クローズアップ現代

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No.36912015年7月27日(月)放送
検証 小型機墜落事故

検証 小型機墜落事故

検証 小型機墜落事故 住宅地になぜ

視聴者が撮影した、小型機が離陸したときの映像です。
きのうの午前10時58分、伊豆大島に向け、機長を含め5人を乗せて出発しました。
滑走路から南に向けて離陸した場合、原則としてしばらくまっすぐ進みながら高度を上げていきます。


NHKが目撃証言などから作成した今回の飛行ルートです。
小型機は画面左の方向に進みながら、およそ700メートル飛行。
僅か1分足らずで住宅地に墜落しました。
小型機はどのように飛んでいたのか。
離陸直後の様子が、偶然、飛行場のすぐそばのサッカー場で撮影されていました。
目撃した人は、小型機の音などがふだんと違っていたといいます。

男性
「不思議な音がして飛んでいったので。
機体もちょっと揺れていた。」

男性
「機体が揺れて持ち直してから、破裂音がした。
そうしたら左に滑り落ちるみたいな感じで。」

小型機がサッカー場を通過したあとに撮影されたと見られる映像です。
木立の上を、小型機が通過している様子が映っています。



男性
「あの林の高さのちょっと上を飛んでいた。
そのまま見えなくなっていった。
普通だったら上がっていくけど、下がっていくように見えた。」


同じ人が撮影していた映像には、その直前に別の小型機が飛行する姿も映っていました。
2機を比較してみると、墜落した小型機は、低い高度で飛行していたことが分かります。
その直後でした。
住宅街の方角から、黒い煙が立ち上ります。
その瞬間を、離陸準備中の後続の小型機に乗っていた人が目撃していました。

後続の小型機に乗っていた人
「まずいまずいっていうのが、高度が上がっていかない時に思って。
林の向こうに消えた時になんとかそのままいってくれと思ったけど、黒煙が上がった時に、やっぱりだめかと。」


小型機は、住宅密集地に墜落。
民家が激しい炎に包まれました。
住宅地を襲った突然の惨事に、周囲は騒然となりました。

女性
「すごい音がした。
車がぶつかったのかなと思って飛び出してきた。
そうしたら火の手がばーっと上がってて。」

激しく燃える民家の2階からは、助けを求める女性の声が聞こえてきたといいます。

男性
「熱いよ熱いよ、何回も聞こえたので耳に残っている。
何もできなかったというのがかわいそうだった。
母親(とみられる女性)が飛び込んでいこうとしたので抑えた。」

この事故で、小型機に乗っていた男性2人のほか、民家に住む鈴木希望さんも巻き込まれ、亡くなったと見られています。
仲がよかった友人は、犬が大好きだったという希望さんの突然の死に、大きなショックを受けています。

友人 佐久間好美さん
「動物が好きで、とっても優しくて、いつも我が子のようにうちの子(犬)のこともかわいがってくれた。
すごくショックですね。
まだ若いのにかわいそうだと思いました。」

小型機を操縦していた、川村泰史機長。
墜落で死亡したと見られています。
これまでの飛行時間は、600時間から700時間。
川村機長を指導した経験がある先輩のパイロットは、一定の飛行経験がある冷静な操縦士だったといいます。

川村機長を指導したパイロット 西村博行さん
「非常にまじめな、すごく慎重な方だと印象を受けています。
パイロットの本能としては、機首を上げて墜落しないようにしようということで頑張っていたと思う。」


パイロットは、事故を避けることはできなかったのか。
知場勝さんです。
長年、国の事故調査官として航空機事故の原因調査にあたってきました。
小型機の操縦経験も豊富です。


今回、墜落するまでの経路を、上空から分析してもらいました。
まず知場さんが指摘したのが、街なかにある調布飛行場ならではの、パイロットへの心理的負担でした。
墜落した小型機は、滑走路を北向きではなく、住宅地が密集する南向きに飛び立ちました。

元運輸安全委 首席航空事故調査官 知場勝さん
「見た限りだと、北向きに上がると少し森、ちょっと山、小高い山がある。
北向きのほうがパイロットは安心して上がれるのでは。


南向きに上がる時は民家が密集した所があり、かなりストレスがかかると思う。」

さらに知場さんは、なんらかのトラブルで高度が上がらなかったため左に旋回し、事故を回避しようとしたのではないかと指摘します。


元運輸安全委 首席航空事故調査官 知場勝さん
「右旋回をすると味の素スタジアムがあるので、左旋回を考えた可能性もゼロではないと思う。



ゆるやかに左旋回をしていくと事故現場の北側に広いサッカー場がある。
もしパイロットの頭の中にあったとすれば、そこまでもたないかと考え飛行していた可能性も。」



墜落の原因について、別の専門家は、離陸後に何らかのトラブルが起きた可能性を指摘しています。





元全日空機長 航空評論家 樋口文男さん
「いろいろ回復操作等もしたのでしょうけども、余裕がないなかでそこにおりざるを得なかった、落ちたということだろうと思います。
燃料コントロールする系統かエンジンそのものの不具合、どちらかというか、それが一番考えられます。」

国の運輸安全委員会は、きょう(27日)、墜落現場の状況を詳しく確認しました。
警視庁も特別捜査本部を設置して、原因究明を進めています。
突然、市民の命を奪った住宅地への墜落事故。
どう安全を確保していくのか、重い課題が突きつけられています。

検証 小型機墜落事故 住宅地になぜ

ゲスト知場勝さん(元運輸安全委員会首席調査官)

●上空から見た感想は?

滑走路が非常に短いということですね。
ほかの空港に比べて800メートルしかありませんから、短いということ。
それから人家がかなり近い所に密集しているということ。
なので不時着する適地がないということですね、近くには。
(パイロットとしての心理的負担が?)
非常に重かったと思いますね。

●映像で一番注目する点は?

まず離陸直後の映像なんですけれども、どうもギアが、着陸装置ですね、車輪ですけれども、これが上がっていないように見えますね。
(出たままであると?)
タイミング的には、もう上がっている状況じゃないのかなという感じはしますね。
(なんらかの状況で、出したままになっている?)
ですから、車輪を上げるタイミングのときに、なんらかの異常が機体にあった可能性はあると思いますね。
それともう1つは、横から撮った映像ですけれども、この映像でかなり高度が上がっていないというふうに感じます。

●事故が起きた機種の場合、通常1分ほどで達するスピード・高さ・距離は?

1分ですと、平均の速度が航空機の場合は100ノット、秒速に直すと50メートルなんですけれども、ですので1分に換算すると3,000メートル、3キロですね。
約3キロ行って、それで高度的には約370メートルの高度まで達するんじゃないかと考えられますね。

(今回は滑走路から700メートルの所、1分足らずで墜落をしたのではないかと見られているが?)
これが換算すると、この辺りで飛行機が浮揚した、浮き上がったと考えると、浮き上がるときの速度が恐らく70ノット台なんですね。
秒速に直すと約37~38、墜落したときも同じくらいの速度。
で、この間を平均80ノットで飛んだと考えると、秒速40メートルになりますね。
そうすると、ここで離陸、浮き上がったと考えると、ここまでが約800メートルぐらいになるんですね。
それで800メートルをもし秒速40メートルでいくと、20秒ぐらいでここ、墜落地点に達するわけですね。
ですので離陸から1分はなかったと、20秒前後ぐらいしかなかったんではないかというふうに考えられます。

(高度は本来、何メートルぐらいまで上がっていることになる?)
ですのでここだと、20秒だと先ほどの1分で370メートルですから、120メートルですね。
この中間地点、この辺りだと60メートルぐらいの高度には達しているというふうに考えられます。
(野球場から撮った映像、木の僅か上を飛んでいる状況だが、60メートル?)
とてもあるようには見えないですね。
あったとしても30メートル、場合によっては20メートルぐらいしかなかったんじゃないかと思います。

●パイロットは離陸前、どんなチェックをする?

まず飛行前に機体の周りを見るということですね。
それから、燃料の水抜きを行うということですね。
これは夜間、あるいは何日か駐機している場合に、どうしてもタンクの中に空白があると空気中の水蒸気が凝結して、水となって下にたまるわけですね。
それが燃料ラインを通っていってエンジンに流れると、エンジンに不調を起こして停止することがあるということで、パイロットは飛行前点検で必ず水抜きということをやりますね。
それから機体に乗ってランナップ、つまり試運転ですね。
かなりフルパワーに近い状態まで入れて点検を行う。
それからいろんな項目を行って、すべてが基準の値に入ってるかどうか、なおかつ自分の五感を働かせて、異常なにおいがないか、異常な振動がないか、そういったことも確かめます。
それから今度、離陸のポジションに入ってからですね、静かにパワーをフルに入れながら離陸していくわけですけれども、その段階でも、エンジン計器その他に異常がないか、当然、五感でもすべてを感じながら上がるということですね。
ですので、その3つの段階で発見できなかった可能性はあると思います。

●事故原因を追求する最大の手がかりは?

最大の手がかりは、機体ですよね。
機体は当然今申しましたように、今回の事故の場合は、エンジンあるいは燃料関係に原因がある可能性がありますので、エンジンあるいは燃料系統をよく調べる。
特にエンジンは分解調査が必要だと思いますね。
それから口述。
できるだけ多くの口述を取って、それで真実をその中から見つけ出していく。
(目撃者の?)
そうですね。
それから機体に同乗されていた3名の方の口述ですね。
それから空港関係者、整備士、あるいはパイロット等の口述ですね。
プロの口述、そのあたりをできるだけたくさん集めて、その中から真実を見つけていくことが大事だと思いますね。
(映像も有力な手がかり?)
そうですね、特に映像は有力な手がかりとなりますね。

住宅地の飛行場 利用制限どこまで?

調布飛行場から700メートルの場所に住む、村田キヨさんです。
飛行場問題を考える市民の会のメンバーとして、長年、危険性を訴えてきました。

村田キヨさん
「そっちからそこの家の上を通って、それから家の上の方に来るときと。
二度、実際に(家に)落ちる夢を見ました。
やはり怖いという思いがあるから、自然に(夢に)出ちゃうんでしょうね。」

村田さんが活動を行うきっかけの1つとなったのが、昭和55年に起きた墜落事故でした。
調布飛行場を離陸した小型機が、エンジントラブルのため、およそ600メートル離れた中学校の校庭に墜落。
夏休み中だったため生徒たちに被害はありませんでしたが、乗っていた2人が死亡しました。

“将来は全面移転させる方向にもっていってほしいと思います”

事故を受けて、住民たちの間に飛行場の移転を求める声が広がっていきました。



村田キヨさん
「そういう子(生徒)たちがもし犠牲になっていたら、もっと大ごとだったと思う。
危険性がある以上は(飛行場を)移してほしいです。」



一方で、伊豆大島など離島航路の拠点として重要な役割を担っていた調布飛行場。
東京都は不安を訴える地元の要望を受け、飛行場を利用できる条件を厳しくしました。
リスクを減らすために、「公共性のある飛行」に限定することにしたのです。

自家用の小型飛行機については観光や遊覧飛行などを認めず、パイロットの技能を維持するために行う慣熟飛行のみ利用できることにしました。
しかし、調布飛行場を利用してきたパイロットに取材すると、慣熟飛行としながらも、実際はレジャーで利用するケースも少なくないといいます。


話:調布飛行場を利用するパイロット
「慣熟か慣熟じゃないかの判断については非常にあいまいですから、実際は表向きは『慣熟(技術の維持)だけど、実体は『レジャー飛行』ということは誰しも考えられると思うし、明確に分けられるわけじゃない。」

さらに、都が定めた独自の基準の影響で、古い機体が増えているという指摘もあります。
常駐する自家用機の機体変更を原則認めないとしているのです。



調布飛行場を利用している 西村博行さん
「新しい機体に関しては安全性が高まった装備なども搭載されています。
そのような機体に換えたくてもなかなか換えることができない。
そういうルールの中で、できるだけ機体の性能を維持しつつ飛ばしているのが現状です。」

住民を巻き込み、合わせて3人の犠牲者を出した今回の墜落事故。
25年以上前の機体に、機長のほか4人を乗せて伊豆大島に向かうことになっていました。
飛行の目的は慣熟飛行でした。
今回の事故を受け、都は当面、慣熟飛行を含めたすべての自家用機の利用を自粛するように求めています。

住宅地の飛行場 利用制限どこまで?

ゲスト平間一彰記者(小型機墜落事故取材班)

●住宅密集地の近くにある空港ではどんな安全対策が取られている?

平間記者: 例えば調布飛行場の場合なんですけれども、発着回数を減らすことで安全を担保しようということをしてるんですね。
それをどういうふうにやっているかということなんですが、VTRにありましたように、例えば慣熟飛行などに限るとか、あるいは機体の更新を原則認めないと、今ある機体でしか飛んじゃいけませんよと、こういったことをやってるんです。
その結果、ピーク時に比べて2割ほど発着数は減ってるんですね。
ただ実効性については、先ほどVTRにありましたように疑問の声も上がっているというのが実情なんですね。
あと、ほかの日本のいわゆる住宅密集地にある空港については、いわゆる騒音の問題とセットで、住宅地の上空はなるべく飛ばないルートを設定するといった対策を取っているということなんですね。

●飛行場の近くにある住宅街の住民の不安 どんな安全対策が取られるべき?

例えば海外の事例を見てみたいと思うんですけども、例えばアメリカ西海岸、ロサンゼルス近郊のサンタモニカには、調布飛行場のようないわゆる小型機が発着する空港っていうのがあるんですね。
ここは小型機が発着してるんですけども、比較的その滑走路の長さを長く取ってるんですね。
余裕を持って取っていると。
そのことによって、もし万が一、離陸したあとにエンジンのトラブルがあったとしても、空港内に不時着できるというような対策を取ってるんですね。
一方、日本はどうかといいますと、例えば調布飛行場では、逆に平成13年に滑走路の長さを1,000メートルから800メートルに縮めているんですね。
ですから調布飛行場では、先ほどVTRにあったように、離陸した直後、非常に低い高度で住宅地の屋根をかすめるようにして飛ぶということが実情だということが言えると思います。

●今回のような事故をどう防いでいく?

知場さん:最終的には、プロ集団である運輸安全委員会の最終報告書を待ちたいと思うんですけれども、この程度の事故になりますと、恐らく1年以上の時間がかかると思います。
したがって運輸安全委員会が安全上、必要と認められることは適時公表していただいて、事故防止をしていただきたい。
それから運航者にあっては、発行された調査報告書を読むことによって、その中から事故防止のためのヒントを見つけていただきたいというふうに考えます。
(小型機を操縦するパイロットも過去の事故の調査を読んで学んでほしい?)
そうですね。
その中に必ずヒントがあるということですね。

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