クローズアップ現代

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No.38652016年9月21日(水)放送
あなたの遺骨はどこへ ~広がる“ゼロ葬”の衝撃~

あなたの遺骨はどこへ ~広がる“ゼロ葬”の衝撃~

さまよう遺骨 広がる“0(ゼロ)葬”

ゲスト 重松清さん(作家)

今、弔いの形が変わってきています。
これまでのように、家族の手で亡くなった人を埋葬するのではなく、遺骨を引き取る新たなサービスが広がっています。

1つは、墓が用意できるまで一時的に預かる「預骨(よこつ)」。
さらに、家まで遺骨を引き取りに来てくれる「迎骨(げいこつ)」。
そして、宅配便で送るだけで合同のお墓に埋葬してくれる「送骨(そうこつ)」です。

家族が葬儀もせず、遺骨も引き取らない、墓も作らないことを、業界では「0(ゼロ)葬」とも呼んでいます。
重松さんは、現代の家族の在り方を、弔いの現場から見てみたいということで取材に同行されたが、どんなことを考えた?

重松さん:当たり前の話なんですが、僕たちはみんな死ぬし、死んだ後には遺骨が残る。
その遺骨の扱い方がどんどん変わっていくということは、僕たちの死んだ後がどう変わるか、残された人が亡くなった人とどう付き合っていくかの変化にもつながっていくんじゃないかと思いました。

では、預骨の現場をご覧いただきます。

なぜ急増? さまよう遺骨

埼玉県の葬儀会社です。
この会社では、お墓を買えない家族のため、遺骨を一時的に預かる「預骨」というサービスを行っています。
保証金3万円で預けられる手軽さから、これまで2,500人の遺骨を預かってきました。

葬儀会社 藤野知彦さん
「毎月3〜4件来ている。
多い月は10〜20件来る。
5年前より倍近く増えている。
スペースが無くなるので、増やさなくてはならない。」

父親の遺骨を預けている、この男性。
高齢の母親の医療や介護費用がかさみ、100万円以上はかかる墓を買う余裕はないといいます。

預骨を利用 勝沼達さん
「なんとかお墓に入れてあげたい気持ちはありますけど、ごめんなさい、我慢してくださいって。
病気の治療費と、おばあさんの老人ホーム代が大きい。
(お墓は)手が届かない。」

この会社の預骨サービスは、墓が用意できるまでの一時的なものです。
しかし今、想定していなかった事態が起きています。

葬儀会社 藤野知彦さん
「これは預骨を預かっている方の、連絡が取れない方の返ってきたものです。」

遺骨を預けたまま、音信不通となる家族が増えているのです。

葬儀会社 藤野知彦さん
「最近、多くなりました。
だんだん増えてきている。
こちらのほうでどうにか処分してもらえると考える方もいる。」

9年間、誰も手を合わせに来ていない男性の遺骨です。
なぜ家族は引き取りに来ないのか。

担当者は、男性の家族に意思を確認するため、直接訪ねることにしました。

「なんですか。」

葬儀会社 藤野知彦さん
「預骨のお預かりの期限が過ぎているので。」

これまで、手紙や電話にも全く返答がなかった男性の妻と会うことができました。
夫の遺骨を手放したつもりでいたといいます。

「捨てちゃっていい、お骨。」

葬儀会社 藤野知彦さん
「捨てるわけにはいかないんで。」

「骨なんか、放っぽりだしてかまいませんから。」

遺骨の引き取りを拒む妻に事情を聞くことができました。
夫婦は20年以上別居していたといいます。
ある日突然、夫が孤独死したと警察から連絡が入り、遺骨の引き取りを求められました。
しかし墓もなく、自宅にも持ち帰りたくなかった妻は、預骨のサービスを知り、とりあえず預けることにしました。
ひと月7万円の年金で苦しい生活を送っている妻。
別居した後も借金を押しつけられ、迷惑をかけられた夫のことを思うと、遺骨を弔う気持ちにはなれなかったといいます。

「どうしてそういう思いに?」

「全然、愛情がない。
壊れてましたね。」

「旦那さん、家族って、どんなものだったんですか?」

「ただ、他人だと思っているだけだから。」

男性の遺骨を預かる葬儀会社では、預け期間が過ぎた遺骨や引き取り手のない遺骨を合同墓に埋葬します。

それぞれの骨つぼから出され、ほかの遺骨とともに埋葬されます。
この日、合同墓には41体の遺骨が納められました。
家族の立ち会いはなく、埋葬したのは、葬儀会社の社員です。
ようやく埋葬された男性の遺骨。
この会社では、すでに200体余りをこうして埋葬しています。

なぜ急増? さまよう遺骨

ゲスト 小谷みどりさん(第一生命経済研究所 主席研究員)

40人以上のお骨を一斉に埋葬する様子に胸を突かれる思いもしたが、この社会の変化をどう感じた?

重松さん:引き取ってもらえない遺骨も哀れなんだけれども、引き取りたくない遺骨を引き取らなきゃいけない、その家族も哀れで、僕は「戦力低下した『家』」というふうに思うんです。
だから、親戚中をたらい回しにされていったわけじゃなくて、もうほかにいない、選択肢がない、この奥さんが引き取るしかない。
これは恐らく、核家族化とか、それから親戚のつながりが薄れる中で、その家で支えるための、この戦力が本当に落ちていると思うんです。
(昔は、そこにいくまでに誰か引き取る人がいた?)
みんなで分かち合って、家で支えていたのが、もう支える戦力が明らかに落ちていて、しかも、生きている間は、まだ家を意識しないでも済んだんだけれども、亡くなった後に、遺骨を引き取るのは家である、その家族であるっていうふうにいきなり浮上してくるというか、突きつけられてしまうんです。

預骨というのは、一度引き取る方がいるケースだったが、遺骨の引き取り手が全く見つからずに、自治体の無縁墓地などに埋葬される遺骨も増えています。
高齢化のスピードが最も早い、埼玉県さいたま市の無縁墓地に埋葬されたお骨は、2003年は33件だったのが、2015年は188件と、6倍にも増えています。
こうした背景には何がある?

小谷さん:1つには、死亡年齢の高齢化があると思います。

例えば、90歳以上で亡くなった方の数字をグラフにしてみたんですが、2000年には12万人だったのが、2014年には30万人、2.5倍ぐらい人が増えているんです。
亡くなっている方の4人か5人に1人が90歳以上なんです。
そうすると、こういう方のお子さんも定年退職をされていて、年金生活ですよね。
(60代後半、70代くらいである?)
そうですね。
そうすると介護に非常にお金がかかって、結果、子どもたちにとっても、この葬儀代や、お墓の費用が払いきれないという問題があると思います。

もう1つが、生涯未婚の方が増えているということです。
一生一度も結婚されない方です。
配偶者やお子さんがいらっしゃらないので、誰が弔うのかという問題が出てまいります。
結局、おいや、めいが面倒を見てくれるのかということですね。
それから、熟年離婚をされる方も増えています。
家族の形が多様化しているので、本当に子どもや孫が弔えなくなってきているということが背景にあると思います。

弔いの在り方を考えていかなければいけないが?

重松さん:改めて考えてみると、この老後の親の介護とか、そういう問題ももちろん大変なんですが、亡くなった後の、まさに遺骨やお墓をどうするかという、老後のあとの問題が当然増えていく、大きくなっていくと思うんです。
(今までは家族の誰かが弔ってきたが?)
みんなで支え合っていたんだけれども、支える、分かち合う幅が減ってきてしまった中で、その遺骨を亡くなった人とどう付き合って行くかが問われるんじゃないかなと。

先ほどご覧いただいたのは、いったん遺骨を預ける「預骨」というサービスでしたが、さらに手続きが簡略化された「迎骨」「送骨」というものもあります。
手軽に利用する人たちが増える一方で、こうしたサービスが救いになったという家族もいます。

さまよう遺骨 変わる弔いの形

去年(2015年)9月に夫を亡くした、内藤貴子さんです。
足腰が悪く、遠出ができない内藤さんは、遺骨を自宅まで引き取りに来てくれる「迎骨」というサービスを利用しました。

内藤さんは、いわゆるシニア婚。
夫が66歳、内藤さんが63歳の時、結婚しました。

迎骨を利用 内藤貴子さん
「(夫は)自分が絶対、後に死ぬって決めてた。」

高齢になってから結婚したため、互いの親戚に会ったこともなく、実家の墓も別々で一緒に入る墓はありません。
結婚生活は、わずか12年。
年金生活で、十分な蓄えもなく、新たな墓を作ることもできず、困っていました。

迎骨を利用 内藤貴子さん
「ストレスがすごかった、お骨があるばっかりに。
どうすればいいか。
お骨があると責められている気がした。」

遺骨の行き場に困った内藤さんが、偶然見つけた迎骨のサービス。
この日、NPOのスタッフが遺骨を引き取りに来ました。
3万円と交通費を支払えば、寺の合同墓に運んで、代わりに埋葬してくれます。

迎骨を利用 内藤貴子さん
「ありがとうございました。
さようなら。」

喪服を着て、遺骨を見送ることにした内藤さん。
自分なりの弔いの形です。

迎骨を利用 内藤貴子さん
「ほっとしたという感じもあります。
悩んでいたから。」

迎骨を行っているNPOには、年間2,000件の問い合わせが殺到しています。

“会ったことのない叔母の遺骨を引き取り、困っている。”

“別居したまま疎遠になった夫が孤独死をしたが、弔う墓がない。”

そこから見えてくるのは本来、遺骨を引き取るはずの家族や親族の関係が疎遠になっている現実です。
そうした背景から、さらに手軽なサービスも登場しています。

遺骨を郵送するだけで埋葬してくれる「送骨」のサービスです。
このサービスを利用した、ある家族が取材に応じてくれました。

娘と2人で暮らす、加藤綾子さん(仮名)です。
14年前に夫と離婚した後、加藤さんは女手一つで子どもを育ててきました。
離婚してから、ほとんど音信不通だった元夫。
去年、突然、元夫の遺体を引き取ってほしいと自治体から連絡が入りました。

送骨を利用 加藤綾子さん(仮名)
「正直、何も言葉が出なかった。
“別れたのになんで”って。」

62歳で亡くなった、元夫の死亡届です。
無職で、生活保護を受けて暮らしていたため、職場の知り合いもなく、ほかに遺体の引き取り手も見つかりませんでした。
自治体は、唯一連絡が取れた元妻の加藤さんに引き取りを依頼しました。

送骨を利用 加藤綾子さん(仮名)
「(私が引き取らないと)無縁仏って形になってた。
私が最後にしてあげられること。」

送骨を利用 加藤綾子さん(仮名)
「これ、お父さんパパが(撮影した)。」

遺骨をいったん引き取ったことで、家族に変化が生まれました。
久しぶりにアルバムを開いた、加藤さん。
元夫が撮影した、幼い娘の姿がありました。

送骨を利用 加藤綾子さん(仮名)
「“子ぼんのう”でしたから、大好きでしたね。
出かける時も、子どもたちが一緒、ついて行っていた。」

14年ぶりに家族の元に戻ってきた、元夫の遺骨。
好きだったお酒をお供えし、送骨するまで10か月間、自宅で共に過ごしました。

送骨を利用 加藤綾子さん(仮名)
「自分のお父さんだからね。」


「うん。
ありがとうって言いたいです。」

遺骨を寺に送る日。
娘と一緒に郵送の準備をしました。
将来、一緒の墓に入ることはありませんが、これがせめてもの供養の形だと考えています。

送骨を利用 加藤綾子さん(仮名)
「(お父さん)ようやく落ち着けるね。
安らかに、新しい場所で。
子どもたちを見守ってください。」

さまよう遺骨 変わる弔いの形

お骨を送り出した後のご家族のほっとしたような表情が印象に残った。
こうして見ていると、『お骨とはなんだろう』と考えさせられるが?

重松さん:きっと、この遺骨って、宅配便で送れるものなんだけれども、でもやっぱり人がいる、家族がいるっていう感覚もあるし、喪服に着替えて遺骨を送っていきたい、それから遺骨に、好きだったお酒を供えてあげたいっていう、これは恐らくそれぞれの家族の生前のいろんな関係によって変わっていくものなんだろうなと思うんです。
(それまで疎遠であっても、お骨を手にした時に何かしてあげたいと思う方もいるという?)
だからこそ、新しいシステムに抵抗を感じる方もいらっしゃるだろうし、逆にそのシステムのおかげで、ゆっくりお別れができて、なおかつ別のお墓にってこともできるし、これは本当に遺骨との関係って、難しいんですよね。

小谷さんはどう見た?

小谷さん:亡くなった方と縁が深かった方にとっては、遺骨は亡くなった方そのものだと思うんですね。
ただ、法律上は遺骨は物ですから、遺骨をどう納めるのか、安置の仕方については多様な選択肢が出てきていると思うんです。
それともう1つは、重松先生もおっしゃいましたが、残された人が死者をどう弔うのか。
ここに、亡くなった方に対して何の愛情もなければ、弔いって存在しないんです。
ですから、やっぱり生きている間にどれだけの方と縁を結べたかということが、死後の弔いの形を左右するんじゃないかなと思います。
(友達がふと思い出すだけでも、それも1つの弔い?)
弔いだと思います。
それを、遺骨をどう安置するかというのと、また別の問題として切り離さないといけないんじゃないかなと思います。

視聴者の方より:「未来の家族に負担をかけたくないです」「お葬式を何のために行うのか、みんなが納得できれば形式にはこだわらない」
こうした、さまざまな動きは広がっていく?

小谷さん:今までは、弔いというのは子々孫々、縦の関係で継承していくということを前提にしていたわけですけれども、もうこれが破綻しそうだっていうことが目に見えているわけですよね。
最近は、横のつながりで死者を弔っていこうという取り組みが出てきています。

例えば、亡くなった後、血縁は何もないんだけれども、みんなで血縁を超えて一緒に入ろうっていうお墓が、その1つです。
集まっているのは、年に1回の合同供養のシーンなんですけれども、いらっしゃっている方は亡くなった後、ここのお墓に入ろうと決めた人たちなんです。
お互い、何の関係もないわけですけれども、年に一度、この場で会って、大きな家族、新しい家族を作っているんだと思います。
(順に送り出すという?)
そうですね。
そうすると、自分は死んだ後もこうやって弔われていくんだということが安心感につながるんだと思います。
(こうした取り組みは、ほかにもある?)

最近は、高齢者住宅や老人ホーム、最後のついの住みかを同じくした人たち同士でお墓に入ろうという試みもあります。

それから、生活協同組合のような会員制のお墓ですが、こうした組合に入っている方のお墓というのもあります。
横のつながりで、ずっと死者を弔っていこうという取り組みです。

自治体でも、こんな動きがあるんです。
これは横須賀市で、去年7月から始まった例ですが、独居の高齢者を対象に葬儀やお墓の相談に乗ってくれる「エンディングプラン・サポート事業」というものです。
身寄りのない人が葬儀や納骨についての意思を市に表示し、亡くなった後、葬儀会社に連絡するなどの支援をしてくれるというものです。
さまざまなこうした動きをどう見る?

重松さん:自分が亡くなった後に、自分の遺骨の行き場がある、拾ってくれる人がいるというのは、それが安心感につながると思うし、それは友人だっていいかもしれない、いろんな関係があっていいと思います。

これは、遺骨っていうだけではなくて、亡くなった人との関係性って、いろんなものがあっていいと思います。
生きている間には、いろんな親子や夫婦の関係が多様化してきたわけで、そうなったら、亡くなった後の、亡くなった人との付き合い方だっていろんな選択肢があっていいんじゃないかと思うんです。

お骨は残るものなんだと、改めて感じさせられた。
『お骨を拾う』というような言い方もあるが?

重松さん:これは、最後の最後、自分が亡くなった後の、この自分の遺骨の世話を誰かに頼らなきゃいけないわけですから、その誰かが必要だと思います。
(その選択肢は、今?)
たくさんあると思います。

これから自分のこととして考えなくてはいけないことですね。

今回のグラレコ

番組の内容を、「スケッチ・ノーティング」という会議などの内容をリアルタイムで可視化する手法を活かしてグラフィックにしたものです。

質問
コーナー

Q1

家族はいるが、遺骨を埋葬して欲しくない。墓も戒名も葬儀もいらない。生前に手続きしておけばどこまで「なし」にできるのか?

どこまで「なし」になるかは、個別のケースによって異なります。 墓や埋葬の仕方・戒名などについて、生前に相談にのってくれる自治体・寺社・NPOなど様々な団体が増えていますので、そちらにご相談ください。

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