クローズアップ現代

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No.36682015年6月15日(月)放送
買い物は“おまかせ”スタイルで!? ~広がる目利きビジネス~

買い物は“おまかせ”スタイルで!? ~広がる目利きビジネス~

広がる“おまかせ”ビジネス 新鮮? 目利きがチョイス

都内で看護師として働く、渡邉みなみさんです。
この日、届いたのはプロのスタイリストが選んだ服。

渡邉みなみさん
「おっ、白のシャツ。
あっ、かわいい、フリル。」

中に入っていたのはふだんあまり着ない、レースやフリルが付いたブラウスとスカート、3着です。
早速、着替えてみると…。




渡邉みなみさん
「ああ、夏!かわいい。
全然気にならないですね、かわいい。」




渡邉みなみさん
「自分で選ばずに、スタイリストさんが選んでくれるから、いろいろ発見ができるんだと思います。」




渡邉さんがこのサービスを利用するようになったのは2か月前。
それまで利用していたネットショッピングでは、何を選んでいいのか分からなくなってしまうことがありました。
加えて、つい同じような服ばかり買ってしまうこともしばしば。
お気に入りの紺色のジャケット。
気付いたら、夏用だけで4着も持っていました。

渡邉みなみさん
「同じ服ばかり着るんですね。
新しいのが欲しくなって、ネットで見たりお店に買いに行ったりするんだけれども、同じのをまた買っちゃって、永久ループにはまっているんだと思います。」

何を買ったらいいのか分からなくなっている今の消費者たち。
そこに目をつけ、このサービスを始めたベンチャー企業です。
サービス開始から4か月で会員登録が5万人に達しました。




利用者は、全身写真、好きな色、着てみたい服の色、好きなコーディネートなどの情報を提供します。
それらの情報をもとに、プロのスタイリストが膨大な服の中から利用者に似合う服を3着選び出します。



その際、利用者が好むテイストの服を、2着選びます。
残りの1着は好みから少し外した服をあえて選んでいます。
この意外なコーディネートが利用者にとって新しさにつながり消費欲をかきたてられるというのです。
月額6,800円のレンタルで何度でも利用できるという手ごろさも相まって、若い世代の心をつかんでいます。

ノイエジーク 代表取締役 天沼聰さん
「プロのスタイリストが持っている目利きの力によって、その方に本当に合うものを多くの情報の中から、ぎゅっと凝縮してお届けすることができる。
『新しい自分に出会っていただく』という価値を届けられると思っています。」

その道のプロにお任せして商品を選んでもらう新たな消費スタイルは、意外な分野にまで広がっています。
書店を営む岩田徹さんは、1万円分の本を岩田さん自身が選んで届けるサービスを行っています。
全国から申し込みが殺到。
現在400人待ちになり、サービスの受け付けを休止せざるをえないほどです。

岩田徹さん
「まさかこんなことになるとは思ってなかったですね。」

本を選ぶ際、大事にしているのは利用者が記したアンケートです。
読書歴に加え、家族構成や抱えている悩みなどからお勧めしたい本を選びます。
この日、夫と共通の趣味が欲しいという30代の女性のために、本を選ぶことになりました。


岩田徹さん
「ちょっとこんなのもいいよね。」

女性の趣味の料理に関係するエッセイをはじめ、選び出したのは12冊。
その中に、ある本を紛れ込ませていました。

岩田徹さん
「このへんはちょっと、旦那が好きそうな感じ。
奥さんがこれ読んで面白いと思ったら、1歩近づけるかな。
ボクシングの話だからね。」

夫の好きな格闘技には関心がないという女性に、あえてボクシングの小説を選びました。

岩田徹さん
「『こんなのどうですか?』って、全く違うものをポンと提案してあげるのは人間にしかできないから。」



選んだ本に必ず添えている手紙には、本をきっかけに共通の趣味が出来てほしいというメッセージを書き添えました。





岩田さんが選んだ本を受け取った、村松さん夫妻です。
村松さんは、同封された岩田さんの手紙を手に取りました。

村松葉子さん
「会ったことのない本屋さんからもらったお手紙とは思えない。」

岩田さんのお勧めはボクシングの小説でしたが、村松さんには興味のない分野です。

村松葉子さん
「この本からどうやって、二人の共通の趣味を見出すのだろうかと思っています。」

半信半疑で読み始めました。

村松葉子さん
「クリンチってなんだっけ?
たまに聞くよね。」

夫 宏樹さん
「抱きついたり。」

村松葉子さん
「カットマンって切る人じゃなくて治す人なの?」

夫 宏樹さん
「流血を止めるって意味のカットだと思うけど。」

本で初めて目にしたことばの意味を格闘技好きの夫に尋ねるうちに、ボクシングの話題で会話が弾んでいました。

村松葉子さん
「私、本を読んでいるとき夫としゃべらないので、夫と話ながら読めたのもよかった。
こういう出会いじゃなかったら読まなかった本だと思います。」

情報が多すぎて選べない? 広がる“おまかせ”ビジネス

ゲスト清水聰さん(慶應義塾大学教授)

●今や世界中の通販サイトで商品を選べる 楽しいが疲れるのでは?

そうですね。
自分が買いたいものをまず見て、そのあと2時間ぐらい回遊して、結局分かんなくて、また最初のところに戻っちゃうという経験は私もよくやっています。
(情報の多さの中で、感じることが多い?)
1つは、見ているうちに、選択肢が多すぎるんで、自分の目標がよく分かんなくなってきちゃうんですね。
つまり、先ほどVTRの中で1万3,000件ぐらい選択肢があると。
そうすると、それを見てるうちに、これもいいな、あれもいいなってやっているうちに、そもそも自分は何が欲しかったのか、だんだん分かんなくなってきちゃうと。
そういうようなことがあるわけなんですね。
(目標を見失って、自分が分からなくなっていく?)
自分が分かんなくなっちゃうんですね。

●目利きの方からのお任せ型の提案 どういうニーズに応えている?

先ほどVTRの中で女性が、結局、同じものを買っちゃうということを言ってたんですけれども、あの中ですごくおもしろいなと思ったのは、われわれマーケティングで言うと、「適度な不一致」っていう理論に全く基づいたことを、あそこの衣料品屋さんも、また本屋さんも、やってるんですね。
どういうことかというと、あの女性は好きな色、それだけを集めてくると、これはもう自分と今までと同じだと思って見向きもしないし、また全然違うものを入れてくると、これまた自分に合ってないって思うんですけれども、2色同じで1つ違うと、これはやはり自分にとって新しい発見ができる、適度な不一致な関係というものを導き出しているので、非常にいいと。
それから本屋さんの場合も、いわゆる格闘技について、あの奥さんは興味がないんですけれども、旦那さんはお好きであると。
そういうことで、自分は興味ないけど、なんとなくちょっと近いのかなっていうことで、読もうと。
そういうようなサービスっていうのは、非常にいいんだと思うんですね。
それで普通、こういうお勧めみたいなのは、今パソコンでどんどんどんどん、いろいろこうメールで来てると思うんですけれども、これは一方的に来てて、コミュニケーションがないんですよね。
今回のこれは、今の書店の方もそうですけれども、すごくコミュニケーションをされている。
その中で、いわゆる、どういうものがいいのかっていうのが出ているわけですね。
そうするとコミュニケーションをすることで、いわゆる普通にネットで買うだけだとすごく失敗しちゃうものが、失敗しないで済むというようなことがあって、書店の方もおっしゃってましたけれども、こういうのは人間にしかできないと、機械ではできないと言ったのは神髄かなと、そういうふうに思います。

●目利きの方が自分に合ったものを提案してくれるという実感を持てるのが鍵?

そうですね。
目利きの人、調査をしていくと、はやりものっていうのが分かっているだけじゃなくて、その人に合っているものは何かっていうのと、あと世の中でどう広がっていくのかということ、どういうものがいいか、要は商品のよさと、はやりものと、それからその人に合うかどうかの3つっていうのをバランスよく考えられる人が目利きなんですね。
ですから、そういう意味では、この今出てきた例っていうのは、両方とも本当にいい目利きだというふうに思います。
(ブランドの壁がないのも大きい?)
そうですね。
普通、化粧品やなんかは、例えば美容部員の方に勧められて、何か新しいものをっていうと、どうしてもその会社の中のものでそろえちゃうことになるんですけれども、この目利きの方はフリーですから、いわゆるアメリカのものを持ってこようとか、ヨーロッパのものを持ってこようとか、ふだん自分が使ってないものっていうのを入れることができるので、そういう意味では非常に選択肢の幅が広がって、新しいものが発見できると思います。

目利きがつなぐ ものづくりイノベーション

アパートの一室を占める大きな箱。
実は、売り上げ1億円を超えるヒット商品です。
一体なんのための箱かというと…。




男性
「♪空は今日も手を伸ばしても~」

家庭用の防音室です。
バンドが趣味のこの男性。
近所迷惑にならないようにと購入しました。
この商品、実はダンボール製です。
一定の防音機能を持たせながら、価格を8万円前後に抑えています。
発売から1年半で1,500台以上売り上げました。
製品化の大きな力となったのは、産業界で活躍する目利きの存在でした。
このダンボール製の防音室を企画・販売した、大手ゲームメーカーの子会社です。

VIBE 経営企画室 亀井丈嗣さん
「こちらが初めて作った試作品になります。」

ダンボール製の防音室というアイデアは2年前に生まれましたが、商品化できる技術を持つ企業が見つからず、企画は立ち行かなくなりました。


VIBE 経営企画室 亀井丈嗣さん
「我々はダンボールに詳しい会社でもなんでもないので、我々のほうで探しましたけど、なかなか見つからなかったですね。」




こうした中、この企業が抱える課題を解決したのが、産業分野の目利きたちを束ねたネットワークサービスでした。
核となるのは、地域に根ざして中小企業の支援を行う1,000人以上の産業コーディネーターたち。
元・大企業のエンジニアや経営コンサルタントなど、肩書はさまざまです。


一般的にこうした目利きたちは地域の企業を熟知しているものの、ほかの地域の企業については詳しく知りません。
そのため、大企業が技術提携を考えても個別に当たらなければならず、時間と手間がかかるうえに見つからないケースが多々ありました。


そこでこのサービスでは、地域ごとに活動していた産業コーディネーターをネットワーク化。
大企業からの要望に対し各地のコーディネーターが技術力のある中小企業を探し出し、技術提携につなげるのです。



この目利きのネットワークを2年前に立ち上げた、前田佳宏さんです。
埋もれた技術を製品化につなげるこのビジネスに、目利きの存在は欠かせないといいます。

リンカーズ 代表取締役 前田佳宏さん
「(目利きは)中小企業の表に出ていないような情報まで知っているわけなんです。
技術的な情報のみならず、社長さんのやる気はどうだとか、目利き役を47都道府県でネットワーク化することで、どんどん大手企業からの条件に対してフィットするような中小企業を見つけてもらう。」

このネットワークの1人、福島県産業振興センターの磯明夫さんです。
ダンボールで出来た防音室の技術を見いだした目利きです。
磯さんは産業コーディネーターとして中小企業の技術開発の支援を行う一方で、非公開の情報や埋もれた技術を集めてきました。
そんな磯さんが防音室の企画を知りすぐに浮かんだのが、県内にある社員60人のダンボールメーカーでした。

福島県産業振興センター 企業支援部 磯明夫さん
「これはダンボールで出来ているんですよ。」

この会社が強度の高い特殊なダンボールを使った製品開発を進めてきたことを知っていました。
さらに、信頼関係のある磯さんだからこそ知り得た、取って置きの情報がありました。

それは、開発部長の趣味が高じてひそかに進められていた、ダンボールを音響の分野で製品化するプロジェクトでした。
磯さんは、ダンボールの加工技術と開発力を持つこの企業を、大手ゲームメーカーの子会社に推薦したのです。



神田産業 商品開発事業部 谷田部幸太郎さん
「こういう商品ができる会社がほしい、でも見つからない。
うちもある程度の技術は蓄積したけど、販路がない。
そういった仲を取り持ってくださった方ですから、キューピッドですよね。」

磯さんをはじめとする目利きの活躍で、大企業との間に成立したマッチングは100件以上に達しています。
そして今月(6月)、この目利きのネットワークサービスはアメリカ・シリコンバレーへの進出を果たしました。
アメリカの企業の需要を掘り起こし、目利きを通して日本の中小企業を世界に売り込んでいきたいと考えています。

リンカーズ 代表取締役 前田佳宏さん
「海外の大企業だったらまた企画の発想が違うと思うので、海外とつながることによって、これまであり得なかったイノベーションが生まれる可能性があると思う。
そこでやはり仲介役となる目利きの力が必要だと思います。」

目利きがつなぐ ものづくりイノベーション

●産業分野の目利きたちを束ねてネットワーク化 どんなイノベーションが生まれる?

そうですね、今までの日本企業の製造のパターンっていうのは、いいものを大量に早く作っていく、それには非常に合っていた系列の仕組みっていうのがあったんですけれども、今、これだけ情報が多くなってくると、消費者のいいものに対するニーズっていうのはすごく上がっていってるんですね。
そうなると、今のいわゆる今までのやり方ではなかなかそういういいものっていうのを早く作ることができなくなってきていると。
そういう状況の中で、いわゆる大企業の持っている販売力と中小企業の持っている技術力はあるけれども、販売力はっていうところがくっついて、それがうまくいくと、しかも今までそういう試みってあったんですけれども、ただ並べているだけではだめで、間に入る、ああいう目利きみたいな人がいないとうまくくっつかないと。
それに目をつけたっていうところが、すごくいいビジネスだと思いますね。

●企業の動き 目利きをどう活用しようとしている?

私がやっているあるビールメーカーさんでは、新製品の需要予測にこの目利きというものを使っています。
ビールのようにコンビニエンスストアのようなところを販売経路にしているところでは、大体、新製品出ても4週間くらいで売り上げが立たないと、棚からいなくなっちゃうんですね。
(たった1か月で?)
そうすると、今までの開発費っていうのは、むだになってしまうわけですね。
ですから、なるべく早いタイミングで売れるか売れないかを判定したいと。
そういうときにこの目利きの人を使うと、実は発売前から、この商品が売れるか売れないかというのを判定できて、ほぼ大体9割ぐらいは当たるというのが調査結果として出ています。
(発売前から売れるか売れないか、誰が判断している?)
この目利き、実はビールなんていうのは、やはり食品なんですけれども、食品で目利きになる人、いろいろ詳しく見ていくと、40代から50代にかけての女性が多くて、もっと詳しく見ていくと、バブルの時代に上司においしい店に連れてってもらったっていう、いわゆるなんていうんですか、そういう感受性が高いときにいいものを食べていた、それが非常に、あとになって目利きになっているというふうになっています。

●これからの日本、世界に打って出るためには目利きをどう活用すべき?

日本はどうしても人口の面では、ほかのアジアの国に比べて不利なんですけれども、目利きの数は、これだけ日本の商品、日本の市場でもまれた商品が世界を席けんしているところを見ると相当多いはずなんですね。
そういう意味では、外国の企業が世界でものを売っていく際に、日本企業をテストマーケットとして使っていく、これは将来的に意味があるなと、有望だなと思っています。
(自分の商品をテストして、どういうところが受ける、受けないというのを見る市場として位置づける?)
そうですね。

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