クローズアップ現代

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No.38082016年5月19日(木)放送
追跡!タワマン「空中族」~不動産“バブル”の実態に迫る~

追跡!タワマン「空中族」~不動産“バブル”の実態に迫る~

追跡!タワマン「空中族」 驚きの錬金術

不動産会社 営業担当
「ご案内します。」

今、人気の湾岸エリアに建てられた、地上52階のタワーマンション。

不動産会社 営業担当
「都心の眺望が一望できる、このスケール。
1億6,000万円台を予定しています。」

今、こうした高級物件の購入と転売を繰り返し、値上がり益を手にする「空中族」と呼ばれる人たちが増えているといいます。
富を築く空中族。
素顔はどんな人たちなのか。
私たちは、その知られざる実態に迫りました。

過熱続く 東京のマンション投資

不動産投資の過熱ぶりを確かめるために向かったのは、月に1度のセミナーです。
会場には、40代以下を中心に、およそ200人が詰めかけていました。

セミナー講師
「(金利は)どこに預けても、いまは0.01%です。」

セミナー講師
「不動産投資は長期的に安定的に、家賃収入を受け取ることが目的です。」

投資対象として盛んなのが、マンションです。

自分の住まいとは別にマンションを購入し、賃貸物件として他人に貸し出して家賃収入を得るという投資です。
この低金利時代に、少しでも収入を得たいと考える人が急増。
去年(2015年)の倍以上にまで膨れ上がっています。

参加者
「サラリーマンの収入だけだと不安ですし、別のもの(収入源)を持っておきたい。」

参加者
「結婚できなかったら一人で生きていかなくちゃいけないじゃないですか。」

参加者
「女なのでどこまでいつまで働けるかなとか、そういう不安ですね。」

「空中族」とは何者? 舞台はタワーマンション

東京オリンピックや金融緩和などを追い風に、局地的な右肩上がりを続けてきた東京の不動産市場。

新築マンションの平均価格は去年、リーマンショック前の価格を超え、かつてのバブル期の水準にまで近づいています。
この上昇気流をけん引しているのが、都心の好立地に、集約した戸数で次々と建設されるタワーマンションです。

空中族は、販売後も値上がりが見込める最新のタワーマンションに移り住み、短期間で売却。
値上がり益を元手に、より高額なタワーマンションに住み替えます。
これを次々と繰り返していくというのです。
実際、タワーマンションはどれくらい値上がりしているのか。
住民の1人に話を聞くことができました。

都内の企業に勤める、湯川悟史さんです。

今の住まいは、3,200万円する湾岸で人気のタワーマンション。
全額ローンで購入しました。

そのわずか2年後、住まいの現在の価格は、最低でも4,200万円という査定結果が出たのです。
その差1,000万円が、「含み益」と呼ばれるもうけになります。

会社員 湯川悟史さん
「これから開発が進む地域ということは、わかっていましたので、値段はそれなりにあがるかもしれないと思っていました。」

湯川さんは、今のタワーマンションを転売するつもりはありません。
しかし知人の中には、この含み益を利用して転売を繰り返す、空中族がいるといいます。

会社員 湯川悟史さん
「私が知っている限りでも10人以上は(空中族)。
例えば、タワーマンションを5つ移り住んだ方とか、私の知り合いの中にいます。」

追跡!タワマン「空中族」 驚きの錬金術

湯川さんと出会ってから1週間後、湾岸地帯で、ついに空中族の一人に出会うことができました。

外資系企業のサラリーマン、平原圭さんです。

空中族 平原圭さん
「こちらですね。
このマンションになります。
7,000万円くらいで購入しています。」

平原さんは、妻と1歳の子どもを持つ、ごく普通の父親です。
このタワーマンションを購入したのも、家族と住むためです。
今年(2016年)2月に購入したばかりですが、2,3年したら移り住むことも検討しているといいます。

空中族 平原圭さん
「ビュー(景色)が良い方が高く貸せたり、高く売れたりするので、そこを考慮して、東京タワーが見える所を買っている。」

平原さんはこれまで、マンションの転売を2回行うことで、今の住まいを手に入れました。

1度目の売却で得られた利益は、2年で2,000万円。
それを元手に高級マンションを購入しましたが、すぐに売却。

1,600万円の利益を得て今の住まいを購入しました。
こうして平原さんは、より高級な住まいへとステップアップさせてきたのです。

空中族 平原圭さん
「ゲームに近い感覚があるかもしれないですね。
リスクをとって投資をするのが、より成功していくという現実がある。」

実際に、購入してもすぐに売り出されるタワーマンションが増加しています。
通常、年に売りに出されるのは、マンション全体の2%余りとされています。
ところが今、わずか1年半の間で20%が売りに出されるケースもありました。
局地的な値上がりが続く、都心のタワーマンション。
手が届く人だけに富を増やす機会が提供されていました。
ところが、ここにきて平原さんは、転売を踏みとどまる可能性も検討し始めています。
新築マンションの価格が、去年、秋頃から下落の兆しが見え始めているからだといいます。

空中族 平原圭さん
「これ以上あがるのは難しいんじゃないかと、私自身は思っています。
最悪、住み続けることはできるので、(次の物件を買わずに)リスクヘッジ(避ける)していくのがいいと思う。」

追跡!タワマン「空中族」 過熱する不動産市場はどこへ

ゲスト 三田紀房さん(漫画家)
ゲスト 金子勝さん(慶應大学経済学部教授)
ゲスト 石澤卓志さん(みずほ証券上級研究員)

空中族という人たちをどう見る?

三田さん:なかなか、いいネーミングを付けたなというふうに思ってます。
先ほどもVTRの中で、ゲーム感覚っていうふうにおっしゃっていましたけれども、やはりこう、ゲームに参入するプレーヤーの気分だと、皆さん思うんですね。
ですので、どちらかというと、誰かと対戦して勝つっていうのが、盲目的になっているような。
投資というよりは若干、投機的な臭いを感じますね。

金子さんは、空中族をどう見る?

金子さん:世界一の投資家で、ウォーレン・バフェットという人がいるんですけど、価格が低い時、株を買って、会社の将来を見越して長期で持つと、こういうのがやっぱり普通の投資だと思うんですよ、老後やなんかの。
もう値上がり益を狙った感じですので、非常にミニバブル的な傾向だなという印象を受けますね。
特に問題なのは、都心の港、中央、千代田っていう、東京の中でも突出した所だけが、商業地だけが上がっていて、もう、その他の地方はどんどん下がっているんですよ。
せいぜい地方中核都市ぐらい。
それから、所得の格差でいうと、港区が最高で1,200万円を超えているのに、熊本のある村は200万。
貯金がない人が30%。
非正規の人は、全くこういうことには関係ないという。
なんか格差社会の中で、防衛できる人と防衛できない人が、くっきり表れてる二極化みたいな面を非常に問題じゃないかなというふうに思います。

お二方とも、多少の懸念を示されているわけなんですけれども、改めて、空中族ってどういう人たちなの?っていうのを、このピラミッドで見てみますと、富裕層といわれる人たち、日本では資産1億円以上の人と、わずかですよね。
平均の年収はというと415万円だが、空中族といわれる人たちは大体どれぐらいの人たち?

石澤さん:実際のところは、ほかの普通の人よりも若干所得が高い程度で、実は富裕層という感じではないんです。

(すごいお金持ちかっていうと、そうではない?)
ではないですね。
不動産投資の意味合いが、以前とはずいぶんと違ってきておりまして、以前は不動産投資といいますと、お金持ちの方が節税のために不動産に投資するという場合が多かったんですが、今は必ずしもそうではありません。
給与もなかなか上がらない中で、虎の子の資金を出来る限りうまく運用したいという方が不動産投資をされると、その中で空中族という方もい続けられますので、以前の不動産投資とは意味合いは違ってきております。

本当のお金持ちではなく、言ってみれば、一般の人の少し上ぐらいの人たちのこういう投資行動をどう思う?

三田さん:投資の世界で、その分野が非常に活況になるっていうのは、アマチュアのプレーヤーが一気に増えたときなんですよね。
アマチュアのプレーヤーに、マネージャーである銀行とか金融機関がくっついたときに、例えば不動産のような市場が一気に活況になると。
ですので、今、新しいプレーヤーがどんどん増えている。
それで、全体が盛り上がっているということだと思います。
(投資のプレーヤーというと富裕層や節税対策をしていたお金持ちの人たちだったところに、空中族としてどんどん入り込んでいる?)
しかも、資金調達が非常に今、便利になっていますので。
(全額ローンという?)
ですので、この年収がだんだん下に下がっていっても、投資意欲はだんだん上がってるような、そんな印象を受けますね。

先ほどのVTRに出てきた空中族の方は、売るのを少しためらっていた データによると、陰りが出始めたという話もあるが、実際はどうなっている?

石澤さん:不動産の価格の方は、今の段階ではまだ上がっていまして、私は恐らく、今後2年間くらいは上がり続けるだろうとは思っているんですが、上昇の幅はもうピークだろうと思います。
不動産、賃貸が成り立つ利回りが大体3.5%くらい。
それから、一般の方々が無理なく買えるマンションが、坪単価240万くらいなんですが、今、大体そのギリギリのところまで不動産の価格は上がってしまっています。
そのため上昇率は、これから先、だんだん縮んでくると思いますね。
(そうなると、三田さんがおっしゃったように、後から入ってくると、なおさら大変になる?)
三田さん:どこの世界もプロがいて、アマがいますので、プロは今、どこで戦っているかというところも、1つの注目ポイントかなと思います。

都心の不動産で利益を狙っているのは、今見ました、空中族だけではなく、投資熱のすそ野というのが今、大きく広がっています。

都心に流れ込む金融マネー 過熱続く不動産投資

不動産への融資に力を入れる、大手銀行の支店です。

この日、やって来たのは、複数の土地や建物を所有する資産家の男性。
新たに不動産を購入するための融資の相談にやって来ました。

不動産投資家 塩田真人さん
「いま借りると、どうですか?
金利的には。」

銀行 担当者
「出来る限りいい条件は提示させて頂きたい。」

不動産投資家 塩田真人さん
「期待してます。」

実はこの男性、投資に必要な資金のほぼ全額を金融機関からのローンで賄っています。
この銀行も、これまでに5つの物件に融資をしてきました。

銀行 担当者
「5億円くらいの物件を購入された場合、相続税のご負担がこの金額に収まる。」

この日銀行側が持ちかけたのは、合計5億円にもなる不動産の購入。
今回も全額ローンでの提案でした。

金融緩和によるマネーがあふれる中、金融機関は貸し出し先の確保に追われています。
貸し倒れリスクが低いとされる不動産関連への貸し出しは伸び続け、去年ついに過去最高を記録しました。
資産家の男性は、3年前から都心の物件を中心に投資を始めました。

不動産会社 担当者
「強くご希望されている、広尾、恵比寿まわり。」

不動産投資家 塩田真人さん
「ちょっと前のめりになるね。」

これまで購入した不動産は、マンションやアパートなど、18棟余り。
銀行からの潤沢な融資を背景に、今後も高利回りの物件に積極的な投資を行うつもりです。

不動産投資家 塩田真人さん
「ネックは(価格が)高いこと。
あれって交渉の余地はあるの?」

バスに乗り遅れるなと、今、地方の金融機関も東京の不動産市場に参入を始めています。

去年、初めて東京の湾岸地域に支店を出した、山口銀行です。
ターゲットにしているのは、マンションの購入者です。

山口銀行 豊洲支店 支店長 林克彦さん
「こちらのマンションから、あちらのマンションにというような、お住み替えをされる方もたくさんいらっしゃって。
それはすごい市場だなと。」

マンション価格をはじめ、東京の不動産市場はピークを迎えたという見方も出始めています。
しかし、この銀行は空中族をはじめ、人口流入が著しい湾岸地域を狙い、地元山口では獲得しづらい旺盛な顧客を取り込みたいとしています。

山口銀行 豊洲支店 支店長 林克彦さん
「(住宅ローンの)件数の拡大は力を入れていく。
(湾岸エリアでの)収益を銀行全体に貢献できる支店にしていきたい。」

行き場を求めて都心の不動産に流れ込む、金融機関からの融資マネー。
今、これまで不動産投資には縁の薄かった人たちにまで及んでいます。

吉か凶か不動産投資 30代サラリーマンの決断

医療関係の仕事をする松井祐介さん、33歳。
共働きの妻と、2人の子どもとの4人暮らしです。
年収450万円の松井さん。
将来への不安が募る中、関心を寄せたのが不動産投資でした。

松井さん夫妻
「入学金、授業料。
一括100万円とか払ってたよね。」

松井さん夫妻
「(子どもが)何かやりたいって言ったときに『お金がないからだめだよ』っていうのは一番、かわいそうかなと思うので。」

すでに自宅を購入し、1,200万円の住宅ローンを抱える松井さん。
不動産投資はどれくらいメリットがあるのか検討しました。

数百万円のワンルームマンションを、全額10年ローンで購入した場合です。
最初は、毎月の家賃収入からマンションのローンなどを支払うと月に9000円の赤字です。
しかし、ローンの支払いが終わる10年後からは安定した家賃収入が見込めるはずです。
ところが、これはあくまで10年間入居者が途切れなかった場合で、仮に途切れれば、一気に月6万円の赤字に陥ります。
それでも、迷った末に松井さんは決断しました。
駅から徒歩20分のワンルームマンション。
購入に踏み切りました。

松井祐介さん
「この目の前にあるマンション(の一室)がそうです。」

家賃収入が、ゆくゆくは家計の足しになると踏んでの決断でした。

松井祐介さん
「何もしないというのは、それはそれでリスクなのかなと。
自分たちの身を守るために、何かをしておいた方がいいかなと思って、うまく上へ上へ、ちょっとでもって感じですかね。」

過熱続く不動産投資 我々はどうすれば…?

過熱している東京の不動産市場に資産家だけじゃなく、地方銀行、そしてごく一般のサラリーマンも飛び込んでいるという姿、どう見た?

金子さん:会社の中で、リストラが非常に低年齢化して、それから、いつまでもつか分からない、年金や医療や、いろんな不安があると。
何とか自分でサイドビジネスみたいな、副業もはやっていますけど、そういうことを考えているんだろうと思うんですけどね。
やはり、いびつだと思います。
東京の、この突出した、特に都心の3区の突出した状況というのは、人口がどんどん真ん中に集まってくる。
家族が形成できないので、単身になってしまうので、職住接近で、どんどん都心回帰で、外側は空き家だらけなんですよ。
タワーマンションが50年。
投資してる人が住んでいたら建て替えられないじゃないですか。
その一方で、空き家率は東京でも11、全国で13.5ですから、持ち主がどんどん中へ帰ってきちゃうと、街そのものが、都市の大都市の未来が壊れ始めている、地方も壊れているっていう、こういう状態だと思います。

不動産投資のリスクというのは、借りる人がいなくなったらというリスク、価格自体が下落するリスク、災害に遭うというリスクがある 先ほどのVTRで、サラリーマンの方が大きな決断をしたが、その決断をどう見る?

三田さん:私が推測するに、将来の人生設計をより経済的に基盤を強くしたいというふうなお考えだと思うんです。
投資の対象として不動産っていうのは、やはり王様なんですよ。
チャンピオンなんですね。
株や為替と違って現物感があって、目で見れる安心感があるので。
投資対象として入りやすいんですよね。
ですので、そういう面では、ああいう方たちが、新しいプレーヤーがたくさん増えるのは、非常に理にかなっているというか、法則通りの行動だと思います。

雇用や年金について心配を抱える中で、何もしないよりリスクをとってでも上へ上へとという思いがある では、どうすれば一般の人が賢く自分の資産を守れるのか?

石澤さん:どうしても、ギリギリのところで投資するとなりますと、心に余裕がなくなってくるんですが、本来、不動産というのは、いろいろと夢がある分野なんですね。
そのことを忘れないでほしいですし、それから、過去10年間くらいの間に、不動産のデータベースもずいぶんと充実しています。
以前は分からなかった不動産のデータも、ずいぶん公表されるようになってきたので、そのリスクの見極めというものも、だいぶ出来るようになってまいりました。
そういう面では、賢く不動産投資ということをやっていくということでしょうね。

金子さんは、この不動産投資についてどう思う?

金子さん:これは、いずれ限界に達すると思うんですよ。
東京オリンピックもそうだし、人口減少社会だし。
こういうことに依存するよりは、やはり人々が不安になる年金や医療、介護、教育というところを底上げして、その上で、もうちょっと楽しい投資をするという、街を作っていこうとか、そういう、先ほど出てきたような投資に向かっていくような、健全な姿に戻っていかないと、街も壊れていくし、生活も壊れていくということになると思いますね。

三田さんは、どう思う?

三田さん:僕は、投資は人生を豊かにするものというふうに思いますので、積極的に応援したい。
ぜひとも、皆さんにはいい投資をしていただきたいなっていうふうに思っています。

今回のグラレコ

番組の内容を、「スケッチ・ノーティング」という会議などの内容をリアルタイムで可視化する手法を活かしてグラフィックにしたものです。

質問
コーナー

Q1

「空中族」って、どんな人たち?

今回の取材では、どういった属性の人で、どのくらいの人数が「空中族」のような行動をしているのかなど、その全貌まではつかめませんでした。ただ、今回取材に応じて下さった方々からのお話から、金融リテラシーが高く、年収1000万円クラスのサラリーマンの方々が多いのではないか、という取材実感を持っています。タワーマンションの価格動向を読み、住宅ローンの金利が低くなっているという状況を利用し、タワーマンションに住みながら資産を増やそうとしているケースが多いのではと推測されます。
Q2

局地的に不動産が高騰している今、不動産投資はすべき?

スタジオにご出演いただいた慶應義塾大学教授の金子勝さんは、「今から都心バブルに乗っかっても遅いのでは。東京五輪まで持つかしら。それにしても地方の人からみたら、かなり異常な現象。地域の衰退こそ何とかしなければと思います」と指摘していました。また、漫画家の三田紀房さんは、「不動産投資は、その土地について学ぶことでもあり、奥が深い経済行為。誰かの言いなりになるのではなく、自分で学習し、自分でリスクを見極めながら向き合って欲しい」と仰っていました。

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