クローズアップ現代

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No.37272015年11月4日(水)放送
町内会が消える? ~どうする 地域のつながり~

町内会が消える? ~どうする 地域のつながり~

引き受け手なし… 奮闘つづく町内会長

福岡・北九州市。
ここでも町内会への加入率は年々下がり続けています。

西戸畑地区 町内会長 野口勝義さん(71)
「おはようございます。」

4,000人が住む西戸畑地区の町内会長、野口勝義さん、71歳です。
会長を引き受けたのは6年前。
以来、自由な時間がほとんどなくなりました。
朝は3時間かけて、市から頼まれた広報紙を配布するための作業です。

西戸畑地区 町内会長 野口勝義さん(71)
「1,000所帯分。」

「これを全部、野口さんが分けるんですか?」

西戸畑地区 町内会長 野口勝義さん(71)
「そうです。」

その後、妻と2人で一軒ずつ配っていきます。
1人暮らしのお年寄りに異変がないか確認するのも大事な役目です。

ゴミ集積所の管理も町内会の仕事。

「青いネットは、野口さんが配られたんですか?」

西戸畑地区 町内会長 野口勝義さん(71)
「そうです。」

ゴミの散乱を防止するため、町内会費でネットを購入し、ゴミの出し方を指導しています。
ところが、町内会に加入しない住民が増え、ルールが守られないケースが目立っています。
結局、散乱したゴミの清掃を行うのは、野口さんたちです。

なんとか町内会に加入してもらおうと、新たな住民の家を頻繁に訪れますが…。

西戸畑地区 町内会長 野口勝義さん(71)
「お留守じゃないかと思います。」

「何回くらい訪ねたんですか?」

西戸畑地区 町内会長 野口勝義さん(71)
「もう最低3回は来てます。」

行政から期待される役割も年々増える一方です。
70歳を超えてもなお地域のために働かざるをえません。

かつては、回覧板の配布などが主な仕事でした。
しかし、住民のニーズが多様化する中、防犯や防災、清掃など幅広い業務を受け持つようになりました。


夜になっても町内会の仕事は続きます。
防犯のための巡回パトロールです。
管理する街灯もチェック。
野口さんにとって大きな負担ですが、会長のなり手がいないため続けざるをえません。

西戸畑地区 町内会長 野口勝義さん(71)
「(未加入者は)自分たちが何もしなくても誰かがやってくれるだろう、何でもしてくれるだろう、それじゃあ困る。」

地域の期待を背負って 町内会の歴史

「一億一丸のもとは隣組であります。」

行政から大きな役割を期待される町内会。
それは戦時中の隣組にさかのぼります。

♪“とんとん とんからりと 隣組”

国家総動員体制の下、国の末端組織として機能しました。
戦後はGHQによって、いったん解散させられましたが、その後、復活。
町内会は、地域の仕事を自主的に担う組織として根づいていきました。

災害時には、いち早く住民の安否確認や炊き出しなどを行い、その存在感を高めました。
そして、地域の高齢化が進む今、新たに起こるさまざまな問題解決の最前線で、町内会には一層多くの役割が期待されています。

負担大きすぎる? 全国で町内会トラブル

しかし、膨らみ続ける町内会の業務に一部の住民からは悲鳴が上がっています。
宇都宮市郊外の住宅地です。
ここで去年(2014年)、町内会から一度に8世帯が脱退するという事態が起きました。

そのうちの1人、山田康子さん(仮名)です。
実は山田さんを含め、脱退した世帯のほとんどが70歳以上の高齢者。
町内会の役員になると、さまざまな会合や花見など年間60件に上る行事への参加が義務づけられます。
認知症の家族を抱えていたり、夜間の仕事で昼夜逆転の生活を余儀なくされていたりして、とても役員を引き受けることはできないと言います。

山田康子さん(仮名)
「やりたくてもできることとできないことがあるので、普通の日までこういうふうにいろいろあるんですから。
区長さんなんかになったら、自分の本来のお仕事ができない。」

山田さんたちは、町内会費は払うので役員の仕事は免除してほしいと申し出ました。
しかし、町内会側は難色を示しました。

町内会長
「今後、各自治会でこのことが認められるとしたら、一方的な理由で脱会を希望する世帯が増えてくる。」

山田さんたちは、やむなく町内会を脱退すると伝えました。
すると…。

山田康子さん(仮名)
「あれが無くなっちゃったんですね。」

「それは突然ですか?」

山田康子さん(仮名)
「突然。」

すべての防犯灯が取り外されてしまったのです。
撤去したのは町内会。
電気代を支払うなど、町内会が防犯灯の管理をしていました。

さらに町内会は、8世帯に対してゴミ集積所の使用も禁止すると伝えました。
なぜこうした対応を取ったのか。
町内会長に取材を申し込みましたが、回答を得ることはできませんでした。
町内会と共に住民サービスの充実を図ってきた自治体。
宇都宮市は、住民側が町内会に戻ることが望ましいとの姿勢を取っています。

宇都宮市 渡辺尊之課長
「自治会はできることであれば、みんなで協力して活動・運営をしていくというのが理想だと思っていますので、そういった意味ではみんなが少しずつ負担をしながら運営しているのが実情。」

組織が先細る中、町内会は何をどこまで担うのか。
今、大きな岐路に立たされています。

町内会が消える? 地域のつながりに異変

ゲスト玉野和志さん(首都大学東京教授)

●町内会との関わりを巡り住民どうしのトラブルも どう見るか?

ちょっと極端だと思うんですけれども、住民どうしが争うというよりは、そういう人が抜けては、まあ、いろいろ事情のある人を飛ばすことができないくらい、町内会全体の仕事が増えてるってことが、むしろ問題でしょうね。
それはむしろ、そちらを軽減して、事情のある人は、輪番を少し抜けてもやっていけるぐらいの仕事にとどめておいたほうが、本来はやっぱり行政がやるべきことなわけですから、そこまで負担をして、住民どうしが争う必要はないんじゃないかなというふうに思いますけどね。

●防犯灯・ゴミ集積所の管理など 町内会の仕事とは思っていない人も多いのでは?

防犯灯なんかは、戦後のかなり復興期のころに、真っ暗に、夜になるので、それで行政側はそんな余裕がない時期でしたから、地元でもう作ってしまったという歴史があって、それがそのまま行政が引き取ればよかったのかもしれませんが、日本の場合は、補助金を出すとか、いろいろな形で、共同的に解決するような形でずっとやってきたっていう歴史があるんですね。
そういうところで、今は当然、行政がやっているんだろうと思っているようなところで、かなり行政から補助は受けますけど、地元が管理してやってるということが、かなり多いっていうことがあるんですね。

●ゴミ集積場所の管理は住民どうし話し合って解決したほうが都合がいい?

行政がここが都合がいいから、ここに置きますとかっていっても、やっぱりその目の前の家の方は、あまり納得できないわけですね。
ところが、地域全体で一応、どこがいいだろうかと相談すれば、まあ、お互いさまだからしょうがないねということで解決していくわけで、やっぱりそういう地元で決めたほうがいいこととか、地元で、ある程度自分でやったほうがいいような、公的なサービスというのはやっぱりありますから、それを主体的に担うような町内会の組織というのは、あるに越したことはないというようなところで、機能してきたということですね。

●朝行くと広報紙が積まれているというようなことはよくある?

かなり、今でもいろんな地域で残ってるやり方だろうと思うんですが。
行政としては、それが一番楽ってところがあるものですから、ついつい町会長さんに配ってくださいってことで、流してしまうわけですけど、かなり負担は大きいですよね。
ですから、あまり安易に引き受けたり、任したりはしないほうがいいと思いますけどね。

●町内会への加入率が低下傾向 その理由はどう見るか?

基本的に公的な、全戸加入という前提の団体ですので、公的な、みんなが納得することしかできないわけで、そういうことっていうのは、みんなやっぱり誰かがやってくれれば、自分、やりたくないというようなところがあるわけですね。
そうすると、どうしても、誰かがやってくれるなら、誰も関心を持たないようになっていくというところがあって、そういうふうなところで、かつては目に見える形で、町内会が必要だっていうような事情がいろいろあったわけですけど、今は行政サービスもそれなりに整ってきましたから、そういうこともなくなってくると。
そうするとやっぱり一般の人にとっては、全部任せておいたほうがいいし、わざわざそういう町会に入る必要はないんじゃないのということになりがちだということですね。
そういうところから、どんどん減ってくってことが1つあるのと、あとはやっぱりマンションとかが出来ていくと、なかなかそこに勧誘に行くといいますかね、理解してもらって、説明してもらって、協力してもらうってことをするだけの力がちょっと、町内会のほうにも、高齢化によって、なくなってきたという事情もあるんだと思います。

“業務”を徹底的に見直せ 町内会スリム化の試み

従来の町内会の役割を根本的に見直そうという動きが始まっています。
福岡市の団地に住む神谷貴行さん。
260世帯が住む団地で、町内会が担っていた業務を洗い出しました。

書き出してもらうと、行政との会議や委員会への出席など30近い仕事がありました。
神谷さんは住民たちと話し合い、そのほとんどの業務をやめることにしたのです。

神谷貴行さん(45)
「事実上、行政がいろいろやって欲しいことが下請け的に下りてきている側面が強いです。
できないことはできないというふうにならざるをえない。」

1世帯当たり年間4,000円だった町内会費もゼロに。
必要に応じて住民から寄付を募ることにしたのです。
こうして業務をスリム化する一方、これまで先送りしていた問題に取り組みました。

それは、団地内で放置されていた100台以上の自転車です。
誰もが気になっていたものの2年近く、手付かずのままでした。
早速行われた撤去作業。
参加は強制ではなく、住民の自主性に委ねました。
すると、小学生から85歳の女性まで12人が集まりました。

住民
「私たち今回初めてなんですけど、いつもいつも(気になって)ね。
今日は時間があったものですから。」

住民の間には自主性に任せるだけで、さまざまな問題に対処し切れるのか不安の声もあります。
しかし、神谷さんは本当に必要なことには人が集まると考えています。

神谷貴行さん(45)
「町内会の原点というのはボランティアですから、住民が必要だと思ったこと、できるという範囲のことをやるというふうにしないと絶対に(町内会は)続かないと思います。」

町内会を“法人化”? 地域のつながりを模索

一方で、従来の町内会の枠にとどまらない新たな仕組み作りが動き出しています。
人口増加率が全国トップクラスの川崎市武蔵小杉地区です。
タワーマンションの建設ラッシュが続く中、古くから住む人たちは新たな住民との連携に危機感を抱いていました。

地元住民 安藤均さん
「マンションの人たちというのは『プライバシーもセキュリティーも安全』。
言い方はちょっと悪いんですけれども(町内会に)あまり関わりたくないって(人も)。
どういうふうにしたらうまく(やっていけるか)。
コミュニティーづくりをしていかなくちゃいけないのかなと。」

どうすれば地域のつながりを強化できるか。
そこで考え出されたのが、従来の町内会もマンションの住民も加わる新たな組織NPO法人の設立でした。

その仕組みです。
地元町内会や商店街、そして新築マンションの管理組合からそれぞれ役員を選び出して法人の運営メンバーに入ってもらいます。

任意団体の町内会ではなく、法人となったことで信用力がアップ。
地元企業などからの補助金が得やすくなりました。
今年(2015年)7月には武蔵小杉の駅前エリアで実に20年ぶりに盆踊りが復活。
NPO法人の呼びかけに応じ地元の商店や企業がサポートしました。
古くからの住民とタワーマンションの住民が同じ地域の一員として交流を深める貴重な機会となりました。

地元住民
「新住民と我々昔からいる人間とコラボレーションしながら、町が栄えていくのが一番いいのかなと。」

さらにNPO法人では、煩雑な事務作業を行う専門のスタッフを雇用。
こうすることで忙しい現役世代が地域のイベントの企画や運営に専念できるようになりました。

NPO法人 小杉駅周辺エリアマネジメント 安藤均理事長
「防災にしろ防犯にしろ参加して、自分でもやってみようかなという方々がこういった運営をしているので、やっぱり新住民の方は30代40代の方がほとんどなんですけれども、地元の方は年配。
でも非常に融合されていて、うまく回っていると思っています。」

変化する町内会 時代に合った役割とは

●町内会の仕事を見直し減らしたケース どう見るか?

ある意味では、本来の姿ですよね。
基本的に行政じゃないわけですから、やっぱり自発的にできることをやるっていうのが、民間の組織としての当然のことですので、先ほど言ったように、住民どうしでトラブルになるぐらいだったら、みんなで相談して、減らしていくということが大事だと思いますね。
(行政からすると、やってほしい仕事もあるが?)
ですから、そのへん、担い手不足というのは、町会の中にはあるんですが、それ以外の形で、テーマ別の団体とかで、いろいろ協力したいっていう人も出てきてますから、そういう人にも活躍していただくということも、行政としては考えるようになっていて、最近では行政の専門の常駐職員と言いますかね、それ用の地域担当職員みたいのを置いて、そういうコーディネートをしているという場合も出てきてますね。

●コミュニティーとして地域で何をやるかやらないかを誰が決めるのか 町内会は義務化したほうがいいのではないかという声も聞かれるが?

町内会そのものを義務化するというのは、むしろ今まで、納得してみんなでやろうとしたものを台なしにしてしまいますから、全部、行政の組織にするならいいですけども、そうじゃないんだったら、やっぱりちょっとそれは難しいなっていうのが1つあって、問題はどこで決めるかなんですけど、かつては町内会がそれなりに浸透してましたから、そこで決めるなり、あるいは町内会を中心とした住民組織で決めるということができたんですが、だんだんやっぱり町内会が難しくなってくると、これはある意味では行政が責任を持ってそういう場を作って、市民が全員参加して、そこでどういうふうにするかということを決めていくってことも必要になってくるし、最後のNPOの例は、そういう意味では1つの試みとして興味深いと思いますね。
(NPO法人を作ったほうが行政と向き合うときに有利?)
行政が直接作ると、やっぱり行政主導になってしまうところありますから、むしろ民間としてNPO団体でみんなを結集して、それで行政ときちっと対等に話し合うってことができると、そのほうがいいでしょうね。

●日本独特のシステムで国際的に見て評価の高まりも 改めて町内会をどう捉えたらいいか?

欧米なんかは、全部税金で行政がやるってことが当然と考えられてたわけですけども、これがだんだん難しいと、いろいろな地元でやったほうがいいような仕事が多いということになって、それがだんだん分かってきたわけですね。
ですから欧米でもそういう所でネイバーフッド・アソシエーションという形で、全戸加入ではないですけど、対応するという動きも出てきてますし、そういう形で、行政と住民が共に問題を解決していくと。
それを協議して決めていくという、そういう仕組みは、わりと今、どこの国でも求められるようになってきているということですね。
(特に大災害が起きたとき、いざというときは?)
いざというときに、やっぱりそういう受け皿があるってことは非常に重要ですから、それを維持することは意味があると思います。

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