クローズアップ現代

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No.38342016年7月6日(水)放送
介護離職 こうして切り抜けました ~知っておきたい 24時間 訪問介護~

介護離職 こうして切り抜けました ~知っておきたい 24時間 訪問介護~

介護に悩むアナタに! 驚きの24時間 訪問介護

親に介護が必要になった時、仕事を続けられるのか。
私たち現役世代にとって、切実な問題です。
今、介護が原因で仕事を辞める介護離職は、年間10万人。
介護のために仕事を辞めざるを得ない、または、転職を迫られているという離職予備軍は42万人にも上っています。
視聴者の皆さんから、およそ700件の多くのご意見が寄せられていまして、「通勤時間とデイサービスの送迎の時間が合わず、仕事を辞めざるを得なかった」「深夜でも、トイレに起こされ、睡眠がとれず、会社で仕事にならなかった」などといった声です。
そうした中、介護離職を防ぐと期待を集める、驚きの介護サービスがあります。

介護に悩むアナタに! 驚きの24時間 訪問介護

自動車製造工場で働く、石川良二さん。

自宅で寝たきりの母親、セキさんの介護をしています。
要介護度は、最も重い5です。

石川良二さん
「行くっけ。」

石川セキさん
「気をつけて行きんしゃい。」

本来は、付きっきりの介護が必要なはずですが、良二さんは、毎朝6時半には仕事に出かけます。
職場は、自宅から車で1時間の所にあり、自宅にすぐ戻る事はできません。
寝たきりの母親を置いたままで大丈夫なのでしょうか?

石川良二さん
「留守にして、おふくろ一人になりますよね。
でも、安心できる。」

そんな良二さんが利用しているのが、24時間の訪問介護サービスです。
出勤直後の朝7時。
自宅にヘルパーが訪ねてきました。

ヘルパー
「おはようございます。
お願いします。」

洗顔、排せつの確認、食事の介助、服薬まで、およそ30分間、ケアを行います。
ここまでは従来の訪問介護と違いはありません。

このサービスの特徴は、ヘルパーが一日に何度も自宅を訪れ、ケアを行う点です。
この日も、午前10時に2度目の訪問がありました。

ヘルパー
「体の向きを少し、1回変えましょうか。」


床擦れを防ぐための体位変換や、排せつチェックを15分ほどでこなしてゆきます。

更に昼の12時。
食事の準備と介助を行いました。

ヘルパー
「石川さん、出来ましたよ。」

仕事に出かけた息子の代わりに、ヘルパーが母親の介護を担っていたのです。

従来の訪問介護では通常、ヘルパーの訪問は1日1回程度です。
決まった時間に訪問し、最短でも原則30分以上という縛りがありました。
これに対し、24時間の訪問介護では、ヘルパーが毎日、何度も自宅を訪問します。
短ければ15分程度の短時間のケアを繰り返すのです。

24時間の訪問介護に辿り着く以前セキさんは、有料老人ホームに入所していました。
月27万円の負担が重荷になり、退所しました。
安く入れる施設を探しましたが、待機者が多く、入所まで半年以上かかると言われました。
八方塞がりの状態に陥ったのが、息子の良二さんでした。
今の仕事を辞めるしかないのか。
しかし、仕事を辞めれば、生活は成り立たなくなります。

石川良二さん
「ずっとみて、でもその間、収入がないと、生活費もあるし生活が出来ないですよね。
もうパニックですよね、頭の中。
頭がぐるぐるです。」

良二さんは、このサービスを利用した事で、職場の大事な戦力として活躍しています。

石川さんが勤める会社の社長
「(介護で)一人二人減るのは非常に厳しいです。
石川くんは非常に立派だと思っています。
仕事と介護を両立させているので。」

ヘルパーの対応は、夜間も行われています。
24時間体制が整えられ、緊急時には駆けつけます。
しかし、このサービス、途方もなく高くなるのでは?

実は、利用回数に限らず、同じ料金に設定されています。
要介護5のセキさんの場合、食費を除き、自己負担の割合は1割。
月に2万8,000円ほどです。

母親のセキさんにとっても、ペットのいる自宅での暮らしは掛けがえのないものだと言います。

石川セキさん
「やっぱり家のほうがいい、楽です。
気を遣わんでもいいから。
(チビが)いないと寂しいしね。」

夕方6時すぎ、石川さんが仕事から帰ってきました。

石川良二さん
「ただいま。
笑顔になってるから大丈夫です。」

石川セキさん
「大変だったね。」

夜10時。
この日、最後の6回目のケアを受け石川さん親子は、無事一日を終える事ができました。

石川良二さん
「今はこんな介護があるのか。
ここまでみてもらえるのかと、実際に、ほんますごいですよ。
ほんとに楽しく介護させてもらっている。」

24時間の訪問介護を利用して、育児と介護のダブルケアを乗り越えようとする家族がいます。
専業主婦の橋本芳美さんです。

芳美さんは、サラリーマンの夫と10か月の娘、そして、77歳になる義理の母親と暮らしています。
母親は、アルツハイマー型の認知症を患い、去年(2015年)6月から24時間の訪問介護を利用しています。

訪問は、一日3回。
ヘルパーが、食事の準備や服薬の確認をします。
芳美さんが育児に手を取られていても、ヘルパーが母親の介護を担ってくれるため、症状は落ち着くようになりました。
このサービスを利用する前は、芳美さんが母親の介護を担っていました。
しかし妊娠して、出産の里帰りをする事になり、介護が難しくなります。
芳美さんは、母親を一時的に施設に預ける事を考えましたが、強く抵抗されたのです。

橋本芳美さん
「いきなり、がんってすごい音立てて、『あんなところに、二度といきたくない』と言って、すごい攻撃的で、1時間くらいずっと、延々と説教されてしまって。
子育ての不安と介護、じゃあどうしていくんやろっていう。
追い詰められましたね。」

夫の弘和さんは当時、介護のために休職や退職の事が頭をよぎったと言います。

橋本弘和さん
「ほんと、この家族はめちゃくちゃになるって思った。
休むか、辞めるかのことも選択として入れとかないといけない。」

このサービスを利用し、介護の負担を大きく減らした事で、気持ちに余裕が持てるようになりました。

橋本芳美さん
「15分ってほんとわずかな時間なんですけれど、それがあることによって、家族の笑顔が増えたっていうのが、いちばん良かった。」

介護離職を防ぐ切り札! 24時間 訪問介護

ゲスト 岩名礼介さん(三菱UFJリサーチ&コンサルティング上席主任研究員)

24時間訪問介護サービスは、これまでの制度と何が違い、どんなメリットがある?

岩名さん:VTRの中にもありましたけれども、今までは、どちらかというと週に数回とか、1時間単位とか、2時間とかっていう単位でまとめてケアが入っていた訳ですけれども。
(基本的には、1日1回という形?)
そうですね。
今回の24時間の訪問介護、利用者さんの生活のリズムに合わせて、必要な時に入っていくというスタイルがとられています。

回数はどうやって決めている?

岩名さん:当然これは、無制限に何回でもという事ではないんですが、どういう生活をしたいのか、どういう事を改善したいのか、そういった目標を明確に立てた上で、そこに必要な回数を入れていくという形になります。

(相談しながら決めていく?)
そうですね。
もう1つ重要なのは、夜間、急に体の調子が変わるとか、年を取るとそういう事って皆さんある訳で、そういった時に駆けつけがあったり、あるいは電話で相談したりというような事が柔軟に行えるというところが、大変重要だと思っています。
皆さん、生活の中で1人だけで置いておくと不安だっていうのが、実は現役世代の一番の悩みでもありますので、そういった点をカバーできるというのは、大変大きいというふうに思いますね。
もちろん医療的なケアが必要な方は、訪問看護も一緒に提供する事ができるという事で、このサービスで在宅生活を継続できるというふうに思っています。

料金は、地域によって異なるが、1か月で要介護5の方でも3万円しないくらい 定額で、そして深夜も対応するとなると安く感じるが?

岩名さん:これは、実は自己負担1割の場合ですけれども、実際に事業者に支払われている金額は、保険から9割残り出ていますので、30万近いお金をお支払いして、それで1か月の生活全体を見て頂くというやり方をしている訳です。
先ほどVTRの中で、施設、有料老人ホームで27万円かかっていたと。
いろいろな価格があるんですが、食費だとか、居住費みたいなものも当然、施設の場合は入ってきますので、在宅にいらっしゃる方はご自分の家で。
食費もお支払いになっていると思いますが、それと別に3万円でこういったサービスが受けられると、そういった仕組みになっています。

これだけ便利な制度なんですけれども、実は利用が広がっていないんです。
利用者の数を見てみますと、こちら。
全国で、1万3,500人ほどなんです。
また、事業所の数も少なく、全国の市町村の8割近くで、このサービスを行っている事業所がありません。
なぜ、こんなに広がっていないのか?

岩名さん:残念ながら、やはり知られていないというのが、実は大変大きなポイントです。
もうサービスが出来て4年もたっているんですけれども、こういった番組が作られる事自体が、なかなか知られていないといった状況だと思います。
ご存じないという事になると、事業者の方も、本当に利用して頂けるのかという不安も出てきますので、二の足を踏んでしまうという事もあるんだと思います。
(どんな事が必要になってくる?)
自治体の皆さんには、このサービスの有効性、どういう事に効果があるのか、使うと、どんな生活が実現できるのか、そういった事を是非、積極的に発信して頂くという事が大変重要だと思います。

普及の壁になっているのが、このコストの問題もあるという事なんですけれども、事業所の中には工夫する動きも出始めています。

なぜ広がらない!? 24時間 訪問介護の課題

24時間訪問介護は、1日に何度訪問しても料金は定額のため、事業者の中には採算割れしたり、撤退したりするケースが少なくないのです。

そこで、こちらの事業所では、利用者の自宅をヘルパーが効率的に回れるソフトを開発しました。

かつては、1人のヘルパーが、1日に訪問できる利用者の数は限られていましたが…。

移動する時間や距離、滞在する時間をもとに、最も効率的に回るルートを割り出す事で、より多くの人を訪問できるようになりました。
その結果、利用者の数は順調に伸びています。

訪問介護に取り組む会社 中村徹也部長
「包括報酬(定額)でやっていますので、極端な話、1日10回以上、20回以上来て下さい、その要望に応えるだけでは、この事業は成り立たない。」

なぜ広がらない!? 24時間 訪問介護の課題

効率化を図って、コストを下げる工夫をしている事業所もあるが、こうした工夫で24時間の対応という事は、本当に成り立つ?

岩名さん:いろいろな事業所が今、工夫を重ねながら、効率的な方法を進めています。
ただ、一番ポイントになるのは、利用者の数。
一定のエリアの中で、たくさん利用者の方がいらっしゃれば、それだけ効率的にサービス提供ができますので、繰り返しになりますが、皆さんに知って頂くという事がまずは重要だというふうに思っています。

視聴者の方より:「鍵を預けるのが不安だ。」「自宅に他人を入れるのに抵抗がある。」「施設と違い、密室なので虐待が心配。」「何回も違う人が来ると問題が起きそう。」

岩名さん:これは、このサービスに限った事ではないと思うんですが、在宅での介護をしていくという時は、どうしてもこういう心配が出てくるんだと思います。
ただ、先ほどのVTRにもありましたが、やっぱり家が一番安心できるんだ、気を遣わなくていいんだ。
是非、使って頂いて、このサービスがどれだけご本人の心理的な負担も含めて軽減できるのかっていう事を知って頂ければというふうに思います。

普及が望まれる24時間訪問介護なんですけれども、ある地域では、利用者だけにとどまらない効果が生まれています。

在宅介護の常識を変える! 驚きの24時間 訪問介護

奈良県で、特別養護老人ホームを運営する社会福祉法人です。
4年前から、24時間の訪問介護を事業の柱に据えた事で、予想外の効果を上げています。

利用者の自立を促すために、訪問するスタッフを理学療法士をはじめ、医療や介護の専門家にまで、積極的に広げています。

この日、理学療法士が独り暮らしの89歳の女性の家を訪ねました。
膝関節の変形で、一時寝たきりに近かった、この女性。
施設に頼らず、自宅で暮らし続けたいと、リハビリに取り組んでいます。

池田ノブ子さん
「この年になって、一勝負です。
がんばって。」

取り入れているのは、「生活リハビリ」と呼ばれる手法。
日常生活で、できるだけ体を動かし、自立度を高めようというのです。

例えば、ベッドから起き上がって、脇に置いてあるポータブルトイレで用を足す場合。
あえて、ベッドのそばに手がつける高さのタンスを置きました。

理学療法士 坂本祥一さん
「4点で支持できるから、1個離しても3点残るじゃないですか。
三脚と一緒だから、安定する。」

オムツに頼らないようにするための工夫です。

池田ノブ子さん
「具合よろしいですよ。」

こうした生活リハビリを行う事で、女性の体の状態は回復しました。
昔と変わらず、大好きな料理をできる事は心の支えになっています。

池田ノブ子さん
「体は不自由やけど、自分の生き方を全うしたいと思うてね。
人に頼るより、自分で生きる道を考えてね。
出来ることはなるべく自分でね、ちゃんと切り開いて、強く生きていかなあかんと思います。」

自宅で暮らし続けたいという意欲を高める、生活リハビリ。
2割近くの人に介護度の改善が見られています。
自立を促す取り組みは、思わぬ効果をもたらしています。

夕方6時を過ぎると、介護施設の職員の姿が一斉に消えてしまいます。

介護施設 職員
「定時になったらほとんど帰ります。」

夜は自分で排せつを済ませる人が増えたため、早朝、夜間の訪問介護が減少したのです。
職員の負担が大きく減っています。

また、サービスが展開されている大和郡山市では、導入されてから特別養護老人ホームの待機者数が大きく減少。
市では、在宅サービスの充実が要因の一つだと分析しています。

社会福祉法人 村城正理事長
「特養だったら24時間365日支えている。
それを地域に持っていこうと始まった。
(特養の)廊下が(地域の)道路、(特養の)部屋は家なんだと。
これは切り札になる、これからの在宅を支える。」

在宅介護の常識を変える! 驚きの24時間 訪問介護

驚くほど、いろんな効果が出ていたが、どう見た?

岩名さん:介護というと、体の状態が悪くなって、できなくなった事を代わりにして差し上げるっていう印象があると思うんですけれども、この奈良の取り組みというのは、どちらかというと自分でできるようにするにはどうしたらいいか、そういう支援を軸に据えて取り組みをされていると。
大変いい取り組みではないかなというふうに思っています。
こういう事ができるのも、1つは、やっぱり毎日毎日、利用者の方の様子を見ているので、こういう事ならできるかもという事をきちっと見て、判断ができているという事なんだと思うんですね。
このサービス、2025年に向けて在宅を支えていく、中心になるサービスだというふうに思っておりまして、この奈良の取り組みというのも、大変うまくいってるものの1つとして注目をしています。

普及には、まだ課題もあるが、この24時間訪問介護が広がっていくと、介護離職は解決すると考えていい?

岩名さん:これは、そんなに簡単な事でもないかなと思っています。
もちろん、大変重要なサービスですし、いいサービスなんですが、当然ほかのサービスと組み合わせていく。
民間のサービスも組み合わせていくといった形で、さまざまな工夫をしながら、在宅を支える。
これは、やっぱり人それぞれの、皆さんの生活が多様だから、いろいろな組み合わせがあるんだと思います。
そういう意味ではもう1つ重要なのは、働く側の、企業側の支援というのも大変重要だと思います。
介護というのは、1週間だけ休めば、それで何とかなるという問題ではないです。
介護休業にしても、短時間労働みたいな事も含めて、多様な働き方をきちっと支援していくという事が大変重要だと思います。
もう1つ、最後に重要なのは、先ほどの取り組みで、重度化させない、重くしないっていう事が、実は介護離職においては本当に一番重要な部分じゃないかな。
そういう意味では、先ほどの奈良の取り組みは、大変興味深いというふうに思っています。

今回のグラレコ

番組の内容を、「スケッチ・ノーティング」という会議などの内容をリアルタイムで可視化する手法を活かしてグラフィックにしたものです。

質問
コーナー

Q1

他のサービスとの併用はできますか?

24時間訪問介護の利用者がデイサービスやショートステイを併用するのは、一般的なことです。支える家族の休養や、地域の人々との交流、機能訓練も、在宅生活では重要な支援です。その場合、他のサービスを利用している日数に応じて24時間訪問介護の月額利用料から一定の減額がされます。ただし、24時間訪問介護の利用料は、利用限度額の大きな部分を占めるので、他のサービスとの兼用で、限度額を超えてしまう場合もあるようです。また、サービス内容が似ている通常の訪問介護や訪問看護との併用はできません。
Q2

24時間 訪問介護サービスはどこでも利用できるの?

平成28年4月現在、1か所でも24時間訪問介護に取り組んでいる事業所があるのは368保険者(介護保険の実施主体で主に市区町村)で、全国の8割近い地域に事業所がありません。未だに県内に1つも事業所がないというところもあります。 国は、サービスの拡充を計画しており、2025年までに利用者が15万人になると見込んでいますが、現在は1万3500人にとどまっています。最大の原因は認知度の低さで、事業所がないのでケアマネジャーが制度の良さや仕組みを知らず、事業所も参入に二の足を踏むという悪循環に陥ってます。普及のためには自治体の役割は重要で、たとえば横浜市では24時間訪問介護の利用事例をまとめた冊子やリーフレットを事業者と協力して作成、現在、市内の各区に最低2つの事業者がおり、計38事業者が活動しています。

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