クローズアップ現代

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No.37012015年9月7日(月)放送
サンマ争奪戦 ~どう守る“日本の秋の味覚”~

サンマ争奪戦 ~どう守る“日本の秋の味覚”~

“秋の味覚” サンマに異変

先月(8月)下旬から北海道沖で本格化しているサンマ漁。
鮮度を重視するため近海で漁を行っています。
かつては船いっぱいにとれていたサンマが、今では4分の1ほどしかとれない日も少なくないといいます。


漁師
「少ないね、だいぶ少ないよ。」

漁師
「とれないべや。
魚こまいっちゃ(小さい)。」

昨日(6日)開かれた、恒例の目黒のさんま祭り。
7,000匹のサンマが無料でふるまわれました。




ところが、ここにも影響が及んでいます。
毎年、祭りにサンマを提供しているのは、岩手県宮古市。
この時期の水揚げが大幅に減り、必要なサンマを確保するのが難しくなっているといいます。



仲買人
「サンマの資源は無限だって言っていたんですよ。
それぐらいとれたんです。
今は不安になってきました。」

サンマ争奪戦 日本に迫る海外大型船

背景に浮かび上がってきたのが、サンマ漁をする海外の船の急増。
日本の排他的経済水域の外側公海で行われています。
中国や台湾、それに韓国。
多いときには1つの漁場に50隻から60隻がひしめき合います。

日本では見られない1,000トン級の大型船。
増えてきたのは、ここ3、4年のことだといいます。




水産総合研究センター 阿保純一調査員
「脅威といえば脅威かなと。
どこにサンマがいて、どういうとり方をしたらいいかを知っている。」


公海でのサンマ争奪戦。
最大の漁獲量を上げているのが台湾です。

これは、台湾の水産当局と漁業組合が共同で制作したサンマのPRビデオ。
サンマが庶民の味として定着しています。



港で次々と打ち上げられる花火。
サンマ漁船の出港の合図です。
船は全長70メートル余り。
総トン数はおよそ1,000トン。
日本の一般的なサンマ漁船の50倍に匹敵します。
こうした船は台湾全体で90隻以上。

漁獲量はこれまで世界一だった日本を抜き、およそ23万トンに達しています。
今回、10隻以上のサンマ漁船を所有する、台湾有数の水産会社が取材に応じました。



水産会社 黄一成副会長
「これは全部、北太平洋の公海にサンマをとりに行く船です。」



船は1隻、日本円でおよそ14億円かけて造りました。
集魚灯や魚群探知機など主要な装備はいずれも日本製です。

「ニホン、ニホン、ニホンの。」



一方で、日本のサンマ漁船にはない設備もありました。
巨大な冷凍庫です。
最大で850トン保管することができます。



冷凍庫がいっぱいになるころ、台湾から運搬船が送られ、サンマを次々に回収。
漁船はおよそ半年間、一度も港に戻らず操業を続けます。




水産会社 黄一成副会長
「北太平洋の公海でサンマ漁を行う船を年々増やしてきました。
公海でのサンマ漁の将来は明るいと確信しています。」



さらに今、公海でのサンマ争奪戦を過熱させているのが中国です。
和食ブームでサンマを出す日本食レストランが増え、人気が高まっています。



日本料理店店長
「サンマは焼くと香ばしくて、中国人の好みにあうのでよく食べられています。」




これまでは台湾からの輸入を年々増やして賄ってきました。
しかし今、中国もサンマ漁に乗り出しています。
中国各地で、サンマ漁船の建造が急ピッチで進んでいます。
この3年間で建造されたのは1,000トンクラスの巨大な船が44隻。
今年(2015年)もさらに十数隻が完成する予定です。

造船会社技術者
「サンマの市場はまだまだ拡大します。
この船ならどんどん魚がとれるので、わが国に大きな利益をもたらすと思います。」



3年前、2,000トンだったサンマの漁獲量は、去年は40倍の8万トン近くまで拡大。
今後数年で台湾や日本に迫ると見られています。
実は、こうした動きの背景には中国政府が示した新たな方針があります。


これは2年前に出された公文書。
近海での魚のとり過ぎと環境汚染が深刻化していることを理由に、今後は遠洋漁業に力を入れる計画を打ち出したのです。

拡大する中国漁業 サンマもサバもイカも

取材を進めると、その影響はすでにサンマ以外にも及んでいることが明らかになりました。





これは、日本の排他的経済水域のすぐ近くで操業する中国の新型の巨大漁船です。
この夏、日本の水産庁の取締船が漁の様子を初めて捉えました。



船に取り付けられた長さ50メートルほどのアーム。
それを四方に伸ばして幅100メートル以上ある巨大な網を広げます。
「灯光かぶせ網漁法」と呼ばれています。
強力な光と、細かい目の網を使い、サバやイカなどをとっていると見られます。

水産庁 広野淳指導監督室長
「光に集まる魚で、そこにいるのは全てとれてしまう漁法だと思います。」

こうした船は、これまでに確認されただけで100隻以上に上っています。

水産庁 広野淳指導監督室長
「大型の船、大型の網を使った漁業をあっという間に勢力を増やしていくという意味では我々はなかなか脅威に感じています。
海の上に壁があったりするわけではないので、ラインを越えて日本の水域の中に外国船が入って来て密漁するということが起きる可能性があると思っています。」

サンマ争奪戦 どう守る“秋の味覚”

ゲスト宮原正典さん(水産総合研究センター理事長)

●現場は厳しい?

そうですね。
サンマはやっぱり季節感がある魚なので、皆さん、今年は夏が早く終わったんで、早く食べたいと思われると思いますが、なかなかサンマの南下が進んでないので、これは温暖化の影響かもしれないんですが、まだまだ高いので、今年のサンマはどうしたんだという声が出てるんじゃないでしょうか。
(やや小さいなという印象も?)
そうですね、痩せているというのも今年の特徴かもしれないですね。

●外国の大型船 どれほどの脅威?

やっぱり、大型船が急激に増えたっていうのが問題なんだろうと思いますね。
台湾船で100隻ぐらい、中国船でも44隻ございます。
それから先ほどもビデオに出ていた、全くよく分からないかぶせ網ですとか、わけの分からない船が、中国船が少なくとも100隻。
これらの漁船がとる量なんですけれども、簡単に試算しますと、100隻の例えばかぶせ網船だけでも1隻1,000トンとれば10万トンなんですね。
日本の漁獲量規制、年間、日本のサンマをとっていい総量が26万トンくらいですから、いかに大きい数字かということが分かると思います。
これが急速に、1年、2年で漁獲を増やしてしまったことがあって、大きな脅威ですね。

●日本の排他的経済水域の外の公海にいる大量の船 各国では管理されている?

残念ながら、漁獲量の報告もまだきちっとされていないんではないかと思われます。
それから、本当にその船がそこにいるのかっていうことも、ちゃんと本国では把握できていない状況だというふうに思います。

●日本主導で国際的な漁獲規制に向けたルール作りをしているが、危機感の核にある部分は?

日本の周りの三陸から北海道にかけての漁場というのは、世界の三大漁場の1つといわれていまして、現在でも全世界の漁獲量の4分の1をこの水域だけで占めるという、大変いい漁場、ある意味残った優良漁場なんですね。
今までは日本もロシアも、そういう外国漁船の寄港、港に来ることを認めなかったので、いわば前線基地がない状態だったので、中国船も台湾船も来なかったんですが、だんだん性能のいい漁船、大型船を造り、冷凍技術も出来て、運搬船も使うというようになったんですね。
いよいよ離れた三陸漁場の公海に出てくるツールを手に入れてしまったという状況が、最近のことだと思います。
(サンマだけではない?)
そうですね。
サンマばかりじゃなくて、先ほどのビデオにもありましたとおり、サバでもイカでも浮いてる魚はなんでもとれるということですから、これは大変な脅威だと思いますね。

●ルール作りの展望 交渉をどう見通す?

(クロマグロの交渉などに携わった経験もお持ちだが?)
マグロの場合は確かに難しかったですが、日本が圧倒的な市場ということで、日本がある程度、我慢することによって漁獲量全体をコントロールすることができた。
だけど今度の場合は、サンマをこれから食べ出して、もっと食べてしまおうという国もあれば、輸出しようという国もあって、日本だけが一生懸命頑張ってもなかなか漁獲量の削減を迫れないという難しさがあると思います。

サンマを守れ 始まったルール作り

先週、日本や中国、台湾など、7つの国と地域の代表が東京に集まりました。
今年発足した北太平洋漁業委員会の初めての会合です。
サンマなど、これまで規制がなかった魚について国際的なルール作りを行うことが目的です。
呼びかけたのは日本の水産庁です。
会議ではまず、サンマの漁獲量に上限を設け、資源を保護する枠組みを作ろうとしています。
かつて日本は、マグロなどを乱獲しているとして国際的な批判を受けました。
資源が枯渇しかねないと漁獲制限を迫られたのです。
今回は、日本が率先してルール作りを進めていこうとしています。

水産庁 田中健吾首席漁業調整官
「漁業資源を守るための取り組みがちゃんとできあがるように全力を尽くしたい。」



サンマのルール作りを進めるうえで、鍵を握るのはロシアです。
日本と同様、公海ではなく自国の近海で漁を行っているからです。

水産庁 田中健吾首席漁業調整官
「最も重要な問題は、どう中国を説得するかです。」

ロシアの交渉担当
「はい。」

水産庁 田中健吾首席漁業調整官
「支援をよろしくお願いします。」

ロシアにとってもサンマは重要な水産物の1つです。
年間10万トンのサンマが消費されています。
サンマと野菜を煮込んだスープは、ロシアの代表的な家庭料理です。
日本での会議を前に、漁業庁のトップがインタビューに応じました。

ロシア漁業庁 イリヤ・シェスタコフ長官
「日々増加する公海でのサンマ漁には、強い懸念をもっています。
一刻も早く規制を設けることが必要です。
日本との協力関係は欠かせません。」


しかし、漁獲量の上限を決める交渉は容易ではありません。
北太平洋全体でのサンマの漁獲量は、去年(2014年)は62万トン。
日本は上限を、40万トンまで減らすべきだと主張。
一方、台湾は、70万トンまで引き上げられるとしています。
中国も、具体的な数字は示さないものの、まだ漁獲量は増やせると主張しています。

中国の交渉担当
「サンマの漁獲量は毎年変化するものなので、ここ数年減ったからといって、サンマ全体が減ったことにはなりません。
我々の分析では、資源はまだ安定しています。」



初会合では、漁獲量の無秩序な拡大を防ぐため、今後サンマ漁船を急激に増やさないことでは合意しました。
しかし、漁獲量の上限については、さらに2年以上かけて議論していくことになりました。

水産庁 田中健吾首席漁業調整官
「サンマをとってきた漁業国、食文化としてサンマを食べてきた消費国として、責任をもってリーダーシップをとってこの交渉にあたっていきたい。」

サンマを守れ 始まったルール作り

●交渉の全体の成果、どう受け止める?

こういう国際的な枠組みが出来たということ自体が大変な前進だと思うんですね。
ただ、やっぱり時間はかかる。



ここに出てますとおり、資源の評価をして、本当の漁獲制限の議論に入るのは2年後ですから、さらに時間がかかると思います。
その間に、やっぱり駆け込み操業で漁獲を増やしていくでしょうし、漁船数も増えていくということになりますので、その間にやっぱり資源が減っていくことが大変心配です。
皆さん、将来を考えて、長期的に持続性が大事だって考えてくれればいいんですが、やっぱりこの漁船を造っている人たちの中には全く漁業と関係ない資本が入ってきているところもあって、こういう人たちは短期的な利益というところを追求しておりますので、全く違う考え方で、パイが小さくなることよりは、今とれるもののほうが大事だということを考えているというのは、大変難しいところだと思います。

●魚の資源、管理をすれば持続可能だとどう説得する?

これからのことですけれども、1つはファクツ=事実をきちっと突きつけていくということです。
今、資源量自体は半減してますが、これからさらに減る可能性が高いわけですね。
今、これだけ急激に中国、台湾が増やしたことによって、本当に資源が悪化したのかどうかという因果関係がはっきりしていませんから、これは調査をきちっとして、資源の状況を明確にする必要がある。
それから先ほどから出ておりました、100隻のよく分からない中国船の話。
これについては、一体どんな操業をして、本国が見てない所で一体何をやっているのかということを取締船なんかを使って、そういう違法漁獲の状況を事実として突きつけていく、この2つが大変必要です。
もう1つ、今後の問題として大変大事なのは、日本ばかりが市場じゃないですから、大きな市場ですとEUですとか、あるいはロシアですとか、アメリカですとか、こういった市場国で協調して、乱獲をするような漁業の生産物は買わないという強硬な姿勢を示していくことも大事になってくるというふうに思います。

●日本は40万トンまで規制すべきと主張 みずから痛みを伴う数字では?

ただ、やはり先ほど曲がり角を曲がっている状況だとお話しましたが、日本の周りで乱獲がもう起こっている状況ですから、やはり日本側もリスクを考えて、リスクを取ってでも厳しい状況を提案していかなきゃいけませんし、その分、供給が減るかもしれませんが、そこは我慢していただかなければいけないかもしれません。
(これまではおいしい魚をいつでも食べられたわけだが?)
これまでが幸せだったということですね。

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