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No.37472015年12月10日(木)放送
橋の“命綱”が危ない ~公共工事 はびこる不正~

橋の“命綱”が危ない ~公共工事 はびこる不正~

橋の“命綱”が危ない 公共工事で何が

問題の発端となったのは、京都市の国道の勧進橋。
市の中心部につながる幹線道路で、災害時に救助や救援活動に使われる緊急輸送道路に指定されています。
現在、橋の落下を防ぐ安全装置を取り替える工事が行われています。
不正が発覚したのは今年(2015年)7月。
耐震補強装置の部品が発注通り作られていないという匿名の通報がきっかけでした。

金属の板を溶接して作られた部品。
溶接部分は隙間なく溶接するよう発注されていましたが、国が部品を切り取って断面を確認したところ、隙間が見つかったのです。
その数は調べた80の部品のうちの7割以上に及びました。

隙間があるとどうなるのか。
京都府の試験機関で実験しました。
溶接が不十分な部品を上から引っ張ると…。
内部の隙間から亀裂が入り、破断しました。
国土交通省でも同様の実験を行い、溶接が不十分な場合、安全性が保証できないとしています。

橋の構造に詳しい 東京都市大学 三木千尋学長
「かなり強い地震を想定して(設計)しているが、それでも予期できないことがあるかもしれない。
その時に橋が落ちないようにするのが、あの装置。
(揺れで橋に)大きな動きが出たときに、命をつなぐ装置だと思った方がいい。
(溶接不良は)とんでもないこと。
やってはいけないことをやっている。」

溶接が不十分な部品が取り付けられた橋は、全国45の都道府県で550を超え、部品の多くが意図的に製造されていたことが国の調査で分かりました。
この不正に関わった会社は合わせて12社に上っています。

橋の“命綱”が危ない 不正の実態は

最初に不正が明らかになった、福井市の久富産業です。
従業員30人の中堅部品メーカーです。




この会社の社員ら関係者に、国や元請け会社が聞き取り調査をしてまとめた内部資料です。
NHKが独自に入手しました。



工場の責任者の回答です。
「加工時間の短縮を目的として溶接工程を意図的に省いた」。
「検査対象の部材をあらかじめ決め、検査用部材とそのほかの僅かな部材しか施工を適切に行っていなかった」。
証言は、会社ぐるみで不正を行ってきたという驚くべきものでした。
溶接にはどのような工程があるのか。
京都府内にある金属加工業者に見せてもらいました。

「こちらが『完全溶け込み溶接』をした試験体です。」





今回求められた完全溶け込み溶接は、まず金属の板の先端の部分を鋭角に削り、片側から溶かした金属を流し込んでいきます。



しかし、先端には溶かした金属が流れ込みにくい小さな隙間が出来るため、さらに反対側から削り、そのあと溶接することで完全に一体化させるのです。



左側が正しく溶接した場合、右側が反対側から削る工程を省いた場合です。
工程の一部を省くと大幅な工期の短縮やコスト削減につながるといいます。


京都府鉄鋼工業協同組合 伊藤佳治理事長
「労働時間も短いし溶着金属も少なく済む。
ありとあらゆることでコストダウンですよね。
(完全溶け込み溶接を)するしないでは4割は安くつく。」

久富産業はNHKの取材に対し文書で回答し、工程の一部を意図的に省いたことを認めました。

なぜ、こうした不正がまかり通っていたのか。
今回の工事の構図です。
国から発注を受けた元請け会社は部品の製造を外注。
部品メーカーは検査を外部の検査会社に委託します。
品質を確保するための検査は、部品メーカーの久富産業と検査会社の側に多くが委ねられている構造になっていました。

検査は超音波を使った機器で行います。
検査機器の先端から金属の内部に向かって超音波を出し、その反射時間で異常がないか調べます。
僅かでも中に隙間があれば、反射が早くなるため異常が特定できるのです。

今回、久富産業の工場で行われた検査の写真です。
元請け会社から全製品のうち10%を抜き取って検査するよう求められていました。


しかし内部資料によりますと、検査員に正しく作った部品だけを検査させ、合格という結果を得ていたということです。
この不適切な検査の結果、不正に作られた部品が検査を免れていたのです。


さらに「傷が見つかっても検査時には言わないでくれ」と久富産業が検査員に対して依頼したことばや「検査装置の操作をごまかし合格であると元請けに報告」。
検査員が取った行動などが記されていました。


検査員が所属する会社(北陸溶接検査事務所)によりますとこの検査員は、ほぼ10年間久富産業に常駐していたということです。
また会社は、検査員の不適切な行為について全く認識していなかったとしたうえで、その動機について検査員は「顧客である久富産業の要請を拒絶することに対しては、強い心理的抵抗を感じていた」としています。
なぜ各地で不正が相次いでいるのか。
国が意図的な不正を行ったとした12社のうちの1社の幹部が取材に応じ、工程を省いて部品を作ることが長年の慣習になっていたと証言しました。

不正に関与した部品メーカー 幹部
「こういうもの(手順を省く方法)でいいんだ、そういう意識の中でやったこと。
すごく、ずうずうしいがブレーキをかけてくれる人がいなかった。
(検査が)通った通ったで10年きて、そのまま今がある。」

阪神・淡路大震災以降、全国の橋に取り付けられてきた耐震補強装置。
今回、不正が明らかになったのはこの5年ほどの工事が対象で、その数はさらに増えると見られています。

橋の“命綱”が危ない 公共工事 はびこる不正

ゲスト髙木千太郎さん(首都高速道路技術センター)

●安全装置に大量の不良部品が使われていた実態、どう受け止める?

私はこの報道を聞いたときに、まずは非常にがっかりした。
もう一つは、またこういうような事件が起こってしまったのかというような2つの思いを大きく持ったということです。
それはなぜかと言うと、私が知るかぎりでは昭和50年代のころから、この落橋防止の装置を付けていたわけですね。
それは日本が世界に発信をした耐震上の重要な施設であるというような一つ言えば、ジャパンプライドであるというようなことであると思うんですね。
その日本が誇るべきそういうような装置に、このような不良なものが出てくるっていうようなことが、日本が発信をしている世界に主要な技術や製品に対して、足元をすくうようなことになるのではないかというようなことで、非常に心配しているということです。

●部品メーカーが作った部品の7割以上が性能を満たしておらず、いわば検査会社の社員と癒着しているような実態 あってはならない構図と受け止めるべき? それとも当たり前?

もともと発注者元である、国土交通省、もしくはいろいろな地方公共団体が、元請けの技術力、それから検査力というもので、しっかりした製品を出すというようなことで、この元請けに発注をしているわけですね。
元請けが例えば、この部品メーカーにこれを下請けをさせるというものが、今回の場合を見てもお分かりのように、数多くのものを作るということですから。
(いくつもの部品を作る?)
そうですね。
だから、大きなものを1つ作るんじゃなくて、数多くの部品を作るということからいうと、これはやむをえないことであるというふうに、私は思っています。
ただ重要なのは、先ほども申し上げた、しっかりとした、製品を出す、ちゃんと検査をしてくれるというように期待をしている発注者から考えれば、元請けがしっかり機能していないというようなことが一番大きな問題だというふうに、私は感じています。

●事実上の品質の管理が部品メーカーと検査会社に任されていた?

そうですね。
ですから本来であれば、元請けが、こういうような検査会社も含めて、自分で製品を、きちっとしたものを検査をするというような体制というのは必要であったと思っています。

●日本の技術力、あるいは技術者は大丈夫なのか、何が起きているのか、どう見ている?

私は、技術者というのは必要なものとして、大きく挙げて3つあると思っています。
1つは、当然のごとく技術者ですから「技術力」です。
2つ目は、「想像力」ということで、想像力がどういうような機能をするのかといいますと、やはりこういうような部品を作って、もし欠陥のものであったとすると、そこを通っている人が、どういうようなこと、例えば自分の身内であったとすると、桁の上、橋の上ですね、橋の下、遊歩道を歩いてる人が、橋が落下したら、どう自分の家族が傷つくんだろうという、想像力がまず必要だと。
最後はやはり、「倫理観」というようなことで、その3つが最も重要であるというふうに私は学校でも教えています。
(技術力があっても、倫理観や想像力がゼロだとすれば?)
当然のごとく、それはゼロかける、要するに高度な技術力、ゼロの乗算式といってですね、もうほとんど皆無に等しいというようなことで技術者としては評価されないということだと思っています。

●部品の中に隙間があると、強度はどれぐらい下がる?

実際に今、部品としては、完全溶け込み溶接というものを求めているわけです。
例えば、部分溶け込み溶接、あのように穴の開いたような状態は、そういうような状態であるというふうに私は認識していますから、そうすると、全体の約6割弱ぐらいしかないんではないかというようなことだと思っています。

問われる検査体制 元請け会社の模索

補修工事大手のショーボンド建設です。
今回の問題で不正を行っていた久富産業に部品の製造を依頼していた橋の数は100か所以上に上ります。
元請けとしての責任を国などから問われる立場となり今、1か所につき数か月はかかる部品の取り替え工事に追われています。

問題を受けてショーボンドは検査体制を大幅に見直しました。
これまでは部品メーカーが検査会社を選んでいました。
見直した現在は元請け会社自身が決めることで、検査に緊張関係を持たせようとしています。
この日、訪れたのは大阪・岸和田市にある部品メーカー。

ショーボンド建設 検査 担当者
「工場検査2回目ということで、立ち会いを行います。」



自分たちで選んだ検査員を引き合わせ、部品の検査に立ち会います。
検査の前には、あらかじめ部品メーカーにすべての製品を自主的に検査するよう求めます。
しかし、その結果をうのみにせず、元請け会社が無作為に抜き取って検査することにしたのです。

「これやね。」

「はい、OK。」

検査を2段階にすることで再発防止につなげる考えです。

ショーボンド建設 検査 担当者
「ダブルチェックという体制をとっているので、工場側の検査も1回目にくらべたら、2回目さらに良くなっているので。」


失われた信頼は取り戻せるのか、模索が始まっています。

ペナルティーで再発防止 発注者の模索

相次ぐ公共工事の不正に発注する側も変わろうとしています。
広島高速道路公社です。
きっかけは5年前。
開通直前の高速道路の橋で施工ミスによる傷が相次いで見つかり、その事実の隠蔽が発覚しました。

この問題を受け、公社はこれまで直接取り引き関係のなかった部品メーカーや検査会社に対しても不正が発覚した場合、ペナルティーを科すことにしました。



「こちらが特記仕様書になります。」

契約の在り方を見直し一定期間、公社の仕事を請け負うことを制限するとしたのです。


広島高速道路公社 技術管理課 村重弘明課長
「抑止効果があると考えています。
発注者としてできることは、しっかりと取り組んでいきたい。」


取り組みを始めて5年。
今のところ不正は報告されていませんが、ひとたび問題が起きると影響が大きいだけに再発防止策を徹底しています。

橋の“命綱”が危ない 公共工事 はびこる不正

●広島高速道路公社は部品メーカーにペナルティーを科すという契約にした この取り組みをどう見る?

もともと発注者が、要するにこの元請けに対して工事を発注しているわけですね。
この部品メーカーに、ペナルティーをというようなことは、じゃあ、この部品メーカーに対する発注元のその権限が、要するにそういうふうに及ぶのかというふうに思いますよね。
だから、やはり本来であれば、この元請けが、きちっとやっぱり、機能をするということが重要だと思っていますよね。

●ショーボンドは自分たちで検査会社を選んで部品メーカーをチェックしようとした この取り組みをどう見る?

これはですね、今のお話のショーボンド建設が、この検査会社を新たな取り組みとして出したというのは、、私の知っているかぎりでは、同じようなことを、すでに行っている所が、もうあるわけですね。
(同じようなこと?)
同じように、元請けとして、社内の検査員を、例えば、部品メーカーのほうが(検査を)行った製品、それからその検査の状態を、元請けとしてしっかり確認をするというようなことをやっている会社はすでにありますから、私はいまさらこんなようなことを、新たな取り組みというのは、やはりおかしいのではないかというふうに思います。

●本当に再発防止できる検査体制とは、どういうもの?

例えば、ここに「第三者の検査会社」というふうなことで貼らせていただきました。
元請けと検査会社が、例えば、こういうようなこと(元請けが、検査会社を選ぶ)にしたとしても、ひょっとしたら、元請けと検査会社の間で癒着する可能性がある。
今までの過去の事例からいうと、そういうようなこともありますので、そうなると、この第三者の検査会社というのを、別に設けて、ここの会社がしっかりと検査するべきだと思っています。

●不正工事が多かったことに対して、発注元の国土交通省に対して何を求める?

国土交通省に対しては、例えば、発注元として、やっぱりきちっと機能するように、元請けが機能するように、例えばアメリカ等なんかの場合も、このような第三者検査機関を設けてますから、同じようなこと。
もう一つは、やはりそういうような法規制をするというようなことが必要だというふうに思っています。

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