クローズアップ現代

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No.38382016年7月13日(水)放送
あなたはどう考えますか ~新薬高騰が医療を壊す?~

あなたはどう考えますか ~新薬高騰が医療を壊す?~

あなたはどう考える “高すぎる”新薬で医療崩壊?

ゲスト 間寛平さん(お笑い芸人)

例えば、寛平さんが1年間に3,500万円する薬の治療を受けたとして、いくらぐらい負担することになると思う?

間さん:3割、1,000万ぐらいですか?

保険現役だと3割、1,000万だと思いますよね。

ですが、実際に負担することになる額というのは、65万円なんです。
なぜかと言いますと、日本にはこういう制度があります。

高額療養費制度といいまして、これは年齢や収入によって、毎月の自己負担額の上限が決まっているんです。
ですので、上限を超える部分はどれだけ治療を受けても、税金や保険料で賄ってくれるという制度です。

間さん:それ、いいじゃないですか。

まさに、すばらしい制度だが、高い薬がどんどん出てきて、使う人が増えていったら、どうなると思う?

間さん:ああ、破綻しますね。

この部分がどんどんかさんでいくわけですよね。
まさにそこです。
国民皆保険というすばらしい制度が破綻してしまうのではないかと危惧する声が出てきているんです。

あなたはどう考える “高すぎる”新薬で医療崩壊?

伊坂光男さん、74歳。
4年前、肺と食道にがんが見つかりました。
手術や抗がん剤治療を繰り返してきましたが、腫瘍は大きくなり続け、副作用にも苦しんできました。

伊坂光男さん(74)
「その時はもうそこに夢も希望もないわな。
これで俺、終わりかなと真っ白になった。」

しかし去年(2015年)12月、保険の適用になったばかりの新薬を使い始めて、病状はがらりと変わりました。

畑地治医師
「かなり小さくなっているということなんです。
非常によく効いているわけなんですね。」

治療を続けて半年。
腫瘍は、みるみる小さくなっています。

伊坂光男さん(74)
「助かったって思ったんや。
だからあの点滴は生きる源や。」

この新薬「オプジーボ」は、日本の製薬メーカーによって、22年の歳月をかけて研究開発されました。

「免疫チェックポイント阻害剤」と呼ばれ、手術、放射線、化学療法に次ぐ新しい治療法と期待されています。

「1人分で百何十万円。」

体重60キログラムの患者の場合、ひと月にかかる費用は266万円です。
70歳を超える伊坂さんの場合、医療費の自己負担は1割。

しかも、高額療養費制度があるため、実際に支払っているのは毎月1万2,000円です。
手厚い保険制度がなければ、治療はできなかったと伊坂さんはいいます。

伊坂光男さん(74)
「1万2,000円でやってくれるという、ありがたさは身にしみとる。」

こうした状況に、1人の医師が一石を投じました。
國頭英夫さんです。
このままでは医療財政がもたないと、財務省の審議会で警鐘を鳴らしました。

国の薬剤費は、年間8兆円を超えます。
國頭さんによると、仮に対象となる肺がん患者の半分5万人が、1年間オプジーボを使えば、総額1兆7,500億円のコスト増になるといいます。

日本赤十字社医療センター 國頭英夫医師
「国民皆保険がダメになるというレベルを超えてるんじゃないか。
国が破綻するのではないか。」

さらに國頭さんは、オプジーボには、医療費がかさんでしまう課題もあると指摘します。
例えばこの日、議題に上がった患者の場合。

日本赤十字社医療センター 國頭英夫医師
「どう見たって(腫瘍が)大きくなっている、これ。
普通の治療だったら、PD(病状悪化)だよね。」


実は、この薬が効くのは患者全体の2割から3割と言われています。
効果がない人への治療をやめれば、医療費は減らせるのですが、腫瘍が一度大きくなってから効果が出るケースもあるため、治療をやめる判断が難しいといいます。

日本赤十字社医療センター 國頭英夫医師
「この治療が続ける意義があるかどうかというのは、分かんないですね。
誰にも分かんないですよね。」

國頭さんは、高額な新薬は、今後も続々現れると考えています。
大胆な策を取らなければ、手遅れになる。
訴えたのが、保険の適用に何らかの制限を設けることでした。

日本赤十字社医療センター 國頭英夫医師
「(例えば)75歳を過ぎたらあとは寿命。
100歳の患者を(年間)3,500万円をかけて、101歳にするのかと。
高額をかけて寿命を延ばすような治療は(保険の)適用から外すというようなこと以外に私は、今の段階では思いつかない。」

保険でどこまで患者を守るのか。
國頭さんの問題提起に今、国や医療機関、そして患者をも巻き込んだ、激しい論争が広がっています。

大学病院医師
「(薬代が)高いとか安いとか全く関係ない。
目の前の患者に最良の医療を提供する。」

がんセンター医師
「これ以上のコストは賄えませんって、国が決めるという方法も当然ある。」

肺がん患者
「国民皆保険(の理想)を崩しますよ、という話じゃないですか。
僕ら死んじゃいますよ。」

肺がんの治療を続ける、伊坂光男さん。
薬の値段を巡る議論に、思いは複雑です。
国民皆保険があったからこそ、助かったわが命。
しかし一方で、孫やひ孫の世代に負担をかけたくはありません。

伊坂光男さん(74)
「(年齢制限は)『がんになったら死んでいけ』と言うのと一緒や。
そうやろう?
それはないと思う。
でも高齢者は助かっても、他の者が助からんなら意味がないやん。
これからまだ、若い子いっぱいいてるやん。」

あなたはどう考える “高すぎる”新薬で医療崩壊?

ゲスト 天野慎介さん(全国がん患者団体連合会理事長)
ゲスト 五十嵐中さん(東京大学大学院薬学系研究科医薬政策学・特任准教授)

寛平さんは、VTRをどう見た?

間さん:そやけど、今ちょっと聞いとったんやけどね、やっぱちょっと最後のあの言葉、厳しいね。
がつんと来るね。
(自分も助かりたいけど、孫やひ孫を目の前にしたらという気持ち?)
ちょっとでも僕は長生きしたいから。
(長生きしたいという気持ちの方が勝る?)
気持ちの方が。

今、注目されているオプジーボなんですけれども、重い副作用のリスクも報じられてはいるんですが、やはり高い治療効果が期待されているのも事実なんです。
さらに、ここで全体を見ますと、オプジーボ以外にも高額のがんの治療薬やワクチンというのが次々に、いずれ日本に入ってくるだろうというふうに言われているんです。
中には、ひと月に1,900万円かかるがんの治療薬、ワクチンというのも、いずれ入ってくるのではないかということで、では、こういう状況で何が起きるのか。

日本の医療費を見てみましょう。
日本の医療費は、ご覧のように、少子高齢化で増え続ける見込みなんですが、先ほどのような高額薬剤の登場で、このペースが加速していくのではないかと懸念する声が広がっている。
それが冒頭にあった、このままだと破綻するのではないかという声なんです。

では、もう1度、今起きている議論を整理しますと、これまでは患者、それから現場の医師は、いい薬であれば、どれだけ高くても命を救うためには試したい、使いたいんだという気持ちだった。
ここにきて、とある医師が「でも、そのまま全部使っていたら、医療財政が破綻してしまうよ」という警鐘を鳴らしたところで今、大きな議論が起きている。
じゃあ、どうすればいいんですかという時に、こんな話も出てきているんです。
「税金や保険料、国民の負担を上げることによって、国民皆保険を支えるということをするんですか?」、あるいは「薬の使用に優先順位をつけるということをするんですか?」、それとも「そもそも、薬価をもっと下げたらいいんじゃないですか?」などなど、いろいろな議論が出ているという状況で、さあ、皆さんがどうお考えになるのかというところなんですよね。
天野さんは、この問題をどう思う?

天野さん:僕も27歳の時に、血液のがんになって、新薬で命を救われた立場です。
一方で、金の切れ目が命の切れ目になりかねないという状況があるというふうに言われていますし、たぶん、多くの患者が、もしかしたら自分の身にもそういうことがあるかもしれないと思っていると思いますし、がんも2人に1人が、り患する病気ですから、多くの人にとって切実な問題になると思います。

五十嵐さんは、どう思う?

五十嵐さん:今の日本は、4人に1人の高齢者が、およそ6割弱の医療費を使っているというのが現状です。
今までは、税金や保険料を上げるというところ、あるいは、患者の負担割合を少しずつ上げるという形で賄ってきたものが、このままだとまずいから、上の2つをちょっと考えないといけないんじゃないかと。
これが、医療者の側から出てきたというのが、私は非常に大きなことだと思っております。
われわれではなくて、医師の側から出てきたということです。

寛平さんは、どう思う?

間さん:僕は国が負担したらどうかなと思うんですよ。
すごいいろんなところに使っているじゃないですか、余分なお金を。
例えば、最近やった選挙ね。
あれでも、すごいお金かかってるわけじゃないですか。
本当に見えへんとこで、すごいお金を使っていると思うんですよ。
(省けるところがあるのであれば、負担をさせるのではなくて、省いてもらうというのはどうか?)
できへんの?

五十嵐さん:もちろんそれもできますが、どれぐらい減らせるか分からないと。
それを減らせたとしても、ちょっと立ち行かない状況になりつつある。
だからこそ今、この薬というところにも、メスを入れざるを得ない時期にきているということだと考えています。

そもそも、薬価をもっと下げるというのは?

間さん:薬の値段でしょ?
そういうことはできへんの?

視聴者の方より:「新薬ってなんでそんなに高価なんですか?その仕組みが知りたいです」
薬価がなぜ簡単に下げられないのか。
まず、その製薬業界の話を聞いてみましょう。

“高すぎる”新薬 なぜ こんなに高い?

製薬メーカー73社が加盟する、日本製薬工業協会の会長です。
無理に薬価を下げれば、国民にも影響が出る恐れがあるといいます。

日本製薬工業協会 畑中好彦会長
「日本というのが、もし研究開発投資をするのに魅力的ではないマーケットになってしまいますと、(患者が)新しい医薬品にアクセスする、ここが制限されてしまうので。」

“高すぎる”新薬 なぜ こんなに高い?

間さん:僕ら、あほでは分からんわ。
何を言うてるかも。
意味が分からないですよ。

五十嵐さん:少しだけ分かりやすく説明いたします。
まず、1つの薬が出来るためには、2万分の1から3万分の1、すなわち残りのすべて失敗してしまいます。
残った1つが、化合物から薬になると。
もう1つは、化合物を薬にするために、動物、あるいは健康な人、そして病気の人というふうに、本当に効くのかなという試験をやらないといけませんので、そこに非常に高いコストがかかる。
それをある意味で反映したものが、薬の値段になりますので、高くなってしまうと。

間さん:そんなにかかるの?
研究するのに。

五十嵐さん:最近、昔の薬よりも、今の薬の方が、例えば単純に工場で作るんではなくて、バイオ技術を使って作るとか、あるいは遺伝子技術を使って作る、そうしたものが増えておりますので、どうしても高くなってしまうという部分は確かにあります。

患者の側から、先ほどの製薬業界のお話ですと「薬価を下げると今度、新しい医薬品にアクセスできなくなりますよ」という話もありましたよね。
一方で、厚生労働省は4月から、想定をはるかに超えて売れた薬に関しては、最大5割安くする制度を始めていたりして、何もしていないわけではないんです。
ただ、その製薬業界の言い分を患者の立場からどう聞く?

天野さん:ジレンマですよね。
下げられるものなら下げてもらいたいという気持ちはあるんですが、ただ一方で、例えば、がんの患者の数が少ない病気とか、難病とかで患者が少ないものは、薬価がものすごい低かったりすると、そもそも開発しようという気持ちが、企業から出てこないということも有り得るので、そうすると、患者のもとに必要な薬が届かないかもしれないということは危惧しています。

間さん:患者が少ないから、作らへんとか、そんなのもあるの?

天野さん:結局、患者の数が少ないと、その分、お金がもうからないかもしれないと、企業の方でやる気が起きないかもしれないですよね。

間さん:商売?

今のお話をお聞きすると、薬価を下げれば、すべて解決するという話でもなさそうじゃないですか。
となると今度、いろんな議論を今、見ていますけれども、じゃあ「薬の使用に優先順位をつけるんですか?」という話が再び、そ上にのってくるような感じもしてきますけれども、実はイギリスでは、薬の使用に、ある方法で優先順位をつける制度を始めているんです。
一体どういう方法なのか。
イギリスの現実から、日本の未来図を考えてみたいと思います。

“高すぎる”新薬 優先順位どうつける?

医療費の大部分が税金で賄われるイギリスでは、患者の自己負担はほとんどありません。
とはいえ、すべての薬が税金で賄われるわけではありません。
判断の材料となるのが、費用対効果です。

一定の効果を上げるために、費用がいくらかかったのか。
基準の金額を設定し、その基準より安ければ、費用対効果がよい。
高ければ、費用対効果が悪いと判断されるのです。

しかし、救う命と救わない命を金額で線引きするのかと、患者たちの不満が広がっています。

「我々の声を聞け!悲劇が起こる前に!」

ダニエル・タナーさん、28歳。
7歳のイザベルちゃんの母親です。
ダニエルさんは4年前、すい臓がんと宣告されました。
従来の抗がん剤や、放射線治療では効果が出ず、諦めかけていた時に現れたのが、ある新薬でした。

ダニエル・タナーさん(28)
「新薬のアブラキサンは最後の希望です。
症状が悪化したら頼れるのはこれだけです。」

しかし、希望の光は無情にもかき消されました。
日本では、保険適用されているアブラキサン。

イギリスでは去年、延命効果の割に費用が高すぎると、税金の保障から外れてしまったのです。
月に30万円かかるアブラキサンの治療を、自費で受けられる経済力はありません。

ダニエル・タナーさん(28)
「命に値段がつけられたようでつらいです。
多くは望みませんが、娘が母親と過ごす時間を少しでも延ばしてやりたい。
でも、残念ながらお金がないのです。
夢はかないそうにありません。」

“高すぎる”新薬の衝撃 「命と金」究極の選択?

間さん:かわいそうやね。
これ、お金持ちしか、この薬は使われへんということでしょ?
(もし、お金があれば?)
これを使えるもん。

日本でも、費用対効果という評価を試行的に取り入れていて、われわれからすると、どういうところをメリットとして考えればいい?

五十嵐さん:まず考えていただきたいのは、というか、強調しなければいけないのは、費用対効果を考えるということと、それを使って、薬をカバーしますか?しませんか?ということをバシッと切る、これは別のことだということです。
国によっては、費用対効果を考えるんだけど、それは値段を調整するのに使って、給付する・しないの決定には使わないという国もあります。
(つまり、費用対効果を使って、保険の範囲にする・しないをバシッと切るのではなくて、切らないようにするということ?)
そうです。
仮に費用対効果が悪かったとしても、実はイギリスにも、そういうシステムがあるんですが、あくまでそれは1つの基準ですよ。
例えば、ほかの薬が全然ありませんとか、あるいは患者の数がすごく少ない、もしくは、医療のニーズがものすごく高いということであれば、(費用対効果が)悪くても、この薬はほかの事情があるから、ちゃんとカバーしますよというようなシステムもあります。
(あくまで、いろいろな指標の1つとして、費用対効果を取り入れる動きが今、日本にもあるということ?)
その通りです。

間さん:でも、取り入れたら大変でしょう?

患者の立場から、もし費用対効果が取り入れられたら、日本はどう変わっていく?

天野さん:結局、患者にとって、何が大切なのかってことだと思うんです。
今、テレビを見てる人にとって、自分であるとか、大切な人が薬が使えなくなるかもしれない、そうなった時に、何が価値があるのか。
例えば、先ほどの女性の場合は、娘さんと過ごす時間が欲しい。
ただ、それは長生きできればいいという人ももしかしたらいるかもしれないけれども、お子さんの卒業式や成人になるまでは見届けたいという人もいるかもしれないし、価値がそれぞれで違うので、患者のそういった価値というものを、しっかり認めていく、反映させていくということが重要だと思います。

(患者1人1人にとっての価値は違う だから、その薬の効果は、客観的な指標だけでは決められない?)

間さん:考え方もあるでしょう。
自分が長生きしたいか、それともいろいろ考えるよね。

今回のグラレコ

番組の内容を、「スケッチ・ノーティング」という会議などの内容をリアルタイムで可視化する手法を活かしてグラフィックにしたものです。

質問
コーナー

Q1

オプジーボは、どういうところが画期的な薬なの?

オプジーボ(一般名:ニボルマブ)は、免疫チェックポイント阻害剤とよばれます。通常、免疫細胞ががん細胞を攻撃するわけですが、免疫細胞には、免疫細胞自身が暴走しないように「ブレーキボタン」があります。これまでは、この「ブレーキボタン」をがん細胞におされてしまい、攻撃の手を弱めてしまうことが課題でした。免疫チェックポイント阻害剤は、「ブレーキボタン」からがん細胞の腕を外すことで、免疫細胞が攻撃し続けられるようにしたのです。いずれにせよ、重篤な副作用を引き起こす可能性もありますから、使用に関しては、専門の医師と十分に話し合うことが大切です。
Q2

薬の値段はなんで高くなってきたの?

日本では、薬の値段は国が決めます。これまでにない新しい薬の場合、研究開発費や製造原価、販売費など、製薬メーカーのコストを回収する形で決められます。このうち例えば研究開発費は、10年で2倍。日本製薬工業協会によれば、1つの薬を世に出すまでには9年から17年、また、2万から3万の薬を試してようやく1つ成功する確率だといいます。背景には、より治療の難しい病気をターゲットにする薬が増えていることや、安全性の確保も高いレベルで求められていることがあるそうです。

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