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No.36932015年7月29日(水)放送
東芝 不正会計の衝撃 ~問われる日本の企業風土~

東芝 不正会計の衝撃 ~問われる日本の企業風土~

東芝 不正会計の衝撃 幹部が語る内実

不正会計の責任を厳しく問われた歴代3人の社長。
名門企業で何が起きていたのか。
私たちは100人を超える幹部経験者を取材。
20人が匿名を条件に内情を明かしました。

子会社 元社長(取材メモより)
“西田さんのころから数字を細かく気にするようになった。
社内の雰囲気は明らかに変わってしまった。”

元執行役(取材メモより)
“佐々木さんからは厳しく叱責され、“利益を出せ”とか抽象的な指示を受け、とても嫌な思いをさせられた。”

元執行役(取材メモより)
“田中さんは対外的に必要以上に高い目標を公表してしまう。
下のものが『そんな数字無理でしょ』っていうくらいの。”

東芝に異変が起きたのは、西田氏が社長だった2008年のリーマンショックのころでした。
世界的な景気悪化で売り上げが激減。
過去最悪となる3,435億円の赤字に陥ったのです。
この時期から、西田氏は業績を上げるよう部下たちに強く迫るようになりました。

東芝はパソコンや電力システムなど、事業ごとに独立採算とする「社内カンパニー制度」をとっています。
社長が、この各カンパニーを統括する仕組みです。
西田氏は月に1度、社長月例と呼ばれる会議に各カンパニーや主要子会社の責任者を呼び寄せました。


西田氏は、具体的な金額を挙げて「利益を死守しろ」などと発言。
利益をかさ上げする会計処理が行われるようになりました。
子会社の元社長は、会計のチェック機能が働かなくなっていったといいます。

子会社 元社長(取材メモより)
“西田さんはあからさまに『経理なんて言われたとおりに数字をつけておけばいいんだ』と発言し、そうした考えがほかの幹部の間でも広がっていった。
西田さん以来、経理の立場が弱まった。”

利益のかさ上げが最も大きかったのが、パソコン部品の取り引きを利用した不正でした。
当時のパソコン事業の営業利益の推移です。
6月、9月、12月と3か月ごとに大幅に利益が上がっています。
四半期決算のタイミングで利益のかさ上げが行われていたのです。

その方法です。
決算直前に、パソコンの製造を委託していた会社などに高値で部品を買ってもらい、一時的に利益を確保します。
決算後に完成品を買い戻すため、逆に利益が減ります。
再び決算前になると部品を高値で売り、見せかけの利益を計上していたのです。
社内では「押しこみ」や「借金」と呼ばれていました。

不正会計は、2009年6月に西田氏から社長を引き継いだ佐々木氏の時代に、さらにエスカレートしていきます。
その一因となったのが東日本大震災後の経営環境の激変でした。
経営の柱としていた原子力事業の先行きが見通せなくなったのです。

東芝 佐々木則夫社長(当時)
「世界中で原発反対と言われれば、東芝の経営の柱のひとつと言っても成り立たない。」



佐々木氏は社長月例の場で、決算までの3日間で120億円の利益を出すよう迫るなど、不可能な要求をするようになりました。
しかし、社長に反論する人はいませんでした。
会議に出ていた元取締役の証言です。

元取締役(取材メモより)
“私としても『こんなことでいいのだろうか』と正直思った。
ただ、自分が何か発言すればどうなるというレベルの話ではなかった。”

このころになると、本来会計をチェックすべき部門が、社長の意をくんで現場に圧力をかけるようになっていったといいます。

子会社 元社長(取材メモより)
“財務部の社員が、『社長はこの部分について攻めてくるぞ』とか『ここはきちっと準備したほうがいいぞ』といったアドバイスをしてくる。
社長の分身みたいな存在。
社長の意に沿う数字を作ることに一生懸命になってしまった。”

内部のチェック機能がまひし、歯止めが利かなくなった東芝。
他社に先駆けて外部の目で不正を防ぐ仕組み、監査委員会を導入していましたが、これも機能しませんでした。
5人の委員のうち3人は社外取締役で、経営を監視して問題を見つけた場合は是正を求めるのが役割です。
しかし、会計の専門家は含まれていませんでした。
社外取締役を務めた人物の証言です。

元社外取締役(取材メモより)
“自分も頼まれたから務めていただけ。
社外取締役が専門家じゃないとだめなんじゃないかとか、それは自分に言われても困る。”

別の元社外取締役は、不正の発見につながるような情報は一切提供されなかったといいます。

元社外取締役(取材メモより)
“社内の悪い話を外部の私たちに積極的に出していくことは現実的には考えにくい。
監査委員会で出された資料を基に不適切な経理を見つけることは難しい。”

東芝 田中久雄社長(当時)
「心よりおわびを申し上げます。」




田中社長の時代も、利益のかさ上げは続きました。
誰も止められないまま7年にわたって続いた不正会計。
その総額は1,500億円を超えました。

東芝 不正会計の衝撃 問われる企業風土

ゲスト澤邉紀生さん(京都大学大学院教授)

●組織的な関与 どう見る?

東芝のような日本を代表する、しかもコーポレートガバナンスでも、先進的な試みを次々とやっている、いわばトップランナーの企業でこういう会計不正が起きたというのは大きなショックでした。
ただ、この報告書を読みまして、その中身を見ていきますと、これは恐らく東芝だけの問題じゃないなと、日本の優良な企業でも、あるいは優良な企業であればあるほど、トップが会計あるいは利益について間違った考え方を持つと、こういったことっていうのは起こってもおかしくないなというふうに思っています。
(そのトップがなぜこうした間違った考えを持つようになる?)
一番大きな間違いというのは、利益は操作できる、利益は会計操作でどうとでもなるというふうに思ってしまったところではないかなと思います。
というのは利益というのは、会社にとっては、あるいは社長にとっては成績表のようなものなんです。
それを自分で成績を書き直すことができる、こういうふうに思ってしまうと、いったん始めたうそを次々と重ねていかなければいけなくなる。
そういう深刻な問題があって、それが長年続いた結果として、東芝ではこういうようなことになってしまったんだろうなというふうにいえるかと思います。

●経理・財務部門が異を唱えられず関係者が社長の意に沿う数字を作るように なぜこういうことが起きる?

これはもうひと言でいうと、残念ながら会社人間でしかなかったと。
本来ならば経理・財務のプロとして、高い倫理観・使命感を持って仕事をすべき立場の人たちが、これはどうしようもないことかも分かりませんけれども、日本の企業風土では、会社のため、でも会社のためといっても会社のためではなく、社長のためというレベルで仕事をせざるをえなかったということではないかなと思っています。
(ほかの従業員の背信行為にもなり会社のためにならない、いわば倫理観というものもあると思うが?)
そうですね。
ところが日本の場合には、「就社」するというんでしょうか、就職するとはいえ、会社で勤め上げるというのが、特にエリート層においては理想になっています。
そのもとでは、社内で頑張れば頑張るほど、長年勤め上げれば勤め上げるほど、社内独自の会社の中での狭い倫理観に染まっていき、社会全体の倫理観からずれてしまっていることに気付かないということがあってもおかしくない、そういう事例ではないかなというふうに思います。

●社外取締役が5人のうち3人を占める監査委員会でもチェックが利かなかった?

そうですね。
この監査委員会は、委員会と設置会社の1つの大きな仕組みとして、社外取締役がその実力を発揮する場所のはずなんですけれども、残念ながら、東芝の場合には、監査委員会の委員長が歴代の財務の最高責任者が横滑りしてきてしまったということがあるので、どうしても止められなかった。
(その財務責任者は、もともと不正会計の処理に関わっていた?)
というような人たちなわけで、これは仕組みとしては外部の仕組み、社外の取締役に活躍してもらう仕組みのはずなんですが、実質としては社内のしがらみに縛られた、そういったものになってしまったと。
仏を作っても魂を入れないという、そういう話ではないかなというふうに思っています。

●最後のとりでの外部監査法人 こうした不正会計は見つけやすい?

これはいろいろな大きな会計不祥事と比べますと、今回の事例というのは比較的、多くの部署において繰り返し行われていたような、そういう会計操作になっています。
ですので、本来ならばこれは難易度としては発見することが容易だったような種類の会計操作、会計不正だというふうにいえるかと思います。
言ってみますと、これは、この点については、今回の第三者委員会の報告書というのは対象として扱っておりませんので、この点については、さらなる調査が必要だというふうに、私、会計の専門家としては感じております。
(今回の報告書では手続きやその判断に問題があったか否かは取り上げていないが、本当にうみが出しきれたかどうかというのは?)
そこのところは、今回の調査だけで結論を出すというのは、まだ時期尚早ではないかなというふうに思っております。

外部の目で 経営を監視

電子部品や医療機器などを製造するオムロンです。
4年前、外部の目を入れて社長を選びました。
就任した5代目の山田義仁さんです。
オムロンでは、創業家出身の社長が3代続きました。
4代目は創業家出身ではありませんが、前社長の指名でした。
経営環境が大きく変わる中、5代目の選任にあたっては社内のしがらみにとらわれない社長指名が必要だと考えました。

オムロン 取締役室長 北川尚さん
「トップ人事がいちばん難しいし、企業を持続的に成長させていくという観点でこの人事がいちばん上。
そこに社内だけの論理でいくと甘さが出る。
そういった意味で社外の方に入ってもらい、客観性をもって実行していくことが重要。」

会社では社外取締役をトップとした「社長指名諮問委員会」を設置。
社長の実質的な選出を、初めて社外の人間に委ねることにしたのです。
委員会のトップに選ばれた経営コンサルタントの冨山和彦さんです。
粉飾決算で経営危機に陥ったカネボウや日本航空の再建に携わりました。

オムロン 社外取締役 冨山和彦さん
「稼ぐ力を本来の力よりよく見せたいという思いをトップが持つと、これは(不正の)指示が行きますから現場は抵抗できない。
最終的にはトップの問題、会社は頭から腐る。
そういう指示を出す経営者を選ばないこと。」

社内で次期社長候補に選ばれたのは10人。
そこから社外取締役の冨山さんが中心となり、2年半かけて候補者一人一人の適性をチェックしていきました。
取締役会での発言や部下との接し方。
さらには飲み会での様子まで徹底的に調べ上げ、3人にまで絞り込みました。
さらに半年かけて面談を重ねた結果、所属する部署は主流ではありませんでしたが、海外での実績を評価し山田さんを選んだのです。
社長就任後も、短期的な利益を追い求め過ぎていないか、部下の意見にしっかりと耳を傾けているか、冨山さんは山田さんを監視していきたいとしています。
万が一経営トップが暴走した場合、社外取締役は解任を迫る覚悟が求められるといいます。

オムロン 社外取締役 冨山和彦さん
「取締役会が現執行部、特に社長を監督する最大の最終的な武器はいざとなったら解任動議を出せるということ。
それが仮に過半数持っていないから否決されても、立派な上場企業で社外取締役が解任動議を出したらニュースでしょ。
だからそれはものすごい威嚇力を持っている。」

東芝 不正会計の衝撃 外部の目をどう生かす

●社長の暴走を防ぐ取り組み、どう見た?

その点についてはまず2つあると思うんですね。
1つは、どういうような基準で社長を選ぶか。
それともう1つは、選んだ社長がきちんと仕事をしているかをどういうふうにチェックしていくかと。
最初のほうの社長の選び方なんですけれども、オムロンさんのケースは、これは大いに参考になると思います。
社内の狭い論理で選ぶのじゃなく、グローバルな、また将来を見据えて大きな基準で選んでいくと。
これはいってみると、その「ガバナンス」ということばのもともとの意味あいからも理解できるかと思います。
ガバナンスというのは大海原で船のかじを取るという意味で、社内の論理で人を選ぶ場合には、瀬戸内海、あるいは琵琶湖でヨットに乗る人のかじ取りを選ぶと、そういうレベルの話で、それに対してグローバルな基準で選ぶというのは、太平洋の荒波にもまれても大丈夫な、そういうような船主・かじ取り役を選ぶということで、この部分というのはすばらしい試みだなというふうに思います。
もう1点のほうが社長を選んだあとどうするかと、こちらについては社外取締役がある種バランスの取れた緊張関係、建設的な緊張関係を社長を持つということが必要かなと。
それを持つためには、社外取締役はいざとなればいつでも解任動議を出せると。
別の言い方をすると、いざとなればいつでも自分を選んでくれた会社を離れてもいいんだという、そういうような胆力、肝が据わった心と実際にそれができるような環境を持った人ということが重要かなというふうに思います。

●どうすれば風通しのいい企業になれる?

これは、1つの会社だけで努力してどうにかなるような話ではないように思います。
やはり社内外の風通しをよくしようと思うと、会社の外部との交流、会社の中だけで成長するのではなく会社の外でも成長できる、そういうような機会を社会のほうで用意していく必要があるんじゃないかなというふうに感じております。
具体的にはエグゼクティブ・エデュケーションであるとか、あるいは幹部を教育する機会というのが、社会全体の中で当然のようにあって、会社のほうでもそういう場所に社員を送り込むことによって内外の風通しをよくする。
これが大事なのではないかなというふうに考えています。
(会社の倫理に染まらず、本当に社会の倫理にきちっと向き合える人?)
そういう人物を養成していくというのが、とても大事な課題だと思います。

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