クローズアップ現代

毎週月曜から木曜 総合 午後10:00

Menu
No.37872016年4月6日(水)放送
経済減速 中国で仏教大ブーム!?

経済減速 中国で仏教大ブーム!?

苦悩する経営者 仏教に救い求めて…

今、中国の人々が殺到する仏教セミナー。
その1つにカメラが入りました。

集まっていたのは中小企業の経営者たち。
日々のプレッシャーやストレスに耐え切れなくなり救いを求めてやって来たといいます。
経済が減速する中、倒産が相次ぐ中国。
企業の寿命は3年ともいわれ激しい競争にさらされているのです。

「“利他”とは、他人の利益を優先させること。
他人を優先すれば助けが得られるのです。」

「全ての人に感謝します。」

「“全ての人に感謝します”。」

「私たちは恩返しを忘れません。」

「“私たちは恩返しを忘れません”。」

「今のあなたで良いのです。」

経営するコンサルタント会社が去年(2015年)倒産寸前に追い込まれた、江軍さんです。
この2年で顧客から契約を相次いで打ち切られたといいます。

そうした中、友人の紹介で近くの寺に通うようになった江さん。
不安や焦りが、不思議と和らぐようになったといいます。

江軍さん
「急速な成長を求め、競争が激しくなり、人々は落ち着きがなくなりました。
私もいつも業績を上げることばかり考えていました。
そうした考えを改めなければならないのです。」

今では仕事中にも、仏教の経典「般若心経」を肌身離さず持ち歩くようになりました。

江軍さん
「仕事で不愉快なことがあったときや、思い通りにいかないとき、感情的になることがあります。
イライラしたときには般若心経を読むと心が静まるのです。」

若者にも広がる仏教 出家するエリートも…

若者たちの間でも仏教がブームとなっています。 大学を卒業したばかりの21歳の女性です。 働いても働いても豊かになれない両親の姿を見て、将来の希望を失い、この寺にやって来ました。

大学卒業生
「私の友だちにも仏教の信者になった人が大勢います。
私も楽になれる境地を探しています。
なんとか今の現実から抜け出したいのです。」

社会や家族とのつながりを絶ち、出家する若者も後を絶ちません。 この寺では、北京大学や清華大学などの、将来を期待されたエリート学生が仏の教えにすがっているのです。

コネがものを言う不公平な社会。 汚職もまん延し、年間5万人の公務員が摘発される現実。 若者たちは、心の内を次々に吐き出しました。

若者
「お金は表面的で一時的な楽しさしかもたらさないと気づいたのです。」

若者
「権力に執着し投獄された人、金に目がくらみ、人格が変わった人がどれだけいるでしょう。
勉強も頑張りました。
親の期待にも応えました。
それでも、なぜ楽しくないのでしょうか。」

若者
「どこへ向かえばいいか分かりません。」

若者
「お父さん、お母さん、私は旅立ちます。」

中国 仏教ブーム 政府の思惑は

かつて、すべての宗教を否定し、国中の寺や仏像を徹底的に破壊した中国政府。

しかし、半世紀を経た今、政府は各地で寺の再建を支援するようになりました。

文化大革命で破壊されたこの寺は、政府から5,000万円以上の支援を受けました。

頭部が破壊されていた仏像。
胴体に新しい頭を継ぎ足しました。

仏教ブームに便乗して、急ごしらえの仏像を造る寺まで出てきました。
政府が仏教を支援する裏には、どんな思惑があるのか。

習近平 国家主席
「仏教は中国の特徴ある文化であり、中国人の信仰心や考え方、文化や習慣などに大きな影響を及ぼした。」

仏教に関する発言を繰り返す習近平国家主席。
中国の指導者として異例のことです。

宗教学が専門
中国社会科学院 王志遠研究員
「今の中国社会は様々な問題を抱えていて、人々の心は動揺しています。
中国の指導者は社会の安定と調和のために、仏教を文化として人々の生活に復活させるべきだと考えているのです。」

仏教大ブーム!? 中国で今何が

ゲスト興梠一郎さん(神田外語大学教授)
ゲスト奥谷龍太(国際部デスク)

中国政府はかつて宗教活動を禁止していたが、今は仏教を利用しようとしているという、この背景をどう見る?

興梠さん: まず、共産主義っていう、宗教に近いものですね。 その未来像というか、理想郷が破綻したということでしょう。 過去の歴史、この50年の中国の変化を見てみますと、共産主義っていうのはみんなの夢だったわけですね。 理想に向かって、階級闘争の理論で、国民が一致団結して、新しい社会を作ろうと、それが文化大革命というのがあって…。

(50年前、このとき宗教はどうだったかというと?)
これはもう無神論、神を信じてはいけないっていう前提ですから、これは改造する対象である。
(徹底的に仏像は破壊されたという時代があった?)
そうです。

それが破綻したあと、毛沢東が死んで、今度は「改革開放」という、私はこれを新しい宗教だと思ってるんですね。 お金をもうける、いわゆるお金を拝む。 人々が豊かになるってことが新しい価値になって、それで国民を統合してきたわけです。(宗教がここで否定されたあとに、経済成長、お金を拝むということが、いってみれば宗教のような存在になってきた?)
それで国家を統合していくということで。

これが、しかし、いろんな問題を生んだと。 富める者と貧しい者、当然格差が出てくる、競争も激しくなってということですね。 これで一応、経済は急速に発展したんですが、やはり大きかったのは2008年の北京オリンピック、このあとのリーマンショック、あれで経済が構造的に減速、一時は大公共事業で乗り切ったんですけれども、やはり構造的な減速が始まっているということで、なおさら新しい信仰が必要なわけですよね。
(経済成長という信仰もここでついえてきたところに、今、仏教ブームが心のよりどころになっている?)
物質でなく、精神で国家を統合していく。

宗教はほかにもいろいろあるが、実際に中国ではキリスト教徒も今かなり増えているという実態もあるそうだが?

奥谷デスク: そうですね。 キリスト教徒はものすごい勢いで増えています。 その増え方を見ますと、仏教よりももしかしたら早く成長しているかもしれない。 その数は、一説には1億人ともいわれています。 これは、もともと土着の信仰ではなかったということからしますと、その早さは分かると思います。

公認されている教会で、大きな教会が街の真ん中にあって、人々が礼拝しているというのもありますし、政府の管理を嫌って、いわゆる地下教会という、非公認の教会で、信仰している人たちもいます。 共産党にとって見ると、キリスト教だと神が絶対の存在になってしまって、共産党より権威が上になってしまうので、仏教と比べると、警戒感は強いというふうに見る人が多いですね。 その点、中国はもともと2000年の歴史の中で仏教というのがありましたから、その点、警戒心が薄いというふうにいわれています。

(習近平氏の“仏教は中国の特色ある文化だ”という発言、警戒心がキリスト教に比べて薄いのではということだが?)

興梠さん: 仏教を利用しようということですね。 彼も発言していますが、仏教っていうのはすでに「中国化」していると。 儒教、そして道教、こういったものと融合して、中国独自の文化になっているんだと。 逆にいうとそれが体制を維持するための安定装置として、長い間働いてきたわけです。 キリスト教は破壊的なわけですね。 これは外国の神であると。 唯一、一神教ですよね。 そうすると共産党の権威とやっぱりぶつかってしまう。 ところが仏教はそういうものではない。 内なる自分を見つめるということで、ある意味ではいろんな社会の抗議運動とか、そういったことも起きにくいだろうと。 安定装置としての仏教ということ。

ツイートでの質問:「共産党は仏教的思想を受け入れるのでしょうか?仏教に帰依した人たちを弾圧したりしないでしょうか?」とあるが?

興梠さん: 仏教が新興宗教化して、国家の統制から外れると、それはやっぱり弾圧の対象になります。 「あくまでもこのテーブルの上で、管理された仏教でいてください」、そういった組織もあります。 今後もそれは変わらない。
(コントロールの中であれば、ということはやはり変わらない?)
そうでしょうね。

中国奥地 チベット仏教寺院で今

北京から2,000キロ、青海省・玉樹チベット族自治州です。

900年の歴史を持つチベット仏教の寺。 今、大都市から訪れる漢族の人々が後を絶ちません。

「よかったよかった、出家できてよかったね。」

2年前、家族も財産も捨て、この寺で出家した羅楽さんです。

かつて羅さんは、中国でも名の通った音楽プロデューサーでした。 23歳で歌手としてデビュー。 華やかな芸能界を生きてきた羅さん。 有名な歌手を多数プロデュースし、一時は都心に豪邸を3軒建てられるほどの年収を手にしました。 しかし、裏では不透明な金のやり取りもあったといいます。

羅楽さん
「仕事をしていたときは、絶えず悪いことをしてきました。
金もうけのためにうそを言って、人をだましてきたのです。
偽りの世界では、生きる価値が見いだせませんでした。」

2年前、私たちは出家する直前の羅さんを取材していました。 羅さんはこの日、すべてをなげうって出家したいと、友人たちに打ち明けました。

羅楽さん
「金もうけばかりで機械のように止まることができないんだ。
金以外に得たものはない。
全然楽しくないんだよ。
見えをはってプレッシャーに耐えることが、もう苦しいんだ。」

羅楽さんの友人
「もっと日頃から、あなたの悩みを聞いておけばよかったわ。」

出家するからには本格的な修行をしたいと考え、行き着いたのがチベット仏教でした。

羅楽さん
「寺では、額を地面につけて拝礼するんだ。
過ちを懺悔(ざんげ)するんだよ。
出家すれば、今より楽になると思うんだよ。」

羅さんは今、寺から与えられた8畳ほどの小さな部屋で、ほかの出家者と共に修行の日々を送っています。

羅楽さん
「この寺で修行すれば、心の中を大きく変えることができるでしょう。」

すべての煩悩を断とうと、体も洗わず、ありのままを受け入れ、仏の教えに向き合う毎日です。

羅楽さん
「感情、家族、富への執着心を全て捨てたことで、本当の幸せが取り戻せました。」

仏教大ブーム!? 中国で今何が

なぜ、チベット仏教?

奥谷デスク: 仏教が本格的に中国で広まり始めてから日が浅いということもあって、仏教界にもいろんな問題があるんですね。 例えば、お香、ものすごい高価な何十万円もするようなお香を売っているとか。

(ツイートでも『この仏教、金もうけのにおいがするぞ』という意見も来ているが?)
例えば偽のお坊さんが現れたりとかいう問題もある。 あと、そのお寺の再建が地方で進んでいるというVがありましたけれども、地方も政府にとっても、これは収入源になるわけです。 観光の資源の1つになるわけです。
(文化産業のようなものになっている?)
はい。
だから、宗教として見るのではなくて、そういう産業として見るっていうところがあって、どうしても金銭とのつながりが色濃く見えてしまう。 そういうところに嫌気がさした人たちは、本土の普通の仏教じゃなく、こういうチベット仏教を選ぶという点があると思います。
(もっと進んだ仏教、もっとスピリチュアルなものという?)
そうですね、生活のすべてを仏教にささげるという。 もちろん本土の仏教でも、真面目にやっている仏教はあるんですけれども、どうしても目にするものが、そういう気になる現象が多いということがあると思いますね。
(その中でチベット仏教に出家していく人が現れると。)
あと香港の映画スターとか、歌手なんかで、仏教に帰依している人が、チベット行って、インスピレーション受けたとかいうことを発言したりして、それが中国の若者に知れ渡っているというのもあると思いますね。

チベット問題を抱えている中国政府は、このチベット仏教に傾倒していく現象をどう見ている?

興梠さん:基本的に、チベット仏教の問題というのは、ダライ・ラマ14世という最高権威がいるわけですよね。 それが共産党の権威とぶつかるっていう問題があると、それはチベット族という少数民族と、宗教が合体して2つの問題がありますから、そこに漢族が入っていって、こういった宗教活動、信仰に帰依するということ自体は、ある意味では中国化の一環であるかもしれないんですよね。
(中国政府側から見ると、漢族がたくさん入っていくことが?)
そういう思惑があるかどうかは別として、チベット族の側から見ると、どうなのかなというのは、実はあるわけです。 ただ、エキゾシズムというか、こうやって神秘的なものに憧れて、よりそういった体験をしたいという漢族の側の思いもあるだろうから。 チベット族特有の宗教っていう部分が、今後どうなっていくのかなというのは、1つの課題というか。

仏教の大きなブーム、あくまで政府のコントロール・管理下の中であれば容認していく、むしろ利用しようという話だが、それがコントロールから外れるという可能性は?

興梠さん:今後は、経済の成長が止まった中で、今まで経験をしてないような、低成長の時代が続くと、それは大学生の就職の問題もすでにありますし、いろんな企業のリストラが始まったりとか、かつて経験したことない低成長の時代になったときに、今、宗教を癒やしの道具として、安定装置として利用していこうというのは分かるんですが、宗教っていうのは、もう1つの面があるわけですよ。 これは1つのものをみんなが信じる。 信者の連帯感って、実はこれ共産党が一番怖がっている。
(それが)NGOであれ、組織化されていると。 その人たちが1つの目的に向かって、社会を変えていこうっていう動きになる。 そういった急進化した場合、これは思わぬ展開になっていく可能性があるわけです。 それが民主化運動に向かっていったり、改革運動に向かっていったり、そういった可能性は、なきにしもあらずと。

ツイートの質問:「中国での仏教ブームは、日本にはどんな影響があるんでしょうか?」

奥谷デスク: すでに日本の仏教に非常に関心を持っている人が増えていまして、お遍路さんに来る人も、たくさんいるそうです。 それから、日本のお寺に留学に来る中国の僧も増えてます。
(それはある意味、チベット仏教に傾倒するように、本物感や体験を求める?)
本物の宗教とか体験を日本に求めて、やって来るという人が増えるんだと思います。
(昨今、“爆買い”といわれているが、“爆参拝”のようなことに?)
なってくるかもしれませんね。

今回のグラレコ

番組の内容を、「スケッチ・ノーティング」という会議などの内容をリアルタイムで可視化する手法を活かしてグラフィックにしたものです。

質問
コーナー

Q1

仏教を取り込むフリをしてチベットへの影響力をさらに強める・・・って勘ぐりすぎか

A)ゲストの興梠一郎さんに伺ったところ、次のようにお話されていました。 「チベット仏教の寺に出家者が相次いでいることは、中国政府にとっての懸念材料でもあるが、実は中国政府はチベット仏教の寺に再建の支援を行っているという実情もある。チベット仏教まで含めて政府は管理下に置いておきたいという思惑もうかがえる。」
Q2

モノが豊かになったら心のよりどころを求めるって・・・まるでバブル期の日本をまんまなぞってるなあ

A)興梠さんは、「バブルののちには社会混乱が起き、宗教信仰が過熱するということが考えられる。中国ではかつての日本のようなバブル崩壊は起きていないが、今後の動きを注視する必要がある。」とお話ししていました。

あわせて読みたい

PVランキング

注目のトピックス