クローズアップ現代

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No.39262017年1月31日(火)放送
怖い鬼は厳禁!?“ほめられ世代”どう叱る?

怖い鬼は厳禁!?“ほめられ世代”どう叱る?

怖い鬼は厳禁! “ほめられ世代”どう叱る?

鬼がいなくなろうとしている現代日本。
まず訪れたのは、ある自動車教習所。

校舎に大きく掲げられているのは、「ほめちぎる」の文字。
自動車教習所というと、鬼教官というイメージですが、ここは一体どんな教習なんでしょうか。

教官
「OK、いい感じやん。
めちゃ、うまなったやん。」

教官
「きょうのブレーキング、非常にね、優しい止まり方ができているので、いいです。」

このやさしさを求めて、遠い県外からも大勢の若者たちが教習を受けにやって来ます。

奈良からの教習生
「楽しかったです。
ほめられた方が、やる気にもつながりますし。」

茨城からの教習生
「ゆとりがあったほうが、のびのび出来る世代なんですよ。」

こちらの教習所。
以前は厳しく指導していましたが、生徒が集まらなくなり、4年前、思い切って今のやり方に方針転換しました。
かつての鬼教官たち。
涙ぐましい努力をしています。

出勤すると、パソコンの前で、この笑顔!

なんと、専用ソフトで笑顔が採点されるんです。

教官
「これを必ずやってから、タイムカードしないと、罰金。」


求められるのは、笑顔度90%以上。

教官
「(91%)ギリですね。」

鬼を辞めるのも一苦労。

でも、ほめちぎることで、年間生徒数大幅アップを達成しました。

自動車教習所 社長 加藤光一さん
「ガツンと叱ると出てこなくなるし、教習に対するモチベーションも上がらないし、今まで通りの教育をして成果を出していくのは、限界にきていると思う。
環境が変わったら、もう環境に合わせていくしかない。」

怖い鬼への若者の拒否感は、かつてないほどに高まっています。
入社2年目までの若手社員に対する調査では、叱られるとやる気を失うという人が6割。

そうした新入社員との接し方に悩む企業の間で人気を博しているのが、このセミナー。

講師
「握手と笑顔の交換。」

かつての鬼上司たちに新人の上手なほめ方を教えます。

講師
「“ほめほめリレー”、第1レース、よーいスタート。」

参加者
「すごく、話しやすい感じがします。」

参加者
「ダンディで。」

全国の企業から依頼が殺到。
去年(2016年)は100社、2万人が受講しました。

参加者
「すごい強そうで。」

始まったのは、繊細な新入社員を傷つけないための、言葉の選び方講座。
例えば「決断力がない」は、「慎重に物事を考える」。
「わがまま」は、「積極的で自信を持っている」。
なるほど。

「こういう時代がくると思いましたか?」

大手通信会社 部長
「うーん、そうですね。
たしかに(ほめ方を)学ぶとは思ってなかった。」

管理職の皆さん、何だか背中に哀愁を感じます。
若手を厳しく指導すると、すぐに会社を辞めてしまう。
かといって、やさし過ぎると、なかなか育ってくれない。
今、多くの企業が、そのジレンマに直面しています。

飲食店におしぼりを提供している、この会社。
社員たちは毎日大量のおしぼりを交換して回ります。
体力勝負の職場ですが、残業は基本なし。
初任給も平均以上。

それでもここ数年、多くの若手社員の退職に悩まされてきました。
体育会系の社風に問題があるのではと、去年から全社一丸となって、若手を褒める取り組みに力を入れてきました。

先輩社員
「(作業が)早くなったな。
(積むのが)うまいね。」

若手社員
「(ケースの)スライド載せはもう。」

先輩社員
「最初は全然、載っけられなかったじゃん。
だいぶ上達したよな。」

感謝の気持ちを伝える仕組みも作りました。

これは、サンクスカード。
ささいなことでも、カードに書いて相手に渡します。
役職に応じて、ノルマも。

おしぼりレンタル会社 社長 石川拓彦さん
「月に何枚以上書いてくださいと(社則に)目標が書いてある。」

こうした地道な取り組みが功を奏し、今年度は1人しか退職者が出ていません。
しかし、現場のリーダーは若手を叱らないといけないタイミングでも、つい、ためらってしまうという悩みを抱えていました。

この日は、若手の1人が、顧客からおしぼりのレンタル料金を受け取っていないことが分かりました。

おしぼりレンタル会社 営業部長 四柳隆さん
「未入金のことで、自分のお客さんなのに、どこが残ったか把握できていないのは、本当はもっと厳しく言うべきだと思うんですけど、ちょっと言い切れなかった。
どこまで打ち解けて、くだいてやっていいのか、ちょっと分からない。」

嫌われる“鬼”たち 叱り方がわからない

ゲスト 峯岸みなみさん(アイドル)
ゲスト 堀江貴文さん(実業家)
ゲスト 榎本博明さん(心理学者)

こうした鬼のような存在がいなくなりつつある現状を、峯岸さんはどう感じた?

峯岸さん:この仕事をやっているってことを抜きにして、24歳としては怒られるとテンションが下がったり、やる気がなくなったりする気持ちもすごい分かるし、だから褒められる教習所はいいなあとか思うんですけれどでも、この仕事をやっているから、ふだん褒めてくれない人がやっと褒めてくれた時の喜びを知っているからこそ、それを知らないままというのはもったいないなっていう気もしますけど。
(厳しい世界で今、働いていらっしゃるというのもありますからね。)
できるだけ怒られたくないって気持ちは分かります。

堀江さんはどう感じた?

堀江さん:もう理解不能ですね。
何やっちゃってんの?この人たち、みたいな感じが、僕は。
(それは、どんな点が?)
ああいう仕事って、辞める人が多いと思うんですけど、だったら別に人を雇わなくていいのかなとか。
(それでは、困りますよね。)
僕だったら自動化を考えますね。
あそこまで褒めて褒めてって、もう作業じゃないですか。
それはどうなのかな?って思いますけどね。
あと、褒めてると、褒められることを求めて、そればっかりやっちゃうんですよ。
だから、パブロフの犬じゃないですけど、そういう行動にどんどん走っちゃうんで、それはそれで、おかしなことが起こってくると思います。
(向上することがなくなってしまう可能性がある?)
向上することがなくなるというよりは、褒められたくて無理をする。
例えば、褒められたくて残業もできないから、別のところで努力をして頑張ってとか、遅刻しちゃだめだとか、いろんなことを考えて、逆に自分で自分を縛っちゃって、精神的にまいっちゃう人とかが、僕は出てくると思います。

NHKネットクラブで意見を募集したところ、3,000件以上のご意見が寄せられました。
お寄せいただいた5割ほどが40代以上の方だったんですが、「組織や社会で鬼は必要」だという人が、実に7割にも上ったんです。
榎本さんは、怖い存在としての鬼は必要だと思う?

榎本さん:必要だと思うし、さっきの映像を見ていると、あまりにわざとらしくて、そこまでして、いい気持ちにさせてあげてどうなるんだろうと。
社会の空気が悪いから鬼は必要だと思うけど、自分はちょっとなりたくないな、そんな損な役回りは引き受けたくないなっていう人が多くなっちゃっていて。
そこを変えていく必要があるんじゃないかなと思います。

堀江さん:鬼というより、はっきり言うってことですよね。
はっきり、あなたはここができてないよねっていうふうに、別に鬼である必要はないと思うんですけど、はっきり問題を言う人がいなくなったのかなと思います。

峯岸さん:今の大人の人が、若い世代に嫌われたくないとか、嫌な顔をされたくないっていう理由で言えないんだろうなという空気は、私たちも感じているんですよね。
だから私たちも甘えちゃおうっていう、結構それは負の連鎖かなと思います。

堀江さん:だから、すごい得ですよ。
僕は、どっちかっていうと本音で言っている方なので。

峯岸さん:どっちかっていうとってよりも、本音ですよね。

堀江さん:だから、そういう人がほとんどいないから。
例えば、テレビとかに出ている人たちは全然、本音を言わないわけ。
生本番中は、すごく建前論の、本当にいい子ちゃんの意見しか言わないのに、CMに入ったとたんに本音を言い出すわけ。
お前、それ本番で言えよ、みたいな人たちばっかりですよ。

峯岸さん:いや、人気商売はしかたないんですよ。

堀江さん:だから僕は、そこで唯一の存在になれるというか。
別に何を言われたっていいし、みたいになっていると、こういう人いないから逆に呼ばれるみたいな。

峯岸さんは実感として、若者が今、どういう感情を持っていると思う?

峯岸さん:やっぱりAKBの中でも世代がちょっと分かれているので、10代だったり、20代後半もいたりするんですけど、若くなれば若くなるにつれ、怒られ慣れていないし、だからAKBに入って初めて怒られたことにびっくりして泣く子は、若いほど多い気がします。

堀江さん:今、AKBの鬼って誰なんですか?

峯岸さん:AKBの鬼は、当時でいうと振り付けの夏まゆみ先生で、すごい怖かったんですけど、今は本当にいなくなっていますね。

堀江さん:鬼がいないとやばいと思うよ、俺。
鬼というか、本音で言う人ね。
怒るとか叱るとかじゃなくて、本当のことを言う。
あなたはここは間違えているんだから、こういうふうに変えた方がいいんじゃないの?っていうふうに、しつこく言う人たちが必要なんじゃないですか。

一方で今、厳しい鬼になりづらいという状況もあるんです。
パワハラが社会問題となっていて、全国の労働局に寄せられたパワハラの相談件数は右肩上がりで、去年は6万件を超えています。
榎本さんは、これをどのように捉えている?

榎本さん:パワハラというのは、とんでもないのもあるだろうから、それは問題なんだけれども、ただ、それがクローズアップされて、重たい事件ばっかりが広められるから厳しさを発揮すると訴えられるんじゃないかという気持ちになってしまう人が多いし、今みたいな褒めまくりの中で、心が鍛えられてない人たちは本当につらいわけですよ。
ちょっと言われたことでも、ぐさっと刺さったような傷になる。
だから、そういうことを考えると、どう対応したらいいか、ちゅうちょしてしまう人が増えていて、なかなか本音ではっきり言うのが難しい社会の空気が出来ていると思います。

また、どういう親でありたいか、というデータもあります。

榎本さん:これは結局、社会に出てから褒めまくらないと動かせないというようなことで、どうしてそうなるかというと、その前の時点で、教育の場合は、家庭で褒めなきゃいけないという空気が出来ているわけですよね。
褒めて育てるみたいな。
その中で、友達親子みたいになっているわけだけど、それで、お父さんやお母さんが優しいのかというと実はそうじゃなくて、僕は、親としてこうあるべきとか、教師としてこうあるべきというのを捨ててしまった自己愛人間だと思います。
その証拠に、そうやって育ったらどうなるかというと、ちょっとしたことで傷ついて、へこたれてしまう。
つまり、心が折れやすくなってしまうんです。

私たちの世代とは大きく価値観が変わってきた今の若者をどう育てるべきか。
箱根駅伝で3連覇を達成したあのチームでは、こんな取り組みをしていました。

鬼いなくても大丈夫! 強豪・青学の育成術

青学陸上部の原晋監督。
選手とは、気さくに声をかけ合う関係です。

青山学院大学 陸上競技部 原晋監督
「俺はダイエットを目的にやるかな。」

「続きますか?」

青山学院大学 陸上競技部 原晋監督
「なに?
決断をしたら続くよ。
決断をしないだけ。」

率いる選手は皆、箱根を走ることを夢みていますが、それでも厳しく頭ごなしの指導は嫌うといいます。
原監督には、そうした今どきの若者たちを強く育て上げるための、1つの揺るぎない流儀があります。

“任せれば、人は『鬼』になる”

青学の練習は、週6日。
そのうち3日間は、監督は直接指導しません。
選手に任せ、自主練習を積ませます。
練習メニューにも口出ししません。
自分で自分を育てろ。
あえて突き放すことで、選手の中に鬼を芽生えさせようとしているのです。

青山学院大学 陸上競技部 伊藤雅一さん(3年生)
「やっぱり全員が全員うまくいくわけではなく、悩んでいる選手も多いんですけれど、それぞれに自分のやるべきことに責任を持って、それぞれの立場で勝負してるかなって。」

選手が自分で課題を見つけ出し、それを自分自身で乗り越えようとすることで、時に、監督の想像を超えた力が引き出されることもあるといいます。

青山学院大学 陸上競技部 原晋監督
「自分自身で考えさせて、それを自分自身でやっていく。
『これをやれ』『あれをやれ』と、指示的なことをやっちゃうと、管理職以上の能力って、その組織に出てこない。」

しかし、ただ任せるだけで選手が鬼になるわけではありません。
箱根3連覇を成し遂げた、青学独自の鬼の流儀があります。

“一人ひとりの目標を、チーム全員で共有する”

青学の選手が全員、義務づけられていることがあります。

目標管理シートの作成です。
シートには、長期的な目標と、そこに至るまでのステップとなる、半歩先の短期目標を選手自ら書き込み、1か月ごとに更新します。
半歩先の目標は、長距離走のタイムや走り込みの回数など具体的な数値です。
頑張ればクリアできる、ギリギリのところに設定します。
そして重要なのが、その目標を仲間どうしで見せ合うことです。

「最低限の目標を立てるよりは、普通に目標を立てたほうが俺はいいと思う。」

目標が厳しすぎたり甘すぎたりしないかを互いに指摘し、修正します。
自ら設定した目標を、チーム全員で共有する。
そうすることで逃げ道をなくし、一人ひとりが鬼の厳しさを持つようになるのです。

青山学院大学 陸上競技部 小田俊平さん(3年生)
「紙に書いて、口に出すことによって、(目標を)他の人も知るんで、そうすると妥協が出来なくなる。
自分の“戒め”ですかね、一番は。」

鬼はどこへ行く? “やさしさ”時代の人間関係

こうした青学の取り組みのほかにも、働きがいのある企業トップ10の上位に毎年入っている企業の例をご紹介します。
かつて鬼上司だった人が厳しく叱るのをやめて、若手一人ひとりが何をしたいのか丁寧に聞き出すようにした結果、社員一人ひとりがやりがいを見い出して、生産性が劇的に改善したというケースもあったんです。
どちらのケースも、一人ひとりの目的や、やりがいに真摯に向き合うという点で共通点があるように感じるが、ほめられ世代の若者たちをどう育てていけばいいのか、堀江さんはどう思う?

堀江さん:彼らがやっていることって、人の動かし方の教科書みたいな本がいっぱい出ているんですけれど、そういったところに書いてあることなんですよ。
これまでの人たちは、それを全く学んでいなかっただけの話だと思うんです。
つまり、勉強はしていない。
人を動かすのにもメソッドがあって、やり方があるわけですよ。
やり方は、専門家の方々が頑張って、いろんな理論化してるんです。
例えば、青学の監督がやっていることは、Jリーグ・サンフレッチェ広島の森保監督がやっていることと大体一緒で、彼らもどちらかというと、本を読んでそうなったというよりは、いろんな試行錯誤をして、そういうふうな結果を見い出した。
だけど、今だったら本を何冊か読めば、ああいったことは、たぶんできるようになるので、それまでは何も考えずにただ叱っていただけなんですよね。

峯岸さんは、AKB48・チームKのキャプテンを務めているが、どういうふうに若手を育てていったらいいと思う?

峯岸さん:私も考えてみると、なかなか怒ることって労力もいるし、嫌われるリスクもあるし、めんどくさいからなるべく避けていきたいなとは思っていたんですけど、考えてみると、その人を思っての注意みたいな。
自分の中で、いい鬼でなくてはいけないのかなって思いました。
今回、甘えだけじゃだめだなって反省しました。

榎本さんは、叱られるとやる気をなくす世代とどういうふうに接していったらいいと思う?

榎本さん:厳しく鍛えられてないから、言われると本当にきついんですよ。
筋トレに例えていえば、10歳で10キロ持ち上げる、15歳で15キロとか、19歳で19キロ持ち上げさせられていたのに、20歳になったから20キロ持てよって言ったら、それは楽々できるんだけど、それまで重いのを持って傷ついたら大変だとか過保護にされていて、社会に出たとたんに自分で考えろって言われて、20キロ持てっていうのと同じようなもので、どうにもならないので、放任っていうのが機能するのは、成熟した集団やモチベーションがもともとものすごい高いメンバーに向くんです。
今の学校教育は逆で、大学生でも予習・復習・管理とか、手取り足取り就活させるとか、そういう子たちがいきなり社会に出て、放任にしたら、これもうまくいかないです。

堀江さん:だから、やり方があると思うんですよ。
これまで叱る一辺倒でやってきて、みんなが嫌がるからみたいな社会になって初めて、ちゃんと考えるようになったんです。
そもそも人の動かし方をちゃんと考えて、勉強してやってる人はすごい少なかったんじゃないですかね。
だから、やっと初めて考えるようになったんだと思います。

榎本さん:自分が人から動かされるのは、みんな嫌じゃないですかね。
自分を動かすコントローラーは自分で握りたいってみんな思うわけで、青学のように、自分で動くというのは一番いいんだけれども、そこにいかせるためのプロセスがあるので、そこで、注意されると否定されたみたいに感じる子たちには、心をまず通い合わせて、語らせて。

まず丁寧に向き合っていくのが1つですね。

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