クローズアップ現代

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No.37692016年2月15日(月)放送
高齢者の“大移住”が始まる!?~検証・日本版CCRC~

高齢者の“大移住”が始まる!?~検証・日本版CCRC~

“生涯活躍のまち” 望みを託す地方

6年前、国の構想に先駆けてつくられたCCRCです。





住民は、52歳から90歳までおよそ600人。
7割が、東京など別の地域から移住した人たちです。
150億円かけて造られた施設。



テニスコートや、ビリヤード場。





看護師と保健師も常駐しています。





住宅のほか、スポーツ施設や病院などを備え、高齢者が健康で活動的に過ごせるようになっています。




東京から移住
「独り暮らしだったら心細かったけど、ここに入って本当に心強かった。」

東京から移住
「ついの住みかとしていいんじゃないかな。」

新たにCCRCを開発する地方の現場で、何が起きているのか。

いち早く動き始めた新潟県南魚沼市です。
低迷する地域経済を再生するため、国が交付金で支援するCCRCに望みを託しています。




市は、すでに施設の建設候補地を選定。
都会の元気な高齢者400人を呼び込む構想を描いています。




南魚沼市企画政策課 清水明課長
「移住された高齢者のみなさんも、輝いて、健康で長生きしていただく。
地域には若いみなさんの職場が生まれる、雇用が生まれるということで、地域が元気になっていくと思う。」

南魚沼市のCCRCの拠点となるのは、高齢者が生涯学習できる大学です。
そこを中心に、住宅・介護施設などを整備する構想で、7億円以上の経済効果を見込んでいます。


この日、視察にやって来たのは、東京の大手建設会社の役員です。
国の交付金などが投入されるビッグビジネス。
いち早く建設に名乗りを上げました。



大手建設会社役員 芝山哲也さん
「元気な高齢者が多いので、その人たちがセカンドステージでもっと楽しめる施設をいっぱい作らないとだめ。」



着々と進むCCRCの構想。

移住に興味を持った男性が、東京からやって来ました。
商社マンとして培った英語力を生かし、留学生に日本語を教えたいと考えています。



移住を検討する男性
「こういう場があるというのはとても魅力的だと思う。
何か役に立つみたいな方が、若くいられると思う。」



しかし、地元の介護施設の状況を調べに来たときです。
ベッドが足りず、大勢の人が入所待ちしていることを知りました。

移住を検討する男性
「ここに入るのは、ウェイティングリストが?」

施設担当者
「はい、そうです。」

移住を検討する男性
「なかなか入れない?」

男性は、介護が必要になったとき受け入れてもらえるか、不安を感じました。

移住を検討する男性
「介護施設も見せてもらったが、ベストなのかどうかよくわからなくて、もうちょっと勉強したい。」

高齢者が安心して暮らせる仕組みを今後早急に作らなければならないと、市の担当者は考えています。

南魚沼市企画政策課 清水明課長
「不安の解消というか、払拭(ふっしょく)がないと前に進められないと思う。
それを意識しながらCCRCの理想的な形を求めていきたい。」

“生涯活躍のまち” 理想と現実

高齢者は、CCRCで豊かな老後を送ることができるのか。
先進事例を取材すると、さまざまな課題が浮かび上がってきました。

今から20年前、福岡県朝倉市に全国に先駆けて開発されたCCRC・美奈宜の杜です。





当初の総事業費は300億円。
戸建ての住宅街、住民の交流の場、コミュニティセンター、ゴルフ場などを造る計画でした。




このまちで長年、区長を務めてきた前田幸保さん、79歳です。
3,000万円の家を退職金で購入しました。




前田幸保さん
「何でもそろっているから安心して住めると、ユートピアという気持ちで過ごせるまちという雰囲気があった。」




しかしまちの姿は、計画とはかけ離れたものになっていきます。
当初、1,000人と見込まれていた入居者。
実際には、200人しか集まりませんでした。
住み慣れた土地を離れて移住する人が、思いのほか少なかったのです。


その結果、開発業者の経営が悪化。
住民が交流するための多目的ホールやフィットネスクラブなど、老後を生き生きと過ごすための施設の建設が中止されました。

前田幸保さん
「ユートピア的な構想が半分でも実現すればいい。
ところが1~2割で終わってしまった。」

まちが出来て10年。
別の問題も浮上します。

介護を必要とする住民が増え、ヘルパーが不足。
十分なサービスを受けられない事態に陥ったのです。
安心して老後を過ごせない。
まちを去る人まで現れるようになりました。

前田幸保さん
「行政が、ディベロッパーが、人が住みやすいまちをつくってくれるという考えは、これはちょっと間違っているのではないかという印象を私は強くしました。」

高齢者が“大移住”!? 検証・日本版CCRC

ゲスト宮本太郎さん(中央大学教授)

●ディベロッパーや行政が、住みよいまちを簡単にはつくれない、このことばをどう聞いた?

やっぱり大規模な開発型のCCRCづくり、これが夢は振りまいたけれども、うまくいかなかったと、最後のことばでは、やっぱり行政頼みではだめで、自分たちで考えなきゃいけないとおっしゃってましたね。
一般的に言えば、寿命が長くなる中で、中高年が地方に移ってセカンドステージを作って、これは非常にいいことですね。
しかも、そのことによって地方が活性化するならば、これはウィンウィン関係で、とても重要なことだと思います。
今、政府はこれをアメリカのCCRCという高齢者コミュニティーのモデルに準拠して、日本でもつくっていこうとしているわけですけれども、日本とアメリカではいろんな点が異なっていて、まずどんな人が移住してくるのかということ、それから移住した先でどんな住まい方・居住のしかたをして、特に介護や医療のサービス、これとどういうふうにつながっていくのか、この2点が大きく違ってると思うんですね。
この違いを十分踏まえて進んでいかないと、日本のCCRCも失速するのかなというふうに思います。
(どんな人が住むか、アメリカと日本型との違いは?)
アメリカのCCRCは、基本的には富裕層向けの民間の事業なんですね。
入居費用も数千万円、毎月、数十万円のお金を払っていくわけです。
ところが日本の場合は、基本的にはそんな富裕層だけではなくて、例えば厚生年金の平均受給額、21万円くらいの厚生年金を受け取っている人たち、普通の人たちが移住の対象になっていくわけですね。
そうした人たちが家を処分して移った先で、その経済力でなんとかやっていく条件が確保できてるかどうか、これが1つだと思います。
それからもう1つは、移住のニーズっていうのが、どれくらいあるのかということです。

(国が行った意向調査によると、60代では『検討したいと思わない』とする人たちが、男性が63%、女性が71%に上っているが?)




同時に国が強調してるのは、50代の男性で見ていくと、移住を考えてるっていう人が、半分以上ですよっていうことなんです。
(男性が多く、女性がかなり少ない?)
でも、女性は非常に冷静で、つまり女性は今住んでいる所でコミュニティーにちゃんと根を張っている、お友達もいっぱいいるわけですね。
「なんで移住しなきゃいけないの」っていうふうになっていくので、行くんなら行ってっていうことになりかねないわけですね。
男性も1人で盛り上がってはいるんですけれども、1年以内に具体化したいって考えている人は3.3%くらいで、いざ家を売り払ってということになると、いろんな問題に直面していくということで、そんなスムーズにいかないかなということです。
そもそも今、あんまり地域につながりがなくて、行った先でちゃんとコミュニティーに入っていけるか、そこもちょっと不安なところですね。

●高齢者が多く住むと、介護や医療ニーズが地方で提供できるのか、その負担の問題も出てくるが?

アメリカのCCRCというのは豊かな層向けですので負担も大きいんですが、必要になったときに必ず医療や介護のサービスが提供されるってことが、契約上ははっきりしているわけです。
ところが日本の場合は主体が違いますので、行った先で公的な医療や介護のサービスに依拠せざるをえない。
CCRCとしては、いろいろ利用しやすいような配慮はすると思いますけれども、必ずそうしたサービスが提供されるっていう約束はできないわけですね。
(誰がその主体になるのか分からない?)
しかも、その受け入れ先の自治体としては、元気な高齢者は迎え入れるんですけども、だんだんその人たちに医療や介護のサービスが必要になってきたときに、その負担をしなければいけないということになってくると、ほかの住民がちゃんと納得してくれるか、そういう問題もあると思います。

身の丈に合った“まち”を 空き家利用でコスト削減

ばく大な資金を投入し開発されるCCRC。
どうすればコストを抑え、身の丈に合ったまちをつくることができるのか。
福岡県北九州市で、ある取り組みが始まっています。

この日、市の担当者が向かったのは、空き家が点在するエリア。





中に入ると、リノベーションが施され、暮らせるようになっています。
市はここに、都会の高齢者に移住してもらうことを計画。
新たに施設を造らずにすむため、大幅なコスト削減が期待できます。


リノベーションした空き家に移り住んだ高齢者。
病院や介護施設も新たに建設せず、すでにあるものを利用してもらいます。
空き家を核にした、まち全体に広がるCCRCです。



北九州市地方創生推進室 岩田健担当課長
「市が土地を用意して、建物を建てて、という時代ではない。
空き家は増えてきていますので、そこをマイナスにとらえずにうまく使おうと。」

“若い世代を呼び込め” 苦境からの再生

入居者が集まらず、開発業者の経営が悪化した福岡県朝倉市の美奈宜の杜です。
10年前、老後への不安が広がったCCRC。




長年、区長を務め、まちの変遷を見つめてきた前田幸保さんです。
まちをよみがえらせるために注目したのは、若い世代でした。

前田幸保さん
「年寄りばかり集めても、実際は難しいなと思っていた。
若い人が、子どもが、まちに増えたらいいなと。」

前田さんたちの声を受け、開発業者がまちに呼び込んだのは30~40代の子育て世代。

高齢者が出ていった中古物件を、新築の6割ほどの価格で売り出しました。





すると、福岡から車で1時間という利便性もあり、多くの子育て世代が移住してきました。
若い世代が移り住んできたことで、高齢者に変化が現れます。




重松眞さん、71歳。





重松眞さん
「何かつかませようか?
どんぐりがいいか?」



近所の子どもたちに、趣味の木のおもちゃ作りを教えるようになりました。
高齢者だけのまちでは得られない、生きがいを手に入れることができたといいます。


重松眞さん
「やりがいがあります。
いちばんいいですよ、(笑顔が)見られるということが。」



子どもたちに喜んでもらおうと、さまざまなイベントを開催するようになった高齢者。
次第にまちに活気が生まれてきました。

前田幸保さん
「『自分たちで力を合わせてまちをつくっていこう』という雰囲気が、誰からもそういう話が出るようになった。」

若い世代が移住してきたことで、介護の担い手の問題にも少しずつ明るい兆しが見え始めています。

進藤由紀さん。
介護の知識を実践的に学ぶ勉強会に参加しようと考えています。




進藤さんには、日頃から世話になっている高齢者がいます。
小学生の娘が、木のおもちゃ作りを教わっている重松さんです。




進藤由紀さん
「これ、バレンタインです。
いつもありがとうございます。」

重松さんに何かあったとき、支えたいと考えています。


進藤由紀さん
「介護だけじゃなく、普段の生活で少し手助けできるならさせていただきたい。
地域全体でいろんな問題に取り組んでいく。
助けあえたらいいなと思います。」


今、若い世代は、住民の4分の1を占めるまでになりました。

このまちで豊かな老後を送りたい。
移住してくる高齢者が急増しています。




前田幸保さん
「若い人も年寄りも、みんなして生活していくというのが本当のまちの活性化かなと。
このまちの将来、トンネルの先に明かりが見えるという気持ちになった。」

どうあるべきか? 日本版CCRC

●CCRCは1つの地域にいろいろなものを造ってまちをつくるという「大規模な開発型」のイメージがある 北九州の例は空き家などの今ある施設を活用していたが?

「小規模なまちおこし型」と言ってもいいかもしれませんね。





やっぱり、大規模な開発型はコストもかかるし、リスクも大きいわけです。
もちろん、富裕層を相手にこういうモデルを作っていくのはいいと思うんですけれども、ただ先ほど申し上げたように、日本ではもっともっと広い人たちが移住の対象になりますので、この小規模なまちおこし型、これは既存の施設だとか、空き家をうまいこと利用して、その地域で支え合いの関係を作っていくと、豪華なフィットネスジムで元気になるというよりは、例えば地域の世話焼きをやりながら、そのことで健康を維持していく、こんな形が、実は身の丈に合った小さなCCRCが日本には合ってるんじゃないかなというふうに思いますね。
(空き家や医療施設・介護施設を利用するだけではなく、活動の場もどう作っていくかというところが問われる?)
そのことが、例えば朝倉市の場合は、この大規模な開発型だったわけですけども、それは冒頭のVTRにあったように、なかなか問題が山積してうまくいかないところが出てきている。
ところが今、元気を取り戻し始めてるんですね。
それはどうしてかというと、ある意味では、まちおこし型の要素、例えば今、若者たちがどんどんどんどん入ってきてるわけですね。
実は今、移住の流れの中で、若い層が占める割合というのは非常に大きい。
でも、これをなんで高齢者の移住と、若者の移住を別々に考えなきゃいけないのか。
実はこれは相乗的に発展させるべきことだということですね。
朝倉市でやってることっていうのは、言ってみれば、若い人たちは支える側、高齢者は支えられる側、そういう二分法をやめようということですね。
若い人たちも子育て等、支えられるべき点がいっぱいある。
高齢者も逆にアクティブに支える側に回ることができる。
例えば子どもの施設で、高齢者が駄菓子屋さんをやるとか、保育所で保育の介助をやるだとか、あるいは勉強の手伝いをする、これ、高齢者からすると介護予防なんですけれども、それ自体が子育て支援になってる。
これ、「支え合い」ですね。
この「支え合いを支える」ことで地域全体が元気になっていくと。
そういう方法で今、朝倉市は元気になりつつあるというふうに思います。

●医療・介護費を安くしよう、人口減少を食い止めようなど、いろんな目的で進めようとしているが、本当に今、目指さないといけない部分とは?

高齢者を動かすことで、社会保障のコストを少し削減したい、その気持ちだけでやってるわけですけれども、実は新しい支え合いの形を作り、それを支えることで地域が活力を帯びていく、元気になっていく。
そういう形を、どんどんつくっていくこと、これが今、大事だと思いますね。
(それは結果として、持続可能な地域になっていく?)
地域づくりになっていく。
いずれにせよ、そういう地域にしていかないといけない。
そのきっかけに、CCRCをするべきだというふうに思います。

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