クローズアップ現代

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No.37112015年10月5日(月)放送
ニッポンの女性は“やせすぎ”!? ~“健康で美しい”そのコツは~

ニッポンの女性は“やせすぎ”!? ~“健康で美しい”そのコツは~

女性の“低カロリー生活” その実態は

やせすぎの割合が過去最高になった現代女性。
今、東京の非営利団体が中心となって、全国1,000人を超える女性に健康調査を行っています。
健康の目安としているのが、体格を示すBMIの測定です。



「BMIが18.0です。」

「(BMIが)16.9です。」




やせすぎの女性たちは、極端に低いカロリーの食生活を送っていました。

「ごはんとおかず1品とかになっちゃって。」

「夜ごはん、あんまり食べなくなりました。」

この団体では、食事調査や聞き取りから、摂取エネルギーは平均で1日1,500キロカロリー未満と推定。
中には1,000キロカロリー程度とみられる食事の女性が数多くいることが分かりました。

社団法人ラブテリ 細川モモ代表
「『カロリー』=『太るもの』という思い込みがありますので、ほとんどの場合は必要量には満たされていないという状況だと思います。」



都内に暮らす、会社員の吉田美幸さんもそうした1人です。
BMIは、17.1のやせ形です。
典型的な一日の食事を見せてもらいました。



吉田美幸さん
「体にいいものを食べるようにはしています。」

朝食はヨーグルト、ココナッツオイルを入れたアーモンドミルク、イチジク2つ。
合わせて278キロカロリーです。

お昼はサラダとキッシュで推定506キロカロリー。
間食はチョコレート3分の1で、80キロカロリーほど。
そして夕食は…。
帰り道につまむナッツ。
これだけなんだそうです。
3食の合計は1,000キロカロリーほど。
国が定める必要摂取カロリーのおよそ半分でした。

吉田さんは、この15年こうした低カロリーの食事を続けてきたといいます。
きっかけは19歳のころ。
海外に短期留学したところ、体重が7キロ増えました。
それでも当時のBMIは標準の範囲内でしたが、友人たちの反応は厳しいものでした。

吉田美幸さん
「『何でそんなに太ったの?』って、会う人会う人に言われました。
今まで食べていた分の3割程度に減らしました。
もっともっとって、もっとやせないととか、もっときれいにならないとって。」

女性をやせすぎに向かわせる周囲からの圧力。
それはファッションの世界からもうかがえます。
こちらは15年前のマネキンです。
今流行している細身のジーンズをはかせてみると…。

吉忠マネキン 岡田茂樹さん
「ちょっとボタンはなかなか難しそうですね。」




どんどん細身に向かう女性のファッション。
それに合わせて、マネキンも細身のものに作り変えています。



吉忠マネキン 岡田茂樹さん
「上着も肩幅が格段に細くなっていますし、こんなことしてもいいのかというぐらい細くしなきゃいけなかったんで。」




さらに、やせすぎを生む土壌が女性の働く環境にあることも新たに分かってきました。
就業時間によって3つのグループに分け、朝食をほぼ毎日食べる人の割合を調べました。
すると、長時間働く人ほどその割合が低いことが分かったのです。
推定摂取カロリーも同じような傾向にあることが分かりました。

社団法人ラブテリ 細川モモ代表
「今回の調査から、就業時間が長くなることが(体型に)影響していることが分かりました。
しっかりとした健康支援が必要になると思います。」

増えるやせすぎ女性 その悪影響は?

しかし、当の女性たちは、やせすぎをあまり問題視していません。
番組は、やせすぎの女性に対し今よりもっとやせたいと願う理由を尋ねたところ、3人に1人が「健康によいから」と答えたのです。
ところが今、やせすぎに強い危機感を抱く研究者が出てきています。

その1人、代謝を専門に研究する田中茂穂さんです。
田中さんは、極端な低カロリーが人体に与える影響を懸念しています。




人間の体は極端な低カロリー状態に置かれると、カロリーの消費を抑えようと筋肉を減らします。
さらに、代謝を促す甲状腺ホルモンの分泌が減り、全身の代謝が落ちます。
すると食欲が湧かなくなり、活動量も下がり、さらに筋肉量が低下。
負のスパイラルに陥るのです。
健康によいと思われていますが、やせすぎると、冷え性や疲れやすくなるなど体に悪い影響を及ぼすとしています。

国立健康・栄養研究所 基礎栄養研究部 田中茂穂部長
「本来とるべきカロリーをとっていないと、人が活発に生活するとか、体温の保持ですとか、内臓の働きといった基本的な機能まで保つのが難しくなる。
現在のやせ志向というのは危険ではないかと思います。」

加えて、体への影響は女性本人にとどまらず、次の世代にまで及ぶことも明らかになっています。
やせて栄養状態が悪い母親から生まれる子どもは、出生時の体重が低くなる傾向があります。

日本では現在、2,500グラム未満の低体重児の割合が、先進国の中で最も高い10%近くに達しています。
問題は、低体重児は生まれながらに生活習慣病のリスクを背負う可能性があることです。



アメリカで行われた調査では、出生時の体重の低い子どもほど、将来、糖尿病を患うリスクが高く、特に2,500グラム未満で生まれた子どもは極めて高いことが分かりました。
その理由は、最新の研究によると、母親の体内にいる時、脂肪などの栄養分をより多く蓄えようとする体質がプログラムされやすいからだと考えられています。
こうした体質は生まれたあとも引き継がれ、ほかにも心筋梗塞など生活習慣病のリスクが高まるというのです。

早稲田大学研究院(産婦人科医) 福岡秀興教授
「女性がやせるということが、本人の健康を障害するということに加えて、子どもさんたち、お孫さん、ひ孫さんたちにも大きな影響を及ぼすんだと。」

本当はこわい!? 女性のやせすぎ

ゲスト迫和子さん(日本栄養士会専務理事)
ゲスト板井麻衣子さん(モデル)

●低体重の子どもが生まれやすい、生活習慣病になりやすいなど そのリスクは知っていた?

板井さん: そこまで強くは意識してなかったかもしれないですね。
やはり女性の意識の中で、やせてきれいになりたい、ファッションを楽しみたいという思い自体を消すことは、やはり難しいと思うので、ただ、やはり体への影響、特に妊娠・出産、次世代への影響っていうのがそうやって続いていくというのは、やっぱり改めて知らなければいけないことだなと感じました。

(どうしてそういうことに?)



迫さん: 若い女性が、今おっしゃったようにファッションとか、そういうふうなものに視点が行きがちである。
健康を中心に考えなければいけない、そういう妊娠期、そういう時期に適正な食事がきちんととれるかどうか、それの結果がやせるというふうな問題になっていくわけなんですね。
そのやせてる状態が、妊娠前、それから妊娠中、その間に継続してしまったときに、やっぱり妊娠したからといって、そこで食事を一生懸命食べようとしても、もう実は間に合わない。
例えば、貧血の問題なんかそうなんですけど、食べ始めたからすぐに改善するものではない。
妊娠する前から、きちんとした体を作っておく、それが次世代に適正な栄養補給をしていくために大事になっていくと思うんですね。
(小さく産んで大きく育てるともよくいうが、そういうことでは済まされない事態?)
そうですね、昔は小さく産んで大きく育てる。
これは、今のような飽食の時代になる前のお話。
食べ物が貧しい時代は、小さく産んで大きく育つ、それがよかったかもしれない。
今は食べ物があふれてる時代ですので、小さく産んで大きく育てるとなると、そうはいかない。
逆に小さく産んだことによって、省エネモードで生まれた子どもが、飢餓状態ですから、今度はどんどんどんどん出産後に体重が増えていくときに、生活習慣病のリスクをしょい込んでしまうと、そういうことにつながっていってしまうんですね。

●若い時にやせすぎの体で過ごした場合、高齢者になって介護保険の利用料が増える傾向も なぜそのリスクが高まる?

迫さん: やせてる状態のままで高齢期を迎えていってしまう。
そうすると、少なくとも若い時に本来蓄えておくべき骨の量、丈夫な骨を作っておく、これは中学生ぐらいの時期が一番大事だし、20歳までがやっぱり大事なんですね。
その時期に栄養状態があまりよくない状態、やせてる状態でいってしまう。
そうすると体重の負荷もかからないから、そのあと骨も丈夫になっていかない。
さらに高齢になると、やっぱり骨粗しょう症の問題が出てきたり、もう1つは、省エネモードで、先ほども出てましたけど、本当に少ない食事でぎりぎり生きてる状態が続いていく。
(筋肉量が少ない?)
筋肉が減っていってしまう。
筋肉が減ると抵抗力も免疫力も落ちていく。
負のスパイラルといいましょうか、どんどんどんどん悪いほうに落ちていってしまう、そういうふうな状態が続いちゃうわけなんですね。
(体温が下がったり、妊娠しにくくなることも?)
やっぱり人が生きてくために、食事というのは、生きるためのすごいエネルギー源になるわけですね。
そうすると、生きるためのエネルギー源が足りない、本当にぎりぎりの状態。
そうすると、生存にとって必要なものだけをなんとか維持しようとする。
そういう人間の働きがありますから、生存していくための優先順位が少し下がる。
子どもを産むとか、そういうところの部分にはなかなか栄養が回っていかないと。
ですから妊娠しにくいという問題もあるし、それから、たんぱく質がやっぱり体の中にしっかり入ってこないと体温の維持もなかなか難しい。
筋肉がないと、そこはなかなか難しいことになると思うんですね。

●ファッションの影響は?

板井さん: そうですね、やはり雑誌に出ているモデルの方々の細さということも少なからずは影響があると思うんですけれども、第一線で活動をされているモデルの方々は、そういった葛藤の中で、いかにきちっと食べて、運動をして、ポジティブな意味でスリムな体を目指しているという方々が多いと思うので、食事を制限することによってやせようとする、それに注目するっていうのは、やはり危険なんだなということを、すごく感じますね。
(モデルの洋服が小さくなってきていると感じることは?)
何度かですけれども、サンプルのそもそものサイズがサイズダウンしたというようなことは、耳にしたことがありますね。

やせすぎモデル禁止 海外の取り組み

行政のリーダーシップで、やせすぎ対策を行っているスペインです。
首都・マドリードで行われるファッションショーには、9年前、世界で初めてモデルの体型に関する基準が導入されました。


ショーの前、すべてのモデルは身長と体重の測定を受ける決まりです。
そこから算出されるBMIが18未満のモデルは出場が認められません。



通常、モデルはデザイナーが自由に決めるのに対し、ここでは州や市が組織した主催団体が採用権を握り、選んでいます。




主催団体 クカ・ソラーナ会長
「(やせすぎ対策の)基準は、よい影響を与えていると思います。
きれいでスリムだけどガリガリではない。
これが私たちの考える美しさです。」

ヨーロッパでは、やせすぎに対する批判が強まっています。
モデルの中には拒食症で死亡するケースもあったためです。
イギリスでは今年7月、細すぎるマネキンに対し市民から抗議の声が上がり撤去されました。
フランスでは、やせすぎモデルの起用を禁じる法律が下院を通過。
その成立を目指しています。

スペインでは、国が情報を提供する試みも行われています。
1万人以上の女性の体を測り、平均的な体型を割り出し、そのデータをファッション業界に提供。
現実の体型に即したモデルや、服のデザインにするよう促しています。


元厚生・消費省大臣 エレナ・サルガドさん
「憲法には『国民は健康を保護される権利を持つ』と定められています。
そこで国はこうした措置に踏み切ったのです。
女性たちがモデルやアイドルに似ようとするのではなく、自分の容姿を気に入り、健康が大切だと気づくようにするためです。」

“しっかり食べる” 始まったやせすぎ対策

一方、日本では、やせすぎ対策に乗り出した企業も出始めています。
東京・丸の内を開発する大手不動産会社です。
丸の内で働く女性の健康に配慮することで、エリアのブランド力アップにつなげようとしています。
そこで飲食店を回り、必要なカロリーをとれるメニューの開発を依頼しています。

三菱地所 商業施設担当 井上友美さん
「平均的には女性は2,000kcal/日、成人の方でとらなきゃいけないということで、飲食側としてどういったことができるのか、ご意見を伺いたい。」

「一番難しい質問だな。
低カロリー(志向)の人に高カロリーなものを食べなさいとは言えないわけじゃない。」

店にとって、女性には低カロリーをアピールするのが常識だったため、担当者は粘り強く説得しています。

一方、メニューの改善に取り組んだお店では、期間限定で和食の朝食を1日10食提供することにしました。




三菱地所 商業施設担当 井上友美さん
「“やせ”に対するリスク、個人もそうですけれど、企業側もそれを捉えていって、そういったことが認識として広がっていけばもっと女性が働きやすい社会になってくるんじゃないかと思っています。」


さらに東京・豊島区では、次の世代を見据えた対策も始まっています。

「30年前よりも250g、赤ちゃんの体重が下がっている。」

対象は、容姿が気になる年頃の女子中学生たち。
この日、大学の研究者が伝えたのは、体温の低下はやせすぎの可能性があるという知識でした。
自分の健康を守ることは、ひいては、やがて生まれる子どもたちの健康につながることを伝えています。

女子中学生
「細すぎるのは怖いなと思いました。」

女子中学生
「自分の体だけじゃなくて、将来の子どもたちのことも考えて、無理にダイエットとかはしていなかいほうがいいと思いました。」

増えるやせすぎ女性 美と健康の両立は?

●スペインの規制、どう見た?

板井さん: 私自身は、肯定的に捉えています。
やせたい理由の1つに、周りからの目が気になる。
そうなってくると、もはや本人だけの話じゃないですし、やはりファッション業界が1つ、BMI18という数字を打ち出すことによって、当の本人だけではなくて社会に広がっていく、やはりそこに有効だと思うので、意味があることだと感じています。

●メタボに気を取られていたら、やせすぎの女性たちの割合がどんどん増えていた 今、何を一番訴えたい?

迫さん: 肥満の問題は、もうすでに解消されてきている。
やっぱり、ここで“やせ”に着目をしていかなくちゃいけないと、これは重要なことだと思います。
そしていろんな社会的な規制、社会環境がそれを助長してますし、それと同時に、子どもたちに見せる食卓のあるべき姿、これはすごく大事なことだと思います。
子どもたちの一生を支えていく食卓はいいものを見せてほしい。
親がそれを考えなきゃいけない、そういうふうに思います。

●美とは何か、これは課題では?

板井さん: 食事、どうしても「何を食べたらよくないのかな?」と考えてしまいがちだと思うんですけど、やはり今、「何を食べるべきか」って、少しポジティブな方向に「食べる」ということを持っていく、それがやはり重要なことなんじゃないかなと感じますね。
(実際にミス・ユニバースに参加した時には、ご自身でそのことを考えさせられた?)
私自身は体重を増やすということをしたので、やはり世界の、いわゆるミスコンテストの中では健康美が以前から重要視されているという側面はあったと思います。

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