クローズアップ現代

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No.37302015年11月10日(火)放送
どう変わる? ハケンの働き方

どう変わる? ハケンの働き方

「正社員になりたい」 派遣社員の思い

派遣社員として工場で働いてきた、濱谷和久さんです。
派遣会社とは3か月ごとに雇用契約を更新しています。
派遣法の改正前、3年以上働けば正社員になれると濱谷さんは思っていました。
写真の専門学校を卒業した濱谷さんは、レンズの製造工場に派遣されていました。
正社員を目指してスキルアップを続けてきた濱谷さん。
当時、作業を効率化させようと工場に提案するためみずから撮った映像です。
こうした努力が認められ、3年以上たって直接雇用の契約社員にステップアップしました。
それでも、濱谷さんの給料はほとんど変わらず18万円ほど。
ボーナスもありませんでした。

濱谷和久さん
「6年間やって上がった時給は10円だけ。
会社側は単純労働だということで。」

しかし、契約社員から正社員になることはできず、半年後、減産を理由に解雇されました。

濱谷和久さん
「あそこまで努力していったのは何だったんだろうという気持ちがあります。
ただの捨て駒扱いだったことが見え透いてしまうのが悔しい。」


濱谷さんは、今度こそ安定した仕事に就きたいと正社員の仕事を探しています。
しかし…。

「正社員の面接は受けたことは?」

濱谷和久さん
「不採用でした。
派遣で働いていたことが、遊んでいたというわけじゃないけど、さしたる評価に値しない。」

結局、すぐにできるのは派遣の仕事だけ。
そのやさき、法律が改正されたのです。

派遣法改正によって、企業側は3年ごとに人を替えれば人材を確保できることになりました。
3年を超えたあと直接雇用することは義務ではなくなったのです。
濱谷さんは実家で母親と暮らしています。


母親 絹子さん
「仕事は見つかりそうか?」

濱谷和久さん
「すぐ見つかるんだったら苦労しないよ。
面接行ったところで、すぐ突き返される。」

母親の絹子さんは、今回の法改正で息子の自立が難しくなるのではないかと心配しています。

母親 絹子さん
「早く安定してほしい、今は。
最初に派遣という形で雇用されたら問答無用で使い捨てにされる。
制度として決まってしまって、それはすごく理不尽。」

濱谷さんは、早く安定した仕事を見つけて年金暮らしの母親を安心させたいと思っています。

濱谷和久さん
「今、母に頼ってしまっているところはあります。
すごい心苦しいところでもあるんですけど、この状況から一日でも早く脱したい。」

“最長3年”の原則 専門の業務まで…

さらに、今回の法改正で大きな影響を受けるのが、専門業務に当たる26業務の人たちです。
法改正前、通訳、秘書、研究開発などの専門職では3年の上限なく、同じ派遣先で働けることになっていました。
しかし今回、こうした例外措置は撤廃され、上限が3年となったのです。

26業務の派遣の仕事をしてきた、佐藤理恵さん(仮名)です。
同じ職場でずっと働き続けたいと思ってきました。
29歳で娘を出産した佐藤さんは、シングルマザーとして女手一つで子どもを育てています。
大学で栄養士の資格を取得した佐藤さん。
それを強みに選んだのが、食品開発の仕事です。
26業務だったため、これまで派遣期間に制限はありませんでした。
ようやく見つけた安定した職場。
しかし、今回の法改正で派遣期間は原則3年。
同じ職場で働き続けられるか分からなくなりました。
現在の給料は半月ごとに振り込まれ、1か月で20万円ほどです。
別の派遣先に移った場合は専門性を生かした仕事に就けるとは限らず、同じ給料がもらえる保証もありません。

佐藤理恵さん(仮名)
「3年後、自分が何をしているかわからない状態。
できるだけ安定していたいと思って、期限の定めのない会社に派遣していただけてる状態だったので、派遣社員はそれすらの安定も望めないのかなと。」

小学4年生の娘を、自分と同じように大学に進学させたいと思っている佐藤さん。
今のうちに貯金をしておこうと、週末も別の派遣の仕事を掛け持ちして休みなく働いています。

揺れる派遣社員 雇用は安定するか

ゲスト阿部正浩さん(中央大学教授)

●26業務の1つをやっていた佐藤さんのケース、3年後どうなる?

今回の改正法では雇用安定措置として、佐藤さん、3年後に派遣期間が満了になったところで、派遣会社が今、勤めている、派遣されている会社に「直接雇用」を依頼するということがあります。
直接雇用を依頼して、派遣先の企業が佐藤さんを直接雇用しますということであれば、佐藤さんは職場で働くということが可能になります。

(このときの直接雇用というのは、どういう中身?)
正社員の場合もありますけれども、契約社員とか、あるいはその他、非正規雇用の場合もあるかもしれません。
パート・アルバイトの場合もあるかもしれません。
(正社員になれば正社員の給与体系に入り、企業にとってみるとコストは高くなる?)
(高く)なる可能性が高いと思いますね。
なので、直接雇用を依頼したところで、企業がすべて、直接雇用をしましょうということにはならない可能性はあると思います。
そうしますと、直接雇用を依頼してもだめだった場合には、派遣会社が新たな派遣先を探すということをすると思います。
この新たな派遣先を探すと同時に、佐藤さんが優秀だということで、派遣会社がどうしても無期雇用をしたいということになれば、派遣会社で無期雇用をして、また元の職場に派遣するとか、あるいは別の企業で派遣先を探して、派遣してもらうということになると思います。
無期雇用になれば、雇用が安定するということになるだろうとは思います。
(新たな派遣先を探す場合、佐藤さんが心配しているのは同じ専門職なのか、給料が下がるんではないか。そういうリスクはある?)
そうですね。
(派遣会社の無期雇用、これは直接雇用になるが、派遣先が見つからなかった人全員を無期雇用してくれる?)
必ずしも全員が無期雇用になるわけではなくて、いい人、スキルが高い人、いろいろな選別をするんだろうと思いますが、派遣会社はある一定の方を無期雇用にするんだろうと思いますね。

●なぜ国は、正社員になりたい人は前よりも可能性が高まった、より処遇がよくなるといえる?

雇用安定措置とは別に、今回の改正法では、派遣会社に教育訓練を実施するというのを義務化していますし、キャリアコンサル、あるいはキャリアカウンセリングを必要に応じてするということを義務づけておりますので、その教育訓練がスキルアップにつながって、正社員につながっていく可能性は十分あるだろうというふうに、われわれは考えているところですね。

●ずっと派遣で働いてきてなかなか正社員の道が開けない人もいたが、自分で能力開発、どういう手だてがある?

派遣会社が今回、教育訓練義務づけになったと思いますが、新たな派遣先を探して、なかなか見つからなくて失業してしまうというケースの場合には、失業保険に入っていれば、雇用保険に入っていれば、失業訓練というのを受けられます。
雇用保険の期間がもう過ぎてしまった場合には求職者訓練というのがありますので、そちらを受けるということになるかと思うんですね。
いずれにしても、ハローワークでご相談されるといいかなというふうに思います。

“教育訓練”の義務 派遣会社は…

先月(10月)から、労働局が各地で繰り返し行っている説明会です。
派遣会社を対象に新たな制度について教えています。



東京労働局
「派遣労働者のキャリアアップの推進のあり方についてということで。」



今回、派遣会社に義務づけられた1つが派遣社員のキャリアアップを目的に行う教育訓練です。
新たな制度では、すべての派遣社員に対して教育訓練の実施計画を作成。
毎年8時間以上実施し、費用はすべて派遣会社の負担となります。
派遣会社の受け止め方はさまざまです。

派遣会社(賛成)
「派遣会社として何をしなければいけないか、今まで薄かったところを、もう少し労働者、派遣社員の立場に立ったことを考えていかないといけない。」

派遣会社(反対)
「キャリアアップしたいという人もいれば、そうじゃない人もいます。
一概に全部右にならえというわけには、なかなか難しい。」

およそ5万人を派遣している大手派遣会社です。
法改正前から、パソコンやマナーを教える講座を続けてきたこの会社。
人材育成に重点を置いた新たな制度を歓迎しています。
参加者は、専門的な資格を取得したりパソコンのスキルアップを図ったりすることで、収入などの条件がいい仕事に就きたいと思っています。

派遣社員
「やはりいい仕事がいただけるのではないかと。」

派遣社員
「今は派遣ですけど、少しずつステップアップしつつ、できれば正社員を目指したいと思います。」

この派遣会社では、講座を充実させることで、よりレベルの高い人材を確保したいと考えています。

大手派遣会社 スタッフサポート推進部 湊恭美子さん
「追い風になるというふうに考えています。
皆さんに選んでいただける派遣会社になるために、さらに力を入れていきたい。」

“教育訓練”と言われても 中小派遣会社の苦悩

規模の小さな派遣会社の中には、教育訓練の義務を派遣会社が負うことに不安を訴える声も少なくありません。
製造業の工場が多い浜松市には、500を超える派遣会社があります。
製造業の下請け会社に社員を派遣している深澤良樹さんです。

派遣社員は70人。
派遣先の工場を回り、働きぶりを見守るのを日課にしています。
今回の法改正は中小の派遣会社にとって厳しいと受け止めています。



製造業の現場で問題になっているのは、派遣社員のキャリアアップをどう図っていくかです。
深澤さんの会社では、このバイク部品の工場に6人の派遣社員を送っています。
複雑な工作機械を使うなど熟練の技術が求められます。
深澤さんは、こうした技術は現場で身につけるしかなく、派遣会社が教えるのは難しいと考えています。

派遣会社 社長 深澤良樹さん
「事務職だとパソコンとかコンピューターで互換性があれば、いろんなことで勉強はスキルとして取り入れることができると思うんですけど、大きな機械とか一般にないような機械、弊社の場合、高度なことをやるので、そういったものが現実的に派遣会社だけではできない。」

深澤さんの会社から、バイク部品の工場に派遣されている武永佳祐さんです。
少しでも収入アップを目指して、新たな技術を身につけたいと思っています。

派遣社員 武永佳祐さん
「今、与えられている仕事以上のことをやれと言われたら、覚えるしかない。
それをどんどんやれることを増やしていけば。」

今の工場で働くようになって1年半。
正社員と同じように働いても、職場も生活も安定しないことにやるせなさを感じています。



派遣社員 武永佳祐さん
「本当にいつ職を失ってもおかしくない状況にたっているので、やっぱり怖いです。」



今回の法改正で、派遣会社は3年たった派遣社員の次の仕事を見つけられない場合、みずからの会社で雇用する義務も負うことになりました。
深澤さんも、若者の雇用を安定させるためには必要な制度だと思っています。
しかし、それによって会社の経営が不安定になるのではないかと不安を感じています。

派遣会社 社長 深澤良樹さん
「私たちも(派遣先から)もらうお金も年々細くなっていっていますし、あくまで今の利益の中でやるのは無理だと思います。」

揺れる派遣社員 雇用は安定するか

●製造業の場合、派遣会社だけでは教育訓練ができないという声 どうすればよい?

今回の改正法では、派遣先も派遣元に協力して訓練を行うことを求めておりますので、派遣先とよく相談しながら、やっていったらいいと思うんですね。
VTRの中で社員の方も、やれることをどんどん増やしていきたいと言ってました。
そのためには、計画的なOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)といいまして、簡単なことから難しいことへ、徐々に計画的にOJTをするということは大事だと思います。
(仕事をしながら覚えていくという?)
そのために、派遣先と協力関係を派遣元は取って、OJTをやっていくといいと思うんですけどね。
(正社員はそうやって訓練されていくわけだが、その仕組みを派遣にも?)
派遣社員にもということですね。

●派遣会社を選ぶ時代に入った?

今回の派遣法と同時に、昨年度から「優良派遣事業主認定制度」という制度も出来ております。
そういったところではマークがありますので、そういうのを見ながら派遣をしようという方は、派遣会社を選んだらいいかなというふうに思います。
(今、8万社ほどあるということだが、これから許可制にも?)
なっていきますね。
(さらにその中でも優良なものを認定していこうということ?)
そうですね。
ですので、そういう意味では派遣会社の間で淘汰が進むんじゃないかと。
そしていい派遣会社が残ってもらうというのが、希望しているところですけれどもね。

●働く側としては自分の技能に見合った賃金をもらいたい、それには同一労働・同一賃金も必要ではないかという声もあるが?

それは理想だと思います。
ただその前に、派遣社員の皆さんのスキルアップというのも大事なことだと思うんですね。
今、非正規が労働者の4割に達しているというふうにいわれてます。
それが結果として、能力の開発が不足しているとか、スキルがあまり高くないということで、もしかしたら日本経済全体の生産性を落としている可能性もあると思うんですね。
そういったことからいえば、今回の派遣法をきっかけに、派遣元、派遣先、そして派遣社員の皆さんは前向きにスキルアップに取り組んでいただいて、生産性を上げて、賃金、処遇を上げていくということが大事かなというふうには思います。
(企業は利益を上げていても、働く人が低賃金で不安定だと、少子化になり消費にもつながらない。このスパイラルを変えなければならない?)
そういう意味で、今回の派遣法をきっかけに変わっていくことを望みたいと思います。

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