが、これはいずれも取材によって間違った情報だと確認できております。
日本でもフェイクニュースが拡散しているが?

デーブさん:そうですね。
本来、パロディーとか風刺は、非常に完成度が高くて、ウイットがあったんですけども、基本的に笑えないんですよね。
ただリアクションが見たいだけ、あるいはちょっと迷惑かけたい。
ただ、日本で元祖のフェイクニュースの被害者は私でございましてですね。

こちらを持ってきたんですけども。
デーブ・スペクターは日本人だと。
しかも、埼玉生まれって細かくいろんなことが書いてあるんですよ。
これは、もうびっくりしましてですね。

日本で拡散されているフェイクニュースで気になっているものは?

池上さん:最近ですと、日本人の女の子が韓国でレイプをされたけれども、裁判で無罪になったというフェイクニュースが拡散しました。
そういうニュースを見たい人がいっぱい殺到して、いってみれば、広告料を稼げるというものまで出てきているとなると、本当に意図的なフェイクニュースが出ていると。
もう困ったものですよね。

いったい、なぜフェイクニュースは拡散してしまうのか。
実は、私たち自身が知らないうちに間違った情報の拡散に加担しているかもしれないんです。

あなたは被害者?加害者? ネットで拡散“デマ情報”

熊本市に住む、10代の女性。
去年(2016年)、熊本地震の直後、余震におびえながら避難している時のことだった。
ツイッターに投稿されていた、ある偽の情報を信じてしまった。

“おいふざけんな、地震のせいで、うちの近くの動物園からライオン放たれたんだが。”

熊本地震で、動物園からライオンが逃げ出したというデマだった。
動物園の近くに住んでいる女性。
友人に危険があってはいけないと投稿をすぐに拡散した。

10代の女性
「もしかしたらということがあるかと思って。
近くにいたら危ないから知らせないとと思って(友達に拡散)しました。」

偽の情報だと気づかずに、善意で拡散した女性。
一方で、深く考えずに拡散させた人もいた。

5,000人以上のフォロワーがいる、東海地方の男性。
電話取材に対し、こう答えた。

“見てすぐに、おもしろいと思ってリツイート・拡散しました。”

10万のフォロワーに拡散した、都内のある人物は…。

“拡散したかどうか記憶にありません。”

ライオンが逃げ出したというデマの対応に追われた動物園。
不安を覚えた住民などからの問い合わせは100件を超えた。

対応に当たった職員 大木昌之さん
「地震にあっているところで、皆さんそれ時点で不安がっているのに、そういった情報を流して、さらに混乱させている。
どう考えても許せない話。」

偽の情報を拡散させた人は、1時間で少なくとも2万人に。
被災地に大きな不安を広げることになった。

ネットで拡散“デマ情報” 見抜けないのか?

ゲスト 藤代裕之さん(法政大学准教授)

うそなんじゃないかと思ったとしても、これを見抜いて拡散させないというのは、なかなか難しいと思うが?

藤代さん:実は非常に難しくなっていると思います。
それは、スマートフォン特有の理由があるんです。
先ほど、デーブさんが東スポの事例を挙げていましたけれども、私たちは、東スポとか雑誌を見る時は、「あっ、東スポだな」と思いながら見るわけです。
パッケージというふうにいいます。
実は発信者と拡散する部分が分離しているというのが、ソーシャルメディアの時代の特徴なんですね。
そうなると、パッケージというものが分からなくなるわけです。
(誰が書いたのかということと切り離されて、情報だけが1人歩きして、拡散されていくと?)
簡単にシェアできてしまう仕組みがあるので、やっぱりそこまでしっかり見るというのも、例えば地震とかで心配が募っているとかっていう場合は、なかなかユーザーにリテラシーを求めるのも難しいという側面もあると思います。

池上さん:だからこそ、そういう、うそのニュースを拡散するようなことがあれば、法律で何とか罰せられないのか、取り締まれないのかっていう。
ですが、そこが実は大変難しいんです。

例えば、先ほどの熊本でライオンが脱走したというフェイクニュースを流した男性は逮捕されたものの、その後、釈放されている 法的なルールをどう考えればいい?

池上さん:この場合は、偽計業務妨害ということで、動物園の業務を妨害したという容疑で逮捕したことになるわけですが、さあ、果たして、裁判になった時に有罪に持ち込めるかどうかって検察側が判断したということでしょうね。
明らかに、社会に大変悪い影響を与えているわけですから、何らかの、それを処罰する法的な仕組みが必要じゃないかと議論がある一方で、しかし、それをやると、言論の自由、表現の自由、そういうものを妨げることになるんじゃないかということもあって、これは本当に難しいんですよね。

フェイクニュースが、どんな動機で作られているのか。
熊本地震であった、「ライオンが脱走した」のように、おもしろがってフェイクを流す愉快犯。
さらに、アメリカ大統領選の時に問題になった、自分の政治的意図を広めるためにフェイクニュースを作り出すというもののほかに、もう1つ、ビジネスとしてフェイクニュースを作って、お金を稼げる仕組み。
これの存在がとても大きいんです。

置き去りにされる真実 “お金”優先 ネット記事

事実かどうかはっきりしないニュースや話題を、自分のブログで発信していた山本大輔さん。
取材に対し、その実態を明かした。

フリーライター 山本大輔さん
「お金も稼がないといけないという理由で、悪魔に魂を売るような形で(事実かわからない)ガセネタなども書いてしまっていました。」

山本さんが、かつて書いた記事の1つ。
当時、話題になっていた事件について取り上げた。

フリーライター 山本大輔さん
「SNSから取ってきたやつですね。」

ネットで集めた情報をもとに書いたが、その情報が事実かどうかは一切確認していなかった。

フリーライター 山本大輔さん
「まるまる引用した形なので、本当に正しい情報なのか、100%確定ではない。
恐らくこれは本当だろうっていうような、あいまいな状態。」

山本さんがこうした記事を書くようになったのは、ネットのある仕組みがあったからだ。

フリーライター 山本大輔さん
「ここも広告ですね。
ここも広告ですし。」

記事には広告が掲載されており、1回クリックされるたびに数十円が支払われる。
記事を書けば書くほど、増える収入。
内容が事実かどうかは問われない。

フリーライター 山本大輔さん
「ここら辺が多分そういう、ガセネタっぽい記事を書いた時。」


人々の関心を集めるため、過激なタイトルをつけると、アクセス数と広告のクリック数が増加。

1日数千円の収入につながった。

フリーライター 山本大輔さん
「3日で1万3000円。」

次第に罪悪感を感じるようになった山本さん。
現在は、できるかぎり自分で調べて記事を書くようになったという。
しかし、お金のために不確かな記事を書き続ける人は後を絶たない。

フリーライター 山本大輔さん
「情報が多少正確じゃなくても、『赤信号みんなで渡れば怖くない』じゃないが、周りもやっているんだから自分も多少はと考えてしまうんですよね。
今思うと情けない感じですけど。」

真実より“お金” ネット社会で何が

これは個人の問題だけではないんです。
去年、記事の間違いが連日指摘されて、事実上閉鎖された医療情報サイト「WELQ」。
これは、大手IT企業の「DeNA」が手がけていました。
記事の中には、例えば「肩凝りには霊が関係している」という真偽が定かでない情報や日焼けには、ぬれタオルで冷やすのがいいといった誤った方法が紹介されていたりしたんです。
これは、組織的にフェイクニュースが提供されるような事態にまでなっている?

藤代さん:インターネット上でつながった人に仕事を出す、「クラウドソーシング」という仕組みを使って、安い単価で、それこそ1記事100円とか500円、そういうような単価で記事を大量に書かせて、検索エンジンの上位に表示させると。
それによってアクセスがたくさん集まる。
アクセスがたくさん集まることでお金がもうかるという仕組みになっているんです。
(アクセスが増えるように記事を書くようになっていくということ?)
アクセスが増える記事というのは、見出しが派手であったり、写真が本文と違うけれども、ちょっと派手な写真がついているというようなものがアクセスが増えるというのは分かっているんです。

デーブさん:キーワードをうまく使うカラクリもあって、検索エンジンに、必ずトップに上がってくるようなものとか、キャッチーなものとか。
だから、見出しで引っ張るっていう技があるんですよ、トリックがね。
それを利用してるのが多いですよね。

池上さん:今回の場合は、アメリカ大統領選挙に影響したとも言われているんですよね。
選挙の最中に、ヨーロッパのマケドニアの大変小さな国で、ヒラリーの悪口を書き、トランプが有利なような記事を、まさにフェイクニュースの、ニュースサイトを作った大学生がいまして、そうすると、特にアメリカのトランプ支持者たちが、それを競って見るわけです。
たくさんの人が訪問してきたことによって広告収入がいっぱい入って、それで大もうけをしたという事実があるんです。
(本来、正しさというものが求められるニュース そういう情報が結局、収入と合致していることが非常に大きな歪みを生んでいると?)
そういうことですよね。
だから、いわゆる「プラットフォーム」、さまざまなインターネットのニュースを、どうぞ提供してください、あるいは流してくださいという会社、プラットフォームがありますよね。
昔は、私たちは、その中身に関してはタッチしませんと言ってきたんですが、そこで明らかな間違いだったり、あるいはそれが政治に大きな影響力を与えるようなことになった時に、うちは関係ありませんって言っていられるのかということです。

デーブさん:実はツイッターで僕の成り済ましがいるんですけど、ただ困ったことに僕よりおもしろいんですよ。
(でも、それよりおもしろくするしかないじゃないですか。)
でも、やっぱりアプリも今、自由に作れるし、でも一番いいのは、やっぱりサイトを見て、あれ、これ聞いたことないとか、なんか無理やり作ったものとか、何となく第六感で、うそっぽいと思えば、見なければいいんですけど、素直な方とか、やっぱり何でもイコールで見ちゃう。

藤代さん:子どもから、おじいちゃん、おばあちゃんまで使うようになってくると、リテラシーをユーザーに求めるというのは非常に難しいと。
やはり誰もが簡単に、気軽に使えるようなものの中にフェイクが混じってくるという状況が、社会的に問題だというふうに思います。

インターネットというのは、誰もが自由にものを言えて、見ることができる空間ですけれども、こういうフェイクのものに誰が責任を取るべきなのか、そこはどう思う?

藤代さん:これは非常に難しい問題だと思います。
やっぱりインターネットって、誰でも発信者になれる、マスメディアだけじゃなくて、私たち個人も発信できる、すごくいいところがあると思うんですね。
その一方で、こういうビジネスが回ってしまっていると、さっきのVTRに出てきましたけれども、せっかく取材を一生懸命してもお金がもうからない。
そういう仕組みではなくて、きちんと取材して、丁寧な記事を書く人にお金が回る、そのビジネスモデルの構築というものが求められると思います。

池上さんはどう思う?

池上さん:これは、とにかくプラットフォームの責任ということですよね。
これからは、こんなフェイクニュースを放置していていいんですかというふうに言われる、その対策っていうのが、今まさに求められるようになってきていると思います。

フェイクニュースの拡散をどう食い止めるのか。
インターネットの入り口となるプラットフォーム企業の対策が始まっています。

フェイスブックの対策 真実どう見抜く?

先月(1月)、世界的なネット企業と大手メディアが一堂に会し、フェイクニュースをどう排除するか議論を闘わせた。

英新聞社ガーディアン
「この大問題にグーグルやフェイスブックなどが、大きく関わっているのです。」

参加者
「フェイスブックはフェイクニュースを流すことで、いくらもうけているんだ。
ちゃんと対策にお金を使っているのか?」

責任を追及されたフェイスブックの担当者は、メディアとネット企業の連携が必要だと語った。

フェイスブック
「この2か月、報道機関と議論してきましたが、解決は簡単ではありません。
まるで“モグラたたき”のような問題です。
私たちは力を合わせなければいけません。」

フェイスブックは今、ほかのメディアと連携し、アメリカなどで新たな対策を始めている。
利用者が事実かどうか疑わしい投稿を通報できるシステムだ。

利用者が画面上のボタンを押すと、フェイスブックに通報が届く。
通報が一定数を超えた投稿は、外部の機関が事実かどうか検証する。

大手メディアABCニュースも、その1つ。
フェイスブックからの依頼で投稿を検証している。
フェイクが疑われる投稿は連日持ち込まれる。

ABCニュース デジタル部門 ザナ・オニール編集長
「この記事はフェイスブックの利用者から通報されたものです。」

「オバマ大統領がホワイトハウスに自分の銅像を建てた」というニュース。
銅像の写真とともに投稿されていた。
担当者は、記事の発信者を直接取材。

カリブ海のプエルトリコにある、実際の銅像の写真を加工したことなどを突き止め、フェイクと断定した。

検証によってフェイクと見なされた投稿には、フェイスブック上で虚偽が疑われていると警告が表示される。

ABCニュース デジタル部門 ザナ・オニール編集長
「私たちはジャーナリストのスキルを使って、正確な情報を導きだしていきます。
重要なことは、常にフェイクニュースに目を光らせて、何が間違っていて、何が正しいのか、真実を示していくことなのです。」

揺らぐ真実 問われる伝える側の責任

このほかにも、グーグルは先週の金曜日、ほかのサイトから借りてきた文章を切り貼りしたような品質の低いサイトの検索順位を下げる仕組みを導入したと発表しております。
こういった対策、どれぐらい実効性があると思う?

藤代さん:今まさに始まったばかりということだと思います。
しかし、インターネットの社会的な影響が高まるにつれて、こういう対策も少しずつ進んでいるわけなので、これはみんなの力で、どういうふうな社会、インターネットの利用を進めていくのかということを考えながら進めていけば、必ず解決策が見つかっていくんじゃないかなというふうに思います。

例えば、どういうアイデアがある?

藤代さん:オリジナルのコンテンツを作っていく人たちに、しっかりとお金が回る仕組みということを考えていくことが1つ。
もう1つは、ジャーナリズムというのがキーワードかなと思います。
ジャーナリズムを、あまりインターネット企業は考えてこなかったと思うんです。
しかし、これからはネット企業がジャーナリズムの一翼を担っているんだという自覚を持って、しっかり社会の中で取り組んでいくことが必要になってくるんじゃないかなと思います。

デーブさん:ただ、国によって検閲もありますから。
それと、その線引きも気をつけないといけないですよね。

それはつまり、どういうこと?

池上さん:例えば、公的機関がフェイクニュースと断定するか、認定するかということになりますと、まさに検閲そのものになりますよね。
それは、やっぱりそれぞれのジャーナリズムが自主的に、これはフェイクニュースですよという意見を表明する形しかないんだろうなって思うんですが。
もう1つは、そういうプラットフォームだけではなく、特にインターネットの場合、広告収入を目的にしてフェイクニュースを書く人がいますよね。
そうすると広告が、特にインターネットの場合、無作為にいろんなところに出てきたりするわけです。
そういう広告主が例えば、新聞や雑誌の場合、あるいはテレビの場合、こういう新聞に広告を出してください、この雑誌に出してください、あるいはこの番組にやりますっていうことをやっていますよね。
インターネットに関しては、そういうことをやっていないから、いろんなところに出てしまう。
結果的に、現時点では、フェイクニュースのところに広告がわっと出るということになるわけです。

今のインターネットの世界での広告は、自分がどこに出しますということは、表明しないということ?

藤代さん:仕組み的には可能です。
これには非常に複雑な仕組みがあって、ブラックボックスのようになっているんですね。
しかし、それをある意味、インターネットの広告会社は言い訳にしてきた部分があると思うんです。
実は、仕組みでいろいろできるし、今、人工知能・AIみたいなものがいわれてますから、フェイクニュースを拡散するようなサイト、もしくはその発信源に対して、広告を止めていく、もしくは広告主がそういうところに出していくというのを自覚して止めていくというようなことも当然求められていくと思います。

デーブさん:インターネット広告、無作為のシステムでありながら、バナー広告やきちんとした具体的に、このサイトに払って載せるというのは2種類あると思うんですよ。
ただ、フェイクニュースの難しさは、今、トランプ政権にフェイクニュースを管理してくださいって言ったら、何がなくなるか不安ですよね。
だから、アメリカの大統領陣営でさえ、フェイクニュースを利用してきている面もあるので、しかも不利なものが嫌だって言ってるから、このレベルじゃどうにもならないですよね。

私たち自身は何をすればいいのか?

藤代さん:「家族や友達と、ニュースについて話そう」です。
友達や家族と話すと当然、意見が違ってくる。
ここでも3人で話すと、いろんな見方がある。
それに気付けるのは、実はリアルでニュースについて話すのが、一番いいんじゃないかなと思います。

デーブさん:インターネットが、うその情報をサーバーを読む。
(さば読む?)
さば読むです。
特に役に立つ言葉ではないですけど。
つまり、疑えということですよね。

池上さん:「おもしろければいい」それでいいのか?
つまり、ネットでもおもしろい、おもしろいって拡散する、でも、それでいいんだろうかということなんですけど。
実は、既存のメディアも要するにおもしろいニュースだからいいっていうふうに、私たちもやっているんじゃないか。
大事なニュースは何なのかということを、きちんと伝えていくこと、それを私たちがもっと自戒しなければいけないんじゃないかと思います。

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