クローズアップ現代

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No.38982016年11月28日(月)放送
想定外!?「君の名は。」メガヒットの謎

想定外!?「君の名は。」メガヒットの謎

異例づくし!君の名は。 メガヒットの謎

ゲスト 品田英雄さん(日経BPヒット総合研究所 上席研究員)

異例な大ヒットを続けている、アニメーション映画「君の名は。」。
私も先日、2回目の鑑賞をしに映画館に行きましたけれども、今でもほとんどの席が埋まっていました。
驚きですよね。

今日(28日)発表された最新の興行収入は194億円。
まだ公開中ですが、もののけ姫を抜いて、歴代邦画ランキング第3位。
まだまだ伸びそうです。
品田さんは、この「君の名は。」現象をどう見ている?

品田さん:私も長い間、エンターテインメント業界を見てきましたが、このヒットは全く予想できませんでした。
実は、年間の映画館の興行収入は、2,000億から2,100億円くらいなんです。
その1割を「君の名は。」が占めている。
しかも、今までアニメファン以外には知られていなかった監督が作った作品。
普通、ヒットを作って原作があるんですけれども、これは新海監督のオリジナル脚本なんです。
そんなことも含めて、今までのヒットの常識を覆すものがいっぱい詰まっているということなんです。

さあ、なぜこれほどのメガヒットになったのか、その理由に迫りました。

異例づくし!君の名は。 メガヒットの謎

まずは、まだ「君の名は。」を見ていない方のために、どんな映画なのかを簡単にご紹介。
主人公は、田舎暮らしの女子高校生、三葉。
そして、東京に住む男子高校生、瀧。
2人は眠っている間に、お互いの体が入れ替わるという不思議な体験をします。
出会ったことがない2人が何度も入れ替わりを繰り返すうち、いつしか恋に落ちていきます。

今や時の人となった、新海誠監督です。
お若い!
そして、とっても腰の低い方なんですね。
新海監督は、思春期の若者たちの恋愛をリアルで美しい風景とともに描き、コアなファンから熱烈に支持されてきました。
しかし、過去の作品の興行収入は、多くても1億円を超える程度。
人気は限定的でした。
最新作の「君の名は。」。
もともと、どんな狙いで作ったのでしょうか。

新海誠監督
「10代、20代の人に観て欲しくて作りました。」

「なんでここまでヒットしたのか?」

新海誠監督
「わからないです。
想定を超えちゃっているものなので。」

勝手に徹底分析!! 君の名は。ヒットの謎

新海監督にも分からないというメガヒットの理由。
そのヒントを探るため、映画を見た観客の評価を詳細に調べてみることにしました。

協力を依頼したのは、大手広告代理店でSNSの口コミ分析をしているエキスパート。
興味深いデータを見せてくれました。

映画公開前後の口コミ数のグラフです。
不思議なことに公開前にもかかわらず、口コミ数が急増したことが分かったのです。
まだ映画を見てないはずなのに一体なぜ?

「これ(公開前の)8月15日で急激に上がっているのは何か理由が?」

SNSマーケティング 専門家 物延秀さん
「これは本当にマジックが起きたとしか言いようがない。」

口コミの中身を分析すると、その半数以上が音楽を担当したロックバンド、RADWIMPS(ラッドウィンプス)に関するものでした。
主題歌が映画公開直前にリリースされ、若者を中心に大ヒット。
RADWIMPSは紅白初出場も決めています。
ファンが、替え歌や自分で演奏してみた動画をネットに公開するなど、大いに盛り上がり、映画の話題作りに貢献したのです。
この現象は、2年前のあの大ヒット映画にも通じるものがあるといいます。

SNSマーケティング 専門家 物延秀さん
「『アナと雪の女王』の現象も今回の『君の名は。』と近い部分がある。
みんな、まねして歌って、それがヒットのひとつの原動力になった。
そこと近しい部分がある。」

主題歌の力でロケットスタート。
公開1週目にして、想定を上回る12億8,000万円を売り上げます。
2週目以降は映画自体の評判も加わり、加速度的に売り上げを伸ばしていきました。
そして、公開から1か月が過ぎると、口コミ内容にある変化が見られるようになっていました。

SNSマーケティング 専門家 物延秀さん
「お父さんが観ていますね。
親世代の方が観て『めちゃくちゃよかった』『感動した』という口コミが結構みられる。」

マニアックな新海人気を脱して、何が人々の心を幅広く捉えたのか。
ちょっと街の声を聞いてみましょう。

「音楽と映像のコンビネーション。」

「お互い、会うに会えないみたいな環境がキュンとするのかもしれない。」

皆さん、意見がありそうですね。
では、そのさまざまな仮説検証してみましょう。

仮説その1「圧倒的なリアルさ」。
ちまたでよく言われるのが、新海監督ならではのリアルな風景。
東京の街が本当にきれいですよね。
でも、風景の美しさなら、これまでの作品も同じ。
メガヒットの決め手とは言えないはず。
最新作は何が違うのか。

仮説その2「“あの巨匠”が育てた男」。
実は、キャラクターの動きを表現する新しいスタッフが加わっていました。

作画監督の安藤雅司さん。
安藤さんは、スタジオ・ジブリ出身。
宮崎駿監督に才能を認められ、「千と千尋の神隠し」でも作画監督を務めた、すご腕です。
「君の名は。」では、体が入れ替わった瀧と三葉の恥じらいや戸惑いを生き生きと表現。
コミカルなしぐさが主人公の親しみやすさを増し、映画の大きな魅力となりました。
でも大切なのは、やっぱりストーリーですよね。
そこはどうなんでしょう?

「最初は話についていけなくて、理解するのに必死だった。」

「1回目でよくわからないところがあって、2回観ようと思いました。」

確かに、2人がどんどん入れ替わったり、元に戻ったり、物語は目まぐるしく展開するんです。
分析してみると、107分の映画で費やされたカット数は、およそ1,650。
1カット平均3.9秒。
一般的な日本映画と比べ、かなりのスピード感です。
もしかして、何か狙いがあるんですか?
映画のプロデューサーを務めた、今、注目のヒットメーカー川村元気さんに聞いてみました。

川村元気プロデューサー
「そこは狙ったところもあって。
すごく現代的なスピードでどんどん観客を、いわばちょっと置いていく。
それによって観客は、すごい集中力を持って観る。
追いついたときに感情移入がストンとくる。
結構、細かい設計をしている。」

なるほど。
何度も見にいっちゃったという人もいましたよね。
でも、これほどのメガヒットになるには、まだ何か秘密があるはず。
私たちは、思い切った仮説を立ててみました。

夢の中で出会う。
男女が入れ替わる。
こうした映画の設定。
実は平安時代にまで、さかのぼる日本文学伝統のモチーフなんです。

小野小町も夢で会った愛する人を歌に詠んでいますよね。
まさに、こうしたモチーフが時を超えて、今の日本人の琴線に触れたに違いありません。
新海監督、絶対そうですよね?

新海誠監督
「夢で真実を知るっていうのは、日本の文学や実際の生活の中で繰り返し語られてきた。
僕らの実感でもある、今でも。
夢で自分が本当に好きなのは誰なのかを知るとか、そういう僕らの実感みたいなものに、この物語がマッチしたんじゃないかと思います。」

異例づくし!君の名は。 メガヒットの謎

ゲスト マーティ・フリードマンさん(ギタリスト・日本遺産大使)

マーティさんは今回、この「君の名は。」を見て、どんな印象だった?

マーティさん:まず無視できないことは、このアニメーションの技術があまりに圧倒的に美しい。
新しい時代が始まったような、アニメーションはこれから、このハードルを越えなきゃいけないって感じですね。

品田さんは、このヒットの要因をどう分析する?

品田さん:私なりに分析してみますと、キーワードは「没入感」と「参加感」だと思うんですね。
すごい美しくて、精ちな映像というのが、実はアニメであることを忘れさせるぐらいになっていて、リアルと地続きになっている。
綿密な設定なので、それをさらに確かめようということで、聖地巡礼みたいな、ロケの舞台に行ったりして、写真を撮って、SNSに上げるという、その参加感というのが相まって、どんどん広がっている、特別な1本になっているという気がします。

マーティさん:アニメを見た感じが全くなかったんですよ。
映画じゃないけど、アニメじゃない、何これ?って感じでした。

確かに、リアリティーがありますよね。

マーティさん:理想のリアリティー。
リアリティーよりかっこいいと思います。

きれいですものね。

マーティさん:きれいです。

もっと秘密が隠れているなという気がしています。
そこで、番組スタッフが注目したデータがあるんです。

「君の名は。」を見た人たちの年齢層の割合なんですが、公開当初は10代から20代の若者が7割近くを占めていました。
でも現在は、30代以上の中高年がおよそ半数を占めているんです。
新海誠監督がターゲットにしていたのは、10代や20代の若者だったんですが、それだけじゃなく、中高年にも受け入れられていることが息の長いヒットにつながっているのではないかと見ています。

そこで、若者向けに作られたアニメーション映画、なぜ中高年の心も捉えたのか。
その秘密を探ろうと、まだ映画を見ていない男女総勢53人にご協力いただき、試写会を開催しました。
参加者には鑑賞中、心が動いたタイミングでハートの札を上げてもらいます。
さらに上映後は、一人一人にインタビューをしました。
一体、何に心を動かされたのか、徹底的に聞きました。
独自に試写会を開いて分析した結果、中高年の心をつかんだ意外な理由が見えてきました。

ついに秘密解明!? 君の名は。ヒットの謎

上映後、一人一人に行ったインタビュー。
ある傾向が見られました。
53人中、実に36人が映画によって自分の過去に経験した出会いや別れを思い出したというのです。

荒木典子さん(64)
「会えなくなった人のことを思い出しました。
代々木の駅がリアルだなって思ったんです。
わたし代々木駅で別れた方がいたので、代々木駅が出たとき(札を)あげてしまいました。」

「自分の恋愛と重ね合わせた?」

荒木典子さん(64)
「重ね合わせました、年がいもなく。」

「あの時別れたあの人、何しているんだろうと。」

荒木典子さん(64)
「何していらっしゃるんでしょうかって。」

「何していらっしゃるんですかね。」

荒木典子さん(64)
「何していらっしゃるんでしょう。
本当に知りたいです。」

香川美津江さん(70)
「若いときに主人と初めて会ったとき、『あっ』と思ったんです。
主人がどう思ったか知らないけれど。
亡くなってしまったけれども。
神様が結びつけてくれたんだなって自負はあります。」

なぜ、過去の出会いや別れを思い出すのか。
そのきっかけになったと思われるキーワードが映画の中に隠れていました。

一葉
“三葉、四葉、結びって知っとるか?”

三葉
“結び?”

一葉
“土地の氏神様を古い言葉で、ムスビって呼ぶんやさ。
この言葉には深い意味がある。
糸をつなげることも結び。
人をつなげることも結び。”

映画では、遠く離れた2人の主人公を結ぶものとして、「組みひも」が象徴的に描かれています。
運命の赤い糸を連想させる「組みひも」。
それが、掛けがえのない出会いの記憶を呼び覚まし、参加者の心を揺さぶったと見られるのです。

酒井美季子さん(63)
「職場結婚だったんですけど、(主人と)同じフロアではなかったので、百貨店で、主人が異動で下りてきて、偶然、研修でとなりになった。
もし階が合わなかったら、きっと、この人と会うことはなかったんだなって。
主人にも少しは、感謝していかなきゃいけない。」

一戸孝一さん(57)
「別れてしまった奥さんとの出会いだったり、それを完全に、この映画に投影していました。
こういう流れがあって結婚したのに、自分の至らなさで別れてしまった。
自分の反省もしたし、もう1回、再プロポーズでもしようかな。」

髙倉範光さん(53)
「今思い返すのは、嫁とどうやって出会って、ここまで結婚してきたのか。
改めて感謝でもないが、運命的なものが何かあったのかなって気になっていますし、ひと言で言えば、もう1回、嫁に感謝しようかなと。
一緒になってくれてありがとう。」

そっと胸の中にしまってきた大切な人への感謝の気持ち。
監督の新海さんにとっても予想外の反応でした。

新海誠監督
「想像はまったくしていなかった。
別れた妻がとか、亡くなった旦那さんがみたいなところまで、本当に豊かな捉え方を、豊かな意味を映画から引き出してもらえた。
1,000万人以上という広がり方をした作品だからこそいただいた、引き出してもらえた意味なんだと思います。
うれしいですね。」

異例づくし!君の名は。 メガヒットの謎

番組が導き出した大ヒットの理由は「結び」

マーティさん:「結び」。
これは、とっても日本的なコンセプトですね。
だから、2つのことを思いついたんです。
日本では海外と違って、年寄りの人をすごい尊敬すると思います。
だからこの映画は、とりあえず10代と20代のターゲットでしたけれども、一番大事なせりふ、一番大事なコンセプトはおばあさんが言うんですよ。
(三葉のおばあちゃんが?)
それも大事ですし、「結び」という言葉って漢字があるじゃないですか、糸へんの漢字です。
それは、やっぱり日本人は漢字をすごく大事にするんですよ。
日本に来たら「好きな漢字なんですか」とよく聞かれるんですけど、好きなレターと同じことじゃないですか。
BとかCとか興味ないじゃん。
住めば住むほど、なんで漢字一個ずつ、そんなに興味深いのかと実感しました。
だから「結び」みたいに、いろんな使い方があるんですよ。
人によって意味も違いますし、だから、その「結び」のコンセプトって、年を超えて、みんなそれぞれの共感するポイントがあるので、年齢と関係なく、みんな楽しんでいると思います。
(そこに心が触れたのは、納得という感じ?)
そうですよ。
みんな別の納得なんですけど。

品田さん:今、インタビューの中では、自分の奥さんとか、旦那さんのことを言っていましたけれども、よく考えてみると、そこまでいかなくても好きか嫌いか、映画の中であるように、自分の気持ちさえ分からない出会いとか別れって、いっぱいあったと思うんですね。
そのことを、みんな思い出していると思うんですよ。
それは別に30代だろうと、50代だろうと、70代だろうと、ちょっとずつ経験してきたことが「結び」って言葉につながっていて、その特別感というのが、やっぱりすごい映画を感動させましたし、もっというと三葉ちゃんと瀧くん、あの2人がやっぱり魅力的だからこそ、自分がそこに投影していっても、いい気持ちになるというのはあると思います。
(それは今の時代だから?)
確かに3・11の大震災があってからって、やっぱり人間って1人では生きていけないというのをすごい感じて、ほかの人のために何かしてあげるということが大切に思えたり、ほかの人とつながりたいって気持ちが大切だっていう、このタイミング、時間軸の問題もあって、本当にどんどん広がっていったのかなという気がします。

ただ、なかなか1つの事柄に世代を超えて、そしてジャンルを超えて1つになること、夢中になることって、あまりないじゃないですか。
なぜ、この「君の名は。」では、それが起こった?

マーティさん:例えばロックギターの世界では、70年代の後半ぐらいにエディ・ヴァン・ヘイレンというギタリストがいて、彼がデビューした直後、あまりに圧倒的に影響がありましたので、彼の演奏は派手で、技術もあって、テクニカルで、あまりにすばらしくて、本当にその後の音楽に影響が長く響きました。
だから、この映画は同じように、アニメーションのエディ・ヴァン・ヘイレンって感じですね。
本当に圧倒的なほどの技術とか、見たことないような技術だから、これからの映画はある程度、この映画に影響を受けると思います。

私たちは、そういうものを時代性も含めて求めている?

品田さん:1つは、やっぱり一人一人が判断して、いいものはいいっていう時代になったと思うんですね。
そうすると、露骨な仕掛け、あおるってことをしていなくて、見た人たちが「良かったよ」って言っていることが、この10週以上に超えて1位になるということになっているんじゃないかと思います。
(口コミの多さなどが、まさにそういうこと?)
一人一人が発信者であり、感想を言える。

マーティさん:話がなじみやすいです。
なじみやすいのに、すごい深いです。

もう1回、見に行っちゃいそうですね。

マーティさん:リピーターになります。

「君の名は。」というビッグヒットから見える時代というのは、これからも考えていきたいところですね。

マーティさん:期待してます。

質問
コーナー

Q1

今回のヒットが異例とみられているのはなぜですか?

近年、邦画の興行収入を分析すると、上位を占める作品はほとんどが漫画やドラマなどの原作があるものでした。しかし、今回の「君の名は。」は完全なオリジナル作品。さらに、監督を務めた新海誠さんの、過去作品の興行収入はいずれも1億円程度。今回も、15~30億を目標としていました。それが、公開が始まると190億を越えるメガヒット。歴代トップ3に入ったことで、異例のヒットとみられています。
Q2

なぜこれほど大ヒットしたのでしょうか?

新海監督は「今回のヒットは想定を超えており、理由はわからない」と答えています。そこで番組では、さまざまな仮説を立ててその理由を探りました。特に、鑑賞する世代が、中高年に広がっていることに注目。独自に試写会を開いて分析しました。その結果、映画を観て、過去に経験した出会いや別れを語った人が多く、映画に出てくる「結び」というキーワードに反応していた傾向が読み取れました。

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