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No.38232016年6月16日(木)放送
徹底検証 マイナス金利政策

徹底検証 マイナス金利政策

徹底検証 マイナス金利政策

ゲスト 芳野創記者(NHK経済部)

マイナス金利政策がスタートして4か月 どこまで効果が出ている?

芳野記者:効果については、まだ限定的だと言わざるを得ないと思います。

このマイナス金利政策、こちらの模型を使って説明したいと思います。
日銀は、銀行から大量の資金を預かっています。
これ、当座預金っていうんですけれども、この当座預金の一部に、マイナス金利をつける。
これがマイナス金利政策というものなんですね。
(本来、お金の貸し借りの場合は、金利はプラスのはずだが、逆 つまり?)
銀行が日銀にお金を預けたままだと、マイナスの金利、つまり手数料を取られてしまう。
(損をしてしまう?)
損をしてしまうと。
この黒田総裁、いますけれども、これ以上、日銀にお金を預けてくれるなという政策でもあるんですね。

日銀はこういう状態を作りまして、銀行に対して、企業や家計への貸し出しを促す。
そして、経済を活発化しようという政策なんですね。
(借金をしてでもこうしてお金を動かしたい、回したいという狙い?)
さらにマイナス金利政策で、金利全般を押し下げまして、家計や企業がお金を借りやすくする、そういった効果も狙っているんです。
(お金を借りてでも動かしたいというのは、なかなか刺激的な政策ともいえるが?)
このマイナス金利政策、デフレ脱却への、いわば劇薬とも言える異例の政策なんです。

こうしたマイナス金利政策ですが、実は私たちにとって身近な預金や、ローンにも影響が広がり始めています。

異例の“マイナス金利” 預金は?ローンは?

マイナス金利政策は、堅実な資産運用を心がけてきた人たちの間に不安を広げています。
大手証券会社が開いた投資セミナーには、資産の運用に悩む高齢者たちが多く詰めかけていました。

みずほ証券 名古屋駅前支店 絹川幸恵支店長
「いま何パーセントか、ご存じですか、定期預金の金利。
0.0…、いくつ。
もう、ないですよね、金利。
少しでも資産を守っていただく。」

定期預金の金利や、金融商品の利回りが大きく低下。
老後の生活設計への懸念が強まっています。

参加者
「いまの時代は本当にやりづらい。」

参加者
「年金や貯金も価値が下がっている危機感がある。」

さらに、比較的リスクが低いとされる投資信託や、一部の学資保険などの保険商品が販売停止に追い込まれるなど、広い範囲に影響が出ています。

一方、マイナス金利政策でメリットを感じている人もいます。
住宅ローンの借り換えプランを提案しているベンチャー企業です。

この日、相談に訪れたのは40代の女性。
会社の同僚から住宅ローンの借り換えを勧められ、やって来たといいます。
全国およそ120の銀行の1,000を超える住宅ローンから希望に合ったものを探します。

担当者
「こちらのメリットですと、約480万円ぐらい。」

40代の女性
「大きいですね。
正直、こんなにメリットが出るとは思っていなかった。」

この女性は、20年近く前、千葉県にあるマンションを父親と購入し、ローンを組みました。
その時の金利は、固定で4%。
現在、毎月の返済額は11万5,000円。
残り17年4か月支払い続けて、およそ2,370万円を返済する予定でした。
提案を受けたのは、固定金利0.99%での借り換えでした。
この場合、毎月の返済額はそのままで、3年7か月も早く返済でき、総返済額は480万円浮くことになります。
女性は借り換えを決断。
手続きを進めてもらうことにしました。

40代の女性
「この状況がまだ有利なうちに、支払いができるうちに払いたい。」

住宅ローンの借り換えは、新たな消費を生む可能性もあります。

5年前、住宅ローンを組んで、一軒家を購入した男性。
低い金利のローンに借り換えて、毎月の返済額を9,000円減らそうと考えています。

「結構減るなと思った。」

減らした9,000円は、2人の子どもの習い事に使うつもりです。

「(毎月9000円は)大きいですよ、やっぱり。
例えば次の月謝で2万円となったときに、2万円を出すのか、1万円で済むのかでいうと大きいと思う。」

さらに、マイナス金利政策で需要が高まっているのがリフォーム業界です。
新たにローンを組んで、大規模なリフォームをしようという人が増えているのです。

「これで契約させていただく形になります。」

この日、工務店を訪れた夫婦。
およそ900万円の費用すべてを、ローンで賄うことにしました。
銀行から変動金利1%という条件が提示されたからです。

「半信半疑だったけど、うれしい気持ちと、ほっとした気持ち。」

サンビック 設計担当 友政伸也さん
「若い世代の方たちが問い合わせをしてきて、住宅ローンを使って、リノベーション(大規模リフォーム)をやろうと。
銀行が率先して安い金利で貸してくれるのは、こんなにありがたいことはない。」

徹底検証 マイナス金利政策

ゲスト 嶋敬介さん(ファイナンシャルプランナー)

プラスな面もマイナスな面も、両方ある?

芳野記者:まず、プラスの面で言いますと、なんといっても、住宅ローンの借り換え。
これが非常に活発になっているんですね。
借り換えで、返済の負担が軽くなった分、これが消費に回っていくというのが、日銀の狙いなんです。

しかし、消費は必ずしも上向いてはいません。
総務省が毎月公表している消費支出。
これは、直近の今年(2016年)4月まで8か月連続で、対前年比を下回っているんです。
将来の生活への不安などから、節約志向が根強いということが言えると思います。

マイナス面でいうと、コツコツ貯めた学資保険などが一部販売取り止めになっている?

芳野記者:それが、マイナス金利政策という「劇薬」の副作用と呼べるものです。
金利の低下で、保険会社や資産運用会社にとって、資金の運用は極めて厳しくなっています。
このため、一部の保険、あるいは投資信託の販売を取り止めたり、あるいは値上げをしたり、こういった動きが広がっているんです。
手堅い投資で資産を守りたい人にとっては厳しい影響と言えると思います。

資産を守るためのヒント どうすればいい?

嶋さん:2つほど考えたんですけれども、1つが、“優遇措置”というのを活用する。
もう1つが、手数料で損をしないという考え方です。
通常、どうしてもマイナス金利になると、どうやって増やそうかというふうに考えられるんですけれども、増やすだけではなくて守る、そのためにそれをどういうものが運用として考えられるかという考え方の1つなんですね。
これが税金というもの、税制の優遇措置を使う、ちょっと難しいんですけれども、来年(2017年)からは今の一般の専業主婦の方でも入れるような確定拠出年金というのが始まるんですが、それと同じような考え方、これはちょっと難しいので置いときまして、年金保険というのがあります。
将来の自分の年金のために、積み立てておく保険なんですけれども、これで最高4万円の控除が、税金を計算する時に受けられるんです。
(税金で引かれる分が少し減る?)
そうです。
そうすると大体、利回りと考えると、6%以上の確定利回りと考えることができますので、非常に有利になると。
(それは所得に関係なく、その保険に入っていたら?)
全員が、どんな人でも、それは引いてもらえるということになります。
(増やすことに熱心になるのではなく、減らせる部分をいかにまた減らすかという考え方?)
考え方を切り替えるというところが大事だと思うんですね。

もう1つの「手数料」とは?

嶋さん:手数料というところですけれども、これは、先ほど住宅ローンのお話もありましたけれども、住宅ローンっていうのは大体、皆さん金利に目が行ってしまう。
どこの金利が安いかということを当然、見られるわけですけれども、それぞれ金融機関で金利だけじゃなくて、手数料もかかってくるわけなんですね。
その手数料も合わせて、金利は一体どうなんだということが1つ。
もう1つは、よくやられるのが、コンビニでお金を下ろす時に、手数料も考えずについつい何百円として落とされてしまうけれども、これも自分の預金の残高から考えると、非常に利回りとして考えれば、ものすごい出費をしていることになりますので、そのあたりも自分で見方を考えてみるというのが大事じゃないかなと思います。
(いかに増やすかということだけじゃなく、少し考え方を変える?)
視点を考えるということですね。

減らされる分を減らすとか、あとは地道に手数料もしっかり考えるということなんですね。
今回、マイナス金利政策に危機感を募らせているのは私たち個人だけではないんです。
お金を回さないといけない、要となる銀行も、何とか貸し出しを増やしたいと必死です。

必死なんですが、なかなかここが動かない。
容易ではないようです。

異例の“マイナス金利” 危機感募る銀行

マイナス金利政策のもと、融資の拡大が一段と迫らることになった地方銀行。
東海地方に100店舗余りを展開する銀行です。
借りてもらうための金利の引き下げには限界があると感じています。

「金利の競合は本当に激しい。
金利競争、どこまでいっても歯止めがかからない。」

東海地方では、もともと金融機関同士の、しれつな顧客の奪い合いがあります。
全国的に見て、比較的景気が良いとされる東海地方に他県の銀行も続々と参入。

その結果、貸出金利が全国平均を大きく下回り、「名古屋金利」と呼ばれる状態が生まれていました。
もともと低くなっていた金利をこれ以上引き下げるのは、収益を圧迫するため難しい状況です。

愛知銀行 矢澤勝幸頭取
「収益機会というのは非常に狭まる。
どうやっていくか、非常に厳しい。
いたずらに金利競争にのみこまれない営業体制をとっていきたい。」

異例“マイナス金利” 「借りられない」企業

リポート:早川俊太郎(NHK名古屋)

企業側にも、安易に融資に飛びつけない事情があります。

従業員38人のプレス加工の会社です。
売り上げの大半を自動車関連が占めています。

社長の出原直朗さんです。

「今、どちらから(電話)?」

日研工業 出原直朗社長
「銀行さんからです。
事務所にいないので、直接かかってきます。」

マイナス金利政策の導入以降、金融機関から融資の申し入れが一段と増えているといいます。
しかし、出原さんは借り入れには慎重です。
かつての苦い経験があるからです。
業績の拡大を見込んで、積極的に設備投資を行ったものの、リーマンショックの後、受注が激減。
多額の借金が残りました。

日研工業 出原直朗社長
「やっぱりそれ(設備投資)が足かせとなって、設備の費用が払えないところは、すごく後悔した。」

今、出原さんが気がかりなのが、世界経済の先行きです。
自動車の輸出が鈍れば、下請けの企業に真っ先に影響が出るためです。

日研工業 出原直朗社長
「今、金利が安いからといって、飛びついていくことはしない。
やっぱり自分の事業計画の上に、必要な原資を調達する。」

一方、借りたくても借りられないという企業もあります。
東海地方に10店舗を展開する食品スーパーです。
新店舗のオープンで、一昨年(2014年)は売り上げを10億円以上伸ばし、さらに店を増やす方針です。
成長を見込んで、金融機関からは続々と融資の提案が持ちかけられています。
マイナス金利政策によって、提案される金利は、ますます下がっているといいます。

山彦 山田博比古副会長
「1か月で、0.075下がっている。」

この日は、メインバンクの担当者が営業に訪れました。
しかし、応対した副会長の山田博比古さんは、融資を受けられない事情を打ち明けました。

山彦 山田博比古副会長
「人手不足というところで、非常にどこの店も苦労している。
非常に頭の痛い状況だ。」

人手不足が深刻化する中、新しい店舗を作りたくても、計画が進められないというのです。

この春は12人の正社員の採用を目指していましたが、確保できたのは5人にとどまりました。

出店を検討していた土地です。
周辺は人口が多く、恵まれた立地でしたが結局、諦めざるを得ませんでした。

山彦 山田博比古副会長
「物と金は、こういった低金利の時代で借りやすい状況。
いちばん難しいのは、人。
クリアしていかないと、新店舗もなかなか難しい。」

金利を下げるだけでは、融資を伸ばすことは難しい。
この銀行では、何とか融資の需要を掘り起こそうと、コンサルティング機能を一段と強化しています。

この日、営業に向かったのは、地元の産業機械メーカーです。

主力製品は、畳を作る機械。
銀行側は、中国で畳ブームを起こすためのプロジェクトを提案。
新たな需要が生まれ、事業を拡大させる時には融資をさせてほしいと持ちかけました。

愛知銀行渉外課 見田悟主任
「ブームが広がっていって、その時に、例えば設備投資が発生する。
運転資金が発生するときに、ご要望いただきたい。」

愛知銀行渉外課 見田悟主任
「経営者は何を求めているのかを真剣に考えることが求められている。
こういった活動を続けていくことで、金融機関が生き残っていくと信じている。」

異例の“マイナス金利” 危機感募る銀行

銀行にとっても非常に大きな影響がある?

芳野記者:マイナス金利政策の影響という点では、三菱東京UFJ銀行が国債の入札にあたりまして、特別な条件で国債を購入できる資格、これを国に返上する意向を示しておりまして。
(それはつまり?)
これは、利回りがマイナスになった国債を保有していても、経営にとっては負担になるっていうふうに考えたからなんです。
その国債を発行している国と、それを支えてきた銀行との関係に影響が及んでいるということが言えると思います。

 視聴者の方より:「このマイナス金利の政策の効果っていつ出るの? いつまで続くの?」

芳野記者:日銀の黒田総裁は、「マイナス金利政策の効果が現れるまでには、しばらく時間がかかる」というふうに言っているんですね。
ただ、その期間というのも、半年も1年もかかるものではないというふうに言っています。
導入から4か月。
黒田総裁の発言にそってみますと、そろそろ企業の投資ですとか消費、これが活発になる。
こういった時期に当たるともいえると思います。
(さらに、海外の動きも影響してくる?)
一方、金融市場では来週23日に、イギリスでEU離脱の賛否を問う国民投票が開かれます。
その結果次第では、円高、株安が進む可能性があるというふうに指摘されています。
そうしますと、企業は投資に慎重な姿勢を強めて、このマイナス金利政策が効果を発揮する上で、大きな壁になる可能性もあるんですね。
マイナス金利政策が副作用を上回って、それでメリットを日本経済全体に与えることができるのか。
この政策にとっては、まさに真価を問われる局面に入ったと言えると思います。

今日(16日)改めて、マイナス金利政策が続くことが決まった このマイナス金利時代を私たちはどう賢く生き抜いていけばいいのか、心構えは何?

嶋さん:心構えというと、すごく大上段的なお話になると思うんですけれども、我々ファイナンシャルプランナーという仕事からしますと、やはりライフプランというのを立てていただきたいなと思うんですね。
ここに2つのキーワードがありまして、工夫ということと、もう1つは選択なんですね。
その選択をする時に、どこから、どの立場から考えるか。
例えばライフプランというところですと、先ほどの住宅ローンという例でいいますと、住宅ローンを組み替えた場合に、借り換えた場合に期間を短縮するというのと、それから金額を下げるというのがあります。
それが、その措置によって、これから例えば子育ての時代だと金額を下げてる方が楽であったりすることもありますし、キャッシュフローを作ってみると、この方がいきやすいということもあります。
さらには、短くしたら、老後をどう暮らしていくかということに工夫をしないといけない世代もあるわけです。
(目先に捉われないということ?)
もう1つは、やはり金融リテラシーを高める。
これは、非常に難しいように思うんですけれども。
(認識力とか、理解する力ということ?)
例えば、お子さんをお持ちの方ですと、そのお子さんが小遣いをあげる時に、ドルと円と、どちらで選べるかということを言ってあげて、子どもは何のことかよく分からないんだけれども、今日はドルでやると決めれると、自分が肌で為替っていうのを感じれるようになるんですね。
(いろんなお金が世界にあるんだというところから、まず意識していく?)
そうなんです。
そういう教育が、意識が大事なんじゃないかなと思います。

今回のグラレコ

番組の内容を、「スケッチ・ノーティング」という会議などの内容をリアルタイムで可視化する手法を活かしてグラフィックにしたものです。

質問
コーナー

Q1

マイナス金利政策の目的は何ですか?

日本経済をデフレから脱却させ、2%の物価上昇率を達成することが最大の目的です。日銀は、国債などを大量に買い入れて、世の中に資金を供給する金融緩和策で、日本の経済を活性化させようとしてきました。しかし、中国など新興国経済の減速や資源価格の下落、それに伴う株安や円高もあって、景気は思うように上向きませんでした。そこで、かつてない試みとして、始まったのがマイナス金利政策です。 銀行は、日銀にお金を預けたままにしておくと、マイナスの金利がかかります。いわば手数料を支払う形で、損をしてしまう状況をつくることで、銀行に対し、企業や個人に積極的に融資をするよう後押ししようとしています。また、世の中の金利全般を押し下げることで、これによって、企業や個人がお金を借りやすくする効果も狙っています。こうして、経済を活性化させて、物価を安定的に押し上げようとしているのです。
Q2

マイナス金利政策は異例の政策だと思いますが、いつどのように正常化できるのでしょうか?

正常化に向かえるのは、日銀が完全にデフレから脱却したと判断してからになります。日銀は、来年度中には目標である2%の物価上昇率を達成し、デフレから脱却するとしています。ただ、正常化へのプロセス、いわゆる「出口戦略」を検討するのは時期尚早だともしていて、いつになれば、正常化に向かえるのかは明らかになっていません。 一方で、マイナス金利政策を含めた金融緩和策で金利が大幅に低下したことによって、資金の運用が難しくなった金融機関が、保険商品や投資信託の販売停止に追い込まれるといった「副作用」も出始めていて、これを上回るメリットを日本経済にもたらすことができるかどうかが問われています。

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