クローズアップ現代

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No.38192016年6月9日(木)放送
追跡“サイバーストーカー”の闇 

追跡“サイバーストーカー”の闇 

“サイバーストーカー” 知られざる実態

これまでストーカー被害の大半は、元交際相手や配偶者など、ごく身近な関係の間で起きていました。
しかし、新手のサイバーストーカーは、ツイッターなどのSNSを通じて、無数につながる人どうしで起きることが特徴です。
加害者の中には、一方的に相手を知っているファンのようなケースもあれば、全く見ず知らずの人がストーカーになる場合もあります。
現在のストーカー規制法では、連続して電話やファックス、メールを送信する行為は規制の対象になっていますが、SNSは含まれていません。
今、SNSで気軽に自分の身近な日常や感じたことを発信している方も少なくないと思います。
しかし、そうした行為が、サイバーストーカーの引き金となっている実態が見えてきました。

女子大学生ストーカー事件 SNS 凶行の背景

人を歌で感動させたい。
大学に通いながら歌手を目指し、定期的にライブをしていた冨田真由さん。

先月(5月)、出演する予定だったライブハウスの前で、首や背中など、20か所以上を刺されました。
ライブハウスを経営している男性が取材に応じました。
事件直後の様子を目の当たりにしていました。

ライブハウス 経営者 島さとしさん
「彼女はここに倒れていました。
彼女自身、顔も血だらけなもので、分からなかったです、本人ってことが。」

何の落ち度もない冨田さんが、ツイッターで一方的に恨まれたことは信じられないといいます。

ライブハウス 経営者 島さとしさん
「みんなすごい、かわいがっていましたよ。
『真由ちゃん、真由ちゃん』って。
娘みたいなものですから、言葉に表せられないです。
それぐらい悔しいです。
許せない。」

冨田さんは、事件の12日前、地元の警察署に相談に訪れていました。
「ファンからツイッターなどに執ように書き込みをされているので、やめさせてほしい」と訴えました。

もともと、友人やファンなどとツイッター上でやり取りをしていた冨田さん。
異変が現れたのは、今年(2016年)1月。
岩埼友宏容疑者がツイッターを始め、冨田さんに頻繁にメッセージを送り始めたのです。

岩埼友宏容疑者
“楽しい時間をありがとー♪”

当初、岩埼容疑者は、冨田さんへの好意を示す内容を中心に書き込んでいました。
その一方で、この時期、冨田さんのライブ会場を訪れ、電話番号を聞き出そうとするなど、付きまとい始めていました。

冨田さんは返事をしなかったと見られます。
岩埼容疑者はいらだちを見せ始めます。

岩埼友宏容疑者
“ふざけんなマジで。
スゲー怒ってる。”

書き込みは徐々に攻撃的な内容にエスカレート。
その数は、4か月で300件以上に上りました。
相談を受けた警察署では、書き込みに暴力を示唆する内容がなかったなどとして、直ちに危害が加えられる恐れがないと判断。
岩埼容疑者に警告も出しませんでした。

数多くのストーカー加害者を診てきた、精神科医の福井裕輝さんです。
ツイッターを利用することで、ストーカー行為が急速にエスカレートしたと見ています。

精神科医 福井裕輝さん
「一般的にストーカーがたどる経過と同じ心理的過程のようなものを、SNS上で非常に短期間の間に起きている。
“現実のように取り違える”、“相手のことを勝手に思い込む”。
否定的な感情の持ち方に関しても、スピード感が出てきた。」

“サイバーストーカー” 衝撃の実態

ツイッターなどを通じて付きまといを行う、新手のサイバーストーカー。
加害者の心理状態は、どのようにエスカレートしていくのか。

かつて警察に警告されたことがある30代の女性が取材に応じました。
ある作家のファンだったという女性は、ツイッターを始めたことをきっかけに、ストーカー行為にのめり込んだといいます。

元加害者
「いままでは相手が遠い存在であったのが、その人の日常生活の様子が分かったり、ほぼリアルタイムなので、いつもそばにいるような気持ちになったので、その人が起きたと思ったら、“おはようございます”と声をかけて、返事が頻繁に返ってくることがあったので、好意を持ってくれてるんじゃないかと。」

次第に、このままではいけないと感じ、神社に縁切りの祈願にも行ったといいます。
しかし、ツイッターをやめることはできませんでした。

元加害者
「眠たいときに布団の中で、ずっとツイートすることもできますし、書き込みをしなくても、夜中であろうと昼間であろうと、相手が何をしているかチェックする習慣がついていたので、見てしまうと話しかけたい欲求がまた出てきて、やめなきゃっていうのはあったけど、やめきれずに、ずっと。」

女性が当時、送りつけたメッセージの内容です。

“奥様がご旅行に行っている間、○○と会えませんか。”

“私の目標は、あなたの赤ちゃんを産んで育てることです。”

相手から、もう連絡を取らないでほしいと言われましたが、ツイッターやメールも含め、多いときで1か月に100通送信。
自宅にまで押しかけるようになり、警察から接触を禁じる警告を受けました。

元加害者
「私がこんなに苦しいんだから、相手もちょっと苦しんでほしい。
欲求のほうが雪だるま式に膨れあがっていたので、その人の平和を乱したいっていう気持ち。」

女性は、再びストーカー行為に走らないよう、今は通話機能しかない携帯電話を使っています。

“サイバーストーカー” 知られざる実態

ゲスト 津田大介さん(ジャーナリスト)
ゲスト 小早川明子さん(NPO法人ヒューマニティ 理事長)

これまでのストーカーというのは身近な人の間で起きていたが、サイバーストーカーというのは見ず知らずの人の間で起きている このサイバーストーカーの怖さというのは、どういうところにある?

津田さん:僕も仕事柄、こういった相談を受けることは結構あるんですけれども、昔より増えている印象があります。
かつては、有名とか無名問わず、なんか距離がある人、興味を持った人とは、接点がなければ、日常のこととか、その日のことを知ることはできなかったわけです。
VTRにもありましたけれども、リアルタイムでそういう日常とかプライベートなこととか、何を考えているのかみたいなことが分かることで、親近感を抱きやすいツールがSNSで、もちろんそういういいところもあるわけですよ。
適切に使えれば、ちょっと距離があった人がすごく短い間で仲良くなれるっていう、そういういい面もあるんですが、それが少しはき違えてしまうと、「見ず知らず」という言葉がありますけど、たぶん、それをストーキングしている側にとっては見ず知らずじゃないんですね。
(『すごく親しい』と勘違いする?)
それが、やはり新しい情報環境が変化したことで、新しいタイプのこういうサイバーストーカー、一方的に知っているだけの、そのまま思いを募らせる、そういうものが生まれているんだなと思います。

小早川さんは実際に、被害者や加害者の方から20年近くいろいろな相談を受けてきて、その相談の現場で感じるサイバーストーカーの怖さというのは、どういうところにある?

小早川さん:まず、ストーキングというのは、特定の相手に対する過剰な関心と、反応を求める禁断症状のような接近欲求なんです。
これは、例えば昔だったら、1対1の人間関係の中で捨てられた側といいましょうか、見切られた側の方が追い求めるというような関係があって、動機や言い分がいっぱいあったんです。
言ってみれば、アイドリングの時代が長くって、なかなかドライブに入るっていうのに時間がかかったんですけど、このサイバーストーカーの場合は、そういった人間的な関係を持った背景がすごく薄いので、その動機の部分が非常に希薄なんです。
なので、欲求が入ったら、すぐドライブが入って、一気に悪化するというスピードの速さがやっぱり一番怖いですよね。

小早川さんはカウンセリングなどをする時、区別、段階を踏んで行っている?

小早川さん:これは加害者の心理的危険度を、私は3段階に分けて説明する時に使うものなんですけれども、最初は、今言ったように、自分が好意を持っている接近したい相手なのに、なかなかその相手が振り向いてくれないとか、捨てられたっていう時に、「やり直したい」「もういっぺん友達になろう」とか、「最後に1回会いたい」とかっていう段階を「リスク」と名付けているんですね。
この段階というのはまだ攻撃が始まっていないので、今後、攻撃が始まるかもしれませんよというようなところなんですが、そこできちっとしたリスク管理をしないと、次は「デンジャー」という段階になります。
(例えば?)
それは、「こんなにお願いしているのに、お前、振り向いてくれないのか」ということで、苦しいものですから「お前が悪い」と、「責任を取れ」「約束を守れ」「心のケアをしろ」といった、いろいろ攻撃に入るんですね。
これが「デンジャー」という、まさにストーキングが始まりましたよ、彼は危険ですよ、1対1では解決できませんよという段階なんです。
ここで介入が適切に行われないと、あるいは警察から警告が出るなどのことがないと、今度は「ポイズン」という一番悪い(段階)。
加害者は、非常に長いことストレスにさらされますので、今度は死にたくなるんですね。
なので被害者に対して、よく言う言葉は「死んでやる」ということなんです。
(いちばん究極の?)
その段階を高じると、今度は自分が死んでやるというよりも「殺してやる」という、全く合理性を失っていくという段階になるんですね。

サイバーストーカーの場合は「ハザード」という、一番ベースの部分に生まれてしまっている これはどういうこと?

小早川さん:つまり、今までは1対1の人間関係の破綻から、ストーキングが起きていたんですけれども、SNSがネット社会になってから、人々が手段を持つことができて、特定の相手というものが多数になってしまったんです。
要するに、発信している人間が非常に多いものですから、受けている人間も多いですよね。
生身の人間関係はないんだけれども、非常に特定の発信している相手に対して、接近要求を持つという段階が訪れたわけです。

津田さん:1対1の時は「リスク」「デンジャー」「ポイズン」の3段階だったのが、スマホとかツイッターが出てきたことで、「ハザード」が新たに生まれたということですよね。

SNSを利用されるようになって、誰もが被害者、もしくは加害者になる可能性、おそれがある?

小早川さん:だからもう、足し算から、かけ算に増えていく時代になったと思いますね。

誰もがSNSを使うと関わりうる可能性があるということが分かってきました。
このサイバーストーカーの被害、どのように広がっているのか、実態をご覧ください。

“サイバーストーカー” 被害の実態

2年前、サイバーストーカーの被害に遭ったという20代の女性です。
ある日突然、見知らぬ男から、行動を監視されているような内容のメッセージがツイッターに送られてきました。

“サイバーストーカー”被害者の女性
「“好きだ”とか、私の服装を毎日送ってくるようになりました。
“きょうはピンクのTシャツで、白のスカートだね”みたいな。
気持ち悪かったですね。」

無視し続けたところ、1か月後に送られてきたメッセージには、「いつか殺す」と書かれていました。
さらに1か月後、メッセージを送っていた男が自宅の前に現れ、女性は殴られました。
男は逮捕されました。

“サイバーストーカー”被害者の女性
「どんどん近づいてきているというのは、全く分からなくて、顔が見えないから、ただ怖いもあるし、“殺す”って思ってないかもしれないし、本当に思っているかもしれない。
どっちだか分からないから怖い。」

ネット上の見ず知らずの人間を簡単につなぐSNS。

トラブルなどの相談を受ける民間団体では、サイバーストーカーの被害の訴えが急増しています。

全国webカウンセリング協議会 安川雅史理事長
「1か月で50件くらい相談は来ます。」

相談件数は3年前、東京・三鷹市で起きたストーカー殺人事件を機に、年々増え続けています。

高校3年女子(広島)
“SNSで知り合った男性が付き合ってほしいとアプローチしてきます。
無理だと言うと、自殺すると怖いことを書いてきました。”

高校1年女子(神奈川)
“私の行動や書き込みに干渉してくる。
私が通っている女子校を調べて、校門で待ち伏せされた。”

全国webカウンセリング協議会 安川雅史理事長
「(SNSに)何食べた、どこへ行った、学校を何時に帰った、当然そういうことばかり書いて、画像もたくさん貼っていると、(ストーカーが)かわいいなって、どこにいても、いつでも、その子の行動を見ることができてしまう。
そのうちにだんだん恋愛感情が芽生えてくる。」

さらに、SNSでつながった知人にも被害が拡大するケースも出てきています。

30代のこの男性。
一昨年(2014年)、知り合いの女性に交際を申し込まれ、断ったところ、被害が始まったといいます。

ツイッターには、男性は女性関係にだらしないとする、ひぼう中傷が書き連ねられました。

ツイッターなどSNSでは、ネット上でつながりを持つフォロワーが誰なのか知ることができます。
男性に直接ではなく、男性のフォロワーに、女性からのひぼう中傷のメッセージが届いていたのです。
フォロワーの多くは、男性の仕事の関係者でした。

“サイバーストーカー”被害者の男性
「これが部下、これも取り引き先の人、これ同僚。」

同僚に指摘されるまで、そうした書き込みに全く気付かなかったという男性。
弁護士に対策を依頼し、被害が収まるまで、1年近く悩まされ続けました。

“サイバーストーカー”被害者の男性
「私の部下や後輩に、ばらまかれたりというのが一番つらかったですね。
上司に呼び出されて『大丈夫なのか』とか、心配かけた。
どこまで広がっていくのか分かりませんでしたし、ほんと気持ち悪いですよね。」

“サイバーストーカー” 急がれる対策

ゲスト 福田和郎記者(社会部)

ストーカー規制法で、SNSが対象になっていないというのはおかしいと思うが?

福田記者:現在のストーカー規制法では、メールを何度も送りつけることは規制の対象になっています。
ただ今回の事件のように、ツイッターなど、SNSを通じて、執ようにメッセージを送ること自体は規制の対象になっていないのが現状なんです。
ただ、こうした中で、今回の事件を受けて、SNSについても規制の対象にしていこうという動きが出てきています。

小金井の女子大学生ストーカー事件は、もしSNSが規制の対象になっていたら防ぐことができたかもしれない?

福田記者:確かに規制の対象になっていればという指摘もありますが、ただ今回の事件は、警察が相談を受けた時点で、危険性を判断できていなかったことなど、確かに警察の対応についても、問題があることが明らかになっています。
実際、冨田さんも警察に相談する際にも、ツイッターの書き込みを自ら持ち込んで訴えていて、法改正が進んだところで、すべてが解決するわけではないと思います。
やはり警察に相談に来た時点で、警察は相手の気持ちをきちんとくみ取って、的確に判断していくことが重要だと思います。

視聴者の方より:「とにかく、こういうのがどうやったら解決できるのか」

津田さん:なかなか難しいんですけれども、日常を写した写真とか、プライベートなつぶやき、また、思わせぶりなツイート、ポエムのようなツイートって、見る側がすごく拡大解釈しやすいので、そういうのはできるだけ避けたほうがいいと思います。
あとは「リスク」の段階で「ちょっと危ないかも、この人」と思ったら、思い切って一時期アカウントの更新を停止するとか、一回アカウントを削除するということも大事だと思うんですね。
(サイバー断捨理とあるが?)
コミュニケーションツールなので、ストレスを抱えながら使うものではないと思うので、一回やめて、ほとぼりを冷まして、そして信頼できる人とだけ、またつながるといった自衛策が必要かなと思います。

小早川さんからのアドバイスは?

小早川さん:私ができることは、実は、このサイバーストーカーに対してはすごく少ないというふうに考えていまして、要は、さっき言ったように、動機の部分が非常に薄いので、寛容したり、カウンセリングをしたりする隙間がすごく薄いんです。
なので、一気に駆け上がっちゃうことを考えると、芽のうちに摘むっていうのがすごい大事なので、最初の「リスク」の段階で、1対1の関係に持ち込もうとする動きが見えたら、すぐに、それは「ノー」だということを、まずやってもらいたいと思うんですね。
(そんなに強く言って大丈夫なのか、と思うが?)
最初のうちだったら、早くであれば大丈夫だと思います。
次に「ノー」を言ったとしても、それでも炎上してきたら、第三者に介入してもらうことが必要です。
何しろ、もう駆け上がってしまったら、規制で取り締まるっていう方向で早くいかないと、事件が予想以上に早く起きてしまうということで、取り締まったら、実は従来の心理療法ではなかなか効かない部分があるので、欲求を低減できるというような、条件反射制御法という治療法を私はお勧めしてるんですけれども、その欲求を低減させることが一種、脳に起きている出来事だというふうに。

津田さん:SNSって、ブロック機能があるんですけれども、実はそれを利用したことによって、逆上するケースもあるんですが、これはどういうタイミングでやるべきですか?

小早川さん:実は、何も言わないでブロックするということは、非常に危険なんです。
相手が、もう俺を見捨てたんだなというふうに恨みを増幅させたりするので、まずは「ノー」を言った後、反応があったらば、苦しいのでやめてくださいと一回言って、これからブロックしますよと言って、ブロックをしてほしいと思うんですね。

SNSを使う人が広がっている中で、使い方というのが問われる?

津田さん:そうですね。
SNSをやめても日常が終わるわけではないので、まず日常を回復するための手段を考えることが、何よりも大事だと思います。

今回のグラレコ

番組の内容を、「スケッチ・ノーティング」という会議などの内容をリアルタイムで可視化する手法を活かしてグラフィックにしたものです。

質問
コーナー

Q1

デジタルストーカーの被害にあわないためには、日頃からどんな対策をとったらいいですか。

日常を写した写真、プライベートなつぶやき、思わせぶりなツイートなどは、見る側が拡大解釈しやすいので、できるだけ避けるようにしてください。
Q2

デジタルストーカー被害にあった場合は、どうやったら解決できますか。

危険は芽のうちに摘むことが急務ですので、すぐに兆候があった場合は、「NO!」というようにしてください。逆に、何もいわないでブロックすることは、相手が「俺を見捨てたと」恨みを増幅させる危険があります。まずは「NO!」といったあと、反応があれば、「苦しいのでやめてください」ともう一度言う。そのうえでブロックするようにしてください。また、危ない人が来たと思ったら、思い切ってアカウントの更新も検討してください。

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