クローズアップ現代

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No.39242017年1月26日(木)放送
ハーバードはもう古い!? ~エドテック “教育革命”最前線~

ハーバードはもう古い!? ~エドテック “教育革命”最前線~

世界が注目! エドテック“教育革命”

今夜のテーマは「エドテック」。
ちょっと聞き慣れない言葉だと思いますが、これは英語で“エデュケーション”と“テクノロジー”を融合させた言葉なんです。
このエドテックを使って、アメリカではこんな授業が行われているんです。

世界が注目! エドテック“教育革命”

これまでの常識を覆すエドテックの世界。
1つ、例をご紹介しましょう。
こちら、シリコンバレーにある企業が開発した最新の教育ツールとは。

zSpace社マーケティング担当 エリザベス・ライトエルさん
「仮想現実の技術などを使っています。
3Dで見るには、このメガネとペンを使います。」

目の前に飛び出してきたのは3Dの心臓。
手元のペンで自在に操ることができるんです。

zSpace社マーケティング担当 エリザベス・ライトエルさん
「バーチャルカメラを心臓の中に入れます。
心臓の弁の動きを見ることができます。」

複雑な精密機械をいったん分解して組み立てる、なんてこともできます。

このツール、物理や生物が苦手という子どもたちに大好評。
理解が深まると言います。

子ども
「科学がもっと好きになったわ。
最先端の技術がかっこいい。」

世界が注目! エドテック“教育革命”

エドテックは教室の風景を一変させています。
パソコンやアプリだけでなく、人工知能などを活用することで、これまでにない新しい授業も可能になりました。
エドテックは今、教育の最先端、大学の在り方さえも大きく変えようとしています。

ハーバードはもう古い!? エドテック“教育革命”

“今日の授業も刺激がないな
つまんないなあ…”


大学の授業に物足りなさを感じる、そんな経験ありますよね。
大講堂で受ける授業は講師が一方的に話すだけ。
集中力も続きません。
せっかく授業料払ってもこれじゃあ、ね…。

“もっと授業が面白くならないかなあ”

ここで登場するのが、エドテック。
アメリカ・サンフランシスコ。
オフィス街の一角に一風変わった大学が登場しました。

今、一部の学生にハーバードやケンブリッジをしのぐ人気を集めるミネルバ大学です。
何が変わっているかというと講堂や教室は一切なし。
授業はすべてオンライン。
学生たちは世界中から参加できるんです。

教授
「今日は“未来予測”について学びます。」

この日の授業は「私たちの未来は予測できるのか?」というテーマ。
イスラエルやメキシコからも学生が参加しました。

教授
「未来予測の失敗例を挙げてください。」

学生
「住宅債権の格付け問題がありました。
焦げ付くおそれがあるのに安全だと評価されたのです。」

教授
「いいですね。」

学生の集中力が途切れないように、こんなシステムも。
一人一人の発言した秒数が記録され、消極的な学生は画面が緑に変わり、発言を促されます。

学生たちは互いの発言についても「いいね」や「絵文字」で評価することが求められます。
とっても濃密な90分間の授業です。

学生
「天気の長期予測は難しいです。
気象状況が変わるからです。」

さらに、授業の映像やデータは、すべてオンラインのサーバーに保存されます。
講師が学生一人一人の授業のデータを検証。
理解を深めるためのアドバイスなどを送ります。
アフターケアも万全ですね。

ミネルバ大学 ベン・ネルソンCEO
「ミネルバ大学の授業は、学生を強く引き付ける力がある。
最低レベルの授業でも名門大学の最高の授業より優れている。
それこそがミネルバの素晴らしさ。
私たちは全く違う次元の教育を生み出した。」

テクノロジーを駆使して大学の概念を変えたミネルバ大学。
エドテックの象徴として世界中から学生たちが集まってきます。
学生の数は300人。
学生寮で共同生活をしています。
学生たちはキャンパスに行く必要がなく、どこからでも授業を受けられます。

去年(2016年)9月に入学した韓国人のキム・カンサンさんです。
名門のケンブリッジ大学などを辞退して、この大学を選びました。

ミネルバ大学1年 キム・カンサンさん
「世界最高峰と言われる大学にも入学することができましたが、この大学ほど魅力を感じませんでした。
これほど刺激的な環境で学ぶことができて、実践的な体験も身に付くところは、他に見たことがありません。」

キムさんはミネルバ大学に通いながら、すでにベンチャー企業での活動も始めているんです。
この日、キムさんが向かったのはシリコンバレーの近くにあるIT企業。
耳の聞こえない人たちと会話ができるアプリの開発を提案するなど実践的な成果も上げています。

ミネルバ大学1年 キム・カンサンさん
「この会社の技術を生かした新しいアプリを発表します。
アプリで手話を読み取り、文字にすることができます。」

学生のときから卒業後のキャリアづくりも進めるミネルバ大学。
経験や人脈を広げるため、学生たちは半年ごとに住む場所を変え、合わせて7つの都市に滞在します。
もちろん、それを可能にするのはオンライン授業、エドテックです。

ミネルバ大学1年 キム・カンサンさん
「各国でいろいろな学生と出会いますが、授業を欠席したり、テストを受けなかったりしてもいいじゃないかという人もいます。
でも僕は違います。
すべての授業を受けたいのです。
ミネルバ大学では自分のやりたいことをしながら、すべての授業に参加できるのが大きな魅力です。」

大学はどう変わる? エドテック“教育革命”

ゲスト 尾木直樹さん (法政大学教授)
ゲスト 上杉周作さん(エドテック専門家)

この大学はまだ卒業生を出していないが、ケンブリッジを蹴ってでも優秀な学生が集まってくることについてどう見る?

尾木さん:一部の優れた学生は、そうやってケンブリッジを蹴ってでも行くと思います。
それは、今、VTRでも紹介されていましたけど、1年目はサンフランシスコで共同学習するんですけど、2年目からはドイツへ行ったり、インド行ったり、あるいはアルゼンチンですとか、どこか行ったりとか世界7都市を回っていくわけです。
そして、半期ごとに地元の人との交流もです。
午前中3時間は集中して授業をやりますけど、午後からと金曜日は丸1日、インターンシップや企業に行って、耳の聞こえない人のためにアプリを開発したりと。
あれは本当にキャリアにつながっていく。
いわゆる『School to Work』と言って、学校を出てワークにどうつなげるかというのを、現実的に相互乗り入れみたいな感じです。

4年間休む間もなく勉強して発案して、中には起業するような人もいる。ぎゅうぎゅうな4年にも見えるが、そういう人材が求められていくのか?

尾木さん:今、グローバル化とIT化の中では、そういう人材でなければ、企業サイドに立って言うわけではないですけれども、使い物にならないんだと思います。
それから今の若者はITの中で育ってきていますから、こういうのが好きなんです。
ゲーム感覚で、どんどん深入りしていきますから。
だから僕ら古い世代は、ぎゅうぎゅう詰めと思うけど、そんなことない、楽しんでいると思います。
(学ぶほうも、どんどん変化している?)
変化してます。

アメリカではエドテックが広まっているということだが、その背景をどう分析するか?

上杉さん:ミネルバ大学の例で言うと、1つの理由は、学費がとても高騰している。
アメリカの大学は、ハーバードとかは日本の何倍も学費がかかっていて、卒業したとしても、いい仕事に就けないという率もどんどん高まっている。
そういうふうな状況になったときに、もう一回、大学というものを考え直してもいいんじゃないかという人たちが現れてきて、テクノロジーを使って教えることができないかというふうなことで、試行錯誤した結果、ミネルバ大学のようなものが出てきて、学費も結構抑えられてきました。
そして、あと2つ理由がありまして、IT企業を「サイバーフロンティア」と書かれていますけど、身の回りにこれだけたくさんテクノロジーが増えている中で、普通の教室とかに行くと、一昔前の教室と全く変わらないような状況が広がってる中で、ここにもう少しテクノロジーを導入して、生徒の学びを促進できないかという考え方があると思います。
そして最後に、そういうふうに身の回りにたくさんITがあふれている中で、これを誰が開発するのか。
そういう人たち、イノベーションを支える人材とかを育てるためには、テクノロジーを使った学びをやることがいいんじゃないかというふうに思います。

そういった複合的な理由があって、エドテックは広まってるということだが?

尾木さん:だから日本も今、貧困、経済的な格差が学歴格差や学力格差を生んだりしている中で、そこを埋めていくのに役に立つと思うんです。
本人のやる気と、そのツールさえあれば、学習のほうもどこまでも入っていけるんです。
(例えば、キャンパスがないのは?)
キャンパスがなくても積極的な意思さえあれば、学びのダイバーシティーとしてのツールになってきているというとことが、1つのポイントかなという気がします。

上杉さん:学びのダイバーシティーという点で言うと、アメリカの例で言うと、エドテックについて、昔だったら、国語の授業でエドテックとかやったとしたら、“エドテックについて作文を書いてください”というのが、一昔前の授業かもしれないですけど、今だったらエドテックについて、“こういう番組みたいなドキュメンタリーをiPadとかを使って作ってみてください”と生徒に出すことができます。
そうすると、今までだと作文だけだったのが、いろんな学び方を通じて物事に対しての理解が深めることができるんじゃないかと。
(それが小学校の時点で?)
できると思います。
(学びたいのであれば、どんどん突き進んでいける?)
やらせてみたらいいんじゃないというのがあると思います。

エドテックは大学の在り方を変えているわけですが、一方で、一般の小中学校では、落ちこぼれてしまう生徒を減らすことにも一役買っているんです。

“落ちこぼれ”が激減! “奇跡”の公立校

“この問題、全然分からない!”

高校1年生のB君。
最近、数学の授業についていけなくなりました。
なんだか授業のペースも速くなったし、授業を遮って質問もしにくいし。

“自分のペースで勉強できたらいいのになあ…”

再びここでエドテックの登場です。
今、全米で注目を集める奇跡の高校。
公立のクリントンデール高校はかつて多くの生徒が落ちこぼれ、5人に1人が中退していました。
でも、エドテックを取り入れたことで、落ちこぼれる生徒が激減したんです。
一体どんな取り組みなんでしょうか。
これから授業を受ける生徒たち。
あれ?向かっているのは家ですよ。

高校2年生のマデリンさんです。
自宅のパソコンをインターネットにつないで…。

実は動画サイトにアップされているのは、学校の授業。
自宅で受けるため「反転授業」と呼ばれています。
授業の動画は、アメリカの優秀な教師たちが行うとても分かりやすいものもあります。
しかも、学校とは違って分からない部分を何度も巻き戻して見ることができるため落ちこぼれることがありません。

クリントンデール高校 マデリン・マリーさん
「最初は反転授業が好きじゃなかったの、すごく変だし。
だけど今は慣れて、むしろ前のやり方より好きになったわ。」

では、学校では何をするのかというと…。
それは、宿題です。

クリントンデール高校 マデリン・マリーさん
「この問題の解き方が分からないんですけど。」

教師
「こうやって答えを導き出すんだよ。」

教師
「ここはいくつになる?」

クリントンデール高校 マデリン・マリーさん
「2になるわ。」

教師
「正解。」

学校で宿題をやりながら、分からない問題があると、そのつど教師が教えてくれるんです。
数学が大の苦手だったマデリンさん。
反転授業で成績がなんとトップクラスになりました。
エドテックが可能にした反転授業。
高校では中退する生徒が20%から8%にまで減り、大きな注目を集めているんです。

反転授業を導入した グリーン元校長
「私たちはテクノロジーを使って、より効果的な教育を実現した。
授業の出席率も上がり、大学に進学する生徒も増えた。
これは革命的なこと。
生徒たちの未来を大きく切り開いた。」

“落ちこぼれ”をなくせ! 幼い子にもエドテック

落ちこぼれをなくそう。
そんな取り組みは子どもたちが幼い段階から始まっています。
サンフランシスコ近郊にあるこの公立の小学校では、エドテック専門の教員を配置。
生徒用のパソコンを運んでクラスを回ります。
特に子どもたちがつまずきがちな算数や理科はエドテックの出番。

教員
「準備はいいかい?
はじめ!」

子どもたちはパソコンでかけ算のゲームを始めました。
3人1組のチームに分かれて遊び感覚で、どれだけ早く解けるか競い合います。

子ども
「答えは36。」

子ども
「36じゃないわよ。」

エドテックの真骨頂はここから。
なんと子ども一人一人のレベルに合わせたオーダーメイドの授業もあるんです。
学校に併設された幼稚園です。

教員
「簡単かい?
だんだん難しくなっていくよ。」

子どもたちがパソコン上で取り組んでいるのは、簡単な算数のゲームです。
上にあるボールと同じ数を右側から選んで並べます。
1足す3、2足す2、5引く1。
さまざまなやり方があります。

この子どもは、5つをまとめて持ってきました。
でも、1を引く方法が見つけられません。
子どもがどこでつまずいたか、試行錯誤のデータがサーバーに送られコンピューターが分析します。

どのような問題が得意でどのような問題が苦手なのか、集中力が何分くらい続くのか、子どもの能力が分かってきます。
今度は、その子どものレベルに合わせた最適な問題をパソコンが出すというわけです。

子ども
「とってもワクワクして好き。」

IT担当教員 ジョン・コールドオフさん
「子どもたち一人一人に違った個性があり、違った方法で学ぶ。
自分のペースで問題を解いて、成功体験を積み重ねていくことをサポートすることが非常に重要。」

“落ちこぼれ”をなくせ! エドテック“教育革命”

エドテックによってオーダーメイドに授業をすることで勉強についていけなくなる子を減らすとは?

上杉さん:例えば、今までの算数の授業ですと足し算、引き算、かけ算、割り算、そして分数と、生徒が分かる分からないにかかわらず、一斉にみんな階段を上っていくというイメージだと思うんですけど、それだともちろん途中でつまずいてしまう生徒も出てくる。

そういうときに、こういう大きい1段の階段ではなく、それを3段、4段に分けた小さな階段を用意してあげれば、つまずいてる生徒でも上っていける。
ここがオーダーメイドのエドテックの見せどころだと思います。
(テクノロジーによって、どこでつまずいたのかが分かる?)
そうですね。
人工知能が生徒が何回もつまずいていたら“ここは難しいんだな”と思って、小さな階段を用意してあげたり、また、これでも難しかったら、もうちょっと小さな階段を用意してあげて、ステップ・バイ・ステップで、最終的には優秀な生徒と同じ所に到達できるという感じだと思います。

そこがまさに今までは教師の力量や経験だった?

尾木さん:だから小さな階段を自分で組み立てることができる先生が有能な先生で、学力も、子どもたちを引き付ける力もあったわけです。
あれだったら新任の先生でも、あるいは算数が苦手な先生でも上手に子どもたちをレベルアップしていくことができるかなということで、非常にすばらしいと思います。
ただ、ちょっと不満なのは“なんで人工知能にすべてリードされて?”と、自分で発見する力もつけてほしいという欲張った考えもあります。

上杉さん:最近は、トレンドとして人工知能がすべて階段とかを用意してあげるのではなく、先生に“ここでつまずいてるよ”ということをまず教えてあげて、“階段は先生ご自身が用意してください”というパターンも出てきています。

尾木さん:それ、いいですね。
(オーダーメイドを画一的に導入するのではなく、先生が生徒とコミュニケーションをとるパターンも始まっている?)
そういう手助けがあれば、インクルーシブ教育というのを今、日本でも売りにしようとしているんですけれども、それなんかうまく進むと思います。

今後、日本の教育現場にエドテックが拡大するのか、あるいはどのように拡大していくのか?

上杉さん:“テクノロジーは目的ではなく手段”と書かせていただきましたけど、テクノロジーをただ導入するだけではなくて、現場にどのようなニーズがあって、どのような問題をテクノロジーで解決できるかということをまず知った上で、どういうのを選べばいいのかというのを考えたほうがいいと思います。

尾木さん:“使われるのではなくて、使いこなす”と。
そのためには今、小学校も中学校も忙しくて時間が足りませんので、専門家によるサポートチームというか、そういう体制が必要だと思います。
今、文科省も『チーム学校』というので、いろんな力を結集しようとしているんですけれども、是非、チーム学校の力でこういう導入もしていってほしいと思います。

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