クローズアップ現代

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No.37842016年3月17日(木)放送
未来への風~“痛み”を越える若者たち~

未来への風~“痛み”を越える若者たち~

声を上げ始めた若者たち

「戦争反対!戦争反対!」

去年(2015年)夏。
多いときには数万人が集まったデモ。



奥田愛基さん、23歳です。
当初、10人ほどで始めたデモは社会現象になり、若い世代の力を印象づけました。
この春、大学院に進学する奥田さん。
以前は、この社会に諦めに似た気持ちを感じていました。


奥田愛基さん
「生まれたときからバブルが崩壊してとか、日本はこの先、良くならないみたいな、失われた10年が20年になってみたいな、ずっと。
そういった中で諦めちゃってるというか。」


友人
「(最初のデモ)あそこに立って話してて。」

東日本大震災の被災地にボランティアに行ったことをきっかけに、社会問題に向き合いたいと考えるようになった奥田さん。





奥田愛基さん
「ユーチューブとかで検索して海外のデモを参照したりとか。」

自分たちの思いを大人たちに示したいと、友人たちとデモを始めたのです。

奥田愛基さん
「おじいちゃん、ばあちゃんは戦争の話をしたがるし、何なんだよそれって、ずっと思ってましたよ、正直ね。
だけどいま考えたら、それ聞いてて良かったなと思いますよ。」


等身大のことばは、ユーチューブなどで爆発的に広がっていきました。





これまで社会に無関心と思われていた若者たちが声を上げ大きなうねりとなったのです。

奥田愛基さん
「それが僕的には『諦めること』を諦めるということ。
この社会の“痛み”っていうのは、空気感とか、言えないとか、おかしいと思っているんだけど、それは素直に表現できないということなんだと思いますね。
本当に自分の周りのこととか自分の生き方のことを考えたら、それだけじゃいられない。」

今、社会の問題を自分たちで考え、行動する若者たちが増えています。

去年5月、18歳選挙権について審議するために開かれた衆議院特別委員会。




斎木陽平さん
「若者の政治参加をとにかく促していく必要性がある。」




推進する立場として与党の参考人として推薦された斎木陽平さん、24歳です。
斎木さんは、高校生を中心に、若者の政治意識を高めるための活動を行っています。
今の政治には、中高年の意見しか反映されていないと感じているからです。

斎木陽平さん
「若い世代が『これは投票に行かないと』って思えるような何かっていうのを、そういうムーブメントはどうやったら作れるんだろうか。」

参加者
「若者枠とか作ってもいいかもね、議員の。」

参加者
「それいいんじゃない。」


これまでに延べ2,000人以上の高校生が、斎木さんの考えに賛同し主催するイベントに参加しています。




斎木陽平さん
「大人たちに対しての怒りみたいなものは、やっぱりありますよ。
全部先送りにされているというか。
自分自身が『俺はこう思うんだ』というのをちゃんと言っていく中で、ある意味“志の輪”みたいなものが広がっていくのかな。」

“痛み”を越えて 若者に広がる連帯

「アルバイトでお困りのことございませんか?」





若者たちにとって今、大きな痛みになっているのが雇用環境の劣化です。
不安定な条件で働く非正規雇用は増加し所得格差や貧困が拡大。
過酷な労働によって、うつ病や自殺に追い込まれる若者はこの15年で10倍に増えています。

若者の労働相談を受けているNPOです。





相談者
“給料が準備とかの時間に払われないことについては…。”

賃金の未払いや違法な長時間労働など、これまでブラック企業の実態を明らかにしてきました。
年間の相談件数はおよそ3,000件に上ります。

相談者
“お給料をもらえるならちゃんともらいたいし、納得ができないっていうか。”

事務局の坂倉昇平さんは、競争や効率を優先する企業の中で孤立した若者たちが助けを求められずにいると危機感を抱いています。

坂倉昇平さん
「会社は利益を上げるためであれば、若者を正社員だろうが、非正規だろうが、学生であろうが使い潰してしまうということが当たり前のようになってきてしまっている。
それがこの10年20年での大きな変化だと思うんですね。」

坂倉さんたちは、相談を寄せた若者たちをつなぎ、一緒に労働環境を改善しようと呼びかけています。
そして今、既存の労働組合では救えなかった若者たちが、次々と参加するようになっています。

坂倉昇平さん
「じゃあ、覚悟を決めたら行きましょうか。」

自分たちの問題をみずから解決していく。

学生アルバイト
「賃金の未払いということで、どうにかしてほしいというのが1つです。」

坂倉さんたちは、若者をサポートしながら雇用主と直接交渉し、改善策を引き出しています。

坂倉昇平さん
「安心して働き続けることができる社会でなければ、若者がこれから社会に対して活躍できる一番の基礎を失ってしまうと思うんですよね。
誰も助けてくれないんだろうなというふうに思っていて、それだったら自分たちで新しい取り組みを作っていくしかない。」

“痛み”に広がる 共感の輪

この20年余り低成長時代に生まれ育った若者たち。
親のリストラ、いじめ、就職氷河期、そして東日本大震災。
さまざまな痛みを体験してきました。



先月(2月)発売された、短歌集です。
そのリアルな痛みの描写が大きな反響を呼び、すでに増刷されています。




“揃えられ主人の帰り待っている飛び降りたこと知らぬ革靴”

“駅前で眠る老人すぐ横に マクドナルドの温かいごみ”




歌人の鳥居さんです。
母親の自殺やホームレス生活を経験し、義務教育さえ満足に受けられませんでした。

“慰めに『勉強など』と人は言う
その勉強がしたかったのです”

歌人 鳥居さん
「(痛みを)他人事だって思われたくないし、思いたくない。
自分に引き寄せて想像してみるというのは大事なことのような気がします。」


日本が長年解決できていない課題を、若者の視点で描いた映画も注目を浴びています。





映画を制作した大学生・仲村颯悟さん。
普天間基地返還が決まったよくとしに、沖縄で生まれました。




今月(3月)、都内で公開された仲村さんの映画。
舞台は、沖縄の架空の町。
主人公は、基地周辺に住む中学生です。
賛成・反対を単純に割り切ることができない。
自分たちの複雑な思いを伝えたいと、映画を作りました。

映画『人魚に会える日。』より
“誰かが犠牲にならないといけないんですよ!”





映画は、仲村さんの思いに共感した沖縄出身の大学生によって作られました。




チケットの販売などを支えるのは県外の若者たち。
映画の上映場所は東京・大阪・名古屋と、次々に増えています。



仲村颯悟さん
「沖縄の声というのはきちんと伝えて、その中で、沖縄の問題じゃなくて日本国民が同じような気持ちで当事者として悩んでもらう状況になれば、そこは新しい切り口が開けていくのかな。」

一人一人が直面する、それぞれの痛み。
その痛みに響き合う現代の若者たちです。

地域をつなぐ 新たな風

先月発表された、最新の国勢調査。
日本の人口は調査の開始以来、初めて減少しました。




人口が減少したのは全国の市町村の82.4%。
地域経済の疲弊も進んでいます。




地域の再生にも、若者が大きな力を発揮しています。
新たな金融の仕組みで、課題を乗り越えようとしているのです。




28歳でNPOバンクを立ち上げた、木村真樹さんです。





木村さんの活動の拠点は、名古屋を中心とする東海地方。
NPOバンクの運営を担うのは20代から30代の若者たちです。




市民から1口1万円の出資金を募り、子育て支援など地域の課題に取り組む団体や個人に融資しています。
木村さんたちに次々と若者たちが賛同し、ボランティアとしてこの事業を支えています。
これまで1億3,000万円の融資を行い、貸し倒れは1件もありません。

NPOバンク 代表理事 木村真樹さん
「自分たちが望む未来に、どうそのお金を生かしていくのか、自分たちのお金の使い方次第だってことに気付いてしまった若者たちが集まった取り組みかなと思いますね。」



「これから、きょうのプールを始めます。」





2年前に、NPOバンクの融資によって始まった障害のある子どもたちのデイサービスです。





先月、初めて地元の信用金庫からも融資を受けることができました。





「想定してた以上ですね。」





なぜ信用金庫は融資を行ったのか。
そこには、NPOバンクが地元の人々と協力して作った新しい評価基準がありました。

新しい基準では、収益性だけでなく、デイサービスが地域に与えるさまざまな効果を試算します。
子どもの体力がついただけでなく、親に精神的な余裕ができ地域の活動に参加できるなど、お金に換算すると3,000万円もの価値がある事業だと評価されました。
融資を決めた信用金庫の職員です。

東濃信用金庫 酒井隆信さん
「懐かしいね、いいね。」

新しい評価基準は、金融機関の従来の在り方を見直すきっかけになったといいます。


東濃信用金庫 酒井隆信さん
「もっと早く、こういう考え方をしておくと良かったのかなと思います。」



NPOバンク 代表理事 木村真樹さん
「(地域の再生に)挑戦してくれる人たちがいらっしゃるので、もっと自分たちの力量も高めていかないといけないなと思っているので、希望も感じつつ、まだまだ足りない、そんな感じですかね。」

“痛み”を越えて 動き出した若者たち

ゲスト柳田邦男さん(ノンフィクション作家)

●大人たちへの怒り、あるいは自分たちが活躍できるその基礎が失われているという気持ちから動きだしている若者たち どう受け止めた?

これはね、若者1人1人の自己責任という問題ではなくて、もう日本が戦後70年の中で、積み残して、先送りしてきたものが一気に最近、表れてきて、そのしわ寄せが若い世代に全部引き寄せられたということ、そこから声が出てきたっていう、こういう捉え方だと思うんですね。
そういった意味では、若者たちの活動っていうのは、例えば「SEALDs(=シールズ)」の奥田さんたちにしろ、ほかの動きにしろ、これは一昔前の政治活動なり、学生運動なり、そういうものと全く違う。
これはどういうことかっていうと、昔のようにイデオロギーとか、あるいは労働組合とか、そういう組織で、縛りをかけて動くんではなくて、一人一人が主体的にいろいろな声を上げ、活動していくということで、これは日本の国の社会運動としては非常に新しい傾向だと思うんですね。
その多様性が今のリポートの中で、いろんな角度から、金融の動きまで含めて出ていたんですね。
ですから今、大きな歴史の転換期に来てるというふうに、私は捉えているんですね。

●インターネット時代を迎え、若者たちがつながりやすく、共感が共感を呼びやすい状況になっているが、その若者たちが集まっている原動力とは?

いくつかあると思うんですが、1つはやはり、今、若者たちが非正規社員にしかしてもらえないような傾向が、大学卒の半分ぐらいがそうなってしまっているという、この時代の閉塞感、また就職してもブラック企業なり、それに本当に変わらないようなひどい労働条件だったりする。
そういう中で、若者たちが声を上げざるをえないっていうのが1つあると思うんです。
それからもう1つは、そういう時代閉塞の中にいる若者が、例えば被災地に行って災害ボランティアをすると、初めてここで人が助け合うことの大切さとか人の命の大切さ、そういうものを体で感じるわけですね。
ですから、そこから出てくることばっていうのが、いわば「血肉から出てきた」っていう本物のことば、思想やイデオロギーではなくて、体の中から自然に湧き出た叫びですから、それがシールズのように、最初10人だったのが、奥田さんの本当に、平凡に見えるけれど、決して掛値なしの本物のことばだから、若者たちが共感するわけです。
みんな内面の中で籠もっている問題が、啓発されて、触発されて、そして噴き出てくる。
それが、あっという間に400人になり、何千人になっていくという。
こういうものがまさに時代だと思いますね。

●今の若者たちは自分たちの問題として、自分の経済や状況をよくするということよりも、国や社会をよくしたいという意識を持っている その意識の大きな変化も背景にあるように思えるが?

これは例えば、小学生ぐらいで被災地で避難生活をしてる子っていうのは、親のことに対して、「迷惑をかけないで、子どもはじっとしてよう」みたいな、そういうけなげな思いっていうのが強いんですね。
それが今度、20歳前後の若者になると、それをもっと積極的に、こういう状況を改善したい、何か自分でできることはないかっていう、そういうものが、内に秘めたものがある。
問題はそれをどう出せるのか、また社会がどう受け入れるのかっていう、こういうことになってくるんですよね。

●声を上げたくても、同調圧力などによって動けないといった人たちも多いと思うが、もっと主体的に行動できるようになりたいと思っている若者たちには、どんなことが必要?

これ2つの面からアプローチしなきゃいけないのは、1つはですね、社会の制度とか行政とか、そういうふうに支える側、このシステム、ちゃんと若い人たちがのびのびと生きられるような支援体制など。
そしてまた企業や学校教育やそういう所が、若者の主体性なり、発言なりというのを堂々と認めていく。
例えば高等学校で、18歳になる。
そうすると、選挙権を与えながら政治活動について規制するというのは、これは全然、自己矛盾がある話で、アメリカ辺りに行きますと、高校生ぐらいになると政治問題について、「イラク爆撃は正当か反対か」っていうことで、堂々と授業の中で議論させるわけです。
決して、政党を政治色で見ないんですよね。
そうやって、子どもたち、あるいは若者が世の中の真実を見て、自分の意思決定をしていくっていうのが備わってくるわけですが、日本はなんとそれを、いまだに抑圧的にしか考えない。
それから政治の世界は、いろんな政治活動する若者に対して、なんか反体制という一色でしか見ない。
そういう型にはまったような古い考えがあるんですね。
一方では、若者たちが自分から進んで、チャレンジしていかなきゃいけないわけで、そのためには、いろんなものの考え方っていうものを変えていく必要があるんです。

それはどういうことかというと、まず自分で考えるっていう習慣をつけること。
単にマニュアルとか、あるいは学校で教えられたこと、その会社のしきたりなり、就業規則なり、それだけで働いてるんじゃなくて。
とにかく自分で考えて、自分は一体どんな使命を持ち、どんな役割を果たすことが、少なくとも世のため人のためになるかということを考えるということ。
それから2番目にですね、あふれるようなネット社会の情報なり報道機関からの情報、その裏に何があるのか、その根底にある問題は何かっていう、その情報を読み解く力っていうのを、絶えずウォッチしながらみずから近づけてくるってことですね。
それから、「自分の考えが絶対」としないで、違う考えがいっぱいあるんだ、他者の考えを理解する姿勢を絶えず持つ、よく耳を傾けるとかですね。
そしてまた、自分が考えていることをきちっと表現する力。
これは今のネット社会の中でものすごく弱くなっているので、そこをしっかりと身につけないといけない。
これはスマホの時代になって、特に表現力の低下っていうのが問題になってます。

●若者たちが目指そうとしている今の生き方、あるいは、こうなったらいい社会だと彼らの心の中で考えている姿、どう映った?

僕は、VTRのリポートを見て、非常に心強く感じました。
こういう新しい芽っていうのが時代の転換を象徴するものであって、これからそういう芽をどう大事に育てるか、これを大人たちが真剣に考え、政治や行政が考える、教育が考える。
それが、初めてこの国を、本当に人々が生きていてよかった、あるいは充実感があるとか、自己肯定感が持てるとか、生きがいを感じるとか、そういう社会づくりにつながっていくと、私は思いますね。
(また、その芽が本当に大きな芽になっていくのか、未来の芽になるのか、まだ分からないが?)
大人のそういう、温かい、支える目線が必要ですね。

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