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No.37252015年10月29日(木)放送
海に漂う“見えないゴミ” ~マイクロプラスチックの脅威~

海に漂う“見えないゴミ” ~マイクロプラスチックの脅威~

マイクロプラスチック “見えない”汚染の実態

今月(10月)、東京湾で環境省による調査が行われました。
日本近海に、どれだけのマイクロプラスチックがあるのか去年から各地で調査が続けられています。



「入った!投入。」

小さなごみでも採取できる特別な網を引きます。



「結構ありますね。
緑色のやつとか白い破片とか、結構ありますね。」




色とりどりの小さな破片。
マイクロプラスチックです。




分析に当たっている九州大学の磯辺篤彦教授です。
プラスチックとそうでないものを、一つ一つより分けていきます。




1ミリ程度のものは肉眼でかろうじて見えます。
しかし、0.3ミリ程度になると顕微鏡で確認しなければなりません。




九州大学 磯辺篤彦教授
「これは魚卵で、これはプランクトン。
あとは全部プラスチック。」

200トンの海水から集めたマイクロプラスチック。
分析の結果、およそ1,300個が見つかりました。
これは1立方メートルの海水の中に、およそ6個ある計算です。

調査によると、東京湾だけでなく日本近海の50か所以上で同じようにマイクロプラスチックが見つかりました。
平均すると1立方メートル当たり3個程度。
これは世界の平均のおよそ30倍の密度になります。



九州大学 磯辺篤彦教授
「海はきれいなんですけど、(網を)引いてみたらわりと入ってくる。
それは想像を超えていて、桁1つ違うというのはなかなかびっくりしました。」


なぜ、日本近海はマイクロプラスチックの密度が高くなっているのか。
世界の海で調査をしているアメリカのNGO代表、マーカス・エリクセンさんです。
エリクセンさんはマイクロプラスチックのもととなるごみに着目し、各地で調査を行ってきました。

中国、インドネシア、フィリピンなど、アジアの国々から大量のごみが海へと流出。
それが粉々になりながら日本近海へと流れてきていると見ています。

NGO 5ジャイアズ 代表 マーカス・エリクセンさん
「人口が多く、廃棄物管理のインフラが整備されていないアジアの国々は多くのゴミを出すため、日本の周辺は密度が高いのです。」

先進国では、新たな発生源も明らかになっています。
エリクセンさんが川で見つけたのは…。

NGO 5ジャイアズ 代表 マーカス・エリクセンさん
「これはマイクロビーズだろう。」




汚れを取るため洗顔剤などに含まれている青い粒、マイクロビーズです。
大きさは僅か0.1ミリ。
チューブ1本に数万個入っているといわれています。



NGO 5ジャイアズ 代表 マーカス・エリクセンさん
「世界各地の下水処理システムは、大量のマイクロビーズをすべて捕らえることができません。
その結果マイクロビーズが“海のスモッグ”となっているのです。」

マイクロプラスチック 生態系に忍び寄る脅威

増え続けるマイクロプラスチック。
生態系への影響が懸念され始めています。
東京農工大学の高田秀重教授は海の生物を解剖し調査してきました。
この日、解剖したのは「ハシボソミズナギドリ」という海鳥です。

「これもプラスチックですね。」

高田教授が分析を進めたところ、食べていたマイクロプラスチックの量に比例して、海鳥の脂肪から、ある有害な物質が検出されたのです。


東京農工大学 高田秀重教授
「こういうピークは、PCBという1960年代~70年代に使われていた。」



PCBは、かつて食用油の中に混入され、食品公害・カネミ油症の原因となった有害物質。
皮膚障害や肝機能障害を引き起こしました。
石油から出来ているプラスチックは、油に溶けやすいPCBなどの有害物質を表面に吸着させる働きを持っています。

高田教授が実験で調べたところ、海に溶け込んでいる有害物質を次々に集め、最大100万倍に濃縮させることが分かりました。
これを海鳥が食べると、有害物質が体内に溶け出し、脂肪や肝臓にたまっていくのです。


東京農工大学 高田秀重教授
「周りの海水中から、今使っている汚染物質も、昔に出た汚染物質もどんどん吸着して、濃縮して、運び屋として生物の体の中に運び入れることが懸念されています。」


さらに、高田教授が懸念していることは、より小さな生物までマイクロプラスチックを体内に取り込むことです。
東京湾のイワシを調べると、64匹中49匹から平均3個のマイクロプラスチックが見つかりました。
小魚がマイクロプラスチックを取り込むと、それを食べる魚に有害物質が蓄積されます。
食物連鎖の中で、有害物質が濃縮されていくと考えられているのです。
マイクロビーズのようなさらに小さなプラスチックの場合、食物連鎖の底辺にあるプランクトンまで、体内に取り込むことが確認されています。

海に漂う“見えないゴミ” マイクロプラスチックの脅威

ゲスト高田秀重さん(東京農工大学教授)

●小さな魚からもマイクロプラスチックが出てきて、食物連鎖によって有害物質が高濃度に濃縮されるおそれがある?

怖い問題だと思いますが、プラスチック自体は、それを含んでる魚を私たちが食べたとしても排せつされてしまいますので、それ自体を恐れる必要はないかと考えております。
むしろ、今のVTRにもありましたように、プラスチックが汚染物質を吸着しております。
最大100万倍、吸着しておりますので、そういう汚染物質は排せつされずに、一部は私たちの脂肪に溶け込んできて体内に入ってしまいますので、そういうことはこれから気にしなければいけない問題かなというふうに考えております。

●これまでの研究で、食物連鎖による生き物たちや人間への有害物質の具体的な害は明らかになっている?

プラスチックを通しての、そういう有害物質のヒト、それから野生生物への影響というものは、野外では観測されておりません。
しかし、室内実験では観測されております。
アメリカでメダカにプラスチックを食べさせて、そのプラスチックには有害な化学物質がくっついていて、それを3か月食べさせ続けると、肝臓に腫瘍、あるいは肝機能障害が起こるというようなことが、アメリカの研究者によって報告されております。

●リポートではPCBがマイクロプラスチックに吸着していたが、ほかにどんな有害物質が吸着する?

油に溶けやすい汚染物質であれば、なんでも吸着してくるということになりますから、油そのもの、石油汚染・石油流出事故で出るような石油はもちろん、濃縮されていきます。
ほかにも、過去に作られた農薬のDDTというものがありますが、そういうものも吸着されております。

●プラスチック中のPCBの濃度、日本も含めた先進国で濃度が高くなっている なぜ?

このPCBという物質は、1960年代に先進工業国で工業製品として使われておりました。
この時代に海に入ってきたわけなんですが、海底の泥の中に今も堆積しております。
そういうものが水のほうにかえってきて、プラスチックにくっついているということが考えられております。
(マイクロプラスチックが、ある意味ではそれを呼び起こす可能性もある?)
そうですね。
ヨーヨー効果というふうに言いますが、プラスチックが1回沈んで、海底で眠ってる汚染物質をまた水の表面に持ち上げてくるようなことが、起こるんじゃないかというようなことも懸念されております。

●日常的に使っている生活用品の中のマイクロビーズ=0.1ミリのプラスチックが海に出ている可能性がある 下水処理場などでは捕らえきれない?

通常の先進工業国で使ってる下水処理のシステムであれば、99%程度は、除去されるという報告が出ております。
ただ、それは晴れてる時の話で、日本でもそうですが、雨が降ると下水があふれるということが起こります。
そうなると、使ったものがそのまま海域に出てくるということがありますので、そういう結果として、私たちがイワシの中で見つけたり、東京湾の海水の中にそういうマイクロビーズがあるということを見つけているということになってるかと思います。

(イワシが取り込んだマイクロビーズの割合はどの程度?)
全体のマイクロプラスチックの中では、約10%程度になります。
90%、9割は私たちが使っているいろんなプラスチック製品の破片ということになります。
こんなふうに、ぼろぼろと割れてきますので、こういうものが主ではありますが、確実に10%はマイクロビーズであるということが分かっております。

“脱プラスチック社会” アメリカの取り組み

アメリカ・カリフォルニア州。
マイクロプラスチックの問題への危機感から対策に乗り出しました。
今年(2015年)7月、レジ袋の客への提供を禁止する法案を、全米の州で初めて成立させました。

さらに今月、化粧品などに使われているマイクロビーズの製造と販売も5年後に全面禁止することを決めました。
州議会議員のリチャード・ブルームさん。
規制強化に取り組んできました。


カリフォルニア州議会議員 リチャード・ブルームさん
「これは市民に知ってもらうべき、非常に重要な問題です。
カリフォルニアの行動は、いずれ全米に影響を及ぼすでしょう。」

「世界にも?」

カリフォルニア州議会議員 リチャード・ブルームさん
「そう願っています。」

すでにマイクロビーズを使わない方針を打ち出している化粧品メーカーです。

「こちらの商品はコーヒー豆を使っています。
球形でサイズのそろっているマイクロビーズとは、かなり違います。」




ほかにもアーモンド、砂糖など、環境に優しい素材を使用しています。
価格は2倍以上になりますが、環境問題に関心の高い層から支持を集め、売り上げを伸ばしています。



「私たちはこの取り組みをリードしています。
プラスチックは環境に害をもたらしているので、選択肢にはありません。」



消費者の意識も変わり始めています。
カリフォルニア州に住むベス・テリーさんです。
プラスチックが海を汚染していることをニュースで知り、できるかぎり使わないよう心がけています。


ベス・テリーさん
「冷凍庫の中にはプラスチックの容器はありません。
ステンレス製やガラス製です。」



しかし、プラスチックを減らす生活には苦労もあります。
買い物に行く時には、買う種類ごとに布製のバッグが必要です。




ベス・テリーさん
「これもここにプラスチックが使われています。
完全にプラスチックを使ってないミルクを買うのは難しいですね。」


生活のすべてでなくすことはできませんが、意識しだいで減らせる部分は大きいといいます。

ベス・テリーさん
「さすがにカードはプラスチックね。」


ベス・テリーさん
「いざ暮らしを見直してみると、ある程度プラスチックを減らす努力ができます。
今の生活とは違う選択肢があると気づきました。」

微生物パワーでプラスチックが消える

プラスチックを使いながらも、ごみを出さない技術を開発しようという研究も始まっています。
群馬大学の粕谷健一教授です。
使い終えたプラスチックを微生物で分解する、生分解性プラスチックの研究をしています。

群馬大学 粕谷健一教授
「通常は普通のプラスチックと同じような形で使えるけど、きっかけを与えると、その環境中で完全に分解する。」




重要な役割を果たすのが、土の中にいるバチルスという特殊な細菌。
酵素によって、プラスチックを水と二酸化炭素に分解します。



粕谷教授は、この微生物を眠らせた状態にしてプラスチックに閉じ込めました。
分解は始まらず、普通のプラスチックとして使えます。
廃棄のときに傷をつけると、微生物に空気や水が行き渡り活性化。
さらに増殖することでプラスチックを分解していきます。

実際にプラスチックが分解していく様子です。
水が入った容器に、傷をつけた生分解性プラスチックを入れます。
日にちがたつごとにプラスチックは溶けていきます。
1週間を過ぎると、ほとんど何も残っていません。
現段階では、普通のプラスチックに比べコストが5倍以上かかる課題はありますが、2年後の実用化を目指しています。

群馬大学 粕谷健一教授
「ひとつの解決策になればということで。
いろいろあると思う、技術的に解決していく部分と、政策であるとか道徳心であるとか。生分解性プラスチックというのは、技術的なひとつのピースだと思います。」

“脱プラスチック社会” 実現のカギは

●生分解性プラスチックの可能性、どう見た?

非常にすばらしい技術だと思いますね。
将来性もあって、コンポストを作るような閉鎖的な系で使うと、よりよいんじゃないかなと思います。
ただ一方で、技術的な解決だけでなくて、粕谷先生もおっしゃいましたが、制度的な面、経済的なアプローチ等、いろいろ必要だと思います。

●技術面ではほかにどんな開発が必要?

生分解性プラスチックも、もちろんなんですが、私たち日本人が昔からよく使っております、木とか、それから紙を、今の技術を使って有効に使うというようなことが大切じゃないかなと考えております。

(少しぬれたものでも、運べるようなもの?)
セルロースナノファイバー等の、そういう技術も進んできておりますので、そういうものを積極的に使って、不便さを感じさせずにプラスチックから抜け出していくと、そういうことが必要なんじゃないかなと考えております。

●政策面で求められていることは?

政策面ではやはり、今、進めております「3R」が大切かなと思います。
「削減」、それから「再利用」、それから「リサイクル」ってものを促進していくということがありますが、この3つのRの中でも、実は順番があります。
まずは「削減」を進めないと、大量消費、大量リサイクルでは、この循環型社会の道がないということで、まず削減していくということ、それに向けて行政がイニシアチブを取るということが大切だなと考えております。
(具体的に、リサイクルでは賄いきれない例も出ている?)
そうですね、ペットボトルが端的な例です。
リサイクル率が高いんですが、経済的にはペイしておりません。
リサイクルすればするほど、私たちの税金が減っていくという形になっておりますので、まずは減らしていかないと、社会全体、循環的にならないということになります。

●アメリカではレジ袋を提供しないというルールも出ていたが?

レジ袋については、大体日本では1人平均、1年間に300枚ぐらい使っております。
最近出ましたEUの削減方針では、1人、年間40枚に削減すべきだろうというようなことが出ておりますので、それを考えても、日本は使い過ぎかなとは思います。
マイバッグ等を持ち歩くという、そういう意識の改革も必要なんじゃないかなと思います。

●私たちはこのマイクロプラスチックを減らすうえで、どういう姿勢でこれから取り組むべき?

やはりプラスチックは、海の中に入っても長もちしてしまいますので、問題がありそうであればそれを避けるということ。



アインシュタインのことばにありますが、“利口な人は技術的な開発、問題を解決する。賢い人は問題を避ける”ということがありますので、私たちもこのプラスチックの問題、問題であればこれは避けていくようなことを、進めていく必要があるんじゃないかなと思います。

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