クローズアップ現代

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No.38542016年8月29日(月)放送
台風“異変” 迫る脅威

台風“異変” 迫る脅威

台風“異変” 迫る脅威

こちらは、NHKが開発した、NMAPSというシステムです。
これまでの膨大な気象に関するビッグデータを分析して、リアルタイムで可視化し、分かりやすく伝えることができます。

例年ですと、西日本に上陸し、北上することの多い台風ですが、今年(2016年)は日本の近くで発生し、東北の沿岸を通って、次々と北上。
わずか1週間のうちに、3つの台風が北海道に上陸するという、観測史上初めての事態が起きています。

そして、台風10号は東北に接近。
明日(30日)上陸する恐れがあります。
これまで、強い勢力のままで東北に上陸することはほとんど例がなく、厳重な警戒が必要です。
また、ほかの地域でも、所によっては激しい雨が降っています。
こうした異常な事態がなぜ起きているのか。
詳しいメカニズムが分かってきました。

台風“異変” なぜ東北・北海道に

この夏、日本列島を襲い続ける台風。
観測史上、例のない動きを見せています。
3つの台風が勢力を保ったまま、1週間のうちに、次々と北海道に上陸したのです。
最初に襲った台風7号で、釧路市では最大瞬間風速43.2メートルを観測。

白老町では、1時間に80ミリの猛烈な雨が降りました。

足寄町では、住宅40棟が浸水しました。

町民
「初めてだ、こんなの。
家建てて50年…。
どうしようもない。」

これまで、降雨量が本州に比べ、少なかった北海道。

今回の台風によって、石狩川をはじめ、33の河川で水があふれる事態となりました。

北海道 高橋はるみ知事
「今回の台風、および、前線などにともなう大雨の被害は、北海道が今まで経験したことがない厳しいものであった。」

相次ぐ、北海道への台風上陸。
そして、東北地方への上陸の恐れがある、台風10号。
観測史上初めての事態は、一体何が原因なのでしょうか。

例年、台風が出来るのは、赤く示した赤道近くの領域です。
ところが、今年発生した台風は、ほとんどがそれよりも北。
日本列島のすぐそばで発生しているものまであります。
その原因は、海水温です。

これは、7月からの海水温の変化です。
台風が発生しやすいのは、黄色やオレンジで示された26度以上の領域です。
日本の沿岸全体に広がっています。

中でも台風10号と11号は本州のすぐ近くで発生しました。
珍しい現象です。

台風11号は、三陸の沖を通り、北海道を直撃しました。
台風の進路は、高気圧の配置が大きく影響します。

例年であれば、太平洋高気圧が日本列島を覆い、その西側を台風が通ります。

ところが今年は、この高気圧の張り出しが弱く、西側の高気圧が張り出したことで、三陸沖に台風の通り道が出来ました。
そのため、台風が相次いで、北海道に上陸したのです。
さらに高い海水温度は、台風の勢力を保つ原因にもなりました。

8月、北海道南東沖では、例年より7度以上も高い状態でした。
この海水が、より多くの水蒸気を供給したことで、台風は勢力を維持したまま、北上したのです。
暖かい海水と特殊な気圧配置により、今、台風10号は東北地方に接近しています。
東京大学の中村尚さんは、こうした海水温の高さは、地球規模の気候変動が関係していると考えます。

東京大学 先端科学技術研究センター 中村尚教授
「ベースとしては間違いなく水温が上がってきていますので、今年のような顕著に高い水温が、また近い将来観測されることは十分ある。
今までにないような強さの台風が接近することがありえますので、それに対する備えというのが重要になってくるのではないでしょうか。」

台風“異変” 思わぬ場所で大雨が

さらに台風10号の影響は、北日本だけにとどまりません。
近畿や東海では、今日(29日)断続的に激しい雨が降りました。
なぜ、台風とは遠く離れた場所で大雨になるのでしょうか。

鍵を握るのは、上空5,700メートルの風です。
太平洋側にあるのは、台風10号。
日本海側では、風が大きく渦巻くように流れています。
「寒冷渦」と呼ばれる、上空の冷たい風です。
台風と寒冷渦がぶつかることが、大雨につながるといいます。

この時の雨の量です。
寒冷渦の東側で、次々と雨雲が生まれています。
この雨雲こそが、台風とは別の場所に大量の雨をもたらすのです。

東京大学の新野宏さん。
この寒冷渦と台風の動向に、今後も注意が必要だといいます。

東京大学 大気海洋研究所 新野宏教授
「台風の雨と上層の渦に伴う降水帯が一緒に合体して、さらに強い雨を降らせる可能性もありますので、西日本から東北地方に至る、広い範囲で雨に対する注意が必要です。」

日本の広い範囲に降る雨と風。
私たちは、こうしたこれまで経験したことのない気象現象に、今後も直面することになるといいます。

東京大学 大気海洋研究所 木本昌秀教授
「これまで以上に、今までの経験が通用しないような時代に入っていく。
今までは来なかったものが、少し範囲を広げて来る。
北海道だと、梅雨、あるいは台風の集中豪雨みたいなものが、北海道もカバーするようになってくる。
ほんの少しの違いだが、実際には気象災害、浸水とか被害という形であらわれる。
甘く見てはいけない。」

迫る台風10号 最新状況は

ゲスト 島川英介(NHK社会部記者)

明日、東北に上陸すると見られている、台風10号のこれまでの動きをNMAPSで見てみます。
まず、日本近海で発生しました。
いったん、南西に向かった後、Uターンをして、北東に向かってきます。
台風10号は今後、やはり東北に向かう?*

島川記者:最新の進路図を見ていただきたいんですけれども、次第に速度を上げながら進みます。

そして、これから北西に進路を変えます。
今も強い勢力を保っていますが、この勢力のまま、東北地方に接近し、明日、上陸する恐れがあります。

視聴者の方より:「こうした迷走するような台風は、台風10号以降もあり得るんでしょうか?」

島川記者:台風の進路というのは、その場その場の気圧配置や、気象条件によって左右されます。
ですから、台風10号のような進路というのは分かりません。
ただ、専門家によりますと、日本近海の海水温が高い状態、これは来月(9月)にかけても続くと見られています。
そのため、もし台風が発生をするということになりますと、強い勢力、もしくは非常に強い勢力に発達するということは、十分あり得ると指摘しているんです。

台風に加えて、寒冷渦に影響を受けた雨にも警戒が必要?

島川記者:現在も、台風から離れた地域、近畿や東海で雨が断続的に降っています。
この雨は、次第に東へ移動することになりますから、台風から離れてはいますが、東海や関東で注意が必要です。
さらには、この寒冷渦ですね。
台風が、これから本州に上陸して、通過します。
その後、寒冷渦と台風が一体となります。
そうしますと広い範囲で雨、風の影響が出ることになりますので、台風が上陸した後、東北の日本海側でも警戒は必要だと思います。

しばらく警戒を解くことはできないということなんですね。
とにかく今、私たちの経験に基づけない事態になっている今、私たちは一体、どう備えればいいのでしょうか。

今、自治体に広がっている新たな取り組みの1つに「タイムライン」と呼ばれる備えがあります。
これは、これまで危険な状態になってから、後手後手に対策が打たれて、被害の拡大につながることが多くありました。
そこで、時系列に沿って、いつ・何を・誰がするのか、詳しい行動計画を作って、早め早めの行動を促すことで、被害を最小限に食い止めようというものなんです。
台風10号に備えて、全国で、今まさに進められている、タイムラインの取り組みを取材しました。

迫る台風10号 大規模避難の試み

東京・北区です。
荒川に隣接した平たんな土地に34万人が暮らしています。
大型台風などで、ひとたび荒川が氾濫すれば、流域で最悪3,500人の犠牲者が出ると試算されています。

大勢の住民にどう避難を呼びかけていくのか。
台風10号の接近に備え、区の防災課では、タイムラインに沿った準備が進められていました。

北区危機管理室 防災課 坂本大輔課長
「この先の対応について前倒しで、先行して進めていきたいと思っています。」

今年初めて、タイムラインの運用を始めた、北区。
国から伝えられる、台風接近の想定時間をもとに動きます。

北区危機管理室 防災課 坂本大輔課長
「あくまでもタイムライン上ですが、(台風で)荒川の堤防が決壊するまで、残り48時間だと。」


荒川の氾濫予測の48時間前。

防災課の職員が向かったのは、決壊の可能性が最も高いとされる地点です。
タイムラインでは、この時間までに河川の状況確認を済ませることになっています。

北区危機管理室 防災課 坂本大輔課長
「これは全然、平常時の問題ない状況ですね。」

タイムライン導入のきっかけになったのが4年前、アメリカ東海岸を襲った「ハリケーン・サンディ」でした。
ニュージャージー州の町で、およそ4,000棟が全半壊したにもかかわらず、犠牲者は1人も出ませんでした。

これは、タイムラインに沿って、まだ人々の危機感が薄かった36時間前から、大規模な避難指示を出した結果でした。
不要な外出をさせないために、地下鉄やバスなどの公共交通機関も止めたのです。
果たして、日本でもタイムラインに沿った大規模な避難ができるのか。

防災課の職員は、高齢者などの避難について、住民の代表に相談に行きました。
北区のタイムラインでは、荒川が氾濫する10時間前までに、支援が必要な人の避難を行うことになっているからです。
ところが…。

堀船二丁目町会 会長 石倉健一さん
「水害にあったとしても、(家の)2階にいけばいいだろうと。
避難所に行くという認識は、いままでないんですよ。
避難所開設を広報することが妥当なのか。
かえって不安をあおることにもなりかねない。」

荒川が氾濫し、人的被害が出たのは、60年以上前。
住民が被害のイメージを持つことは難しいのです。

迫る台風10号 緊迫 住民たちは

住民が過去の経験をもとに、独自のタイムラインを作った地域もあります。
およそ600人が暮らす、三重県紀宝町の大里地区です。

台風10号によって、雨が最も激しくなると予測される24時間前、住民たちは避難時の備蓄を確認していました。

自主防災組織のリーダー、原章三さんです。
原さんには、5年前のつらい記憶があります。

紀伊半島を襲った豪雨。
夜間に大規模な土砂災害が発生し、88人の死者・行方不明者を出しました。

大里地区でも1人が死亡し、多くが水没した集落に取り残されました。
まさか堤防を超えて水は来ないだろうと考えた結果でした。
より早く避難を促すべきだった。
原さんは、今も後悔を拭えていません。

自主防災組織 リーダー 原章三さん
「本当に言葉にならなかったです。
明け方5時過ぎになって、いろんな人たち、逃げ遅れた人たちが、レスキュー隊に助け出されて来たんですよ、次から次へと。
本当に涙が出ましてですね、そういう思いですね。」

二度と悲劇を繰り返したくない。
地区では、町が作ったタイムラインをもとに、独自の避難計画を立てました。
今回の台風10号の接近を前に、高齢者や要介護者を中心に、避難所への早めの移動を促します。

住民
「5年前は最悪でした。
消防団もバラバラ、分断されて。」

住民
「タイムライン作ってくれたので、自分もこういうことしていかねばいかん、そういう意識は出来てきましたよね。」

すべての必要な世帯に、具体的な避難の方法を伝えます。

自主防災組織 リーダー 原章三さん
「1人で(避難所に)来いとは言わない。
手をつないで行くから。」

住民
「(5年前は水が)ここまで来たんだよ。
ここら辺ちょっと黒くなってる。」

自主防災組織 リーダー 原章三さん
「絶対自然を甘くみたらあかん。
5年前の教訓ですから。
だからそれを私たちはずうっと、ここの人たちとの合言葉にしてやってきた。
今日明日どうなるかは、真剣にずっと対処していきたいと考えています。」

そして今日、午前10時。
タイムラインを導入したばかりの東京・北区。
台風の進路や、被害の規模の予測がなかなかつかない中、タイムラインに基づいた避難の模索が続いています。

北区危機管理室 防災課 坂本大輔課長
「災害は近年、より規模を大きくして、いままでの経験則が当てはまらない場合も、これからも多くなっていくのかなと。
よく空振りを恐れずにと言いますが、空振りを何回も重ねていくことが、むしろ大事なのかなと思っています。」

迫る台風10号 最新状況は

今回の台風10号で強風域に入っている八丈島に藤井記者が行っています。

藤井佑太記者(社会部)
「八丈島です。
風は午後から一段と強くなってきて、先ほどからも、私の真横から雨が吹きつけています。
私の後方の港近くに植えられたヤシの木も、時折、強い風にあおられると、傾くほどになっています。
私は今、港の近くにいますが、辺りはすっかり暗くなって、海の様子を見ることはできません。
ただ、海は大しけになっていて、岸壁に打ち寄せる波の音が聞こえてきます。
地元の漁業協同組合では、岸壁に漁船をロープでくくりつけて、台風に備えていました。
八丈町では、今も職員が残って、被害がないかなど、情報収集を続けています。
一段と風が強まってきた、八丈島からお伝えしました。」

この台風10号は、このまま行くと、東北の太平洋側に初めて上陸することになる 被災地であり、仮設で暮らされている方もいて、復旧工事も途中までしか進んでいない場所も多くあるが、本当に気をつけなければいけないことは?

島川記者:今回、気象庁は東北地方にとって、記録的な大雨になる恐れがあるというふうにしているんですね。
明日、夕方にかけての雨量が、多い所で350ミリ。
さらに、明後日(31日)にかけては100ミリから200ミリの雨が降ると、こういうふうに予想されています。
(どれほどの雨量ということ?)
これは、8月ひと月分の降水量を上回って、さらに各地の記録を見ますと、1日に降る雨量の記録をも上回る可能性があるということです。
つまり、これまでに経験したことのない雨が降る恐れがあります。
崩れたことのない山が崩れるなど、土砂災害の危険が高まりますし、大きな河川があふれる、氾濫するという恐れも高まる。
これは太平洋側だけではなくて、日本海側でも厳重な警戒が必要だと思います。

先ほど紹介した、タイムラインというのは、まだまだこれからの取り組みで、東北地方でも、まだ取り入れてない自治体も多くある思うが、どんな備えができる?

島川記者:現状でも、参考になる情報というのが出されているんです。
こちらは、気象庁が発表した「警戒が必要な期間」というものですけれども、今、申し上げました雨は、東北・北海道ですと、明日の未明から明後日の昼ごろにかけて警戒が必要ということになります。
この雨ですけれども、この後も川はあふれる危険性もありますので、洪水には警戒がさらに必要です。
さらに風、明日の昼前ぐらいから警戒が必要ですけれども、20メートル以上の暴風が吹いて、猛烈な雨が降っているということになりますと、これはもう前に進むこともままならないですから、避難をそこからしようと思っても、これは不可能と思っていただければと思います。
沿岸は高波、高潮というのにも警戒をしていただきたいというふうに思います。

東北以外の地域でも警戒が必要だが、注意点の大きなポイントは?

島川記者:空振りを恐れずに、早めの避難ということに尽きると思います。
崩れたことがない山も崩れるということもありますので、長期化する恐れもあると考えて、長めの備えをして、避難をするということが重要になってくるというふうに思います。

今回のグラレコ

番組の内容を、「スケッチ・ノーティング」という会議などの内容をリアルタイムで可視化する手法を活かしてグラフィックにしたものです。

質問
コーナー

Q1

今後、台風にはどう備えればいいのでしょうか。

最大のポイントは「これまでにないことが起きることを想定しての早めの避難」。中でも、浸水の恐れがある地域、土砂崩れの恐れのある地域、高波・高潮の警戒が必要な地域の方は「これまでは大丈夫だった」と思わず、早めの避難を心がけて下さい。
Q2

災害時に備え、どんなものが必要ですか。

避難所にいく場合は、常備薬、保険証、厚手の手袋、毛布など。2日以上、家に戻れなくなることも想定して準備して下さい。自宅にとどまる場合は、水、食料など十分な量を用意しておいて下さい。避難、自宅どちらを選択する場合も、懐中電灯、ラジオ、ヘルメットなどを手元に置いておくようにして下さい。

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