クローズアップ現代

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No.37122015年10月6日(火)放送
“小さな泡”が世界を変える!?~日本発・技術革命は成功するか~

“小さな泡”が世界を変える!?~日本発・技術革命は成功するか~

ウルトラファインバブル “小さな泡”の驚くべき力

広島県尾道市にある養魚場です。
2年前から「ウルトラファインバブル」を使ったバブル水で魚を育てています。
すると、驚くべき効果が表れたのです。



トラフグの場合、通常の半分の14か月で出荷できるサイズに成長しました。





ウマヅラハギでは、普通の海水で育てたものに比べて1.5倍の重さになりました。





養殖業者
「びっくり。
急激に大きくなってきた。」



この養魚場で使う、バブル水を作る仕組みです。
装置を循環する水に酸素を注入します。




ポイントはこのパーツ。
中に複雑な凹凸のある金属製のプレート20枚が入っています。



ここを通った泡は、流速の変化によってどんどんちぎれて細かくなっていきます。
循環を繰り返すうちに1,000分の1ミリの微小な泡が出来ていくのです。



このバブル水には普通の海水に溶け込むことのできる酸素のおよそ5倍の量が含まれています。
このため、魚の成長が促進されたと考えられています。
なぜバブル水では大幅に酸素量が増えるのか。


バブル水をレーザー顕微鏡で観察すると…。
泡が水中にとどまっていることが分かります。




普通の泡の場合、浮力によって上昇し空気中に抜け出してしまいます。
一方、大きさが1,000分の1ミリほどの泡では浮力がぐっと減少。
こうなると、周りの水から受ける力によって、浮かなくなります。
このため、水に溶け込む量をはるかに超える酸素をためることができるのです。

気体の種類を変えることでバブル水の活用は広がっています。
市場で水揚げした魚を浸しているこの水。
酸素ではなく、窒素を使ったバブル水です。
この水には魚の鮮度を長く保つ効果があるといいます。

仲卸業者
「(浸すのは)10分くらい。
鮮度が悪くならないようになります。」



バブル水に浸したサバと、そうでないサバ。
4日間、冷蔵保存した後に比べてみました。
浸していないサバは、指で少し触れただけで身が崩れてしまいます。


一方、バブル水に浸したサバは強く押しても崩れません。
弾力があるのは新鮮な証拠です。



窒素で作ったバブル水。
酸素の量を量ると、普通の水に比べ極端に少なくなっています。
この水に浸すことで魚の表面は酸素が少ない状態になり、酸化や菌の繁殖を防ぐことができると考えられているのです。

バブル水の用途は水産業だけではありません。
西日本の高速道路のサービスエリアでは、空気を使ったバブル水でトイレの洗浄を行っています。



泡特有の「はじける」という性質を利用しているのです。
微小な泡が汚れの付着面の隙間に入り込み、はじけることで汚れが剥がれやすくなると考えられています。



さらに、医療の現場で注目を集めているのは、殺菌力を持つオゾンを使ったバブル水です。
九州大学で感染症の研究に取り組む、大平猛さん。
大平さんは、糖尿病患者に見られる足の傷の治療に使っています。
糖尿病が悪化すると足先の血流が低下し、しばしば傷がひどくなる場合があります。
その傷に繁殖した細菌には、塗り薬が細部にまで届きにくいことが治療の壁になっていました。

そこで、オゾンを微小な泡にして傷の隅々にまで送り込みます。
細菌に接触して、はじけると殺菌できるのです。
また、大腸菌やサルモネラ菌A型インフルエンザなど、さまざまな細菌やウイルスにも効果を示すことが分かりました。
さらに大平さんは海外の研究機関と協力して、世界的な脅威となっているエボラウイルスに対する効果も検証しています。

九州大学 特任教授 大平猛さん
「徹底した細菌の破壊。
今まで不可能だったところに入り込み、確実な効果、今までになかったような効果を期待することができる。」

“小さな泡”が世界を変える!? 日本発“夢の技術”

ゲスト寺坂宏一さん(慶應義塾大学教授)

●高速道路のトイレを細かい空気の泡が入った水で洗浄 どれほどきれいになる?

最終的な美しさというのは、トイレの洗浄ですから、皆様が満足できる美しさということを目指しているわけでございますけれども、実際に、例えばトイレの洗浄にしましても、大量の洗剤をもし使いますと、そのあとにすすぎもいりますし、大量の水を廃水に流していくということになります。
そうなると、もちろん水という資源の問題で、あまり環境によろしくないということもありますし、特にサービスエリア、あるいは高速道路といったように、自然の中に設置されているものを洗おうと思いますと、その廃水が自然界にもし出ていってしまうというようなことまで考えますと、洗剤といった化学的なものはできるだけ使わず、非常に安全な水と、それから空気、これをもってトイレとかを洗うことができたら、これは非常に資源を節約できますし、環境にも大変有意義であるということが言えるわけですね。

●日本はこの泡の技術で世界最先端にあるが、どんなところが強み?

もちろん日本は、古くからこういう泡の研究が非常に得意な国ではあるんですけれども、特にこういった微細な泡を作る技術、そして測る技術、そして使う技術、どれをとっても、日本は現在、最先端にあると言えると思います。

(どれほど細かな泡を今、使っている?)
現在、日本の技術をもってすれば、1万分の1ミリの小さなウルトラファインバブルを作ることができますし、その数も、たった1ccの中に10億個を超える数の泡を入れることに、もう成功をしています。

●こうした技術が発展したきっかけは?

日本は、もともとこういう小さい泡を作るのが非常に有意義であるということを、最初に考えた国です。
特にこのように、例えばカキの養殖といった水産業、こういったところに挑戦をしてみようというふうに考えた方がいるわけですね。
これによって、実際たくさんの失敗もあったかと思いますが、カキの養殖に、しかもその養殖の速度が速まるといった画期的な効果を得ることに成功しました。
このようなことから、日本では気泡を小さくしていくことで、もっといろいろな産業分野、あるいはもっと優れた分野ができるのではないかということで、このようないろいろな分野を考えたわけです。
もちろん、こういった医療分野、そして食品分野、お風呂のような民生の分野、そして微生物の活用といったところもありますし、もちろん、こういった水産業に対して農業と、こういったところでも非常に大きな成果が出てきています。

例えば高知県では、ショウガの栽培に、この微細な気泡の入った水を使うことで、ショウガの根が、普通の水で栽培した場合には、今ご覧になっていただいているとおりなんですが、これがバブルが入ってくると、非常に太く、大きく育つということが分かりました。
これによって得られた農産物の付加価値というのも、大変に上がってきたということが実現できたわけですね。
(これはどういった方々が開発している?)
これは主に日本の各地方の方々が、特にその中でも中小企業の方々、そういった方々が一生懸命、いくつかのリスクを越えながらも努力をされて、有意義な結果を出されています。

(西日本にかなり集中しているが、中小企業?)
そうですね。
例えば農業従事者の方、あるいは漁業従事者の方も、決して大きな大企業ではありませんけれども、ご覧いただいていますように、いくつかの地方では、すでにこういった取り組みが進んでいるところでございます。

●日本は、その測定や使いみちで世界をリードしている 具体的には?

このように小さな泡の技術が、だんだん日本で実現できるようになってきますと、ついには人間の目では見えないサイズにまで到達してしまったわけですね。
そうなると直接見ることができませんから、測定器、これの開発が大変重要になってきます。
ところが泡の、しかもそういう小さな泡というのはこれまでなかったわけですから、当然、測定器もなかったわけですね。
そこで日本の技術者は、もともと例えば固体の粒といった別の用途に使われていた測定器を、泡でも測定できるように一生懸命チューニングをして、開発を進めてきたわけです。
この成果によって、今では目に見えない非常に小さなサイズの泡でさえ測定できる技術、装置、こういったものが世に出てくるようになったわけです。
(それぞれの用途に最適な泡のサイズや密度など、相当積み重ねられてきている?)
そうですね。
日本ではこのように、たくさんの実用例、あるいは経験が積み重ねられてきましたので、例えばいくつかの用途によっては、このサイズの、この程度の数密度、1cc当たり何億個ぐらいの泡がいると最大の効果が出るのか、こういったところの経験がたくさん積み重なってきているわけです。

広がる“小さな泡”の利用 信頼は築けるか?

今、ウルトラファインバブルの研究者たちが頭を悩ませている問題があります。

ファインバブル産業会 副会長 藤田俊弘さん
「これはいろいろとバブルが入っていると言われている水があって、酸素入りバブル水とか、あるいは水素入りバブル水とか。」


主にインターネットを通じて販売されているこれらの商品。
ウルトラファインバブルに匹敵する細かな泡が含まれていると表示されています。
多くは美容や健康への効果を期待させるキャッチコピーが書かれていますが、バブル水を飲んだ場合の美容や健康への効果はまだ分かっていません。

ファインバブル産業会 副会長 藤田俊弘さん
「科学的にあんまり根拠がないようなことが書いてあったりする。」

実際に商品を分析機器にかけて調べたところ…。
微小な泡は、ほとんど検出されませんでした。
本来のバブル水であれば、1,000分の1ミリほどの大きさの泡がグラフに山となって現れるはずなのです。

ファインバブル産業会 副会長 藤田俊弘さん
「高い値段をつけて売っている普通の水と考えられます。
消費者を欺いている。」

効果や品質を担保する規格がまだ存在しないバブル水。
今、この分野に携わる人たちの間では、世界市場が広がる前にバブル水自体の信用が失われてしまうとの懸念が広がっています。

新たな市場をリードせよ! “小さな泡”を国際規格に

こうした中、企業や大学、研究機関などで作るファインバブル産業会は国際規格を作ろうと動き始めています。
2年前、詳細な案をまとめ工業製品の国際規格を取り決めるISOに提案しました。

「現在、提案という形で受け入れられまして、詳細な審議を続けているところです。」

その内容です。
まず泡を大きさに応じて3つのランクに分けます。
そして、泡の密度によって、それをさらに3つに分割。
より細かく密度の高い泡を頂点に、品質によって泡を差別化することを目的としています。

さらに、大きさや密度の基準を満たしたものには認証マークを与え、品質を保証することも目指しています。
ところが、日本の提案する国際規格に対し、難色を示す国があります。
この市場の将来性に注目している韓国もその1つ。
高い技術力を持つ日本の独走を許すことになると懸念しているのです。

ファインバブル産業会 副会長 藤田俊弘さん
「日本がファインバブルの発生技術、計測技術、それと広範囲の応用技術、すべてを世界でリーダーシップをとれている。
ポジションを保ちつつも各国と連携をしながら市場を形成していく。
国際標準化形成していくという考え方で、今、進んできている。」

日本発“小さな泡” 世界に広げるために

●国際規格に向けて、日本の戦略の中心は?

日本では日本独自の優れた技術、これを手厚く維持するために、日本に独自の得意な分野をアピールできるような規格というのを常に提案をし続けているところでございます。

●この技術を世界的に通用する産業に育成していくうえで、国内で今なすべきことは?

国内では先ほどお話しましたように、例えば農業、その他食品とか、いろいろな分野で成果が出つつあります。
その中には、たくさんの失敗も、いろんな情報もあったかと思います。
それを今、一堂に結集をして、情報共有をして、その開発をスピードアップする。
これが大変重要な、日本で必要なことになっていると思います。

●横のつながり、情報共有はどんな状況?

現在は、各方がいろいろな成功例をお持ちだと思いますが、それがまだ十分になされていない状況だと思います。
これを一堂に結集させて、日本のオールジャパンで、この情報を共有して進んでいくことが大変重要な日本の課題になってるかと思います。
(失敗した例をまた行わなくてもいいように、情報共有していくということ?)
それが非常に開発を加速させる大変重要な技術になるわけですね。

●2030年、13兆円の市場は出来る?

いろいろな新しい分野が、これから必ず開拓されると思います。
そういった努力を、日本だけではなく世界中の研究者が行いますので、きっと実現できると願っております。

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