クローズアップ現代

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No.39192017年1月18日(水)放送
潜入ルポ“不法滞在ネットワーク”~次々に消える外国人~

潜入ルポ“不法滞在ネットワーク”~次々に消える外国人~

次々に消える外国人 “闇のネットワーク”を追え

今、失踪する外国人労働者が増えています。
中でも目立って増えているのが、日本の技術を学ぶために来日した、外国人技能実習生です。

失踪した人は、この5年余りで2万1,492人に上ります。
実習生の滞在期間は、現在は最長でも3年。
期限を過ぎても日本で稼ぎたいと、失踪して不法滞在する人が相次いでいるんです。

不法滞在者を、不足する労働力の穴埋めとして雇う日本企業は後を絶たず、去年(2016年)延べ300人近くの失踪した外国人実習生を集め、食品加工会社などに派遣し、仲介料として、6,000万円余りを受け取っていた会社役員が逮捕されました。
不法滞在の知られざる現場に密着しました。

潜入ルポ 消えた外国人実習生

年間およそ2,000人の技能実習生の受け入れ窓口となっている団体です。
失踪者が相次ぐ事態に危機感を強めています。
不法滞在の摘発を強化する国の方針に沿って、失踪者を防ぐための研修に力を入れています。

「実習先から逃げた人がいるのも、残念だけど事実。
失踪するような人がいれば、警察、入管から追われる立場になることを忘れないでください。」

さらに、失踪した実習生の居場所を突き止めるため、特別チームを設けています。

チームを率いるのは、板垣憲千代部長。
入国管理局の元幹部です。

実習生受け入れ団体 板垣憲千代部長
「(失踪は)技能実習制度の根幹を揺るがす話になってくる。
失踪防止の対策をきちんと立てていかないといけない。」

去年11月下旬。
板垣部長は、失踪者の情報を求めて、ある人物への接触を試みました。

待ち合わせ場所に現れた男性。
不法滞在者の情報を板垣部長のチームに、たびたび提供している情報源です。

実習生受け入れ団体 板垣憲千代部長
「協力してほしいんだけど、うちの失踪した人のファイル持ってきたので、ちょっと見てもらって。
思い当たる人がいたら教えてほしいんだけど。
この辺にいるような人。」

情報提供している男性
「ああ、この人を見たことある。」

実習生受け入れ団体 板垣憲千代部長
「ある?
これ(実習生で)入ったときの顔。」

この日、情報が得られたのは、インドネシア人のアクロム元実習生。
一昨年(2015年)、実習先の建設会社から突然、姿を消していました。

実習生受け入れ団体 板垣憲千代部長
「そのアパートはここから近い?」

情報提供している男性
「ここから10分はないと思う。」

男性は、元実習生の住まいについて、心当たりがあるといいます。

情報提供している男性
「(暮らしているのは)4〜5人くらいかな。
仕事は今、なんか現場の仕事らしい。」

実習生受け入れ団体 板垣憲千代部長
「みんな、(仕事は)バラバラ?」

情報提供している男性
「みんな、バラバラ。」

実習生受け入れ団体 板垣憲千代部長
「どれ?
これ?」

情報提供している男性
「向こうのアパートですけど。
一番こっち側。」

実習生受け入れ団体 板垣憲千代部長
「上のこっち側?
3階の。
あかりがついてるね。」

案内されたのは、住宅街の外れにある、古いアパートでした。
状況を確認した板垣部長は、このアパートには複数の失踪者が住んでいる可能性が高いと感じました。

実習生受け入れ団体 板垣憲千代部長
「現場の仕事のチョーカー(安全靴)のような靴が玄関先に置いてあったりして、何かしら集団で住んでいる部屋なのかな。」

その数日後。
アクロム元実習生が実際に住んでいるのか、アパートの前で張り込んでいた時のことでした。

実習生受け入れ団体 板垣憲千代部長
「あっ、来た。」

見覚えのある顔が。

実習生受け入れ団体 板垣憲千代部長
「アクロムだな。
アクロムだな、あれは。
こっちそっち見ながら警戒しながら入っているな。」

不法滞在であれば、入国管理局に通報しなければなりません。

実習生受け入れ団体 板垣憲千代部長
「不法滞在者の通報をさせていただこうと思って電話したんですけども。
住んでいる所が今回、判明しましたので。」

アクロム元実習生は、不法滞在の疑いで摘発され、直ちに強制送還されました。
失踪後、短期の農家の仕事を転々としていたといいます。
板垣部長の聞き取りに対して、「友達に誘われて逃げたが、収入はむしろ減ってしまい、後悔している」と話したということです。

実習生受け入れ団体 板垣憲千代部長
「不法滞在者だから賃金が低くなっても文句言えないだろうと。
簡単に捨てられる、そんな状況にあるようなので、そういう所に引き込まれないようにすることが大事。」

失踪をどう防ぐ? 外国人実習生

この実習生の受け入れ団体では、失踪を防ぐため、派遣先の企業へ定期的な見回りも行っています。
日常的に相談に乗ることで、実習生たちの変化を見逃さないようにしています。

実習生受け入れ団体 清水くらま課長補佐
「何か問題があったら、すぐに私に教えてください。
今は問題ありませんね。」

実習生受け入れ団体 清水くらま課長補佐
「彼らの微妙な変化を、例えば彼らが自分から悩んでいるとか、困っているというのは(相談も)難しい部分もあると思う。
彼らの表情を見て、こちらで助けてあげたいなと、いつも考えて動いている。」

実習生 相次ぐ失踪 背景に何が

ゲスト 井口泰さん(関西学院大学教授)
ゲスト ルビー・モレノさん(女優)

この外国人技能実習制度は、あくまで技術を学ぶための制度なので、滞在期間が現在は最長3年。
そして、実習は一度限り。
帰国すると、実習生としては戻ってこられない。
日本企業にとっては、育成した人材を残せないという問題点がある こうしたことが失踪を助長してしまう?

井口さん:おっしゃったように技能実習制度というのは、技能の国際移転による国際貢献を目指しています。
そのために、多くの方々に日本に来日していただくということもありますし、それから、家族の滞在が認められておりません。
そういうことで、この3年という比較的短い時間で、しかも技術の移転が終わったら帰るということで1回しか来られない。
企業としては、こういう人材をもっと抱えておきたいと思っているんですけれども、先ほど申しました、いわゆるローテーション方式というもので、ローテーション方式のいわば宿命というものだと思います。
(入れ代わって、実習生がたくさんやって来られるようにしている、その制度の仕組みだと?)
そのことがどうしても、不法滞在を誘発する背景になっているということは否定できないですね。

失踪が相次ぐ一方で、意外な調査結果もあるんです。
外国人実習生に賃金の支払い状況を尋ねましたら、契約どおり、または契約より多く支払われたという回答が94%を占めているんです。
賃金が適切に支払われていても失踪してしまうのは、なぜ?

井口さん:技能実習制度の中で、受け入れ団体が不正行為を行ったケースについては、かなり多くの賃金不払いがあったことも事実です。
それから今、受け入れが増えている農業、水産加工業、こういった分野につきましては、最低賃金ぎりぎりで払っている場合が多いんですね。
そうしますと、いろんな住居費や食費などを引いていきますと、どうしても手取りが5万円とか7万円くらいしかない。
非常に少なくなってしまうということがありますので、満額払われているからといって、決して安泰な状況ではなく、そういう中から母国に送金している方が多いんです。
(そうすると、やはりお金が足りなくなってしまうと?)
そう思いますね。
非常に厳しい仕事をしているわりには賃金が少ないと思っている技能実習生が少なくないのではないでしょうか。

ルビーさんはフィリピンから来日して、映画やドラマで活躍されました。
代表作「月はどっちに出ている」。
ルビーさんは、主演した映画でクラブのホステスとして働く外国人を演じました。
実はご自身も、母国の家族に仕送りをするため、ホステスとして働いた経験をお持ちです。

ルビーさん:最初、日本に来た時はダンサーとして来ましたので、その時は半年間だけ、日本にいられるので、いったん自分の国に帰って、やっぱりずっと向こうにいると、仕送りとかはできないじゃないですか。
家族を支えているので、なんとなく気持ちが分かるんですよね、今の。
(やはり短い期間で?)
短い期間で働くんですよね。
これから先を考えると、やっぱりみんなそうやってしまうんですよね。
(なるべく日本にいて働きたいと?)
働きたいという気持ちで。

実習生たちの不法滞在が相次ぐ背景に何があるのか。
取材を進めますと、外国人の失踪を助長する、不法滞在ネットワークの存在も明らかになってきました。

次々に消える外国人 “闇のネットワーク”を追え

リポート:大野桃(首都圏センター)

先月(12月)、偽造在留カードを使っていたなどとして、有罪判決を受けた、インドネシア人のスプリヤント元被告です。
実習期間が終わる直前働いていた静岡の工場から失踪しました。

取材を進めると失踪後に住んでいたアパートが分かりました。
アパートの管理会社に案内してもらうと。

部屋は、摘発された当時のままの状況でした。
ここで、インドネシア人の仲間6人と不法滞在を続けていました。
それに悪用されたのが、精巧に偽造された在留カードでした。

アパートの管理会社
こちらはここに住んでいたスプリヤントさんの在留カードです。」

管理会社に提出されていた、在留カードのコピーです。

本来は、技能実習と書かれているはずの在留資格の欄が、定住者となっています。
さらに、就労制限もないと記載されていました。
管理会社は、偽造カードだと疑うことはなかったといいます。

アパートの管理会社
「新しい感じがする在留カードで、特に上から何か貼ったとか、そういう感じも全く見受けられないので、普通に信じましたね。」

カードの偽造には、さらに手の込んだ手口が使われていました。
スプリヤント元被告の行方を追っていた実習生の受け入れ団体。
ここで、入手した偽造在留カードのコピーを見てもらいました。

在留カードが有効なものか調べるため、法務省が設けたシステムです。
在留カードには、個人ごとに番号が割り当てられています。
その番号を入力することで、カードが有効かどうかチェックすることができます。
このカードは偽造のため、当然、無効という結果が出るはずでした。

実習生受け入れ団体 板垣憲千代部長
「あれ?
失効していない。
もしや、これはひょっとしたら、かなり精巧ですね。
誰か正規にいる人の番号を、そのまま使っている可能性がありますね。」

このシステムでは、カードの番号だけで有効性を確かめます。
そのため、カードの番号に該当する人物の氏名や顔写真は表示されません。
団体は、実在する他人のカード番号が何らかの形で偽造に使われたと見ています。
巧妙に偽造された在留カード。
スプリヤント元被告が暮らしていたアパートは、そうした偽造カードの受け渡し場所にもなっていたと見られています。
その現場には、ほかにも不法滞在を助長する、さまざまなものが残されていました。

通信手段として欠かせない携帯電話。

病院から処方されたと見られる薬もありました。
不法滞在に必要なものを、スプリヤント元被告はどうやって入手していたのか。
先月末、インドネシアに強制送還される直前、入国管理局で本人に直接話を聞くことができました。

スプリヤント元被告
「偽造在留カードを手配してくれるよう、同じインドネシア人に頼みました。
彼は実習先の先輩でした。
『偽物でも在留カードを用意しないと、日本では仕事ができない』『8万円出せば作ってやる』と言われました。」

さらに取材を進めると、偽造在留カードの入手ルートから、不法滞在ネットワークとでもいうべき存在が浮かび上がってきました。

スプリヤント元被告は、先に失踪した先輩にカードの調達を依頼。
その際、偽造在留カードに使う顔写真は、インターネット上のフェイスブックを通じてやり取りされていました。
そうした依頼は、何人かの仲介者を経て、最後に、ある中国人にたどりついたことが関係者への取材で分かりました。
この中国人は、少なくとも30人分の在留カードの偽造を、中国にいるグループに取り次いでいたということです。
出来上がった偽造カードは、国際郵便で中国人に届けられ、金銭と引き換えに依頼者のもとに届く仕組みです。

実習生受け入れ団体 板垣憲千代部長
「先輩や、すでに失踪している人が(実習生を)引き込むような格好。
犯罪インフラみたいな組織的なものに引き込まれていく可能性があるので、昔とは違ってきているのではないかと思う。」

次々に消える外国人 “闇のネットワーク”を追え

ルビーさんは、偽造在留カードが8万円で手に入ってしまうというのを、どう感じた?

ルビーさん:在留カードは本当にすごく大事なものですから、私だって今もコンビニに行くだけで持っていかないと、もう怖くて、必ず体から離れられないんです。
ずっと持っている。
だったら、8万円はもう安いものですよね。
やっぱり買ってしまうんですよね、どうしても、そういう不法滞在になっている人たちは。

偽造在留カード1枚あれば、そのほかのものが全部手に入ってしまう こうした不法滞在ネットワークは、どこまで広がっている?

井口さん:在留カードというのは、外国人の方にとって、日本で生きていく上で最も大事なものの1つなんです。
これがないと、アパートも借りられない、スマートフォンも購入できない、仕事も就けない、健康保険にも入れない、いろんなことが起きてしまいます。
ですから、この在留カードというものがしっかり管理されていて、これが偽造されることなく使われていればいいんですけれども、これを偽造することによって生活できるネットワークが作られてしまったということです。
(そういった情報がネット上でもやり取りされていると?)
こういう情報が一人一人のスマートフォンに直接入ってきているもので、外から極めて見にくい、見分けにくい状況になっているのが非常に問題なんだろうと思います。
しかも、そこでいろんな誘惑が発生してしまって、現在の境遇と比べて、不法滞在しても大丈夫なんじゃないかというふうに思ってしまう技能実習生が出てくることを懸念しているわけです。

視聴者の方より:「彼らなしでは仕事が回らないんだ」「実習生制度は百害あって一利なし。治安が悪くなっているのも、このせいじゃないか」
今回、見えてきたのは、不法滞在というリスクを冒してまで日本で働きたい外国人がいるということ 労働力不足の中で私たちは、今後どう外国人労働者を受け入れていったらいい?

井口さん:グローバルな経済の中で今、地方ではやはり地場産業を維持するのが難しくなってきています。
若い方々もなかなか来ない中で、こういう分野で働いてくれる方は非常に貴重になっているわけです。

そういう中で、技能実習生がこれからもしっかり助けていくために、この人たちの権利を守っていくために、お互いに感謝し合える関係を作っていきたいですね。

今回のグラレコ

番組の内容を、「スケッチ・ノーティング」という会議などの内容をリアルタイムで可視化する手法を活かしてグラフィックにしたものです。

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