クローズアップ現代

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No.36442015年4月21日(火)放送
“行方不明児20万人”の衝撃 ~中国 多発する誘拐~

“行方不明児20万人”の衝撃 ~中国 多発する誘拐~

突然消えた我が子 中国 多発する誘拐

2月、子どもを誘拐された親たちが街頭に立ちました。
いなくなった子どもたちを取り戻そうと、手がかりとなる情報の提供を呼びかけました。



子どもを誘拐された男性
「子どもが誘拐された日、妻は叫び、失神してしまいました。」




子どもを誘拐された親の1人、孫海洋さんです。

孫海洋さん
「子どもが誘拐されたのはこの辺りです。」


誘拐された現場は大都市・深センの繁華街。
3歳の息子が、目を離した隙に何者かにさらわれたのです。
そのときの様子が防犯カメラに映っていました。



白いシャツを着ているのが誘拐犯と見られる男。
男は道端に何かを置いたように見えます。




それにつられるように、黄色い服を着た孫さんの息子が近づきます。
このあと行方が分からなくなりました。



孫海洋さん
「都会に引っ越してきて、わずか1週間後のことでした。
こんなことになるなんて。」



子どもを自宅から連れ去られたケースもあります。
一人息子を誘拐された伍興虎さんです。




伍興虎さん
「犯人はこの窓を壊して忍び込みました。
これは犯人の足跡です。」



1歳の誕生日を迎えたばかりだった嘉誠ちゃん。
深夜、寝ている間に誘拐されました。
それから7年。
伍さん夫婦は今も息子の帰りを待ち続けています。


伍興虎さん
「いつ息子が帰って来てもいいように、毎年服を買っています。」



妻 娜娜さん
「心がとても辛いです。
よその家族の団らんを見ると、子どもがいない現実に胸が張り裂けそうです。」

暗躍する犯罪組織 中国 多発する誘拐

深刻化する子どもの誘拐。
その背後では、大規模な犯罪組織が暗躍しています。
これは警察が組織の拠点を摘発したときの映像です。
この組織は、数百人のメンバーが全国14の省にネットワークを張り巡らせ、100人近い子どもを誘拐していました。
誘拐はどのように実行されているのか。
警察の捜査に協力しているNGOの担当者に話を聞くことができました。

捜査に協力するNGO関係者
「彼らは役割を明確に分担し、連携して誘拐を繰り返しています。」



この人物によると、まず仲介役が子どもが欲しいという依頼を受けます。
次に、誘拐の実行役が依頼者の希望に沿った子どもを誘拐。
移送役が依頼者のもとに子どもを連れていき、金を受け取ります。

捜査に協力するNGO関係者
「男の子が100~120万円、女の子は60~80万円で売買されています。」

潜入ルポ 農村に消えた子ども

私たちは、誘拐された子どもが多く買われているという内陸部の農村を訪ねました。
都市部で進む開発から取り残された地域です。
平均年収は日本円で20万円足らず。
沿岸部の大都市のおよそ4分の1です。

「子どもを買うことをどう思いますか?」

男性
「子どもがいない家庭なら買いたいと思うでしょう。」

女性
「子どもがいないと、年をとってから大変だもの。」

金額は、男の子の場合平均年収の5年分。
それでも老後の暮らしを支える働き手が欲しいと、借金をしてまで買うといいます。

実際に誘拐された子どもを買ったという人が取材に応じました。
李玉蘭さん、58歳です。
これは20年前に買って息子として育ててきた男性の写真です。
娘はいたものの、男の子に恵まれなかった李さん。
農村では受け取れる年金や医療保険が僅かなため、生きるためには息子を買うしかなかったと主張します。

李玉蘭さん
「老後に面倒を見てくれる息子がどうしても必要でした。
他に頼れる人はいませんから。」



中国の法律では、誘拐された子どもを買っても、虐待したり逃げ出すのを妨げたりしなければ必ずしも罪に問われません。
糖尿病を患い医療費もかさむ李さんは、息子だけが頼りだといいます。

李さんに買われ、息子として育てられた牛同友さんです。
北京にある自動車の整備工場で働いています。
住んでいるのは安アパートの地下室。
生活費をぎりぎりに切り詰めて、李さんへの仕送りに回しています。

牛同友さん
「これまで育ててくれた養母を見捨てられません。
私を買ったことを責める気はありません。」



牛さんは今、誘拐されてから一度も会えていない実の母親を捜しています。
各地を訪ね歩き、最近ようやく実家を捜しあてました。

牛同友さん
「これは実の母親の写真です。」

母親は牛さんが誘拐されたショックから家を飛び出し、行方が分からなくなっていました。

牛同友さん
「本当の母に会いたい。
肉親から引き離される悲しみは、経験した者しか分かりません。
もう誘拐はやめてほしいです。」

“行方不明児20万人” 中国 多発する誘拐

ゲスト阿古智子さん(東京大学大学院准教授)

●なぜ中国ではこのような実態を放置している?

1つは、そういう組織、需要があるわけですから、ビジネスのチャンスとして展開すると。
それは警察が本来であれば取り締まらなければいけないわけなんですけど、時によっては警察がそういった犯罪組織と癒着をしてしまっていると。
中国は大きい国ですから、中央政府が取締りを加速しようとしても、各地方に行けば警察組織、司法、行政が一体化してしまうという、癒着してしまうという構図があります。

もう1つは、なぜ需要があるかということですが、社会保障が農村ではやはり遅れていると。
例えば年金ですけれども、全国で平均した額があるんですけれども、都市部のほうで日本円で3万円受け取れるわけですが、農村ですと、ひとつき1,500円でしかないと。
これぐらいの金額で生活しろと言われても、うまくいかないわけですね。
頼れるのは制度ではなく、伝統的な中国社会ではやはり信頼できる家族ということですから、お金を借金しても、老後のことを考えて子どもが欲しいという人たちがいるわけです。

●貧しい農村で子どもたちが買われている実態、背景にある中国の構造的な問題は?

私たちには想像できないことだと思うんですが、中国は戸籍制度というのがありまして、農村と都市で制度が異なります。
特に土地の所有の形態が違うんですけれども、農村では人民公社の時代から土地は分配されていると。
そこで集団で所有しているわけですけれども、都市部は土地を持っている、不動産を持っている、使用権を自由に売買できる、つまりそれが資産として自分で活用できるわけですけれども、農村では農業、農業用地を転用することは難しいですし、政府からすれば土地があるからそれで食べ物は確保できると、社会保障の代わりにもなるんではないかという議論もあるんですけれども、資産として活用できませんので、そのへんで大きな格差が開いてしまう。
そして先ほど申しましたように、社会保障もポータビリティーがありませんので、大都市部の恵まれた地域の水準はとても高いわけですね。
生活保護とか医療費の補填ですとか、いろんな面で農村地域のほうは遅れているというのが実態だと思います。

●農村における社会保障制度、なぜ都会では通用しない?

例えば上海で、一定の所得以下の人に生活保護を渡していましたけれども、農村の、私が調査している農村の地域の人たちの所得はそのレベルよりもずっと低いわけですね。
そうするとそこの人たちが全員上海に移住すれば全員が生活保護を受けることができると、そのような状況であれば、上海で戸籍をもし開放すれば貧しい地域の人たちが全員移住するという、極端にいえばそういうことが起こりうるわけですね。
ですので、戸籍によって生活保護ですとか、医療保険なんかも区切るしかないという状況だと思います。
(格差は制度によってある程度、固定化されてしまう?)
そうですね。

“子どもを救い出せ” 誘拐に立ち向かうNGO

あるNGOの活動を紹介したドキュメンタリー番組です。
NGOのメンバーが、子どもの誘拐事件についての情報を警察に通報しています。

「誘拐された子どもがいるとの情報が寄せられました。
この子は2008年に陝西省で誘拐された子どもの可能性があります。」

警察に働きかけて、誘拐犯の逮捕と子どもの救出につなげようとしています。

このNGOを立ち上げた鄧飛さんです。
中国各地で起きた子どもの誘拐事件についての情報を独自に集め、毎日インターネット上に公開。
活動に賛同する500万人のネットユーザーに、子どもの目撃情報などを提供するよう呼びかけています。


NGO代表 鄧飛さん
「我々はインターネットで子どもの捜し方を変えたのです。




NGOがこの活動を始めたのは、中国の警察が抱える構造的な弱点を補うためでした。
国土が広大な中国ですが、警察の管轄は地域ごとに細かく分かれています。
このため、ある地域で誘拐事件が起き子どもが別の地域に連れ去られた場合、速やかに連携して捜査を行うことが難しいのです。

NGOは誘拐された子どもの目撃情報があれば全国どこへでも駆けつけ、居場所を突き止めます。
その証拠を警察に示して捜査を促し、子どもの救出につなげようというのです。
このNGOの働きかけにより、4年間でおよそ100人の子どもが助け出されました。

“農村の貧困” 解消への模索

鄧さんは誘拐問題に取り組むうち、その背景にある農村の貧困を解消しなければならないと考えるようになりました。
今、中国政府は、農民を都市に移住させ農業以外の職に就かせることで収入を底上げする「都市化」を推し進めています。
しかし、国の経済成長が頭打ちとなる中、計画は難航が予想されています。
農村にとどまる農民をどう支えていくのかが大きな課題になっています。

鄧さんは今、農村の自立を促すために各地を回り、特産品の発掘に取り組んでいます。

NGO代表 鄧飛さん
「小さいですね、本当に実がつくのですか。」


これまでおよそ10の村で特産品を開発。
ネット販売に乗り出しました。




さらに今取り組んでいるのが、「無料ランチ」と名付けたプロジェクトです。




昼ごはんも満足に食べられない子どもが多くいる農村の小学校に、無料で給食を提供しています。
都市の住民や企業からの30億円に上る寄付に支えられています。

子ども
「おいしいです。」

NGO代表 鄧飛さん
「我々だけで農村の全ての問題を解決することはできません。
でも模索し努力していきます。
これは社会全体で取り組むべき問題なのです。」

“行方不明児20万人” 中国 多発する誘拐

●NGOの取り組み、どう見た?

希望だと思います、中国にとって。
農村と都市のつながりが、中国は希薄な部分があるんですね。
都市の人たちも、自分たちの国であっても農村でどのようなことが起こっているかということを知らない人さえいるわけです。
そういう中で、こういうソーシャルメディアを使ってNGOの人たちが社会的な関心を集めると、そして実際に行動する人たちも出てきたわけですから、それは中国にとって大きな希望だと思います。

●中国経済に勢いがあるうちに統一した制度を作るなど、対策が急がれるのでは?

そうですね。
中国は経済成長してお金を持っている国のように見えるんですけれども、全国で統一的に同じレベルで社会保障を普及させようとすると、ばく大なお金がかかるわけで、予算がかかるわけですね。
その中で経済が減速してきてますから、所得の分配という面でも政策を進めなければいけませんけれども、そうしますと成長が見込める分野への投資が減ってしまうわけですね。
ですので、分配と成長というものをどのようにバランスさせるかというところで、とても難しいかじ取りを迫られていると思います。
(都市部で暮らしている人がどこまで痛みを分かち合うかというところ?)
そうですね。
都市部の既得権益層の方々が、その分配を重視する政策に転換されれば、自分たちの身を切らなければいけない。
上海に住んでる人たちが今、所得を10分の1に減らせと言われると、どれだけの人が受け入れるかということになりますよね。
問題は大きいと思います。
(不満をコントロールできるか、かじ取りは難しい?)
そうですね。
かじ取りをするために、社会的な不満を抑えるためのコストというものも、どんどんかけようとするんですけれども、経済的に減速するとそこのコストも絞らなければならなくなるわけですね。
難しいと思います。

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