クローズアップ現代

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No.37662016年2月8日(月)放送
ITが変える“お金の未来” ~フィンテック革命の衝撃~

ITが変える“お金の未来” ~フィンテック革命の衝撃~

フィンテックが変える“お金の未来”

長崎県のテーマパークです。
園内のお店でお土産を探すこの女性。




レジで指紋を認証します。





店員
「読み取れました。
893円分のお支払いです。」



これで支払いは完了。
園内では財布を出さずに買い物ができます。

実は、客は入園の際に指紋を登録。
そして、お金を預けていたのです。




利用客
「さっき買い物したときに小銭をバラバラと落とした。
(財布を)出すことなくて良かった。」



「ロボアドバイザー」という、資産運用のサービスも生まれています。

およそ6,000銘柄の金融商品の値動きを人工知能が常にチェック。
客のニーズに合わせて自動的に銘柄を組み合わせ、投資してくれます。



これまで資産運用のサービスは、主に銀行や証券会社の専門の社員が担ってきました。





これを人工知能で行うと、チェックできる銘柄数が格段に増えます。
人件費を抑えられるため、手数料はより安く設定できます。
主に富裕層が利用していた資産運用のサービスを、誰にでも格安で提供します。


お金のデザイン 北澤直取締役
「お客様の入るハードルを下げることで、資産運用サービスが一般の方々に広く行き渡るようにしたい。」

もう銀行はいらない!? フィンテック革命

金融サービスの新たな可能性を切り開くフィンテック。
急拡大しているのが、アメリカです。

きっかけは8年前のリーマンショック。
経営が悪化した大手金融機関が貸し渋り、低所得者や中小企業が融資を受けにくくなりました。
これをチャンスと捉えたIT企業が、新たな発想で融資などの金融サービスに乗り出したのです。

フィンテックを活用して自転車店を開いた、ジミー・スタンドリーさんです。
スタンドリーさんは、それまでオリジナルの自転車をネットで販売していました。
事業を拡大するため実際の店も開こうと、銀行に融資を申し込みました。

自転車店 オーナー ジミー・スタンドリーさん
「10以上の銀行に融資を掛け合いました。
そのうちいくつかの銀行から『融資できる可能性がある』と言われ、苦労して手続きを進めたのですが、結局、融資はしてもらえませんでした。」


スタンドリーさんがたどりついたのが、こちらのサイトでした。





借りたい金額のほか、事業内容・売り上げなど必要な情報を入力し、融資を申請します。




すると、銀行より金利は高いものの、およそ3,000万円の融資を受けることができたのです。

自転車店 オーナー ジミー・スタンドリーさん
「非常に興奮しました。
まさにこうしたサービスを求めていたのです。」

なぜ、資金を借りることができたのか。

サイトを運営する会社です。
カギは、資金を借りたい人と貸したい人をインターネットで仲介する仕組みです。




この会社では融資の申し込みを受けると、その経営状態を審査し5段階で格付け。
金利は格付けに応じて、およそ5~22%に設定します。
資金を貸したい人はその格付けをホームページで確認し、共感できる企業に融資します。
リスクはありますが、高い利回りも期待できます。
すでに、このサイトを通じた融資は1,800億円以上に上ります。

ファンディング・サークル アルバート・ペリューさん
「我々は便利で画期的なサービスを提供しています。
借り手は面倒な手続きだけして融資を受けられないなんて、まっぴらです。」



IT業界を代表する人物もフィンテックに乗り出しています。

世界で3億人以上が利用する「ツイッター」の創業者、ジャック・ドーシーさんです。
フィンテックの可能性にいち早く気付き、リーマンショックの翌年(よくとし)、新たな会社を起こしました。



スクエア ジャック・ドーシーCEO
「金融サービスの分野では、我々の目の前に広大な“空き地”が広がっているのです。」



まず手がけたのが、独自の決済システムです。

この機器をスマートフォンやタブレット端末に取り付けるだけで、クレジットカードが利用できます。





どこでもカードが使えるため、小さな店からも人気を集め、およそ200万の事業者が利用しています。
実はドーシーさんの会社、このシステムを通じて事業者の決済のデータも集めています。
これらのデータを活用し、企業への融資まで始めています。


融資を受けたコーヒーショップです。
ある日、ドーシーさんの会社から、「およそ400万円なら融資ができる」という知らせが突然届きました。
ちょうど、コーヒー豆のばい煎機を購入しようか迷っていたところでした。


ドーシーさんの会社は、事業者の売り上げを日々分析しています。





事業者が資金を欲しがりそうなタイミングを自動的に判定。
融資可能な金額と金利をはじき出し、持ちかけるのです。




この店では、即座に申し込み。
翌日にはおよそ400万円が振り込まれ、ばい煎機を購入できました。




コーヒーショップ 経営者 ニコラス・チョーさん
「資金が早く手に入れば入るほど、ビジネスは成功します。」




スクエア ジャック・ドーシーCEO
「我々の決済システムを通じて、これまで銀行が手の届いていなかった人々に融資を実行することが出来るようになりました。」


急拡大するフィンテック。
その可能性を評価する金融当局も、フィンテックが銀行の経営に打撃を与え、金融システムを揺るがさないか警戒しています。

サンフランシスコ連邦準備銀行 マーク・ゴールド副総裁
「現在、我々が目にしている技術革新の中には金融のあり方を破壊しかねないものもあります。
何が起きているかを監視し、長期的にどんな影響があるのか、考えていかなければなりません。」

ITが変える“お金の未来” フィンテック革命の衝撃

ゲスト翁百合さん(日本総合研究所副理事長)

●金融の分野外にある企業による決済や資産運用のアドバイス・融資はどれぐらいのスピードで広がっている?

非常に技術革新のスピードは速いですし、それから次から次へとこのITのベンチャー企業が新しいビジネスモデルを提供するということで、もう数年タームで非常に大きく変わっていくといった感じだと思います。

●3億人の利用者がいるツイッターなど、金融機関のライバルとなるのはそういう相手?

そうですね。
アメリカの大手企業のCEOも、われわれのライバルは銀行だけでなくIT企業、グーグルやフェイスブックだというようなことを言ってるわけですね。
このIT企業というのは、やっぱり今おっしゃったように、非常に多くの利用者を抱えています。
同時に、このITのベンチャー企業が次々と新しいアイデアを出してきていると。
そういう点で非常に危機感を持っているというのが現状だと思います。

●既存の金融機関は、ATMの維持・多くの支店・多人数の雇用など、相当なコストのかかる産業では?

そうですね、やはりIT企業が活用しているのはインターネットですので、非常にコストを安く、しかも付加価値が高いサービスを次々に提供できると。
そういった違いがあると思います。

●事業者の決済情報をもとにタイムリーに融資の誘いが届くなど、かゆい所にまで手が届くようなサービスができる?

非常に付加価値の高いサービスを提供できていると思います。
例えば保険についても、自動車の運転者の特徴をビッグデータで分析して、その人に合った保険を提供するといったような動きもあります。
そういう意味で、今までできなかったような付加価値の高いサービスを提供できているという点が非常に大きいと思いますし、VTRで紹介があったように、今まで銀行にあまり縁のなかった人も金融サービスを享受できるという意味で、非常に金融の可能性を広げていますし、経済の活性化にもつながりうる非常におもしろい動きだといえると思います。

●ロボット・人工知能が融資を判断していたが、的確な判断はできる?

今まで銀行は、フェイス・トゥ・フェイスで相手を見て融資をしているというところがありましたが、これは全部ビッグデータで解析をして、そして人工知能で判断をしているというところが特徴で、非常に高い性能でやっていますので、それなりの信頼度はあると思いますが、ただ、これはもう少し時間がたってみませんと、どのぐらいの不良債権になるのかというのは、まだちょっと分からないところがあると思います。
それから同時にセキュリティーの問題、これは個人情報のデータが行くわけですね。
そういう意味で、そのセキュリティーをいかにレベルを上げていくかっていうのも、フィンテック企業の課題だというふうに思います。

●フィンテック企業間で、セキュリティーの確実性での競争も出てくる?

そうですね、やはりビッグデータの解析、それから指紋の認証がありましたけど、その認証のしかた自体も、よりどんどん進化して、イノベーションによって進化していくというところがあります。
ですからセキュリティーの確保自体も、イノベーションと無関係ではないということがいえると思います。

●サンフランシスコ連邦準備制度理事会幹部の「既存の金融を破壊しかねない」というコメント 当局は何を心配している?

やはり、新しいサイバー空間で行われるビジネスというのは、なかなか見えにくいというところがありますし、たとえ今、規模が小さくても、これがどんどん大きくなっていった場合に、金融システムへの影響があるんではないかということを懸念していると思います。
ですからこそ、こういった新しい動きに対して、きちんとモニターをして見ていこうという動きになっているというふうに思います。
(少なくとも、監視できるようななんらかの体制を持ちたいということ?)
そういうことだと思います。

フィンテック急拡大 銀行は変われるか

都内で開かれたフィンテック関連の勉強会です。
IT企業が数多く参加し、最新の動向について情報交換していました。




フィンテック関連IT企業社長
「いろいろな方が関心を持って、企業のトップの方々がかなりの勢いで予算をつけている。」



大手銀行の社員の姿もありました。

大手銀行の社員
「自分の職業をかなり減らす可能性があると思っていて、それを含めて、メガバンクだからこそできることは何かを考えていきたい。」



大手銀行の社員
「私たちもなかなか動きが悪い部分はあると思うので、いろいろ共同してやれないかなと。」



フィンテックを取り込まないと生き残れない。
大手銀行は対応を迫られています。

この銀行では、フィンテックをどう活用して事業を展開していくか、具体的なプラン作りを始めています。





りそなホールディングス 東和浩社長
「新しいフィンテックの企業には全く違う消費者側からの目線も入っていますし、銀行というビジネスモデルをひょっとすると捨てていかなければいけない。」


今、取り組んでいるのが、顧客のニーズを先取りして融資などを提案していくサービスです。
そのために必要になるのがビッグデータです。

去年(2015年)11月、カード会社と提携してネット通販のサイトを立ち上げ、顧客のデータを集め始めました。





この銀行の口座を持つ人がサイトを経由して買い物をすると、銀行からポイントが得られます。
銀行には、その人がいつ何を買ったのか情報が入ります。




このデータを分析して、結婚や出産といった転機を捉え、必要なタイミングで先回りしてローンなどを提案します。





りそなホールディングス オムニチャネル戦略部
増川和憲グループリーダー
「子ども用品を購入したお客様に、今後お子様が大きく育っていくなかで、教育資金の悩みだったり、住宅の購入を検討されるとか、お客様をより理解して、お客様の立場を考えてアプローチをすることが重要になってくる。」

一方、支店の在り方を抜本的に見直そうとしています。

こちらの支店。
最先端の認証技術を活用して、口座開設などの手続きを簡略化しました。




事務作業にあたる人を減らし、その分、ローンや資産運用の相談といった対面サービスなどに当たる人員を1,000人増やすことにしています。




りそなホールディングス 東和浩社長
「重要な仕事というのは、フェイス・トゥ・フェイスのコンサルティング(相談)の部分だと思います。
もちろんフィンテックで技術競争をやっていくのは避けては通れないですけど、技術だけの部分ではなくて、いかにお客様の求めるものがどう違うのかを見つけなくてはいけない時代に来ている。」

フィンテック急拡大 銀行は変われるか

●開発スピードが速いフィンテックに、日本の銀行は勝てる?

日本の銀行だけではないですが、銀行業というのはやはり「装置産業」で、人もたくさん雇ってますので、今の、インターネットを活用して身軽な形で次々と起業しているベンチャー企業に比べると、やっぱりコストの面では相当違いがあります。
そういう意味では、そういった特定の分野での勝負というと、特徴を出しているIT企業には勝てない部分というのはかなりあると思います。
先ほどもご紹介ありましたけれども、今までは規制で、そういったIT企業に出資をするということもできませんでしたので、どうしても自前主義でやらざるをえなかったということなんですね。

ですから、こういったITの流れに乗っていくためには、そういった新しいIT企業などとオープンな形で組んで、オープンイノベーションを起こしていくというのが非常に課題になってきているというふうに思います。
(その方向に、金融庁も規制を緩和するということを打ち出している?)
そうですね。
同時に、先ほどもフェイス・トゥ・フェイスというご紹介がありましたが、フィンテックへの対応も重要なんですが、やはり金融業らしい、銀行業らしいサービスはなんなのかということを、銀行ならではのサービスっていうのはなんなのか、利用者の目線に立ってどういったサービスができるのかっていうことを本格的に考えなければいけないということではないかと思います。

●人工知能でいろんな分析やアドバイスができるようになると、銀行員の再教育・人材育成がますます大事になってくるのでは?

そのとおりだと思います。
やはり、人材をどうやって育成していくか。
特に、いろいろな専門性のある人材をいかに育てていくかということが重要になってくると思います。
銀行によってはこの分野を強化したい、例えば企業に対するサービスを強化したいということであれば、その事業の目利きやアドバイスができる人材を育成していくことが大事だと思いますし、例えば資産運用のアドバイスであれば、そういったことに対して非常に知識のある人材を育てていくという形で、専門性のある人材を育てていくということが非常に重要になってくるというふうに思います。

●銀行にとってはマイナス金利という新しい局面の中、積極的な貸し出し先、可能性のある所をどう確実に見つけていくのか問われるのでは?

そうだと思います。
特に地域なんかでは、地方創生ということが課題になっていまして、やはり金融機関が、そこの企業や自治体や大学なんかと組んで、新しい産業をどう生み出していくかと、そういったところに積極的に支援をしていくというようなことも、求められると思いますし、やはり小さな企業であっても、どうやって支援していくのかということも重要だと思います。

●私たち利用者側は、このフィンテックの動きをどう捉えたらよい?

やはり自分に合った金融商品の提案など、付加価値の高いサービスをフィンテックというのは与えてくれるものでありますので、やはり安全性とか、セキュリティーなどに信頼が得られれば、私たちの暮らしを非常に豊かにしてくれる可能性を秘めた動きではあるというふうに思います。
(利用者側も金融機関も、フィンテックに対するリテラシーが問われる?)
そうだと思います。
銀行のサービスの向上が促されると、また競争が促されて、よりよい金融システムになっていくんではないかと思います。

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