クローズアップ現代

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No.36592015年5月28日(木)放送
新・産業革命?“モノのインターネット”の行方

新・産業革命?“モノのインターネット”の行方

暮らしもビジネスも激変? “モノのインターネット”

ここは、大手建材メーカーが手がける、実際の家を使ったモノのインターネットの実験場です。
一見、普通の家ですが、仕掛けがあります。




「生活空間ごとに天井などにセンサーがありまして、温度、湿度、明るさ、人の動きなどをセンシング(感知)しています。」




ほかにも、扉や引き出しの一つ一つにまでセンサーが付いています。
その数200個以上。




その情報は、無線を通じてコンピューターに送られます。
データを分析すれば、住む人がいつ、どこで何をしたかが分かります。
この情報がなんの役に立つのでしょうか。
例えば具合が悪くなり、トイレに長く閉じこもった場合…。


“トイレに座ってから長時間経過していますが、異常はありませんか?”





反応がない場合、照明をつけて周囲に知らせたり、家族にメールを送るなどの対処を自動的に行います。
しかし本当の威力が発揮されるのは、こうした行動データが多くの家から集まったときです。



大量のデータを分析することで、例えば暑い浴室から出るとき、どのくらいの温度差があると体調を崩す人が多いかといった傾向をつかむことができます。




こうした知見を蓄積していくことで、健康で快適に暮らせる家の条件が浮かび上がります。
メーカーはそれを新たな家造りに生かすことができるのです。


建材メーカー 高田巖さん
「どんな生活行動をしたあとに具合が悪くなったとか、その前に何が起こったかというデータが蓄積されると事前に予防できる。
建材メーカーという視点だけではなく、世の中に貢献できる技術だと思っています。」

モノから集めたデータを分析するビジネスは、企業の競争力を左右するまでになっています。
大手建設機械メーカーでは、販売するすべての製品にネット接続機能を持たせてきました。
エンジンやポンプに取り付けられたセンサーから、温度や振動などのデータが刻一刻とメーカーに送られます。
故障につながる異変が検知されると、自動的に保守担当者に伝えられます。
機械が故障する前に先回りして、部品の交換やメンテナンスを行っているのです。

土木建設会社 社長
「(故障は)めったに起きることではないですが、起きると重大な事故につながるので、非常に通信システムには助かっています。」


この会社へは、世界中にある40万台もの建設機械からデータが集まり続けています。
ここでは、データに基づいた販売戦略が立てられています。




「ここで分かるのは、機械がどこで稼働しているか、稼働の位置、稼働時間などが分かっています。」




情報を集計すると、機械の稼働率が前年より高い地域ではさらに需要があると予測できます。
そこに重点的にセールスを行います。
また、機械の故障がどこで、どのような作業をしているときに起きやすいかデータから分析。
機械の改良や開発に生かしています。

建設機械メーカー 役員 黒本和憲さん
「あるところから来るデータと(別の)データには大きな違いがある、問題がある。
どうしてそういう問題が起こるのか解析する。
群になるとデータの価値は飛躍的に高まります。」

さらに、土木工事の在り方を根底から変えるサービスにも乗り出しています。
工事の計画立案を、人に代わってコンピューターが行うというものです。

ある土地を整地する場合、現在の地形データと完成予想図を照らし合わせ、最適な建設機械の台数と作業手順を割り出します。
工事が始まったらそれぞれの機械に、作業内容がネットを通じてリアルタイムで指示されるのです。

建設機械メーカー 役員 黒本和憲さん
「熟練のオペレーターでなくても、このデータの入った弊社の機械に乗れば、非常に効率的な形で正確に工事ができることになります。
最後は人間の動きが効率化される、社会が効率化される。
そこに向かっていってる。
我々の生活は本当に変わると思います。 」

世界では今、こうしたビジネス手法が猛烈な勢いで広がり、産業の形さえ変え始めています。
アメリカを代表する巨大メーカー、GE=ゼネラル・エレクトリック。
発電用タービンや航空エンジンなどモノづくりを得意としてきたGE。
しかし今、みずからをソフトウエアとデータ分析の会社だと名乗り始めています。

会長 ジェフリー・イメルトさん
「製造業とデータ分析が全く違う業界だと考えることは、もはや過去のことなのです。」



例えば、主力の航空機エンジンで利益を稼ぎ出すのは、製品を販売したあとのデータ分析です。
数百のセンサーで飛行ルートや燃費など膨大なデータを集め、最も効率のよい運航計画を割り出し、航空会社に有料でアドバイスします。
この台湾の航空会社は、GEからの提案に基づいて飛行ルートを見直ししたところ、燃費が大幅に向上しました。

航空会社 チーフ・パイロット 葉燈憲さん
「GEが分析してくれたおかげで最短ルートや燃費のよい飛び方が分かりました。
燃料を節約でき、会社全体の効率化にもつながりました。」


GEは膨大なデータを従来の2,000倍の速さで処理できるソフトウエアを開発。
これを安い価格でほかの産業にも提供し、広めていく戦略です。

GEソフトウェア バイスプレジデント ビル・ルーさん
「これからのメーカーはデータを収集、分析し、顧客に『最適な答え』を提供する義務があるのです。
そのことに気付いて正しい戦略を立てた企業こそが、5年後、偉大な勝者となっているでしょう。」

何が起きる? “モノのインターネット”革命

ゲスト森川博之さん(東京大学先端科学技術研究センター)

●ありとあらゆるものがネットにつながる どんな所から今、変化が起きようとしている?

ひと言で言うと、われわれの身の回りの結構地道なところから、じわじわと起こっていくというふうに思ってまして、一例を挙げると、例えばごみ箱、われわれの公園にあるようなごみ箱にセンサーを付けることで、ごみの量が分かると。
それによって回収するタイミングが分かっていくとかですね、それも1つですし、あとは水道管のモニタリング、水道管が漏水してないかどうかを検出してあげて、アラームを発出するとか。
あるいは橋ですね、橋の老朽化が問題になってますので、橋の安全性というものをデータを集めて把握するとか、あとは例えば水田での水の量を生産者の方に、センサーから得られたデータで教えてあげることによって、その生産管理を効率化していくとかですね、かなり地味な所から地道にじわじわと入っていくっていうふうに感じてます。

●ビジネスのもうかる柱、これからはデータをベースにしていく?

おっしゃるとおりで、恐らく「サービス化」っていうのがキーワードになってきます。
お客さんにものを売って、お客さんがどういうふうに使ってるのかっていうデータを集めることによって、新しい製品開発とかですね、あるいはお客さんに対して新しい価値を提供すると、そういう形で、今までは製品を売りっぱなしだったわけですけれども、これからはやっぱりお客さんのニーズも踏まえたうえでサービスとして製品を提供していく、そのような形に進んでいくと。
それは、今までは人がやってたわけですね。
この製品がいかなる形で使えるのかっていうのは人がやってたわけですけども、お客さんのデータが入ってくるようになり、それによって新しい、今まで分からなかったような新しい価値をお客さんに提案することができるのではないかと、そういうふうに時代が変わってきてるというふうに思ってます。
(モノを売るだけではもうからなくなってきている?)
おっしゃるとおりで、差別化ができない。
製品だけだと、モノだけだと、いろんな人たちが同じものを作れるようになってしまいますので、そこでお客さんのデータを集めて、お客さんとしっかりした関係を築いて、そこで囲い込むというんですかね、そういった形でお客さんに価値のあるサービスを提供していく、そういう流れに今現在、進みつつあるように思ってますので、サービス化というのが1つのキーワードだと思います。

●人間と機械との関係が変わる危機感もあるのでは?

おっしゃるとおりで、そこはいろいろな方がご指摘されている重要なポイントというふうに思います。
こういうIoT(Internet of Things=モノのインターネット)の世界が進むとですね、今まで人がやってたことの一部はやっぱりコンピューターとか、機械がやることになりますので、そこに関してはどうしても雇用は若干減少してしまうかなというふうには思っております。
ですが、そのかわりといってはなんですけれども、すべての分野にIoTが入ってきますので、そこで新しい職っていうのは生まれてくるんだろうなというふうに思っております。

始まったデータ囲い込み 世界覇権の行方は

先月(4月)、ドイツで開かれた世界最大級の産業見本市・ハノーバーメッセです。





会場で盛んアピールされていたのは「インダストリー4.0」ということば。
「第4の産業革命」という意味です。




ドイツでは、工場と部品メーカー、さらに消費者をネットでつなぎ、製造業の効率を飛躍的に高めようという技術革新に取り組んでいます。
大手電機メーカー・シーメンスが発表したのは、消費者一人一人のリクエストに応じて香水を作る生産システムです。
実験レベルでは、ネットでつながった消費者の好みをボトルに取り付けたICタグに記録。
それを機械が読み取り、好みどおりのものを1本単位で作る技術が確立しています。
ドイツは、こうしたインダストリー4.0の規格を標準化し、さまざまな産業に広げようとしています。

去年(2014年)決定されたドイツのIT戦略行動計画では、インダストリー4.0をさらに世界の統一規格にする目標が掲げられました。
ドイツはこれによってヨーロッパ全体の競争力を強化できると考えています。


メルケル首相
「生産工程をデジタル化するインダストリー4.0をEUで推進すれば、ヨーロッパはさらなる強さと安定を手に入れることができるでしょう。」



一方、IT先進国のアメリカ。
民間企業主導でモノのインターネットの標準化が進んでいます。
GEなど大手5社は企業連合を結成。
かつてパソコンの世界でウィンドウズが勝ち得たように、モノのインターネットの基盤となるシステムを世界標準にする活動を始めました。

先週この団体は、初めて日本でも本格的な推進会議を開催。
日本の大手メーカー5社が参加しました。
アメリカ主導で新たな産業のルールが作られようとする動きに、乗り遅れまいとする日本企業。



企業連合 幹部 リチャード・ソレイさん
“今、この団体へはおよそ170社が参加し、週に2社から5社の割合で増えています。
開発にご参加ください。
モノのインターネットが皆さんの企業経営にどのような影響を及ぼすか知ってください。”

互いに独自技術で競争してきた日本のメーカー。
統一規格に対応できないと、世界から取り残されるという危機感があります。

富士電機 技術開発担当者
「危機感は当然感じております。
国際標準やレギュレーション(規則)、これに従わないとだめというルール決めでも、海外でそういった動きをされて決まってしまう面もあるので、非常に大きなリスクだと思います。」

国も、このまま海外で標準化が進めば日本の国際競争力が大きく損なわれる事態になりかねないと警戒しています。

経済産業省 商務情報政策局 情報経済課長 佐野究一郎さん
「すでに欧米でも取り組みがかなりしれつな勢いでスタートしておりますので、日本としてもスピーディーに取り組んでいかなければ到底追いつけない。
日本産業全体の国際競争力が失われてくるという危機感。」

始まったデータ囲い込み 世界覇権の行方は

●GEは何を作ろうとしている?

ひと言で言うと、集まる場を作ろうとしていると。
あらゆるものがネットワークに接続されていくことになりますから、そこでやっぱり彼らの多くの仲間を集める場を作ったほうが、価値が高まるわけですね。
それって例えばウィンドウズみたいなものでございまして、やっぱり多くの人たちが使えるようなものを作ることによって、プラットホームとも言いますけれども、そういうところで競争力を高めていくっていうところを狙っているというふうに認識してます。
(ありとあらゆるものがつながるときに、そのプラットホームにいないとお互いにやり取りがしにくくなる?)
そうですね。
そこに入ってないと、仲間外れになってしまうっていうんですかね。
やっぱりそこのコアを占めたいということで、GEとかドイツとかが今、戦略的に動き始めているということかというふうに思います。

●日本の現状、立ち位置は?

日本はそれぞれの会社がものすごい技術を持っておりまして、GEとかドイツがやってるようなことは、実際似たようなことは、日本の1社で、1つの企業で、今現在実現できるようにはなってきてます。
(工場内どうしや、下請け企業との連携などもネットでつながっている?)
それは今現在はもう可能なんですけれども、アメリカとかドイツと比べて違うのは、そういった集まる場を日本企業は今のところ作っていないということで、そこが大きな違いにはなってます。
(個々の企業が強い技術を持っている?)
したがって、彼らとしてはやらなきゃいけないんだろうと思いつつも、オープン化するっていうことはリスクがありますから、そこのせめぎ合いのところで日本企業は、じゃあ、一体全体これからどっちの方向に進めばいいのかっていうのを考えていると、そういうフェーズかと思います。
様子見ですね。
実際のところ、アメリカもドイツもアドバルーンを上げてるっていう状況ですので、それは日本企業も、今現在は様子見をしているということだと思います。

●あらゆるものがネットにつながるこの時代 歴史的にどんな変化をもたらす?

以前で言うと、例えば蒸気機関が電気に変わった。
それは今から見るとすごい大きな変化だったわけですけれども、その当時の人から見ると、恐らく電気に変えることの重要性っていうのはそこまで認識していなかったというふうに思ってますので、それと同じような変化がこれから地道にじわじわと10年、20年、30年かけて起こっていくと。
したがって、われわれの身の回りにはいろんなデータがありますので、多くの方々がそれを考えていただきたいというのが、私の希望です。
(何をつなげるといいかということを考えてほしい?)
そういうことです。

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