クローズアップ現代

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No.38432016年7月25日(月)放送
私はAV出演を強要された~“普通の子”が狙われる~

私はAV出演を強要された~“普通の子”が狙われる~

AV出演 強要 “普通の子”が

強引に、あるいは言葉巧みに、女性たちがアダルトビデオ・AVへの出演を強いられる被害が広がっています。

こちらは、支援団体に寄せられた、AVを巡る相談件数です。
ここ2、3年で急増していて、今年(2016年)は、昨日(24日)までの時点で、すでに62件に上っています。

先月(6月)、東京の芸能プロダクションの元社長ら3人が、AVの撮影と知りながら、女性を撮影現場に派遣したとして、警視庁に逮捕され、罰金の略式命令を受けました。
こうした摘発は異例のことで、背景には、悪質な勧誘や契約が相次いでいる現状があります。

こうした中、政府は先月、本人の意思に反してAVへの出演を強要することは、女性に対する暴力にあたるとして、実態の把握を進める方針を打ち出しています。
今、何が起きているのか。
同じような思いをしてほしくないと、アダルトビデオへの出演を強要された女性たちが、そのつらい記憶をカメラの前で語ってくれました。

AV出演 強要 女性たちの証言

今回、取材に応じてくれた20代の明子さんです。
大学生の時、アルバイト先で「モデルをやらないか」と声をかけられたといいます。

明子さん(仮名)
「『1回簡単に話を聞いてみればいいよ』って、それだったらいいかなと、事務所と呼ばれるところに行った。」

用意されていたのは、プロフィールを記入する用紙。
名前や住所、通っている大学に至るまで書き込むことを求められました。
さらに別の書類に、登録のためと称して、サインをするよう促されました。

明子さん(仮名)
「『ここはバイトする時と一緒のような、当たり前のことしか書いてない』と、読む時間も与えられなく、私も不思議に思わなかったのが悪い。
サインして、それがあとで契約書だった。」

数日後、プロダクションの社長からかかってきた1本の電話。
「AVへの出演が決まった」と、この時、初めて告げられたのです。
明子さんが出演できないと断ると、とりあえず事務所に来て話そうと言われました。
そこで待ち受けていたのは、プロダクションのスタッフ3人。
明子さんと向き合って座り、執ような説得が始まりました。

明子さん(仮名)
「ふざけるなと。
制作は決まった時点で始まっているんだから“違約金”がかかる。
バラシ代が何百万ってかかる。
お前が撮影をやめるということで、親に請求がいく。
お前が通ってる大学だって、わかってるんだから。
本当にどなり散らすように言われて。」

脅迫とも取れるやり取りが4、5時間に及んだといいます。

明子さん(仮名)
「どなられた後から、ずっと涙がとまらなかったんですけど、疲弊して、この空間から出るには、私が『わかりました』と、私が言えば、誰も困らずに私さえ我慢すればいいと思って、あとは早く帰りたいという気持ちで、『わかりました』と言った。」

そして2週間後、初めての撮影に持ち込まれました。

明子さん(仮名)
「急に思考回路が止まるくらいの、あまりにも恥ずかしくて、カメラが回っている最中も抵抗というか、泣きながら、もうやめてほしいと繰り返した。
屈辱的で、精神が壊れたというか、放心状態になった。」

今、明子さんのように、出演を強要されたといったトラブルの相談が急増しています。
都内にある支援団体です。

支援団体
「ライトハウスです。」

相談を寄せた人は、この3年で150人以上。
その多くが大学や専門学校に通う、20歳前後の普通の女性たちです。

NPO法人ライトハウス
「来週の撮影が、もしかしたら、アダルトビデオなんじゃないか不安だと。」

プロダクションに契約をさせられたが、AVとは聞いていなかった。

現場へ行くとAVの撮影だった。
辞めたいと言うと、違約金を求められた。
女性の多くが、モデルの夢や学費を稼ぎたいという切実な願いを持っていました。

NPO法人ライトハウス 藤原志帆子代表
「アダルトビデオなんて見たことがなかった女子大学生であるとか、夢をもって一生懸命勉強している専門学校生だとか、普通の女の子たちが被害にあっていることに、私たち自身すごく驚いた。
ひどい暴力や脅しやだましが横行しているのではないか。」

AV出演 強要 巧妙な手口

リポート:茅原毅一朗

ほとんど表に出ない被害の実態をさらに深く取材するため、私たちはプロダクションを経営していたという男性に接触しました。

元プロダクション経営者
「まさにドンピシャ、すごいドンピシャ。
スカウトするならこの子。
やぼったい女の子を選ぶ。
まずは靴から選ぶ。
ハイヒール履いて、ピーンとしている子より、丸っこい靴履いている子の方が全然いい。」

一見、普通の子が狙い目だという男性。

出演に持ち込む鍵は、契約書へのサインだといいます。
アダルトビデオという言葉はなく、「成人向けである場合も」とだけ記されています。

元プロダクション経営者
「“成人向けである場合も含め”でしょ。
だからグラビアの時もあるし、必ずしも成人向けの仕事じゃなくてもいいみたいな口説き方をしてる。」

詳しい仕事の内容を理解させることなく、サインを急がせます。

元プロダクション経営者
「とにかく早くがいちばんの近道。
目標は30分以内。
考えないうちにやらせる。
考えたら仕事なんてできない。」

そして、サインした書類に書かれた「損害賠償」の文字。
これが、女性を出演に追い込む決め手になるのです。

元プロダクション経営者
「魔力ってほどではないが、“損害を与えた場合には損害を賠償します”と書いてあるでしょ。
それをかさにして、違約金みたいなことはよく言う。
これがないと始まらない。」

さらに取材を進めると、女性を出演に仕向けていく巧妙な手口も見えてきました。

この女性は、契約書にサインをさせられたものの、かたくなにAVへの出演を拒み続けていました。
家族や友人に知られてしまうことを恐れたからです。
プロダクションが誘ったのは、会社が主催するクリスマスパーティーでした。
そこで、アダルトビデオで活躍する女性たちが、次々と話しかけてきたといいます。

まゆみさん(仮名)
「女優さんたちと交流したことによって、危ない、怖い世界じゃない、ばれないからって言ったことは、本当なんじゃないかと信ぴょう性を感じてしまって、やってみるって。」

実はこれも、周到に練られた手口だと男性は言います。
女性たちを使って、拒む理由を聞き出し、一つずつ打ち消していくのです。

元プロダクション経営者
「警戒心を解く時というのは、洗脳に近い。
(出演者やスタッフの)女の子を使う、安心させるという、そういうのは共通の手口、マニュアル。」

AV出演 強要 女性たちの証言

違約金を盾に脅され、出演を余儀なくされた明子さんです。
いったん出演してしまうと、後には逃れられない過酷な状況が待ち構えていました。

明子さん(仮名)
「プロダクションの人間からは『独り暮らししたほうがいい』と、ばれたくなかったら、と指示されて。
他から情報が入ってこない、周りから孤立する。
言われることを盲目的に信じて。」

親や友人からも切り離され、気付けば、周りにいるのはプロダクションのスタッフだけに。
撮影は連日のように繰り返され、内容もエスカレートしていきました。

明子さん(仮名)
「裸のまま逃げ出したこともあった。
でもエレベーターの前で捕まえられて、(部屋に)戻された。
抵抗する回数が減って。
心を殺して、ただ時間が過ぎるのを待っていた。
もう、私は周りの人たちみたいに、普通の人生を歩んでいくことはできない、悔しい思い。
絶望です。」

AV出演 強要 “普通の子”が

ゲスト 伊藤和子さん(NGO「ヒューマンライツ・ナウ」事務局長・弁護士)
ゲスト 坂爪真吾さん(非営利組織「ホワイトハンズ」代表理事)
ゲスト 茅原毅一朗記者(横浜局)

AV出演は、特別な世界の話だと思い込んでいたが、一般の女性も被害に巻き込まれている実態が見えてきた どういう女性たちがこうした被害に遭いやすいのか?

伊藤さん:いろんな年齢層の方がいるんですけれども、どうしても法的な知識が乏しい、それから、周りから何か頼まれるとなかなか嫌というふうに明確に言えないという若い女性がターゲットになりやすいですよね。
また、どうしても初々しい方に対するニーズというか、需要もあるんです。
(地方出身であることというのは、どういうこと?)
都会に憧れて出てきて、例えば芸能界を夢みたりとか、そういう時に都会を歩いていて、モデルにならないかというふうに言われると、警戒心がないので、これはいいなと思って、出てしまうということもありますよね。
(上京したばかりだと、友達もまだ少なく、親もいない、何かあった時に相談する人も周りにいないから?)
孤立しやすいですから、なかなか相談もできないというところがありますよね。

具体的には、芸能界への憧れという気持ちを巧みに利用するのは、どういうふうに行われる?

伊藤さん:実際、本当に芸能界に憧れている子が、本当に芸能界に入れるんじゃないかということを信用させるような、非常に巧みなテクニックが使われています。
例えば、誰でも知っている女優さんなどの名前を挙げて、こういう人も元々はAV女優をやっていて、誰も知らないけど、昔はそういう過去があったんだよというようなことを言ったりですとか、それから、このプロダクションはどこどこっていう大きなレコード会社とつながりがあるとか、本当かうそか分からないけれども、みんな信じてしまって、この仕事をすれば、いつか芸能人になれるんじゃないかっていうふうに憧れる方も結構いらっしゃるんですよね。

真面目で責任感が強い女性が巻き込まれやすいというのは、どういうこと?

伊藤さん:契約書に署名・なつ印をさせるところから、まずスタートするんですけれども、いったん契約書に署名・なつ印をしたところ、仕事だからやらなければならないというふうに思い込んでしまったりとか、それから逃れられないということで、逃げればいいのに逃げられないというような、そういったところに陥りやすいというところがあります。

茅原記者は今回、実際にいろいろな方を取材して、そういう印象は受けた?

茅原記者:取材をお願いしてる段階にあるんですけれども、契約書を結んだことに「私が結んでしまったことが悪いんです」というふうに謝られたりだとか。
(自分自身を責めたり?)
責められたりとか、そういう質問に対しても、答え難いことに対して、「すみません」というふうに謝られるっていうことが、本当によくありました。

つまり責任感が強くて、気の優しい方が巻き込まれてしまう?

伊藤さん:そうして、いったんそういうことになったら、自責の念にかられる。
自分が悪いと思って、なかなか被害救済というか、被害を訴えられない方が多いです。

契約書の話が何度か出てきたが、例えばVTRで出てきた契約書はこういうふうに書かれていて、AV出演であるとは、どこにも書いてないが?

伊藤さん:成人向けっていう言葉自体、若い18歳とか19歳の女の子は分からないと思うんですね。
(何がどういうものなのかも分からなく、判断がつきにくいが?)
それから、アダルトビデオ・AVって書いてあっても、実際に見ている子はそんなに多くないので、AVというのが何か分からない子もいるんですよね。

もう1つ、取材で入手したこの契約書には、AVどころか、成人向けも書いていなくて、「いろんなメディアに出演します」としか書いていない こういう契約書もあって、20歳前後の若い女性には、見分けるのが非常に難しい 今、なぜこういったトラブルがこれだけ増えて表面化してきている?

茅原記者:今回、複数の業界関係者に話を聞くことができたんですけれども、問題の背景には、業界を巡る環境の大きな変化が挙げられます。
今、インターネット上には無料で見ることができる動画が氾濫していて、業界の売り上げは減少して、業界自体が厳しい状況に置かれています。
生き残るためには、コストを抑えながら、新しいコンテンツを次々と生み出していく必要があって、その結果、新しい女性を、半ば強引なやり方で出演に至らせるケースが出てきているんじゃないかということです。
業界に詳しい関係者に話を聞きました。

AV業界 元ライター
「売るために女の子を連れてくる。
駄目だったら変わりの女の子という形で、次から次へと女の人が要るし、消費するものとしか見なくなる。
女の子は商品で使い捨てに近い感覚ももつ可能性も大きい。」

AV出演 強要 背景は

茅原記者:この業界側の環境の変化に加えて、もう1つ挙げられるのは、女性側の変化になります。
これまで、被害の性質上、なかなか声を上げることができなかったんですけれども、それが、支援団体の活動の結果、女性自身が被害を被害として認識して、声を上げやすくなってきているというのも大きな要因だと思います。

今、業界自体が低いコストになってきている そして、貧困に苦しむ若い女性が増えている こういった社会背景と併せて、AVへの出演強要が目立っているのは、どう関連する?

坂爪さん:(被害にあわれた方で)地方から出てきた方が多いということがあったんですけれども、地方から東京に出てこられて、そのまま都会の中で、自分で家賃であったり、学費であったり、あと生活費を稼ぐ必要に追い込まれる場合があって、そういった環境の中で、スカウトの手口にそれが連れ込まれてしまっているケース、それが背景としてあるのかなとは思います。

アダルトビデオをめぐる被害は、出演を強要されることだけではありません。
インターネットに掲載された動画が消えずに拡散を続けていることもあります。

AV被害 深刻化 拡散する動画

フリーアナウンサーの松本圭世さんです。
アダルトビデオに使われた自分の動画が、今もネット上で拡散し続けています。
大学生の時、路上で深夜番組の撮影に協力してほしいと声をかけられました。
執ように誘われ、テレビの取材ならと同意書にサインしました。

松本圭世さん
「バラエティのようなもの、男の子の悩みを聞いてくれるだけでいいから協力して欲しいと。」

止めてあった車の中に入ると、いきなり4人の男性に囲まれ、撮影が始まりました。
およそ10分間。
服を脱がされることはありませんでしたが、卑わいなことを言われ、その反応を撮られました。

松本圭世さん
「逃げ出せたらよかったが、なかなかそういう雰囲気でもなくて、扉は閉まっていて、出入口はひとつしかないし。」

その時の映像が、アダルトビデオの一場面として使われていることを知ったのは、それから3年後。
松本さんは、アナウンサーとして仕事を始めていました。
映像はネット上で話題になり、松本さんは出演していた番組をすぐに降板。
テレビ局との契約も更新されませんでした。
それだけではありませんでした。

松本さんは、動画のネット上での拡散に苦しむことになったのです。
5年たった今でも、名前を検索すると、問題の動画や画像が次々と出てきます。

しかも、傷ついた松本さんをひぼう中傷する悪質な書き込みが後を絶たないのです。

松本圭世さん
「本当に不特定多数の、まったく目に見えない人が相手なので、ものすごく怖いし、どこと戦えばいいのか、わからない。」

今、松本さんは、自らのつらい経験を公の場で語り始めました。

松本圭世さん
「私自身、世間で騒動になるまで知りませんでした。」

自分と同じような被害を少しでも減らしたいという思いからです。

松本圭世さん
「自分で望んでいなくても、街を歩いていただけでも、巻き込まれてしまうことは誰にでも起こりうる。
若い女性、ひとごとだと思わないで、こういう事もあったのだと、心の隅にとどめていただければ。」

AV出演 強要 対策は

視聴者の方より:「警察に相談したらって思うんだけれども、そうもいかないのですか?」
取締り、そういうところはどうなっている?

伊藤さん:これは、リベンジポルノよりもひどい人権侵害だと思うんですけれども、規制する立法がないということで、なかなか取締り、刑事的な処罰というものも難しい状況なんです。
そういった面で、私たちとしても、国家的な規制立法を新たに作ってほしいということを訴えているところです。
また、違約金というのがキーワードになっているんですけれども、今、裁判例の中で、出演の前日までにキャンセルをすれば、違約金は発生しないというような裁判例も出ていますので、ぜひ勇気を持って、出たくないものには出ないと断るということが必要だと思います。
それから、周りの人に相談してほしいと思います。

業界側は、この問題について、どう対応しようとしている?

坂爪さん:今、契約書を統一して、出演時にしっかり基準を作って、被害を防ごうというような動きがあります。

今回のグラレコ

番組の内容を、「スケッチ・ノーティング」という会議などの内容をリアルタイムで可視化する手法を活かしてグラフィックにしたものです。

質問
コーナー

Q1

契約書にサインしてしまった場合、どうしようもないのでしょうか?

去年9月、東京地裁は、「AVへの出演は本人の意志に反して出演させることはできない。その時点で契約は解除できるし、違約金も発生しない」という判断を下しました。1つの判例ではありますが、裁判所がこうした判断を下したことは画期的で、今回、スタジオ出演した伊藤和子弁護士は、「サインしたとしても、その契約は解除できるし、違約金は発生しない」と考えられるといいます。また契約時に、未成年だった場合は、契約を取り消すことができます。
Q2

インターネットで拡散したアダルト動画を削除することはできないのでしょうか?

被害女性から相談を受けた支援団体では、アダルト動画が投稿されているサイトの運営者に削除の依頼をするなどの取り組みを行っています。しかしサイト運営者が海外の場合が多く、削除してもらえなかったり、時間がかかったりします。また削除ができても、アダルト動画のデータをもっている第三者が投稿すれば、再び拡散するため、完全に削除するのは難しいのが現状です。伊藤和子弁護士は「自分の意思に反して、一度、出演すると引き戻せない。自分で抱え込まずに、勇気を出して、家族や支援団体に相談して欲しい」といいます。

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