クローズアップ現代

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No.37862016年4月5日(火)放送
働くって、何ですか ~変わる入社式と若者たち~

働くって、何ですか ~変わる入社式と若者たち~

4月1日に密着! 変わる入社式と若者たち

見渡すかぎりの紺色スーツ。
航空会社の入社式に集まった2,500人の新入社員です。
採用数は、なんと去年(2015年)の2倍。
リーマンショック後、一時は取りやめる企業もあった入社式ですが、業績の回復を受け各地で復活しています。

安定志向? 親も同伴? イマドキの入社式

最近の入社式の典型的な風景が見られると聞き、大手飲料メーカーを訪ねました。
後ろに並んでいるのはなぜか年配の男女。
実は、正式に招かれてやって来た新入社員のお父さん、お母さんたちです。

母親
「過保護なのかなと思いながらも、やっぱりちょっと招待されることなどないので、うれしいですね。」

こうした親同伴の入社式は、年々増加中です。
本人だけでなく、家族ともども会社のコミュニティーに参加してもらうことが重要と捉えられています。

サッポロホールディングス 上條努社長
「(ご両親にも)グループ事業をご理解いただき、入社していただいたみなさんのご家族に声援を送っていただければと。」

若者たちの間でもこうした入社式は、思いのほか好評です。
先行きが不透明な時代の中で終身雇用を望む新入社員の割合が増加。
仕事だけでなく、家族やプライベートも大事にする価値観も広がっているためです。

新入社員
「『ちゃんとした会社に就職決まったよ』と親に言えて、親が『よかったね』と言ってくれるような日常が今は幸せですね。」

同じ会社で長く働くことを望む最近の若者たち。
最新の調査では、会社を選ぶ際に安定性を重視するという回答が増え続けています。
そして、最も重要だとされたのが、やりがいです。

やりがいって何ですか 入社式の若者たち

では、今の若者にとってやりがいとは?
逆風にさらされる会社にあえて飛び込んだ若者たちに聞いてみました。
上場以来、最大の赤字に苦しむ日本マクドナルドです。

日本マクドナルド サラ・カサノバ社長
「ミナサマ、コンニチハ。」


「こんにちは。」

日本マクドナルド サラ・カサノバ社長

「2015年は困難な1年でした。」

今年(2016年)の入社式に姿を見せたのは、28人の新入社員でした。

「どうしてこういう時に入社を決めた?」

新入社員
「この会社に対して『いいな』と思ったところが報道で消えるわけではないので、関係ないかなと思って入りました。」


新入社員
「アルバイトをしていて、みんな高いモチベーションでやっていたので、それなら大丈夫だと。」


厳しい環境を承知のうえで入社を決めた新人たち。
ここで何をつかめると考えているのでしょう。

「あなたにとって幸せとは?」

新入社員
「まず自分が笑顔でいられること。
自分が笑顔でいられることによって、周りのみんなを勇気づけられる。」


新入社員
「人と人が関わって、笑顔が成り立つこと。
お互いがハッピーな気持ちになれると思うので、それが一番の幸せ。」


この日、日本全国で第一歩を踏み出した新社会人は70万人以上。
それぞれが自分の働く意味と向き合おうとしています。

向かい風の門出 若者を支えるのは…?

中には、希望の会社に就職できないまま4月1日を迎えた人も。
そんな新人たちを待っていたのは、北海道の歌志内市役所です。
かつて炭鉱で栄えましたが、現在の人口は最盛期の10分の1以下。
財政力を表す指数は、全国の市の中で最下位です。

「歌志内市職員に任命する。」

20年間採用を見合わせてきましたが、2年前に新人の採用を再開。
今年は6人が加わりました。

「歌志内市は難しい課題を抱えて新年度をスタート致します。」

過去に民間企業を退職したり、就職活動がうまくいかなかった人たちもいます。

「頑張りましょう、お互い。」

角丸維央利さん
「角丸です。
よろしくお願いします。」


配属された産業課で地域振興を担当する角丸維央利(かくまる・いおり)さんです。
札幌の大学を卒業後、就職活動が思うようにいかず、1年間、非正規で働いていた角丸さん。
父親の出身地の歌志内で公務員になって、地域を支える仕事を目指しています。

角丸維央利さん
「小さい市をもっとより良く、もっと色んな人に知ってもらって、一歩ずつ大きくなっていこう。
まずそこからやっていこうかなと思っています、小さい夢として。」

ところがこの日、角丸さんは先輩に連れられ市の現状を見て回ると、想像を超えた現実が広がっていました。

先輩職員
「ここが歌志内のメインストリート、かつての。
今もそうか。
開いているお店が数えるぐらいしかない。」

角丸さんに求められているのは企業誘致や観光の振興ですが、容易ではありません。
角丸さんは、産業課でおよそ20年ぶりの新人職員。
その肩に町の将来が重くのしかかっています。

スキー場管理者
「高齢化しているので、若い人の考え方が絶対必要。」

温泉施設管理者
「(客に)何が要求されているかつかめない。
いろいろ教えてもらいながら、若い人の意見で絞りながらっていうのがあって。」


角丸維央利さん
「全盛期と現在とは、時代の流れも何もかも違うんだなと。」


「乾杯!」

「お疲れさまです。」

さまざまな課題に取り組むことになる新人職員たち。
歓迎会では、同じ悩みを抱えたことのある先輩職員が仕事の意味について語りかけました。

先輩職員
「何で仕事をするのか、仕事って何か。」


先輩職員
「特に歌志内はダイレクト。
大きい市よりは自分の意見が反映されやすい。
そういう中でやりがいはある。」

角丸維央利さん
「今までと違う感じでドキドキと不安もありますけど、これから頑張っていかないと。」

多くの新社会人が門出を祝福される中、入社式もないまま1日から現場で働きだす若者もいます。
山川裕大(やまかわ・ゆうた)さん。
先月(3月)、学校を卒業したばかりの18歳です。

入社するのは、従業員60人の建設会社です。

「今日からうちの社員だからな。」

「よろしくお願いします。」

ここで働く若者の中には、非行歴などが理由でほかの会社から断られた人が少なくありません。

「テレビで言っちゃいけないことです。 窃盗とかです。」

山川さんも両親の離婚をきっかけに荒れた学校生活を送っていました。
真面目に働くことを考えるようになったきっかけは2か月前、母親が病気で倒れたことでした。

山川裕大さん
「くも膜下(出血)だったんですよね。
安心させたいということで、こういう事をやって頑張っているよと伝えたい。」


入社初日、足場を組む訓練が始まりました。
鉄製の資材は15キロ。
重いうえにバランスが取れません。

山川裕大さん
「腕プルプルです。」



これまで就職先を見つけられなかった山川さん。
ようやく受け入れて入れてくれたこの会社で一人前のとび職人を目指します。

山川裕大さん
「内定通知が来たときに『正社員』になっていて、そこまで信用されると思ってなかったから、そこにうれしくて。」


山川さんの採用を決めた社長の小澤輝真(おざわ・てるまさ)さんです。

北洋建設 小澤輝真社長
「(山川さんの)目を見ていると痛いくらいに『俺にやらせてくれ』というのがわかったので。」


4年前に難病を患ってからは現場を離れ、社員の採用に力を注いでいます。
かつて自身も非行に走り高校を中退。
就職先はありませんでした。

北洋建設 小澤輝真社長
「どこも働かせてくれなくて、やる気だけは本当にあったから誰でも働ける会社を作りたいと。」

16年前、親の会社を継いで以来、就職を希望する人は経歴に関係なく採用してきました。

北洋建設 小澤輝真社長
「今日は長崎刑務所から来ました。」


毎年、前科のある人40人以上から応募があります。

北洋建設 小澤輝真社長
「とにかく全員使う、うちは。
どんな人間でも使ってみようと。
まず雇ってみないとわからない。」

その日の夜。

「着替えてきたんですか?」

山川裕大さん
「一応ビシっとした格好で来ようかと。
こういう事があろうかと親が買ってくれて。」


社員総出で山川さんの歓迎会が開かれました。

「山川、肉焼け。
全部いけ!
ガーっといけ!
いけって!」

山川裕大さん
「今の職場にいられて幸せだなって思うし、誰かに見られてるっていうのが幸せだと思います。
自分ひとりじゃないっていうことが、やっぱり幸せなんじゃないですかね。」

入社式から見えた日本の今

ゲスト:シンガーソングライター さだまさしさん
ゲスト:博報堂ブランドデザイン若者研究所 リーダー 原田曜平さん

さまざまな門出をどう見るか?

さださん:なんか胸にぐっとくるビデオでしたね。スタートの段階で、それぞれ背負っているものが違うんですね。でも、それでも平等のスタートなんだな。それがやっぱり生きるっていうことのすごさだなってことを教わりますよね。安定を求める人もいるし、何でもいいから働きたいって場所を探している人もいるし、そういう人に場所を提供しようという人もいてくれるし。人間ってつながっているんだって改めて思いますね。

親同伴の入社式など、今まで見たことのないものもあったが、今の若者は抵抗はないのか?

原田さん:今の若い人たちの特徴として親とものすごく仲がよくなっているんですね。上下関係の仲のよさじゃなくて、どちらかというと『友達親子』って言われているんですけど、同じようなお友達のような関係で仲よくなっているんですね。

さださん:同じような格好した母と娘っているもんね。

原田さん:まさにそうなんです。だから親を、自分を育ててくれた親に感謝の気持ちを示すために呼ぶというよりかは、本当に友達誘うような感覚で呼びたいって考えるようになっているので、それをちゃんと捉えてああいう入社式をやった企業っていうのは、やっぱり若者からは支持を得やすいと。

さださん:会社の愛なんですね。親御さんも呼んであげようっていうのはね。

今年の新入社員についてのキーワードは『ドローン型』だが?

さださん:頼りになるようなならないような。役に立つような立たないような。

意味は内定という目的地に安定してたどりつくバランス感覚があり夜間飛行は禁止、つまり深夜残業には抵抗がありワークライフバランスを大事にする傾向があるということだが?

さださん:考えられないですね、僕らの世代にはね。見つけてでも仕事を探せという世代ですから。人の分までとろうとは思わなくても、あいているところにはとにかく手を差し伸べなければいけないっていう年代でしたからね。

原田さん:時代はたぶん大きく変わっていて、やはり日本というか、どの国も実はこういう傾向があるんですけど、経済成長してるステージというのはみんな肉食でがつがつ仕事をして、もう徹夜しても大丈夫みたいな若者像がすごく多いんですね。ところが低成長時代に入ると、あまり頑張ってもそんなに見返りが少ないから、わりとまったりして程よくやっていこうと、すごくバランス重視になってくるんです。これ実は先進国の若者みんなそういう状況になっていまして、アメリカもヨーロッパの若者もこうしたタイプになってきているんですね。

さださん:でも、かつて“国家社会主義”っていうのは日本しか実現していないじゃないですか。いわゆる終身雇用という形態だと会社に対する愛着ってやっぱり転職を繰り返す人とは大きく質が違いますよね。

原田さん:今、だからそういう意味では終身雇用が日本で崩れてるので、冒頭にも出てきたんですけど、若い子にアンケート調査をとると、“終身雇用がいい”“昔に戻りたい”という意見が非常に多くなっている。

さださん:人生設計できますもんね。

安定ばかり求めていると成長できなくなるのが心配だが、先細りしていかないのか?

原田さん:日本は豊かになっていますから多くの人が安定志向になるのはまだひょっとしたらいいことかもしれないんですけど、一部のイノベーター、クリエーターは世の中を変えよう、新しいことをしようって気持ちの人を生み出さないといけなくなっているかもしれないですね。

若い世代の人とうまくやっていく、魅力を引き出すにはどうしたらいいのか?

原田さん:今の若い人たち、私が接していてすごくレベルが上がっているというか長所として考えられるのが、すごく共感性が強い世代になってきている気がするんですね。やはりソーシャルメディア世代ですから、いろんな人とつながっているんで、例えば、すごく困っている人とかすごく貧しくて苦しんでいる人とか、いろんな人の情報が入ってくるんで。

さださん:確かに優しい子多いですよね。

原田さん:だから、かつては一部の天才アーティストがいろんな人を想像してすばらしく共感性のある歌詞を書いていたんですけど、今、割と若い子たちがそういうふうになれる可能性というのが出てきてるんだと思うんですよね。
(さださんみたいな人たちがたくさん出てくるかもしれない?)
かもしれませんね。

さださん:僕みたいのはあまり出てこないほうがいいと思いますけどね。でも、突出した何かっていうものを逆に求めてる傾向があると思うんですよ。
自分が埋没したいわけじゃないけど、安定性を求めている自分にもちょっといらだちを感じているんじゃないか。最近はやりのゲームを見ていると、妙にセンセーショナリズムっていうのかな、ヒロイズムっていうのか、そういうものを刺激するようなゲームがとても多いですよね。だから心の中で彼らが求めていることと現実に与えられている現場にあることとが、ちょっと異質なのかもしれないという危惧は僕は抱きますね。

原田さん:ソーシャルメディアでいろんな人とつながっているんで、ちょっと目立ってしまうと“あいつなんとかだ”とかツイッターが炎上してしまったりとか、すごく人の目を意識するようになっているんですね。

さださん:SNSっていうのは何なんですかね、あれ。炎上したりするじゃないですか。しかも匿名だったりするものっていうのは、僕、反則のような気がするんですけどね。“私はこれこれこういう者です”っていうのを意見っていうんだと思うんですけど。

その中で目立たないようにうまくやっていくことが身についてる世代?

原田さん:だから、さださんがおっしゃったみたいに自分の個性を出していきたいっていう願望は、すごく強くなってきているんだと思いますね。

さださん:僕らのころは目立ってなんぼだったですからね。“あいつおもしれー”って言われたくて、ふざけたことばっかりしてましたけどね。

原田さん:今は割とバランス取りながらちょっと目立つというか、それぐらいのバランスを狙ってる若い人たちが多くなっていますね。

さださんの人生の門出を迎える人たちに贈る歌、その中の“誰もがみな主人公”というのは船出を迎えた人たちへの熱いメッセージになるのでは?

さださん:僕、若いころから生きがいっていうのは、探したり掘ったりするもんじゃなくて湧いてくるもんだと思っているんですよ。ですから、自分のいる現場で頑張っていれば、きっと何か“あっ、ここ俺生かせるじゃん”っていう何かが湧いてくるような気がするんですよね。そこまで今の現場を大切にしてほしいなと思いますね。

原田さん:ただ、これ『主人公』っていう歌ですけど、今、若い子の人口が減り過ぎちゃって主人公意識が持てなくなっているんですよね。“高齢者のほうが主人公”な社会になっているなってなんとなく歌も感じてしまっているんで。 (自分の中から“主人公だ”と湧いてくる気持ちになれたらいいが…) いいですね。

今回のグラレコ

番組の内容を、「スケッチ・ノーティング」という会議などの内容をリアルタイムで可視化する手法を活かしてグラフィックにしたものです。

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