クローズアップ現代

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No.38632016年9月15日(木)放送
仕掛け人がとことん語る!~リオ閉会式“奇跡の8分間”~

仕掛け人がとことん語る!~リオ閉会式“奇跡の8分間”~

世界を驚かせた “東京五輪”引き継ぎ式

皆さん覚えてますよね。
リオ五輪最後のフラッグハンドオーバー。
あの見たこともないような8分間に、世界はあっと驚かされました。
それまで、あまり五輪に関心なかった人も、ほー!?となりませんでしたか?
まさに、事件でした。
ところで、この濃密で斬新なパフォーマンス。
一体、誰が仕掛けたのか、皆さんはご存じでしたか?

中心となったのは、日本を代表する4人のクリエーターでした。
あの不思議な犬のコマーシャルをはじめ、数々の話題作を手がけてきた、広告界の鬼才、佐々木宏さん。
超スタイリッシュな映像、最新技術を駆使した表現で、国際的な賞を次々受賞している、菅野薫さん。
Perfumeなどの海外ライブを次々成功させ、世界的に高く評価される、演出・振付家、MIKIKOさん。
そして、音楽監督を務めた、椎名林檎さんです。
この4人、実はまもなく披露される、パラリンピックの引き継ぎ式も手がけています。
そこでも新たなサプライズを準備中なんだとか。
そんな仕掛け人たちが、今夜初めて、テレビで赤裸々に語ります。
世界に4年後の東京をアピールするという失敗の許されないミッション。
そこには果たして、どんな苦労があったのか。
今だから語れる、驚きの舞台裏。
そして、パラの演出。
ほかでは聞けない話、たっぷり聞いちゃいます。

五輪“奇跡の8分間” 仕掛けた人たちが今、語る!

ゲスト 佐々木宏さん(クリエーティブディレクター)
ゲスト 菅野薫さん(クリエーティブディレクター)
ゲスト MIKIKOさん(演出・振付家)
ゲスト 椎名林檎さん(音楽家/作詞作編曲及び演出、実演 ※VTR出演)

依頼を受けたのが、去年(2015年)12月 エンブレムや新国立競技場のデザインが白紙撤回、経費の問題なども出ていたが?

佐々木さん:オリンピックっていうのは、本当は(依頼が)来た時も喜びましたし、こういう仕事をしていますから、誰が開会式をやるんだろうとか、そういうことですごく興味もありましたから、ものすごく個人的に楽しみにしていたんですけど。
でも、やっぱりあのころ、去年はいろいろ大変でしたので、よく“火中の栗(くり)を拾う”とか、そういうことを周りもみんな言っていましたから、やめた方がいいのかなという気持ちも半分ありながら、でも逆境とかが好きなので、“火中の栗”を拾ってやろうじゃないかという感じでお受けしました。

この話が来た時、菅野さんはどう思った?

菅野さん:僕としては、すごくいいものにしたいというか、東京オリンピックが東京に来ることによって、東京や日本がもっと元気になってほしいなという思いがもともとあったので、そういった仕事に関われるのはすごくうれしいというか、すごく大事なことだなと思ったので。
でも、やっぱり怖いというか、緊張はしました。
どういうふうになっていくかも分からないし、どんな内容になったとしても何か言われるかもしれないという恐怖も実際ありました。

スタジオには来られなかった、椎名林檎さん。
オリンピック開催に後ろ向きな声も少なくない中で、突然、依頼が舞い込んだ時の心境は?

椎名林檎さん
「すごく不祥事が続いている印象があると、みなさんおっしゃっていて、責任重大だなと。
みなさんそうですけど、やりたい、やりたくないとかじゃなくて、お断りできなかったですかね。」

やっぱり皆さん、“火中の栗”だと思っていたんですね。
決死の覚悟で作り上げた、8分間のパフォーマンス。
ダイジェストで振り返ってみましょう。
始まりは、さまざまな国の言葉で表す「ありがとう」。
東京だけではなく、東北の被災地も2020年の主役であるというメッセージを込めました。
東京と被災地の子どもたち1万人が、赤い風船や傘を使って作り上げた人文字です。
続いて、東京の街を舞台に、アスリートたちが躍動します。
アスリートに交じって、日本で生まれ、世界中で人気のキャラクターたちも登場。

キャプテン翼の時は、会場からも大きな拍手が沸いていました。
ブラジルでも人気ですものね。

MIKIKOさん:会場での歓声もすごかったですよね。

佐々木さん:すごかったですね。

続いて用意されたのは、サプライズ演出。
会場や茶の間をどよめかせました。

「土管から出てきたのは、安倍首相です。」

この演出は、賛否両論を巻き起こしました。
息継ぐ間もなく、最先端技術を駆使した、ダイナミックな展開へ。

「CGと現実世界を、融合させています。」

「2020年にはこうした技術を使って、新たなスポーツ中継が、行われるかもしれません。」

そして、光のフレームを使った、アクロバティックなダンスパートへと移ります。
手拍子に、旗振り。
日本独特の応援スタイルに、客席を埋め尽くす、8万人の大観衆もノリノリ。
東京五輪の魅力を8分間に凝縮したパフォーマンスは、テレビの前にいる全世界の視聴者も大いに沸かせました。

「SEE YOU IN TOKYO.」

佐々木さん:日本で広告をやる場合は、多くて1億人ですよね。
一説によると、テレビ含めると20億人とか、もっとっていうふうに言われて。
20億人にどういうかなんて、ちょっと想像もつかなくて。
途中で思考が止まるようなことがありましたね。

菅野さんはどうだった?

菅野さん:200か国以上の方々、20億人の方々が見て、しかも言葉に頼らず表現をした時に、みんなが意味が分かるかっていうところがすごく一番悩ましいところで。
そこが、最終的にはマリオだったり、キャラクター、ドラえもんが出てきて、土管を置いて、リオにつながって、マリオが飛び込んでいくっていうこと事態は大して、ちゃんと説明がないんですよね。
絵がただ連なっているだけで、世界中の方々が、その意味が分かって、すごく喜んでいただけたっていうことで、日本も世界の方々に理解していただける、文化が共有されているんだなっていうのが今回すごく発見でしたし、心強いというか、頼もしいものを発見したなというのはすごく思いました。

絶体絶命のピンチ!? 五輪引き継ぎ式の舞台裏

8分間を見事成功させた4人。
しかし、その道のりは山あり谷ありでした。
引き継ぎ式の準備が始まったのは、去年12月。

新国立競技場をはじめ、オリンピック関連施設の建設費が計画を大幅に上回り、予算に対する世間の目が厳しさを増している時期でした。
さらに、一度決まった大会エンブレムが白紙撤回。
再度、デザインの選考が行われていました。

この大混乱は、引き継ぎ式の演出も直撃しました。
予算内でリオに連れて行けるパフォーマーは、わずか50人。
8万人収容の巨大スタジアムを舞台にするには、ちょっと心もとない人数です。

このピンチを切り抜けるためにMIKIKOさんが考え出したのが、人の背丈以上ある大きなフレーム。

パフォーマーが自ら、フレームを右へ左へと転がし移動させることで、広いフィールドの隙間を埋め、迫力を出そうという作戦でした。
しかし、そこにさらなる試練が。
大幅に遅れて決定した、新たなエンブレム。
それをフレームで表現することになったのです。
演出チームは、すでに完成していたプランを全面的に刷新。
エンブレムを盛り込んだ、新たなパフォーマンスを作り上げました。

演出・振付師 MIKIKOさん
「エンブレムを45フレームで作る。」

9か月に及んだ準備期間。
立ちふさがる、さまざまな壁に知恵と工夫で立ち向かったんですね。

佐々木さん:やはり、ブラジルに行く旅費だけでも相当かかると言われましたし、もともとパフォーマンスには200人ぐらいは最低必要というふうに、リオのチームから言われていたんですが、どう計算しても数十人というか、実際に50人だったんですけど。
規模は少なくても目立つようにっていうふうに考えざるを得なかったんですね。

振り付けも、衣装などにもお金がかかるが、そのあたりはどう考えていた?

MIKIKOさん:50人っていう数字を、フィールドで少なく見せないために、いかに1人を拡張して見せるかっていうのがテーマでもありましたし、装置を自分たちで運んで、自分たちでどんどん展開していくっていうふうにせざるを得なかったんです
けど、結果、それがすごい日本的というか、知恵を使わないといけなかったことが、日本らしく見えてよかったなあとは思っています。
(振り付けで大きく見せたりということ?)
広がればいいっていうことでも。
逆にスカスカして見えちゃったりするから、50人でしっかり、50人一糸乱れぬダンスをする方に注力を。
やっぱり大人数で、人の多さで見せるっていうんじゃなくて、少人数でしっかりそろって見せるという緻密さを今回は取ろうというふうに途中で覚悟を決めて。

ピンチがチャンスじゃないですけれど、そういう腹のくくり方みたいなものができてたんですね。

東京で五輪をやる意味とは “仕掛け人”たちの自問

でも一番大変だったのは、現代の東京をたった8分間で伝えること。
それは想像以上に難しい挑戦でした。

クリエーティブディレクター 佐々木宏さん
「東京パフォーマンスだと、わからせたほうが、フィールドの人には、いいのかな。」

これは、最初のころに出された演出案。
忍者が旗を奪うんですって。
武士や忍者が登場する分かりやすい演出の方がいいのではないか。
4人の中でも意見は分かれました。

椎名林檎さん
「日本らしさとか、東京らしさを考えるときが、一番意見は分かれました。
難しいところでした。
フジヤマ、ゲイシャ、ニンジャ、というところにいかなかったとしても、『日本的』か『そうではない』とか。
いざ日本的だとなったら国粋的なのか。
気にかけるポイント、ボーダー(境界)がそれぞれ違っている。
最も取り扱いが難しいもの、自分たちのルーツはおそろいだったはずなのに、こんなに違うものなんだなと。」

激論の末、4人は1つの方向性にたどりつきます。
それは、現代の日本の中に息づく、「目に見えない伝統」を表現するという考え方でした。
見えない伝統。
そのヒントになったのが、MIKIKOさんが手がけている、Perfumeの海外公演でした。
映像と音楽、そして、ダンスがシンクロする現代的なパフォーマンス。
その精密な動きの中に、海外のファンは、日本人ならではの規律や調和を見い出し、魅力を感じているのではないかと考えました。
伝統的な文化や精神が脈々と受け継がれている、現代の日本。
それが、引き継ぎ式の大きなテーマになったのです。

菅野さん:日本らしさを表現しようと思った時に、和装でいるっていうこと自体が
非常に分かりやすく表現できていることだと思うので、否定しにくいことだなと思いつつ、『渋谷へ行った時に着物の人に会うか』って、佐々木さんがおっしゃったんですよね。
それもそうだなとか。

MIKIKOさん:でも、そこからの発展系でプリーツとか、それこそ早抜きのしかたは歌舞伎の、昔ながらのを習っていたりみたいな仕掛けを、伝統的なことにして
、その見た目というか、表向きはしっかり現代の装いというふうに。
結局、その議論があったからこそ、落としどころが見つかった。

菅野さん:伝統芸能的なものとか、着物的なものとかっていうことをストレートに描いていくのか、それとも、もっと今の表現というものなのかってのを二律のけんかというか、勝負ではなくて、実はそれが1つの連なっている部分、連なっている文化になっているっていうこと自体はやっぱり発見で。
それは、先ほどMIKIKOさんがおっしゃっていたみたいに、衣装のアイデアにつながってたりとか、あらゆるところにそれらしさを入れていくと、みんなの結論が決まってくのに、すごい議論と時間を費やした印象ですね。

MIKIKOさん:海外のお客様が、なんでPerfumeとBABYMETALを見て熱狂しているのかって、その答えが分かってやっているわけじゃなくて。
だけど、それが今の日本だよねって感想とかで言われるけど、意図してやっているわけではなくて。
今っぽくしようと思ってやっているわけでもなく、結果たぶんこぼれ出ちゃっているというか、今の技術を使って、現代的な音楽で、現代的な衣装で踊っているんだけど、きっと、その精神とか、細やかさみたいなことが見たことないものに、海外の方から映っているんだろうなと思って、そこをぶれないようにしようと。
だから、あんまりこっちが迎合するというか、東京ってこうかなとか、今っぽいってこうかなって探るんじゃなくて、作り始めたら、その感覚にしっかり頼っていくと、こぼれ出たらいいな、東京らしさや日本らしさが、と思いながら、早く作りたいみたいな気持ちが強かったです。
やっぱりコンセプトが決まるまでは動けなかったところもあるので。

私たち日本人よりも、外から見た時に気付かされる部分だったりする?

MIKIKOさん:それがすごく大きかったので。
その計算しちゃだめなんだなっていうところも心の中にはすごい思っているところはありました。

あり?なし?誰もが話題に 五輪引き継ぎ式のサプライズ

そして話題になった、あの演出。

「土管から出てきたのは、安倍首相です。」

賛成
「日本の首相がここまでやるんだって。
全国民を挙げて、じゃあこれから東京オリンピックに向かってやろうというのが、なんとなくまとまるんじゃないかな。」

反対
「もっとスポーツに関わる人たちを出さないと、やっぱ安倍首相が出ることによって、政治が絡んでいるなって丸見えなので。」

ここは相当、議論した?

佐々木さん:正直、言っちゃいますと、ご存じの方も多いと思うんですけど、われわれは、どなたかにマリオをやってもらおうというふうに考えて人選をしていたんですが、ある時、森会長からアイデアを頂いて、のけぞりました。
実は、しばらく誰にも言わないで心の中で葛藤していましたけど。
(心の葛藤というのは?)
もちろん、きっとこれで、もし外したらっていうか、ブーイングが起きたり、意味が分かんないとか、そういうことになったら、われわれの責任ですし、やはり絶対に政治っていうことに対してのいろんな拒否反応もあるだろうなってことは思いましたので、それを表現でどうこうするっていうのは、本当に大変なことだったんですけど。
ただ、やっぱり日本のリーダーとしては、マリオがそうであるように人気者であってほしいというか、たたく時はたたかなきゃいけないと思いますけど、やっぱり人気があったり、海外の方からも評判いい方が、悪いよりいいんじゃないかなっていう気持ちがあって。
中途半端じゃなくて、やり切っちゃえば、きっとみんな分かってくれるんじゃないかなっていう。
難しい。

難しいパートでしたよね、きっと。

どこより早く極秘情報公開? パラ閉会式のサプライズ

今、大きな盛り上がりを見せている、パラリンピック。

4日後の19日に披露される、その引き継ぎ式も4人が演出を手掛けます。
内容はトップシークレットなんですが、少しだけ教えちゃいます。
登場するのは、障害のある3人のパフォーマー。
サプライズ演出はもちろん、最先端のテクノロジーを使った、新しい表現が披露されるそうです。
楽しみですね。

佐々木さん:大きなキーワードとして「ポジティブスイッチ」という、それぞれの方が障害を持った時に、もちろんいろんな思いをされるんですけど、それが逆にバネになって、新しい道とか価値観を見いだす。
そういう経験をされた方ばかりですので、それは障害がある・ないにかかわらず、いろんな方に言えるテーマじゃないかなと思いました。

MIKIKOさん:皆さんに勇気づけられるというか、学ぶことがすごく多くて。
一番大きかったのは、視覚障害のある方が、見えてないんだけど、東京ってすごいいい街って。
渋谷みたいなゴミゴミしてて、行くの嫌なのかなって、私たちが思ってた所を、人が
たくさんいるから安心するとか、結構、逆の発想を持っていらしたことが目からうろこで。
だから、それをなるべくダイレクトに今回お伝えして、東京に来たいなって思ってもらえたらいいし、それまでに絶対に整えられるところは、いろんな施設も整えていけたらいいなっていう意味も込めて、いろんなポジティブのスイッチが押せたらいいなっていうような閉会式の引き継ぎ式になったらいいなと。

私自身は本当に4年後がとても楽しみになりましたし、何となく世間の皆さんがちょっと一歩前向きになっているんじゃないかなっていうのが、あの閉会式のあとに感じたので本当に楽しみにしています。

リオ五輪閉会式“引き継ぎ式”のノーカット映像はこちら

質問
コーナー

Q1

2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開会式・閉会式の演出も今回の4人が手がけるのでしょうか。

いいえ。佐々木宏さん、椎名林檎さん、菅野薫さん、MIKIKOさんの4人は、あくまでも2016年リオオリンピック・パラリンピックの引き継ぎ式の演出担当です。2020年東京オリンピックの開会式・閉会式の演出担当は現時点で未定です。
Q2

パラリンピックの引き継ぎ式に登場する予定の3人パフォーマーについて詳しく知りたい。

●GIMICOさん(モデル)中学2年生の時に骨肉腫のために右足大腿を切断。日本で初めてのAmputee model(切断手術を受けたモデル)として、蜷川実花さんの被写体や、さまざまなショーなどで活躍。●大前光市さん(ダンサー)プロダンサーとして活躍していた23歳のとき、飲酒運転の車にひかれ、左足膝下を切断。10年間の苦悩の末、義足を外してダンスを始める ことを決意。現在は、ステージ活動のほかバレエ教室も行っている。●檜山晃さん(暗闇の中での対話ファシリテーター)生まれた時から目が見えず盲学校に入学。大学へ進学するも、目が見えないためIT企業への就職がかなわず。7年間の引きこもりの 生活をしていたが、現在は暗闇体験施設で案内役を務めている。

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