クローズアップ現代

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No.38132016年5月31日(火)放送
あなたの脳を改造する!? 超・映像体験(バーチャルリアリティー)

あなたの脳を改造する!? 超・映像体験(バーチャルリアリティー)

漁師もホストもびっくり!? 驚異の映像体験VR

向かったのは、東京・品川にある大手ゲームメーカー。

さまざまな年齢や職業の方にご協力いただきVRを徹底解剖します。
ちなみにみんな今回が初体験です。

さあ、始まりました。
「クローズアップ現代+」バーチャルリアリティー体験実験です。
実況は私、小郷知子がお送りします。
そして解説は吉田修平さんです。
よろしくお願いいたします。

まず体験するのは、海のアドベンチャー。
人食いザメに襲われるスリルを味わいます。

エントリーナンバー1番、漁師の及川克己さん。
漁師歴24年。
海を知り尽くした男、及川さんはバーチャルリアリティーの海をどう受け止めるのでしょうか。
それでは及川さん、深海の世界へ、3、2、1、スタート!

さあ、始まりました。
海の中の映像が出てきました。
光がさし込んでいる様子が分かりますね。
あっ、今、上のほうを見ています。

漁師 及川克己さん
「すんげぇなこれ。」

どの方向を見ても切れ目のない映像。
及川さんは完全に海の世界に包み込まれます。

いま及川さんがマンタを捉えています。

漁師 及川克己さん
「触れそうだよ。」

ちょっと手が出ましたね。

漁師の本能か、思わずマンタを捕まえようとした及川さん。
なぜCGの映像に、これほどまでにリアリティーを感じるのか。
ポイントは、視野の広さにあることが分かってきました。
解き明かしたのは、最新の脳科学です。

視野の広さの違うモニターで、同じ映像を見たときの脳の反応を比較します。
すると、VRと同じ視野角100度の時、大脳の内側部に活動量が著しく増えた部分があったのです。
ここは、自分の体が動いていると認識する部分だと考えられています。

つまり、VRが実現した広い視野によって、脳は映像が動いているのではなく自分が動いていると錯覚するのです。

さあ、VR初体験の漁師、及川さん。
いよいよサメと遭遇です。

ソニー・インタラクティブエンタテインメント 吉田修平さん
「サメが自分の周りを回っていくので、非常に気になるんですね。」

今、かみついてきました。

どうする?及川さん。

漁師 及川克己さん
「開いちゃった!」

襲いくるサメから目が離せません。

後ろのほうまで首を振って、サメの姿を捉えようとしています。

海の男が身をよじらせるほどのリアリティー。
それを実現している秘密は、映像の切り替えの速さにあるといいます。

ヘッドマウントディスプレーに付けられたセンサーが、体験者の頭の動きを感知。
コンピューターがその動きに合わせて映像を書き換え、表示します。
このスピードがとても重要なんです。

ソニー・インタラクティブエンタテインメント 吉田修平さん
「いろいろ研究した結果、(頭の動きと映像のずれが)0.02秒より短くなると、ほとんどの人がふだんの生活で見ている感覚と変わらなく感じるという結果が出ています。」

実は、このスピードを実現するのは、技術的に極めて困難でした。
コンピューターとディスプレーの性能が向上したことで、2年前、ようやく0.02秒の壁を越えたのです。
現実感のポイント、その2。
それは、瞬時の映像反応でした。

また来ました。
おっ、って声とともに体を何度もびくびくと動かしています。

漁師 及川克己さん
「ヤメロッ!」

海の男、初のバーチャル体験の感想は?

漁師 及川克己さん
「すごいリアルですね。
びっくりしました。
体がよけちゃうんだから、(現実)そのものだと思っちゃった自分がいるから。」

続いての体験者は、東京大学ゲーム研究会の齊藤一織さん。
ゲームは得意だけど、女の子は少し苦手。
そんな彼に体験してもらうのはこちら。

“それじゃ、今日もよろしくお願いします!”

女子高生の部屋で家庭教師をするという、先ほどとは全く違う映像体験です。

東京大学ゲーム研究会 齊藤一織さん
「おーすごいなコレ。
すごいなコレ。」

齊藤さん、女子高生と目を合わせることができません。
すると…。

“あの、先生、ちゃんと聞いてます?”

バンダイナムコエンターテインメント 原田勝弘さん
「もう少し相手の目線をしっかり真ん中に捉えて見てあげなきゃいけない。
少し(目線が)外れているので怒られた。」

体験者の視線を読み取りそれにキャラクターが反応する。
映像の現実感のポイント、その3。
それが、双方向性です。
これによって、キャラクターを生身の人間だと錯覚し始めるといいます。

“先生、ちょっと横向いて。
夏になったら、どこかに連れてって。”

東京大学ゲーム研究会 齊藤一織さん
「ふふっ。」

続いて体験するのは、新宿・歌舞伎町でシャンパンキングの異名を持つホスト、宮本武蔵さんです。

本当にリアリティ感じると思いますか?

ホスト 宮本武蔵さん
「生の女性とVRは違うとは思っているんですけど。」

と言っていた宮本さんですが、この後、究極のVR体験をすることになります。

ホスト 宮本武蔵さん
「うわっ!?
すげぇ!」

女の子に話しかけられて、うなずいています。

実はこの女子高生、次第に体験者に近づいていくようにプログラムされています。

“まじめに答えてよ〜。”

ホスト 宮本武蔵さん
「ごめんなさい。」

バンダイナムコエンターテインメント 原田勝弘さん
「ごめんなさいとか言う必要ないんですけど、思わず言ってしまう。」

あっ、女子高生がペンを拾おうとしています。
それを一緒に拾おうとする宮本さん。

バンダイナムコエンターテインメント 原田勝弘さん
「完全に同調してますね。
キャラクターの考えや思いと。」

実はこれも、映像に仕組まれた巧妙な作戦です。
この時、女子高生との距離は半径45センチ。
密接距離といわれる領域に侵入しています。
他人が近づくと不快に感じ、ごく親しい人だけに許される距離です。
相手に手で触れられるほどの至近距離。
その気恥ずかしさが、キャラクターの実在感を一気に高めるといいます。
そして究極の体験が訪れたのは、このあと。

“あ、先生ちょっと動かないでね。”

お、ここで?

“じっとしててね。”

女子高生がぐっと顔を近づけた時、その距離10センチ以下。

ホスト 宮本武蔵さん
「吐息が聞こえたんですよ。
すごいリアルでした。
息遣いが聞こえたときは、本当にドキドキしました。」

バンダイナムコエンターテインメント 原田勝弘さん
「実はそんな仕掛けは入っていないんですけど、クロスモーダル現象といって。」

クロスモーダル現象とは、五感が刺激された時、そこにはない音やにおいなどを感じてしまう錯覚現象です。
宮本さんの場合、女子高生との距離が縮まったことで、実際には聞こえないはずの吐息を感じたのです。
VRは、さまざまな最新技術と心理を揺さぶるプログラムで脳を錯覚させる、究極の映像体験なのです。

脳がだまされる 究極の映像体験

ゲスト 伊集院光さん(タレント)
ゲスト 暦本純一さん(東京大学大学院 教授)

伊集院さん:クロスモーダル現象。
名前、初めて知りましたけど。
アナログな日常生活でいうと、うちのかみさんがいつも、煮物に隠し味で梅干しを入れるんですけど、台所を見てたら梅干しが用意してあるの。
煮物が出来たから食べたら、「お前の隠し味、今日も利いてるな、梅の味するな」って言ったら、かみさん入れ忘れてるの。
その時、確かに味も匂いもしたじゃないっていうことって人間には起こるでしょ?
恐らく、そういう錯覚を人工的にちゃんと起こしているというか。

クロスモーダル現象、とても不思議に感じるが?

暦本さん:人間って怖いですね、視覚とか聴覚と一緒に来ると、いろいろとないものが聞こえちゃったりするというのが、クロスモーダルで、記憶にも依存するんですよね。
さっきの東大生とホストの方は、たぶん経験が違うので、そこはない状況が聞こえてしまったんじゃないかなと思いますね。

ほかにもこういうことは起こりうる?

暦本さん:例えば、トロってありますよね。
VRで、お寿司のトロを出すんです。
実は、アボカドだったりするんですけど、食べると本当にトロの味がしたりする。
感覚が変わっちゃったりするんですね。

伊集院さん:すごい興味深いですね。

視野が広くなったり、0.02秒という切り替えの速さだったり、そういったことで脳はだまされてしまう?

暦本さん:人間の脳って、すごくよく出来ているのは、視覚とか聴覚とかを全部ちゃんとやってないんですね、逆に。
うまいこと省略したりして世界を認識しているので、そこを逆にVRをうまく使ってあげると、リアルなんだなって逆に思っちゃったりするんです。

伊集院さん:その何か所かのポイントさえクリアされちゃうと。

暦本さん:人間の認知のポイントをうまく使うと、VRが本当リアルっぽくなるんですね。

完璧な世界を用意する必要はないということなんですね。
そうした脳の錯覚を利用して現実にないものを、現実のように感じさせる、このバーチャルリアリティーなんですが、エンターテインメント以外のさまざまな分野で今、利用されています。

日本の大手IT企業で開発中のシステムです。
何をしているかといいますと、バーチャルリアリティーの中に作った工場の生産ラインで作業をしています。

こうして、使い勝手を確かめているんですね。
実際に工場を建てる前に確認することでよりよい設計をすることができコストも大幅に削減できると期待されているんです。

暦本さん:存在しないところを作っちゃったり、プロダクト製品とかも、まだないのに確かめるとかってことができるっていうのが、VRの大きなところですね。

バーチャルリアリティーは、医療の世界でも注目を集めているんです。
こちらアメリカの大学病院です。

脳外科手術の前に、医師が患者の脳の中に入って、くまなく見るために使われています。
あたかも自分の体が小さくなったかのようにできるバーチャルリアリティーならではの利用法なんですね。

伊集院さん:ちょっと驚きですね。
自分の中でちゃんとシミュレーションしておくと、そこに患部があるんだとかっていうことが、ちゃんと把握できる、できやすいみたいな。

この利用、どういうふうに見る?

暦本さん:これって、実は人間のサイズがちっちゃくなってるってことですよね。
だから本当の現実じゃない、さらに現実を超えたりするので、単に現実を作り直すだけではなくて、もう人間が拡張されちゃってるというふうに言うこともできると思うんですね。
(こうした利用、ほかにもある?)
例えばVRだと、セラピーとかですね、そういうコミュニケーションを図るために使われたり、そういうことも使われてますね。

視聴者の方より:「バーチャルリアリティーと現実を混同してしまうのでは?」

伊集院さん:僕は、新しいこういうものができると、その不安は当然起こると思うんですよね。
確かに混同することもあって。
百何年前に映画が出来た時に、その映画館で、前から機関車が来るっていうのにみんな逃げたっていう。
最初はそういうものだと思います。
その後、付き合い方がだんだん分かってきたりとか、人間ってやっぱり頭がいいから、そこに関しては、これは安心みたいなことは、また知識が蓄積していくとそういうことは少なくなったりとか。

過激なアダルトソフトが出てきたり、人を殺してしまう残虐なソフトが出てきたり、ちょっと怖い面もあると思うが?

暦本さん:確かに訓練とか教育って、ものすごく効果があるので、逆にいうと、軍事用の使い方も非常に盛んになっていて、軍事の練習とか訓練を、実際に戦場に行かなくてもできるようになってるんですね。
でも、その先には、もしかするとゲーム感覚で人を殺してしまう、そういうような危険性というのもあると思います。

伊集院さん:あとは、例えばコンテンツを提供する人たちが、どっちのものを多く作るかっていうこともすごく大切なことで、逆に例えば、僕なんか不登校の時代があったんで、どうしても学校に行けない時に、学校に行く道すがらを1回これでシミュレーションしてみようってできたら、もしかしたら学校に、結局、辞めちゃったんですけど、復帰できたかもしれないとか、いいほうの使い方と、いいバランスが取れるといいかなっていう。

人の心の影響ということなんですけれども、どれほど本当に人の心は変わってしまうのか、アメリカで行われている研究を取材しました。

あなたの人格まで変わる!? 驚異の映像体験VR

スタンフォード大学のジェレミー・ベイレンソン教授。
VRで、人間の心を操作できることを示しました。

ベイレンソンさんが行ったのは、スーパーヒーロー実験。
皆さん、ご存じですよね?
スーパーマン!
VRの中を自由自在に飛び回り、子どもを助けるなど、まるで自分がスーパーマンになったかのような実感を得ます。

「子どもを見つけたよ。」

一方こちら、比較するために行ったVR体験。
自由に飛ぶことはできず、ヘリコプターの乗客として、窓越しに眺めるだけ。
子どもを助ける達成感がありません。

本当の実験は、ここからです。
研究スタッフが体験を終えた被験者の前で、わざとペンを落とします。
この時、ペンを拾うのを手助けしようと被験者が動き始めるまでの時間を計測したのです。
すると、被験者の行動に大きな差が現れました。

ヘリコプター体験をした人の結果です。
30人の平均は6.45秒。
6人は、全く手伝おうとしませんでした。
一方、ヒーロー体験をした30人の平均は、わずか2.23秒。
手伝わない人は1人もいませんでした。
VRによって、自らがスーパーヒーローになった体験をした人たちは、積極的に人助けをするようになったと考えられています。

ジェレミー・ベイレンソン教授
「超人的な能力を与えられ、空を飛び、人々の命を救うヒーローになったら、現実世界でもその人は善良な心を持ち、人助けをするようになるのです。」

では、逆に残虐性を増すようなVRの体験をしたとしたら。
ベイレンソンさんは、人間の悪い面が引き出される可能性があると強く懸念しています。

ジェレミー・ベイレンソン教授
「VRにはすばらしい面も、恐ろしい面もあります。
つまり使い方次第なのです。
とてもポジティブな経験を与えることもできますが、悪用しようとすれば、非常に恐ろしいことになるでしょう。」

どう つきあう? 驚異の映像体験

伊集院さん:いやぁ、なんか、もちろんいいほう、悪いほう、新しいテクノロジーは使いようですよね。

視聴者の方より:「子どもに悪影響はないの?」

暦本さん:子どもの目の影響みたいなものも考慮されているので一応、現状12歳とか13歳以上の人が使うように推奨はされているんですね。

心、人格への影響があると思うと不安になるが?

伊集院さん:いいほうに、やっぱり僕らはファン、僕は好きだっていうことだから使ってほしくて、分かんないけど、家を取り壊す時には、必ずVR映像で残しておくと後で、自分が年取った後に、あの家で過ごす時間をもう一度みたいな、そういうのも心の影響のいいほうとして使えたりはするんで、やっぱりその作る側が、きちんと考えて作ってほしいなとは思います。

視聴者の方より:「肌がピチピチしていたころの自分に戻りたい!」

伊集院さん:青春時代の追体験なんてことは、ある意味、僕はタイムマシーンみたいなことにも。

暦本さん:自分が元気だった時のことが再現できたりしたらすばらしいですよね。

質問
コーナー

Q1

匂いや味、感触を表現できる可能性はありますか?

嗅覚、味覚、触覚を人工的に刺激する研究は国内外で進められています。例えば、ゲストの暦本純一さんの研究室では「電気による刺激で味を生み出すフォーク」といった研究もされています。一般に普及するまでのどのくらいかかるか定かではありませんが、表現の精度は技術の進歩とともに確実に上がっていて、夢はふくらみます。さらには、VRによって脳に直接作用し、脳神経の損傷を受けた患者の治療を行う研究も国内外で進められています。
Q2

家庭のパソコンでVRが一般的に普及するのはいつ頃でしょうか?

すでに複数の海外企業がヘッドマウントディスプレーの市販を開始しており、今年秋には国内企業も市販を開始する予定です。利用に際しては処理能力が非常に高いパソコン、専用のゲーム機が必要となりますが、今年はVRが家庭に普及する「VR元年」といわれています。

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