クローズアップ現代

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No.37892016年4月11日(月)放送
浅田真央 笑顔の理由

浅田真央 笑顔の理由

浅田真央 笑顔の理由 復帰の舞台裏

休養中だった浅田選手に転機が訪れたのは、去年(2015年)2月。
東日本大震災の被災地を1人、訪ねたときのことです。

浅田真央選手
「ここで一度お参りさせて。」

試合や練習に追われる中でずっと来たかった場所でした。

10日間の旅で、浅田選手は得難い経験をします。
仮設住宅などでの生活を余儀なくされながら、笑顔を失わない子どもたちとの出会い。

その中に、津波で祖母を亡くした少女がいました。
大好きだった祖母を思い、書いた作文。
こうつづられていました。

“おばあさんが見ているから一生懸命、笑顔で頑張る。”

浅田真央選手
「天国に行って姿は見えないかもしれないけど、たぶんいつも一緒にいると思うし、頑張ってる姿を見てるだけで、たぶん喜んでると思うから、頑張って欲しいなって思う。」

子どもたちのひたむきな姿が、浅田選手の心を動かしました。
5月に復帰を表明。
浅田選手はリンクに戻ってきました。
掲げた目標は、最低でも復帰前のレベルに戻すこと。

代名詞のトリプルアクセル。
秋からの試合を見据え、急ピッチで仕上げます。

しかし、1年間のブランクの影響は想像を超えていました。
この日、氷に乗って僅か15分後のことでした。

浅田真央選手
「2日目にして、ちょっと疲れてる。
もうすでに足にきてる。」

「今までと疲れ方違う?」

浅田真央選手
「ちょっとは変わるけど、大丈夫。
休憩しとこう。」

浅田真央選手
「小さい頃は何でも何時間でも滑りたい放題、滑ってたけど、今はちょっと考えながら滑ってる。」

25歳。
ベテランと呼ばれる年齢になり、疲労の回復が思うようにいかないのです。
ひざや腰に痛みも感じるようになり、練習後のストレッチにこれまで以上に時間をかけます。

浅田真央選手
「寒くなかったですか?
寒いですよね。
真央たち動いているので。
それでも冷えちゃうけど。」

浅田真央選手
「これは、自分でほぐしたりして。
これもほぐすため。
自分でゴリゴリやったりして。」

みずからの体と向き合いながら、試行錯誤の調整を続けていました。
シーズンが始まると、思いどおりにはいきませんでした。
練習が十分に積めなかったことで感覚にずれが生じ、ミスが続出。
復帰前の演技には遠く及びませんでした。
年末の全日本選手権、前半のショートプログラム。
ジャンプが決まりません。
復帰の選択は正しかったのか。
自分を信じられなくなっていました。

浅田真央選手
「自分の思うような演技ができていなくて、なぜか自分でも考えてしまって、悩んでしまって、けっこう悩みのほうが強くなってしまって。
気持ちを切り替える時間がいつもより、切り替えられない時間の方が長かった。」

翌日。
浅田選手はある覚悟を胸に急きょ、家族を呼び寄せました。

浅田真央選手
「終わり、最後と思わないとできなかったので。」

最高の演技をして笑顔で引退しよう。
そう心に決めていたのです。
3位に入ったものの、浅田選手に笑顔はありませんでした。

浅田真央選手
「自分の滑りは最後までできたと思ったけど、ちょっと待てよ、これが最後の演技だったら、自分が納得しないだろうなと思って。
最後は終わるんだったら、最高の演技をして終わりたいので。」

1月。
理想の演技に近づくための新たな挑戦が始まりました。

振り付けを務める、ローリー・ニコルさんが来日。
かつて母親を失い、悲しみの中にいた浅田選手を精神面で支えたローリーさん。
久しぶりに会った浅田選手が、自分を追い込み過ぎていると感じました。

振り付け師 ローリー・ニコルさん
「楽しんで。
楽しむことを忘れないで。
とても大切なことよ。」

振り付け師 ローリー・ニコルさん
「私の経験では、選手はハッピーな状態であればジャンプを成功させる。
これは魔法ではない。
でも、真央は考えすぎてしまうことがよくある。」

ローリーさんは、浅田選手に演技の細かい部分での修正を求めました。
浅田選手の心と体の状態を見極め、負担をかけずに表現の幅を広げようと考えたのです。
例えば、演技冒頭。
顔を横に動かし恋する男性を待ちわびる場面。
浅田選手には、まばたきをする癖がありました。

振り付け師 ローリー・ニコルさん
「顔を動かすとき、あなたはいつも2回まばたきする。
私はそのせいで現実に引き戻されてしまう。」

目を見開き、愛する男性を待つ女性の思いを、まっすぐに表現してほしいというのです。

振り付け師 ローリー・ニコルさん
「フィギュアスケートにはさまざまな動きがあり、体の仕組みや音楽との調和など、学ぶべきことはたくさんある。」

長年培ってきた自分のスタイルを、大きく変える挑戦が続きました。

そして迎えた、今シーズンを締めくくる世界選手権。
ショートプログラム、浅田選手は再び9位と出遅れます。
しかし、表情に悲壮感はありませんでした。

翌日、フリーに向けた公式練習。
浅田選手の姿はありませんでした。
ホテルで休養を取っていたのです。

浅田真央選手
「10代の頃は100%練習に参加していたけど、今は逆に休みますみたいな。
考える時間も練習する時間も、忘れたり考えたりという時間を持てたので。」

疲れを取り、気持ちも切り替えて臨んだフリー。
冒頭のまばたき。
トリプルアクセル。
今シーズン、自己最高となる得点。
シーズンの最後でようやく見せた笑顔。
新たな自分への確かな手応えをつかんだ瞬間でした。

浅田真央選手
「練習の仕方、気持ちの持っていき方、切り替え方、試合に入ってからの練習の仕方が格段に変わってきているので、一つ一つ自分のペースで選手生活を歩んでいけたらいいと思っている。」

独占密着! 浅田真央 笑顔の理由

ゲストミッツ・マングローブさん(タレント)

浅田選手、さまざまなことで戦い、つかんだ一つの手応えがあの笑顔だったのだと思うが?

でも最後の、今年(2016年)の世界選手権の「蝶々夫人」なんて、すごくこう男らしいというか、力強くないですか。
(特に、その前日のショートではうまくいかなかったところから、ぐっと?)
そうなんですよ。
だから、ことばは汚いかもしれないけど、「なにくそ根性」みたいなのが、やっぱりすごく真央ちゃんって、気が強いと思うんですよね。
だから、そういうのが出ると、圧倒的な強さが醸し出されますよね。
(たくましさがあるということ?)
だから、かれんで、もしくはこう、子どものころから見てきた「かわいい真央ちゃん」みたいなものを、わりと押しつけがちではあるんですけど、実はそうじゃないところで、彼女のたくましさっていうのは熟成をされていって、それがこう、バーンて出たときのあの力強さが、見たときにぞくぞくするんですよね、私なんかは。

なぜか浅田選手の笑顔や涙に多くの人が心を打たれている そのことをどう捉える?

客観的に見ると、なんかこう、今の時代とか、なかなか「安心材料」みたいなものが持ちづらい世の中で、個々が常に不安だったり迷いみたいなのを抱えてる中で、世の中、1個ぐっと束ねてここに行けばもう、絶対安心みたいな、大丈夫!っていう、大きいよりどころみたいなのが、やっぱり少ないんだと思うんですよ。
(今、この世の中に?)
そう。
特に個人個人の感情みたいなのも放出できるし、隣近所と常に比較とか、もう細かいところまでできちゃうから、なんていうか「抽象的なよりどころ」みたいなのが、対人間に対してできなくて、それを集約できる存在にちょうど、こうフィットしてしまったんだろうな、真央ちゃんは、っていう。
だからそれは真央ちゃんは、どういうふうに思ってるか分からないんですけども。

(それを背負うことは大変では?)
いやぁ、私はもう未知の領域ですけど、大変だろうなと思うし、でもそれにすごく律儀に対応しているなあっていう、そういう姿を見ると、若干こう、「もういいじゃん、自分のためだけにスケート滑っちゃいなよ」なんてテレビの前で思っちゃったりするときはあるんですけど、やっぱりそこでちゃんと結果を出して、ドラマを見せて、とってもこう分かりやすく何かを提示してくれるっていうところに対して、世の中っていうのはぐっと感情移入できる、寄せていけるっていう、そういう存在なんだろうなっていう。
またこれ時代が違ったら、たぶん違う捉え方をされた選手だったかもしれないし、それはもう、たらればの話ですけど。
(ある種、アスリートを超えた存在?)
そうですね。

世界も認める “浅田真央モデル”

休養から復帰した25歳の浅田真央選手ですが、その存在は海外でも注目されています。
今回、私たちはアメリカの著名なスポーツジャーナリストにも話を聞きました。

フィギュアスケートを30年近く取材してきた、ジャーナリストのブレナン記者です。
今、フィギュア界では、10代半ばから高難度のジャンプに力が注がれ、けがで競技に影響が出るケースが相次いでいるといいます。

USAトゥデイのコラムニスト
クリスティン・ブレナンさん
「ジャンプの数も多いし、難易度も上がっています。
選手に限界以上のことを求めています。
25歳の真央が選手として活躍していることが、重要なメッセージなのです。
真央は自分のやり方で長く活躍する方法を見つけカムバックした、すばらしいロールモデルです。」

独占密着! 浅田真央 笑顔の理由

世界からも注目されている浅田選手のこれから 「オリンピックを最終目標にしつつ、目の前のことに一つ一つ全力で向かっていく」と彼女は話しているが?

そうなんだ…。
なんか、うーん、いや、すごい立派だし、強い人だなとは思うんですけど。
そんなに世の中こう、いろんなことを真央ちゃんに期待をしたり、願ったり望んだりしなくても。
私は逆に真央ちゃんがもう、「えーい!」って世の中をもう突き放して、もう自分のやりたいスケートだけをやるって言ったときに、その先にもしかしたら、なんか日の丸みたいなものが見えてる、メダルとかが見えてるのかもななんてのは、ちょっと妄想はしたりとかしますけど。

ツイッターより:「真央ちゃんの笑顔を見て泣く気持ち、分かるな。意外と男の人のほうがよく泣いてたりする」という意見もあるが?

ああ、だからそうなんじゃない?
だから「この程度じゃ泣くことじゃない、こんなには自分は頑張ってない」とか思いがちなんじゃないですか、今の時代って。
常に、「お前はまだそこまでじゃないよ」とか、常にこう比較対象があって、そういうものがいろいろ閲覧できるわけじゃないですか。
(SNSなど?)
そうするとこう、だから自分の中の絶対的な価値観みたいなのを捉えにくいというかね。
(それを浅田選手に期待してしまう?)
時代の代弁者なんでしょうね。
(静かに見守ることが大事ということ?)
でも期待はしちゃいますね、やっぱりね、これだけの選手ですからね。

今回のグラレコ

番組の内容を、「スケッチ・ノーティング」という会議などの内容をリアルタイムで可視化する手法を活かしてグラフィックにしたものです。

質問
コーナー

Q1

毎日充実した日々を過ごされているんだなと思います。スケートの出来る喜びや願いとか、色々真央ちゃんの中で整理が出来て自然と笑顔なんだなと思います。真央ちゃんの演技はずっと見ていたいと思うのは私だけじゃないと思います。思うように人生を過ごしてください。質問じゃなかったですね。

制作スタッフより。休養中のおよそ1年間、浅田選手は、番組でご紹介した被災地への旅をふくめ、さまざまな経験をしたようです。浅田選手へのインタビューから1年間フィギュアスケートを離れて様々な体験をすることで、心の整理や自分の原点を見つめられたのではないかと感じました。「心の余裕」や「視野が広がった」ことで、表現力などを柔軟に身につけていく変化につながったのだと思います。浅田選手の活躍をもっともっと見たいですね。
Q2

真央さん、来季のプログラムで滑ってみたいものがありますか?私は今の真央ちゃんでもう一度タンゴが見たいです。いつも応援しています。体調に気をつけて、充実のオフになりますように。

そうですね。オフシーズン、充電した時間を過ごし、また素晴らしいプログラムを見たいですね。浅田選手は、世界選手権後「一つ一つ自分のペースで選手生活を歩んでいけたらいい」と語り、「最終的な目標はオリンピックだが、まずは目の前の試合にきっちり取り組みたい」と話していました。強い精神力だと思います。来季の素晴らしい演技、新しい浅田選手に期待したいと思います。

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