クローズアップ現代

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No.38642016年9月20日(火)放送
“破綻国家”衝撃の潜入ルポ ~混迷するソマリア・南スーダン~

“破綻国家”衝撃の潜入ルポ ~混迷するソマリア・南スーダン~

潜入!“破綻国家” アフリカ暗部で何が

今、安倍総理大臣も出席して開かれている国連総会。
難民をテーマにした、初めてのサミットが開かれました。

中東が大きな舞台の1つですが、忘れてはならないのが、アフリカの存在です。
中でも、アフリカの角と呼ばれるソマリアは、国家が破綻状態に陥り、テロがまん延し、200万人を超える人が家を追われ、「失敗国家」とさえ言われています。
ソマリアは1991年に、内戦で中央政府が崩壊し、事実上の無政府状態に陥りました。

1993年、世界に衝撃を与えたのが、こちらの映像です。
国家再建の支援に入った、アメリカ軍のヘリコプターが撃墜され、アメリカ兵の遺体が市内を引きずり回されたのです。
映画「ブラックホーク・ダウン」で覚えている方も多いかと思います。
この事件を契機に、アメリカをはじめ、国連PKOも撤退し、国際社会は挫折を経験しました。
この空白をついて台頭してきたのが、イスラム過激派組織「アッシャバーブ」。
国内外で自爆テロを繰り返し、ISに忠誠を誓うメンバーも出始めています。
ソマリアの実態は、取材に入ったジャーナリストが殺害されることもあり、なかなか伝えられてきませんでした。
今回、そのソマリアの貴重な映像を入手しました。

“破綻国家”の衝撃 ソマリア潜入ルポ

ソマリアへの潜入取材は8月、5日間にわたって首都モガディシオで行われました。

撮影したのは、40年以上、アフリカの紛争地を取材してきた、フリージャーナリストの大津司郎さんです。

街に出ると、建物は自爆テロを防ぐためのコンクリートブロックで覆われていました。
さらに、至る所に武装した、よう兵たちの姿が見られます。

彼らは要人を警護するボディーガードだといいます。
いつテロリストに襲われるか分からないため、大津さんも6人のボディーガードを雇いました。
護衛なしでは、命の保証はないといいます。

フリージャーナリスト 大津司郎さん
「とはいえ、なんかすごいな。」

「ここはアッシャバーブの最前線だったところです。」

モガディシオでは、毎月のように、イスラム過激派「アッシャバーブ」によるテロが発生しています。

フリージャーナリスト 大津司郎さん
「すごいな、弾痕のあとが。」

ここで、アッシャバーブと政府軍との激しい戦闘が行われました。

フリージャーナリスト 大津司郎さん
「アッシャバーブ?
迫撃砲?ロケット砲?
迫撃砲だそうです。
やっぱり、車を降りて撮るのは、セキュリティーなしでは怖いですね。」

車の外での取材は短時間に限られました。
アッシャバーブの脅威と、隣り合わせで暮らす住民たち。
テロによる犠牲者は後を絶ちません。

市民
「車に乗っていたら、急にマシンガンで撃たれて夫が死んだ。」

「アッシャバーブがやったの?」

市民
「そうよ。」

市の報道官
「アッシャバーブは、自爆テロで一般市民を殺します。
アッシャバーブが私たちにとって一番の問題なのです。」

大津さんは、仲介者を通じて、アッシャバーブの幹部に接触を試みました。
しかし、“会うことはできるが、命の保証はない”と言われました。

アッシャバーブの勧誘ビデオ
“死んだ英雄たちが残したメッセージを見よ。”

アッシャバーブは、インターネットを使い、各国から戦闘員をリクルート、勢力を拡大してきました。
イスラム国家の樹立を目指し、ソマリアの中南部を支配。

この数年、ソマリアだけでなく、隣国ケニアでも、ショッピングモールや大学を襲撃。
200人以上の犠牲者を出しました。
自爆テロに子どもを使うことも、いとわないといいます。

ソマリア 計画・国際協力省 アブドゥラヒ副大臣
「彼らは命を落とすことを恐れていません。
しかも、どこに紛れ込んでいるかも、わからないのです。」

なぜ、アッシャバーブは勢力を伸ばしているのか。
衝撃的な現場を目撃しました。

フリージャーナリスト 大津司郎さん
「このようなスラムではありませんが、そういう状態で、家が建っているそうです。」

この日、訪ねたのは孤児院です。
親を亡くすなどしたストリートチルドレンが暮らしています。
やって来たのは、少年たちを乗せたワゴン。

フリージャーナリスト 大津司郎さん
「今、着いたばかりのストリートチルドレンたちです。」

けんかを始めた少年たち、酒に酔っていました。

「俺たちは刑務所行きか。」

ペットボトルに入っているのは、密造酒です。
少年たちは売り子として使われ、余った酒を飲んでしまうといいます。

フリージャーナリスト 大津司郎さん
「ウイスキー。
すごい質の悪いウイスキー。」

さらに…。

フリージャーナリスト 大津司郎さん
「シンナーだ。」

フリージャーナリスト 大津司郎さん
「このアルコールは体に悪いと知っている?」

「知らない。」

中には、アッシャバーブに誘拐されたという子どももいました。

少年
「両親はアッシャバーブに殺されました。
僕は縛られたひもを誰かがほどいてくれたので逃げることができた。」

アッシャバーブは、こうした貧困にあえぐ少年たちを組織に勧誘。
自爆テロに向かわせているといいます。

孤児院の現場責任者
「この間は2人の子どもがアッシャバーブから渡された爆弾が爆発して、顔と体を負傷して入院しました。」

警察が行う、テロ警戒のパトロールに同行取材が許されました。
向かったのは、テロが頻発する海岸沿いの地域です。

「ここで多くの人が殺されました。」

フリージャーナリスト 大津司郎さん
「自爆テロで?」

「そうです。」

フリージャーナリスト 大津司郎さん
「何人殺されたんですか?」

「18人です。」

あちこちで検問を行い、通行する車両をチェックします。
車に爆弾を乗せて建物に突っ込む自爆テロが後を絶たないからです。
取材を終えた後。
ジャーナリストや、外国人を狙った殺人や誘拐が相次いでいることから、帰り道も気を緩めることができません。

無事、ホテルに到着しました。
しかし、大津さんがソマリアを離れた3日後、車2台が爆発。
20人以上が亡くなったと見られています。

“破綻国家”の衝撃 ソマリア潜入ルポ

ゲスト 大津司郎さん(ジャーナリスト)

1993年から5回にわたって、ソマリアを取材されているが、これまでと何が一番違ったと感じた?

大津さん:通常の戦いだと、どこで、誰がやっているか分かるじゃないですか。
でも今回、一番感じたのは、よく言われる“テロの怖さ”。
ホテルの部屋にいても、いつどこで、誰が襲ってくるか分からないという恐怖。
それが、テロリストたちの心理的圧迫や恐怖を与えるというのが、彼らの戦略なのかなと思いました。
いつ、どこで、誰かが襲ってくるかっていう、そこが一番怖かったですね。
(通常の戦闘と違うとすると、何がいつ起こるか分からない それが、まん延するテロの恐怖だということ?)
市民とか、よく言う「ソフトターゲット」、そういうのを狙って、市民の人も、いつどこでって分からないですから、おっしゃる通りだと思います。

国際社会は1993年、アメリカ軍の事件から、ソマリアへの支援を撤退していったが、そのことをソマリアの人たちは、どう感じている?

大津さん:最初は、外国の軍隊が来るのは嫌っていましたけど、でもやっぱり、いざ実際に、アメリカとか国際社会が撤退した後は、インフラもがたがた、それから行政もシステムもうまくいかない。
そういう負の遺産がものすごく残って、そこについては、ものすごく後悔というか、かなり失望している人も多かったです。

専門家は、こういった状況を放置すると、テロの脅威が世界各地に広がっていくのではないかと指摘しています。

東京大学 遠藤貢教授
「(アッシャバーブは)もともとソマリアの中に閉じたナショナリスティックな運動だったけれど、だんだん、アルカイダとのつながりにおいて、地域的な射程を持ったグローバルジハード(世界的な“聖戦”)、特に東アフリカにおける活動領域、グループとして性格を持ち始める。
非常に大きな脅威になる。」

こうした破綻状況に陥っている国は、ソマリアだけではありません。
難民の数や経済状況、そして暴力や犯罪といった12の指標をもとに、アメリカのシンクタンクが算出している、ぜい弱な国家のランキングです。
ソマリアに続いて、厳しい状況に直面しているのが、南スーダンです。
長い内戦の末に、5年前に独立した、世界で一番新しい国です。
70か国以上が、国連PKOなどに要員を派遣し、日本も自衛隊を派遣して、インフラ整備を担うなど、国造りを支えてきました。

この11月にも、新たな部隊が派遣される見通しで、「駆け付け警護」などの新しい任務の付与が検討されています。
ところが今、南スーダンの政府内では、権力争いが激化し、事態は悪化の一途をたどっています。

相次ぐ武力衝突 南スーダンで何が

7月、南スーダンの首都ジュバで、大規模な銃撃戦が発生しました。

原因は、大統領と副大統領の対立。
会見が開かれていた大統領府の周辺でも戦闘が行われていました。
一般市民も犠牲となり、270人以上が死亡。
中国のPKO部隊の兵士2人も命を落としました。
武力衝突の背景には、民族間の対立があります。

政府軍を率いる、ディンカ族のキール大統領。

副大統領のマシャール氏は、ヌエル族を代表しています。
独立以来、この2人が主導権争いを続けているのです。
こうした戦闘は3年前から相次ぎ、すでに250万人以上が家を追われ、500万人近くが飢餓に直面する事態に陥っています。

相次ぐ武力衝突 南スーダンで何が

ゲスト 東大作さん(上智大学グローバル教育センター准教授)

南スーダンは国が出来て、わずか5年 なぜ、こういった状況になってしまっている?

東さん:もともと南スーダンは、スーダンから分離独立を求めて戦ってきたんですけど、その間には顕在化していなかったんですが、独立した後、大統領のキール氏と、副大統領のマシャール氏の対立が一気に表面化、顕在化したということです。
(もともとは一緒に独立運動を戦っていたが、独立した後、対立するようになってきた?)

実際、2013年の7月に、まずキール大統領がマシャール氏を解任しまして、それに対してマシャール氏一派が非常に不満を持って、2013年末から両者が衝突します。

2人の闘争は続くわけですが、これに対して、周辺諸国がこのまま紛争が続くとソマリアみたいになってしまうということで、一生懸命、和平協定をしまして、去年(2015年)の8月に両者は和平合意をして、もう一度、マシャール氏が戻って、一緒に政権をやっていく、国造りをしていくということで合意したんです。

実際、今年(2016年)4月に、マシャールさんはジュバに戻って、その連立内閣を4月末に作ったんですが、わずか、その2か月後に2人が会談している間に、両者の警護隊が衝突を始めて、2日後にはキール派が、マシャールさんの部隊の駐屯地に総攻撃を仕掛けて、結局、マシャール氏と、その部隊は今、ジュバから出ているという状況までなってしまっているということなんです。

こういった状況の中、東さんが双方の勢力の中心人物を取材してきました。

相次ぐ武力衝突 南スーダンで何が

8月、それぞれの勢力のキーマンにインタビューすることができました。

キール大統領派で、在エチオピア大使を務めるジェームス・モーガン氏は、7月の衝突の原因はマシャール氏にあると主張します。

大統領派 ジェームス・モーガン氏
「マシャールの意図は軍事クーデターで政府を転覆させることでした。
彼らは南スーダンを去るべきです。
私たち政府には何の問題もありません。」

一方、7月に戦闘が再燃した後、マシャール副大統領派の幹部は隣国ケニアなどに逃れました。
ホテルに現れたのは、長年に及ぶ戦闘で片足を失った男性。

ピーター・アドワック氏です。
7月まで閣僚を務めていましたが、その後、マシャール氏とともに解任されました。

マシャール派 ピーター・アドワック氏
「キール大統領の目的は、マシャールを殺すことでした。
戦闘が続く中、人々は飢餓で死に、難民たちは食料も無く逃げ出している。
戦闘を仕掛けているのは大統領派です。」

混迷する南スーダン 和平の糸口は

双方の主張は真っ向から対立している状況だが、この中で国連は、どんな新たな決断をした?

東さん:エチオピアやケニアなど、周辺国の強い要請もありまして、先月、8月12日に新たな「地域保護軍」という4,000人もの、しかも戦闘能力の高い部隊をジュバに投入することを決議したんです。
これは、ジュバをいったん大統領派側の部隊も副大統領派の部隊も出して、非武装化して、安全な政治的な環境を作って、もう一度、マシャール副大統領とキール大統領が、一緒に国造りに取り組むという状況を作りたいというのが狙いなんですね。

この地域保護軍の導入についても、両者は対立している状況ということなんです。

混迷する南スーダン 和平の糸口は

大統領派 ジェームス・モーガン氏
「地域保護軍の投入は、主権国家に対する内政干渉だ。
占領であり、新たな植民地支配です。」

劣勢に立つマシャール派は、地域保護軍を歓迎していますが、大統領が対決姿勢を変えない以上、和解は難しいとしています。

マシャール派 ピーター・アドワック氏
「キール大統領が軍事手段に出た以上、これは戦争です。
キール大統領の支配地域を縮小させ、完全に敗北させたい。」

“破綻”止められるか 国際社会は 日本は

両者の対立がより深まっているようにも見えるが、今後の和平は難しい状況にある?

東さん:実はインタビューをした後、先月、国連安保理のメンバーが、ジュバに入りまして、キール大統領を説得したりということもあって一応、今、南スーダン政府としては原則、この地域保護軍を認めると。
ただ、政府のといいますか、大統領の警護隊とか、そういうのは絶対手放したくないと言っていまして、完全な非武装化には強く反対しているんです。
しかも、キール大統領は、タバン・ガイという、新たな副大統領を任命してしまいまして、マシャール氏とはやっていけないと。
これに対して、マシャール氏の側は非常に不満といいますか、反発を高めていまして、先月の会議でも、これからキール大統領の政権の打倒を目指すということで、軍事的にも、政治的にも圧力をかけていくということを決めたんです。
そういった意味では、なかなか、この構想がうまくいくかどうかは予断を許さない状況です。

視聴者の方より:「日本のPKO活動はどうなるのでしょうか?」
この状況の中で、日本は自衛隊を派遣している 日本としてはどうすべき?

東さん:日本は自衛隊を送ると同時に、JICAを通じて、ナイル川の橋を架けたり、港を整備したり、水道を整備したり、南スーダン公共放送局の支援をしたり、いろんな民生支援をしてきたんですけれども、それに対しては、大統領派側も、副大統領派も非常に評価しているというのは、私も感じました。
ただ、2013年の末と今年7月、2回撤退を余儀なくされていまして、次に戻る時は、大統領派も副大統領派も、本当に平和を作るという明らかな意思を示さないかぎり、なかなか日本としても支援を再開できないというメッセージをきちっと伝えることが大事だと思います。
今、お話にあった自衛隊については、350人もの方が国連PKOの一環としてジュバにいらっしゃるわけですが、今年10月にも政府としては、駆け付け警護に新しい任務を付与するかどうかを決めるということになっているんですけれども、今、見ていただいたように、大統領派とマシャールさんの対立が非常に続いていること、また、その地域保護軍という、国連にとっても、ほとんど今までやったことがないような、戦闘よりも高い、踏み込んだ部隊を、しかもホスト国が本音では反対しているのに入れるというようなこともよく考えて、それを見極めて、本当に新しい任務を付与すべきかどうか冷静に判断することは必要だというふうに思います。

南スーダンがソマリアと同じ過ちを繰り返してはならないと、国際社会がこれだけ関心を持っているわけだが、今の状況をどう見た?

大津さん:時代はもう大きく変化して、インターネットとか、SNSの時代ですけれども、昔と違って、今、起きている問題は難民とか、あるいはテロという形になって、全世界に波及する、これはすごく押さえておくべきところで、やっぱり何らかの形で支援は必要だと思います。
(かつて、われわれがイメージしていたような日本から遠い、アフリカの話ではないということ?)
完全に、そういう時代は終わっていると思います。
新しいビジョンと考え方、アプローチは絶対に必要なので、かなり難しい問題ですけれども、そこは議論していくべきだと思います。
(この問題を放置しておくと、いずれは自分たちのところにも返ってくるというぐらいの心持ちで考えていく必要がある?)
おっしゃる通りです。
それぐらい世界が狭くなっています。

今回のグラレコ

番組の内容を、「スケッチ・ノーティング」という会議などの内容をリアルタイムで可視化する手法を活かしてグラフィックにしたものです。

質問
コーナー

Q1

なぜこのようなテロが起こるのですか?

ソマリアでは、1991年に内戦で中央政府が崩壊、事実上の無政府状態に陥りました。国家再建の支援のため、国連軍が入りましたが、撤退し、国際社会の介入は失敗に終わりました。混乱に乗じて台頭してきたのがイスラム過激派組織「アッシャバーブ」です。2012年に国際社会の支援でできたソマリア政府や海外の援助機関などに対し、国内外で自爆テロを繰り返しています。
Q2

南スーダンからの多くの難民はどこに向かうのでしょうか?

UNHCRなどの国連機関によりますと、南スーダンで家を追われた人々のうち、国外に難民として逃れた人の数は100万人を超えると見られています。このうち、7月の武力衝突以降、新たに発生した難民は18万5000人に上り、隣国のエチオピア、ケニア、スーダン、ウガンダなどに逃れているということです。また、国内で避難を余儀なくされている人は160万人以上に上ると見られ、こうした人々の保護や人道支援が急務となっています。(数値は、いずれも放送時点でのものです)

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