クローズアップ現代

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No.37882016年4月7日(木)放送
独占取材 山口組“分裂抗争”の内幕

独占取材 山口組“分裂抗争”の内幕

山口組 “分裂抗争”の内幕

兵庫県淡路市。
先月(3月)、神戸山口組は、拠点とする事務所で会合を開きました。

車からの出入りは、防弾仕様の盾を手にした組員らで厳重に守られていました。


ひときわ緊張が高まる中、迎えられたのは、トップの井上邦雄組長です。
そして、全国から幹部が次々と到着。
新たに加わった幹部も駆けつけました。
当初は壊滅に追い込まれると見られていた神戸側。
しかし、警察によると、直参と呼ばれる幹部の数は13人から23人に増えています。
厳戒態勢の中で行われた、およそ30分間の会合。
一体、何が話し合われたのか。

「(取材)なしですか?
だめですか?」

組員たちは固く口を閉ざしたままでした。

取材を続ける中、六代目側の組の元幹部から匿名を条件に話を聞くことができました。
組員らと接触を続けているという元幹部。
神戸側が、ここまで勢力を拡大してくるとは思ってもみなかったといいます。

六代目側の組 元幹部
「びっくり、みんなびっくりしたんじゃないか。
すぐ負けると思った、神戸側が。
(組を)抜けた方が崩れると思うけど、まさか神戸山口組がこんなにがんばるとは。」

分裂直後、神戸山口組が各地の組織に送った手紙です。
みずからの正統性を主張し、賛同者を増やすことから始めたと元幹部は指摘します。
仁きょうの道を重んじるとし、自分たちこそが本来の山口組であると主張していました。

その上で、神戸側はあらゆる手段を駆使し、相手の切り崩しに乗り出します。
元幹部によると、六代目側で冷遇されている者や破門・絶縁されて組織を追われた者に狙いを定めて、神戸側に引き込むといいます。

その際に提示するのが、経済的な負担を軽くすることです。
六代目側では毎月65万円とされる上納金。
それを10万円に減額しさらに新たに事務所を構える者に対しては1,000万円単位の支度金を用意するとも伝えているといいます。
神戸側からの勧誘はこの元幹部にも及んでいました。
これまでに5回復帰を求める電話がかかってきたといいます。

六代目側の組 元幹部
「まず『メシ食おう』『メシ食わないか』ということ。
やっぱりお互い心を開いてから、『今現状どうや』と、『うちはこうしとる、こっち来てくれへんか』と、『お金用意する』と。
びっくりしますよ、細かいところまで気配りで。
やくざやめて何年もたつ人間を引き抜きで、切り崩しで着々と成果をあげている。
シロアリに食われるみたいに(六代目側は)やられていく。」

こうした事態に対して、篠田建市組長をトップとする六代目側は、どう動いているのか。

過去の抗争では、山口組は組織を離脱した勢力に対しては凄惨な暴力を加えて抑え込んできました。
しかし今回、六代目側はこれまでとは異なる対応を取っています。

分裂直後、傘下の組の幹部に伝えたとされるメッセージです。
「このような内紛をしている場合ではない」。
軽はずみな行動を慎むよう指示していました。

六代目側の組員です。
こうした指示は、組織の中で徹底されていたといいます。

指示を受けた 六代目側組員
「けんかをするな、街中に行くなということなんで。
トラブルの元じゃないですか。
本当だったら『やってしまえ』と言いたいんでしょうけど、自分たちから仕掛けることはないだろう。」

冷静に対処するとしていた六代目側。
神戸側の引き抜きを防ごうと作成したとされる文書には、具体的な誘いの手口が書かれています。

「最近どうですか?」。
「叔父貴が心配していますよ」。
「一度、飯でもどうですか?」。
ゴルフに誘い、口説き落とそうとしてきたケースもあると記されています。

その上で引き抜きがあったら、上層部に報告するよう求めています。
取材に対し、六代目側のある幹部が、こうした対応を取っている理由を打ち明けました。
組のトップの責任が追及されることを恐れているといいます。

六代目の組幹部(取材メモより)
「神戸を攻撃するより、組を固めるのが先だ。
若い衆が事件を起こすと、親父(組長)が警察にもっていかれる。」

しかし、六代目側のこうした対応が、神戸側の勢力拡大を招きます。
警察によると、分裂前の山口組は2万3,400人。

神戸側が勢力を伸ばした結果、六代目側1万4,100人に対し、神戸側は6,100人。

その半数にまで迫ったのです。

地方別に見ると、篠田組長の出身母体のある中部は六代目側が多数を占めていますが神戸側の拠点がある関西などでは六代目側を上回る状況になっています。

東北や北海道でも神戸側に寝返る団体が現れ、全国で緊張が高まっていきました。

こうした中、状況を一変させる事件が起きます。
2月、神戸側の組事務所に白昼堂々、銃弾5発が撃ち込まれたのです。
近くには小学校の通学路もあり、地域に衝撃が走りました。

狙われたのは、六代目側から絶縁処分を受け、神戸側の最高幹部の1人となった正木年男組長の拠点です。
なぜ発砲にまで至ったのか。
六代目側の元幹部は、神戸側の切り崩しに対するいらだちがその理由だと見ています。

六代目側の組 元幹部
「焦りやろうね、六代目側に焦りがある。
チャカ(拳銃)が火を噴きましたから。
この一発がスタートラインやろね。」

取材を進めると、この事件の影に、トップへの責任追及を回避しようという思惑も見えてきました。

拳銃を発砲したなどとして逮捕されたのは、六代目側の組員・山本敏行容疑者。
発砲に至った理由を声明文として警察などに送ったと供述。
声明文は600字余りに及んでいます。

“神戸山口と名乗る方々へ。
あなた達に大義はない。
私個人の警告を込めた行動です。”

事件は、あくまで個人の判断で行ったことだと強調しています。
ところが、さらに取材をすると、山本容疑者が書いたとされる声明文に対して疑問視する声が相次ぎました。
山本容疑者と行動を共にしたことがある、暴力団関係者の証言です。

暴力団関係者(取材メモより)
「あいつの力で声明文を書き上げられるはずがない。
ましてや拳銃をどうやって手に入れたのか。
一人でやれるわけがない。
誰かにそそのかされたのだろう。」

警察によると、山本容疑者に目立った前科はなく、ほとんどの捜査員に知られていない組員でした。
警察は個人的な犯行ではなく、組織的な関与があると見て調べています。

その後も発砲事件は全国で相次ぎ、これまでに7件起きています。
警察はいずれも六代目側が起こしたと見ていますが組織のかかわりは解明できていません。

激化する 山口組“分裂抗争”

ゲスト三井義廣さん(弁護士)
ゲスト伊藤竜也(名古屋局デスク・山口組取材班)

抗争は、なぜここまで激しくなっている?

伊藤デスク:それを理解するには、私たちが暴力団と呼ぶ、やくざ社会で大切とされる「盃(さかずき)」というものを知る必要があります。


こちらで説明したいと思いますが、盃、「親子の盃」とか「きょうだいの盃」ともいわれるんですが、この盃を交わしますと、互いに親子や、きょうだいとみなされるんですね。
暴力団というのは、この盃を交わしまして、そして組の代紋を守るために、メンツにこだわって生きるというものなんです。
(どう見られているかということにこだわる?)
そうですね、体裁ですね。
今回、六代目側にしてみれば、神戸側は、親のこの盃を捨てて出ていったわけですから、神戸側は、もはややくざではないと、これはその盃を返すことは、やくざの世界では「逆縁」といって、絶対にやってはならないとされる行為なんですね。
今回、六代目側と神戸側、いったん杯を交わした親子だけだっただけに、近親憎悪、骨肉相食む状況になっているというわけなんです。
(近い存在からだったからこそ、感情のもつれ、激しさがあるということ。)

そもそもの発端となったのは、お金と人事?

伊藤デスク: そうです。
原因は、今回の分裂の原因ですが、大きくは金と人事といわれています。
先ほどのVTRにもありましたように、六代目側が毎月高額な「上納金」をきっちりと納めるように求めました。
(下から上に納めるお金?)
そうです。
そして組織の最重要ポストを、この篠田組長の出身母体で、名古屋にある弘道会系の幹部で占有したんですね。
こうしたやり方は「弘道会方式」とか「名古屋方式」ともいわれて、それらに対する不満がたまって、神戸側が分裂したとされます。
組織の特徴をあえて言うならば、この六代目側は「管理統制型」、一方こちら神戸側は、「自主性を尊重するタイプ」とでもいいましょうか。
いかがでしょう、先生?

三井さん:そうですね。
暴力団対策法であるとか、あるいは暴排条例という形で規制が強まってきた。
そういう中で、暴力団側もそれに対応するような形で統制を強めてきた。
そういう統制を強めてきたのがこれまでの六代目山口組という、そういう中で、やはりそういう統制を嫌う、旧来型のといいますか、そういう暴力団がそこを割って出たという形で、神戸山口組を作ったというふうにも言えると思います。

これまで抗争を見てきて、今回の抗争は何がどう違う?

三井さん:神戸山口組が今、6,000人余りというふうにいわれていますけれども、それだけの大きな組織で分裂したということで、これまでの、例えば山口組と一和会の抗争、「山一抗争」なんかでは、分裂した組織を壊滅しようと、潰してしまえという形で抗争が起こっていたわけですが、今回の場合は、そこまではできないと。
いってみれば、末端の組員たちの縄張りの取り合い、あるいは組員の取り合いといいますか、そういう形で抗争になっているという、そんな質の違いがあると思います。
ただまあ、どちらの抗争にしても、抗争である以上は暴力行為が伴うわけですし、市民が巻き添えという部分は変わらないと思います。

「暴力団対策法」「暴力団排除条例」があるにもかかわらず、一筋縄ではいかない?

伊藤デスク: そうですね。
こうした法律や条例によって、資金源が締めつけられていることは事実ですね。
それによって、暴力団の抗争のやり方が、質的に変化しているということも言えると思います。
例えばトップの責任が問いやすくなったことで、暴力団の組織が関与していないようにカモフラージュしたり、あとトップは下に対して、明確な指示を出さないというようなことがあると思います。
だから傘下の組員がそんたくして動くこともあると。
例えば、トップが何かを指示するときに、はっきりと言わずに「あそこは行儀が悪いのう」とか、「あっちはどうにかならんかねえ」とか、そういうあいまいな表現しかトップは使わないんですね。
(ダイレクトに言わない?)
そうですね。
もっともっと分かりにくく言う場合もあって、暴力団を取り締まって完全に封じ込めるというのは、なかなか難しいという状況になっていますね。
そうして、こうした法律や条例によって暴力団の締めつけが厳しくなる中で、実は抗争のやり方、今回の抗争のやり方も変わってきているといえるんですね。
こちら、ご覧ください。

「おーい、開けろや!」

伊藤デスク: これは、相手方の組事務所を襲撃したところを撮影したとされる動画で、インターネットに上げられてます。
誰が撮ったのか出どころは分からないんですけれども、一方の組織が、自分たちが攻勢を強めているところを誇示して、挑発して、相手に先に手を出させようという意図が感じられるものなんですね。
(アピールしている?)
そうですね。

さらに、相手をひぼう中傷する文書もネット上には上げられているんです。

こちら、神戸側が作ったとされる文書です。
六代目側を江戸幕府に、組長を将軍に例えてやゆしています。
(このように例えて『俺たちがかっこいいんだ、正しいんだ』ということを、書いている?)
そうとも取れるかもしれませんね。
神戸側は、神戸側については幕府を倒す「討幕軍」として正統性があるように見せていまして、これにもやはりその相手を挑発するねらいというのが感じられます。

全国各地でトラブルや事件が起きている中、子どもたちがどきどきしながら学校に通うような事態も起きているというのは、あってはならないこと。今後、どうすればよい?

三井さん: まずは、今まで、分裂した神戸山口組に対しては暴力団対策法の指定がかかっていなかったのが、今回指定されるということになったわけです。
そういう意味では、暴力団対策法、あるいは暴排条例も含めて、その規制がかかるということ、これで一時的には抗争というものも少しは抑えられるかなという感じはします。
(一時的とは?)
そうですね、これはあくまで、指定をしたことで規制をかけられるというだけであって、根本的に暴力団のお互いの分裂に伴う遺恨というものが解消されるわけではないわけでして。

ネットからの質問:「暴力団って明らかに悪い人たちの集まりなのに、なんで容認されているんですか?」

三井さん: 今の日本の法律では、暴力団というものの存在をとりあえず指定して、その上でこういう動きを規制していくというわけですけれども、それだけではなかなか難しいかと思います。
(もっと根本的なところから、もう一度考え直さないといけない?)
そうですね。

今回のグラレコ

番組の内容を、「スケッチ・ノーティング」という会議などの内容をリアルタイムで可視化する手法を活かしてグラフィックにしたものです。

質問
コーナー

Q1

「我々一般市民の対処の仕方」、「日常生活でどうすればよいのか」を教えてください。

住んでいる地域に暴力団の事務所など警察が警戒している場所がないか確認して、近づかないようにすることが大切です。暴力団から被害を受けたら、まずは警察に相談しましょう。そのうえで地域の暴力団追放センター、弁護士などに相談してください。
Q2

抗争で暴力団は衰退しそうだが、最終的にはどんな結果を望むのでしょうか?

暴力団取材歴20年の伊藤デスクによると、「六代目山口組は、神戸山口組を『ヤクザ』と認めていないので、神戸側が消えてなくなることを望んでいます。一方で、神戸側の幹部について出て行った若い者が戻ってくることは認めています。神戸山口組は、今後もヤクザ社会で組織を存続させていくことを望んでいます。」ということです。
Q3

この業界ではどのような人材が引き抜きの対象になるのでしょうか?

伊藤デスクによると、「かつて子分を従えて組長をしていたり、名声のある組織で幹部をするなど、暴力団の世界で人望があるとされている人物に声をかけています」ということでした。

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