クローズアップ現代

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No.39032016年12月6日(火)放送
どう防ぐ?高齢ドライバー事故 徹底研究!

どう防ぐ?高齢ドライバー事故 徹底研究!

なぜ進まない? 高齢者の免許返納

交通死亡事故全体の数は減る一方、高齢ドライバーによる事故の割合は増え続けています。今夜は、事故防止の方法をお伝えします。

埼玉県川口市に暮らす下川時男さん、80歳。
妻の澄子さんを乗せ、車で出かけるのが日課です。
60代の時にひざを悪くして以来、長時間歩くことは難しいため、買い物や通院に車が欠かせません。
6年前から始めた唯一の趣味である釣りも、3キロ離れた釣堀まで車なしには通えません。

下川時男さん(80歳)
「結局、酒は飲んでたけどやめたでしょ。
ゴルフ行ってたけど、歩けなくなったから。
これしかないからさ。」

9年前まで金属の回収業を営み、10トントラックを運転していた時男さん。
80歳になり、体力の衰えは感じますが、運転に関しては人一倍自信があるといいます。

下川時男さん(80歳)
「71、2くらいまでやってたんじゃないかな。
プロだよ、プロ。
だから今でも乗れるんじゃないかと思うよね。」

ところが家族は、その自信が不安の種。

この日も停止ラインを少し越えて止まっています。

下川澄子さん(75歳)
「止まれだよ。」

下川澄子さん(75歳)
「最近はとっさのあれが(判断が)出来なくなってきてる気がする。
一緒に乗ってて、パッパッというのがね。
自分は自信を持ってるけど、乗っててそういう不安感がある。」

そして去年(2015年)、ついに恐れていたことが起きてしまいました。

側面をこすった程度でしたが、通い慣れたはずの自宅前の道。
近くに暮らす義理の娘も心配でなりません。

下川美和さん
「お父さんの今までの運転経歴からしたら、ありえない事なわけなんだから、うまかったんだから、それが年の、運転を注意しなよって合図。」

下川時男さん(80歳)
「そう言われるとぐうの音もねえな。」

相次ぐ高齢ドライバーの事故を受け、免許の返納について話し合うようになりました。
しかし、お互いの考えはなかなか一致しないようです。

下川時男さん(80歳)
「俺は一生乗りたいね。
ダメって言われるまで乗るね。」

下川美和さん
「自分で返す気はないってこと?」

下川時男さん(80歳)
「ないね。」

あなたや家族が加害者に!? 増える高齢ドライバー事故

ゲスト 尾木直樹さん(教育評論家/法政大学教授)
ゲスト 三村將さん(慶応大学医学部教授)

ここ最近だけでも横浜や立川、そして八王子など、全国で高齢ドライバーによる重大事故が相次いでいます。
高齢ドライバーによる痛ましい事故が続いている現状をどう感じている?

尾木さん:僕ももうすぐ古希なんですよ。
だから、ひと事と思えない、自分の問題として考えるんですけれども、高齢になって事故を起こしてしまうと、相手の補償の問題や命の問題と、重大な問題です。
経済的負担とか、身体的あるいは精神的なことを考えたら大変だと思います。

こうした事故が後を絶たないのは、なぜ?

三村さん:事故を起こす高齢ドライバーの中に、自分の能力が低下していても、それに対して自覚が乏しい方がいるのは事実だと思います。

VTRに出ていた下川時男さんもまさにそうだったと思うんですけれども、「自分の運転は危ない」という自覚がない人が本当に多いということなんです。

立正大学の所教授の調査結果では、「事故を起こさない自信があるか」という問いに「ある」と答えた人の割合を年代別に見たグラフです。
年齢が高くなるほど、「自信がある」と答える割合が高くなっているんです。
番組でアンケートを取ったところ、10,000件以上の意見が寄せられました。
そのうちの1つをご紹介したいと思います。
「83歳の父、ブレーキを踏むのも遅くてアブナイ!本人に全く自覚がなく大ゲンカ、『ワシは大丈夫!』と言って、きいてくれない」
こういう意見が多数寄せられた このことについてどう思う?

尾木さん:これは、すごくよく分かります。
僕も運転を始めて、もうすぐ半世紀になろうという、50年近くも乗っているわけです。
10代とか、20代の子の3年や5年乗ったのと訳が違うの。
歴史があるのよ。
絶対的な自信があるし、それから運動神経。
結構、俊敏なのよ。
それを否定されても、やっぱり納得できないというのはものすごい分かります。

「自分は大丈夫だ」と思っているケースは、やはり多い?

三村さん:特に反射神経とか、さまざまな運転に関わるいろんな機能の中で、認知機能というのは、どうしても年齢とともに落ちてきてしまうことがあります。
そして、それ自体は落ちてくるだけでなく、結構、人によってバリエーションが大きい、低下がある人ほど自覚が乏しいということも言えるかもしれないです。

大事ことは、まず本人が運転能力の衰えを自覚するということなんですけれども、どうすれば気付くことができるのか、簡単に調べられるチェックシートがあります。

主に、高齢ドライバーの運転を確認する時に使われているものです。
具体的に、これでどういったことが分かる?

三村さん:ここで見ているのは、例えば記憶とか、あるいは注意力、判断力、空間認知能力、こういった運転に関わる認知機能は、さまざまな領域が関連していますので、これらを複合的に見るという意味では、こういうチェックシートは有用だと思います。

このチェックシートを使いまして、先ほどの時男さんにチェックしてもらいました。
どうだったんでしょうか。

あなたの運転大丈夫? 誰でも簡単チェックシート

認知症の専門医として、高齢ドライバーの事故対策に取り組んできた、上村直人医師。
チェックシートの考案者です。

例えば、目的地を運転中に忘れるという項目から分かるのは、記憶障害の恐れ。
症状が進めば、今どこを走っているか分からなくなるケースもあります。

道路標識や信号機の理解の項目は、理解力が低下し、信号の色とその意味が結び付いていない可能性を示しています。
こうしたチェック項目をもとに、上村さんに時男さんを診断してもらいました。

高知大学 上村直人医師
「心配事の解決が出来るようにと思って、いくつか質問も考えてきたので、よろしくお願いします。」

早速、本人と家族両方に該当するポイントを記入してもらいました。

まずは、妻の澄子さんと嫁の美和さんがチェックした項目から。
センターラインの不注意と車庫入れの失敗など、4つの項目にチェックが入っていました。

下川美和さん
「(車庫入れで)最後、車止めに向かって行くときに、微調整というのか、分かりませんけど、わりとゆっくり行くじゃないですか。
意外と最後、ドンっていったかなと思ったので、距離感がちょっと違ったのかなぁ。」

センターラインをはみ出したり、車庫入れを何度も失敗する。
こうした運転行為が見られると、空間認知能力が低下し、車の位置関係を把握できなくなっている可能性があるといいます。

高知大学 上村直人医師
「つむじの下に『頭頂葉』というところがありまして、距離感を判断するところなんです。
これが中央線のセンターラインの距離感がわからなくなってきたり、車庫入れが失敗したりとか、枠入れがきちんと入らなくなってくると、この頭頂葉というところの機能が落ちてきて、若いときにはスムーズにいってたやつが、最近スムーズにいかないと。」

次に、澄子さんたちが挙げたのが、ブレーキやギアチェンジの運転操作。
運転中、時男さんは急ブレーキが目立つようになったといいます。

下川美和さん
「(急ブレーキで)ドンって止まって、その時、お母さんと後ろに乗りながら、おっとって見合わせたことがあったので。」

そこで上村さんに、時男さんの運転の映像をチェックしてもらうと…。
前の車がブレーキを踏んだことに気付くのが遅れ、確かに時男さん急ブレーキを踏んでいました。

高知大学 上村直人医師
「集中しないとブレーキを踏む、アクセルを踏むというのはできない。
集中力が落ちてきて、つまり頭がぼやっとなった状態では失敗が出てきます。
老化現象で起こってきていて、少し気をつけてほしいな。」

一方、時男さんがチェックしたのは、歩行者や自転車に対する注意力など、2つだけ。
澄子さんたちが指摘していたポイントについては全く意識していませんでした。
自分が気付かなかった運転の衰えを家族の指摘によって、この日、初めて知った時男さん。
かたくなだった心境にも少し変化があったようです。

下川時男さん(80歳)
「みんなが『(返納を)考えたほうがいいんじゃないの?』というときは、考えるべきだろうな、俺はそうだよ。」

下川美和さん
「ちょっとね、『絶対返さない』って言ってたけど。」

下川時男さん(80歳)
「(家族に)言われないとわからないよ。
俺は1番だ、俺は100点だと思ってる。
その点では、いい勉強になったね。」

あなたや家族が加害者に!? 増える高齢ドライバー事故

こうして家族と話して自覚することによって、考え方にも大きな変化が見られるようになりました。

実は、尾木さんのご家族にも協力いただきまして、尾木さんの運転についてチェックしていただきました。
3つチェックがついています。

尾木さん:3つもついてる。
(この結果は意外だった?)
ええ。

コメントもいただきました。
3番の車庫入れに関しては「切り返しが多く、かなり時間がかかっていた。全体的に上手ではなかった」。
そして、メンテナンスについては「ガソリンが減っていたけど気付いていなかったと思う」。

尾木さん:だって見てないもん。

三村さんは、これをどう思う?

三村さん:この3番は、やっぱり空間認識の問題、あるいは車の操作といった問題だと思います。
8番はもしかしたら、もともとの性格かもしれませんけど、これが重症になってくれば、注意力の問題、判断力の問題、そういったことだと思います。
9番も注意力、注意の持続といったようなところに問題がある可能性はあります。

尾木さん:自転車が横道から出てきたのに気付くのが遅いと言われました。
昔はもっと早く気が付いたよって言われて、ちょっとショックでした。

こうしたチェック方法の他にもチェックのしかたはある?

三村さん:運転に関して非常に重要なのは、注意力と空間認識だと思います。

その空間認識、空間操作っていうのを見るのに、道具を使わないで簡単にできるような方法として、これをまねしてください。
これは、言葉で言うと「逆キツネ」とか「キツネの逆組み合わせ」と言っております。
これは「手指構成」といって、非常に簡単な空間操作で、これは運転機能とも関連があるというふうに考えていいと思います。

尾木さん:これは、目は開けていてもいいんですよね。

三村さん:もちろん。

こうしたチェック項目が多くなってきたり、家族との認識にずれがあったりした場合には、どうしていったらいい?

三村さん:これもご自身とご家族、同乗者の方との比較をしてみるというのは非常に重要です。
多くの場合、自分の方が甘くつけると思うんですけれども、そこのギャップが非常に大きいとか、あるいは実際の運転行動で問題があるという場合、認知機能が落ちている場合によっては、認知症かもしれないということも考えてみる必要があるかもしれない。
その場合には、医師に早めに相談をするということもあるかと思います。

こういうふうにして自覚することが大切なんですけれども、それだけでは問題の解決になりません。
アンケートで多かった意見が、地方に住んでいたり、体が不自由で車がないと生活できないというものでした。
この問題に地域ぐるみで対応しようという取り組みが始まっています。

車なしでは暮らせない? どうする 高齢者の免許返納

滋賀県守山市。
高齢者支援を行う地域包括支援センターです。
最近、会議でたびたび報告されるのが、高齢ドライバーの問題です。

「高齢の父親が、たびたび自動車事故を起こしているが、運転をやめてくれず困っている。」

「手がしびれてキーが回せないとか、目も見えにくいっていうようなことも本人は言ってて。
長男も面倒を見ていない。
引け目があるから強く言えないし、ほとんど放置していることが、家族としては引け目に感じてるみたい。」

センターに持ち込まれる相談の多くが、家族だけでは解決できないというものです。

支援センターの保健師、坂口敦子さん。
さまざまな事情で運転をやめられないという高齢者のもとを一軒一軒訪ね、事情を聞いています。

保健師 坂口敦子さん
「最近のご様子どうかなと思って。
生活には車も必要ですもんね。」

奥野貞夫さん(77歳)
「(妻が)ちょっとこう足もねえ、しんどいなあと、歩くのがね。
足腰が弱くなってくるから、どうしても車でということになるんで。」

77歳のこの男性、運転中にひやりとすることが増えてきたそうですが、妻のためにも車を手放すことは考えていません。

保健師 坂口敦子さん
「65歳以上で免許を返されたときに乗っていただけるんですけど。」

この日、坂口さんが勧めたのは、免許を返納した人などが割安で利用できるタクシーです。

保健師 坂口敦子さん
「何時ごろにという予約もできますので。
『意外と便利だった』というお声も聞きますし。」

奥野貞夫さん(77歳)
「僕も(運転の)必要性がなくなったら、お願いすることになるかな。
(免許を)返納して、そういうサービスがあれば、受けさせてもらうようになるかもしれない。」

運転をやめた後に利用できるサービスは、ほかにも電動自転車の購入への補助金や、バスの乗車割引などがあります。
しかし、あまり利用は進んでいません。

保健師 坂口敦子さん
「高齢者の方の車のご心配というのが対応していけるかというところは、私たちも悩みながらなんですけどね。」

より細やかに個人に合ったサービスを提供するため、支援センターでは、地元の警察や医療機関との連携も始めました。

保健師 坂口敦子さん
「自動車による徘徊(はいかい)は、もう起きてます。
ガソリンがなくなりきるまで止まらないで走ってらっしゃるんです。」

3者は、それぞれ認知症のドライバーの情報を集め、共有。
例えば、交通違反を見つけた場合、警察から支援センターに情報が届きます。
支援センターでは、その人の実情に合わせ、車の代わりになる最適なサービスを勧めるのです。

保健師 坂口敦子さん
「責任感があって(運転を)やめないとか、自立心があってやめない人もいて、でもそれが人を傷つける範囲だったら、やめていただかないといけないし、そこはバランスですよね。」

あなたや家族が加害者に!? 増える高齢ドライバー事故

各自治体では、運転免許を返納しても生活できるようにさまざまなサービスが行われています。
代表的なものでいいますと、バスやタクシーといった交通機関の利用券や割引券が利用できるというものです。
ほかにも、買い物の荷物を持って帰らずに済む宅配サービスなどがありますけれども、こうした対策は十分とはいえない現状があります。
また、大きな制度変更も行われます。

来年(2017年)3月に改正道路交通法が施行されます。
何が大きく変わるのかといいますと、免許更新時の検査で認知症の恐れがあると判定された場合には、医師による診断が義務づけられます。
また、逆走や信号無視など、特定の交通違反をした場合も、この認知機能検査というのが義務づけられます。
ここで、認知症と診断されますと、免許の取り消し、または停止になります。
この改正で、これから何が大きく変わる?

三村さん:今までは認知症の恐れがあっても、交通違反があった人だけが医師の診断に当たるということだったんですけれども、今度、この縛りがなくなりますので、対象者が非常にたくさん増える。
そういったことに対して、特に認知症の専門医、認知症の診断をしていくということが対応できるかどうかというのが、1つの大きな問題だと思います。
費用的なところも大きな問題になるかと思います。

一方で、生活の足を突然奪われるという人が出てくる まだ周りの環境が十分とはいえない中で、そうされてしまうと、かなり困る方もいると思うが?

三村さん:多くの場合に認知症はゆっくり進んでいきますので、認知症ではなくても認知機能が落ちている段階で、どのように安全性を保ちながら運転するか、リハビリテーションのような視点も重要だと思います。
また、将来的には、例えば限定付きの免許、遠くには行かないとか、夜は運転しないとか、そういった制度的な制限も考えられる。

尾木さんは、高齢ドライバーの事故を防ぐためにどういう提言がある?

尾木さん:免許の返納ということが前面に出ていますと、皆さん相当おびえてしまいますので、そういう方の運転を安全にできるような保障、今、三村先生がおっしゃったような段階的なものは非常にいいなと思います。
そういうことと同時に、例えば企業の方でも、ブレーキとアクセルの踏み間違いが行われないような装置とか、いろいろ今、研究されていますけど、そういうようなものも企業も、それから地域、国家も総力を挙げて、総合的な政策でここを乗り切っていかないといけないなと思います。
(弱い立場の人の視点も大切にしたいが?)
そういう方の声も反映してほしいなと思います。
いろいろ意見を取って、そしてみんなが納得できるような安全な社会になればと思いますね。



番組でも紹介した「チェックリスト」。
主に高齢ドライバーの方の運転能力と認知機能を調べるために高知大学医学部講師で認知症専門医の上村直人氏が作成したものです。
ドライバーご本人のチェックと、ご家族などによるチェックを比較することで、ご本人が自覚していない“危険のサイン”を見つけるのが目的のひとつです。

画像の説明
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質問
コーナー

Q1

改正道路交通法の主な内容は?

平成29年3月に、高齢ドライバー事故の対策などを目的とした改正道路交通法が施行されます。75歳以上の人が運転免許を更新する時に受ける認知機能検査では「認知症の恐れがある」「機能低下の恐れがある」「心配ない」の3つに分類されます。このうち「認知症のおそれがある」とされた人は、改正道路交通法が施行される3月以降は、医師の診断が義務付けられます。そこで認知症と診断されれば免許取り消し、または免許停止になります。また、免許更新の時期でなくても、信号無視など一定の違反をしたときは、臨時に認知機能検査を受けなければならなくなります。これまでよりも、免許取り消し・免許停止になる人が増える可能性があるのです。

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