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No.36412015年4月15日(水)放送
食卓の魚高騰! 海の資源をどう守る

食卓の魚高騰! 海の資源をどう守る

魚が取れない 日本の海に何が?

札幌の中央卸売市場。
特に高騰しているのが、大衆魚のホッケです。




卸売業者
「これで今日1,890円(1キロあたり)。
一尾1,500円(去年の倍)くらい。
本当に高級魚です。」


今、全国のホッケ漁師が直面しているのが歴史的な不漁です。
17万トンあった漁獲量は10年で5万トンに減少。
収入も減っています。



漁師 小西正之さん
「皆無に近い。
取れなくなると死活問題ですね。」



ホッケだけではありません。
アジやサバなど、食卓になじみの深い魚の資源量も軒並み減少しています。
その原因として挙げられているのが、温暖化による海水温の変化や魚の取りすぎなどです。
欧米諸国と比べると、日本には漁獲量を制限する規制が少なく、早い者勝ちの漁獲競争に歯止めがかけられていません。

国が漁獲量の上限を定めている魚種は、僅か7種類。
しかもその上限は、実際の漁獲量を大きく上回っています。
成長前の魚の捕獲を禁止するサイズの規制もありません。

魚が取れない 苦悩する漁師たち

27年にわたって漁を行っている、西宮大和さんです。
水揚げが減る中で、去年、最新の魚群探知機を導入。
1センチ単位で魚の姿を捉えることができます。



漁師 西宮大和さん
「23センチ、小さいです。」




見つけたのは成長前の小さなサバの群れ。
養殖魚の餌などにしかなりませんが、網を入れました。
たとえ自分が取らなくても、ほかの船に取られてしまいます。
規制がない現状では、収入を得るためにやむをえないといいます。

漁師 西宮大和さん
「どこでやっても小さいサバしかいない。
他に取るものがなければ、まさか『水揚げゼロ』というわけにはいかない。」


さまざまな原因で魚が減ると、漁師は収入を確保するため成長前の小さな魚まで取り始めます。
それがさらなる資源の減少を招く負のスパイラルをもたらし、魚の減少に歯止めがかからなくなってしまうのです。


中でも危機的なのが、太平洋クロマグロです。
その資源量はこの20年で3分の1以下に減少。
去年、国際自然保護連合は絶滅危惧種に指定しました。



どうすればクロマグロを増やすことができるのか。
模索を始めた漁師がいます。
長崎県・壱岐の中村稔さんです。



マグロ漁師 中村稔さん
「魚群探知機の反応はなにも出ない。」

これまで主に夏と冬の6か月間、マグロの一本釣りで生計を立ててきましたが、水揚げは激減しています。

マグロ漁師 中村稔さん
「あり得ないぐらい厳しい。
このままじゃもう漁師が続かなくなる。」



今月(4月)初め、危機感を募らせた中村さんたちは、思い切ってマグロの産卵期に当たる夏場を2か月間禁漁にすることを話し合いました。

「2か月禁漁するといったら漁師にとっては死活問題。」

マグロ漁師 中村稔さん
「マグロ資源をいかに増やして、将来も釣っていくか。」

日本海を回遊するマグロは、6月から8月にかけて山陰から北陸の沖合で産卵し、その数を増やすとされています。
この時期の漁を控えて資源を回復させようという苦渋の選択に乗り出そうとしています。

マグロ漁師 中村稔さん
「ここまで壱岐の漁師は危機的状況と思っていることを国に知らせたかった。
持続可能な漁業にするための第一歩と思ってがんばらないと。」

しかし、マグロは回遊魚。
壱岐だけで禁漁を行っても効果には限界があります。
日本海のすべてのマグロを対象とした漁獲量の規制がないため、ほかの地域の漁業者に取られてしまうからです。


中でも水揚げが多いのが、産卵期のマグロを狙った「巻き網漁」。
腹には数百万にも及ぶ卵が入っています。
巻き網を使うと、産卵前のマグロの群れを効率的に捕らえることができるのです。
東京大学の木村伸吾さんは、資源への打撃が大きいと危惧しています。

東京大学 大気海洋研究所 木村伸吾教授
「産卵前の親魚を取るのは資源にとってとても悪い。
産卵する時期を避けて漁獲する、漁業資源の管理が望まれる。」


産卵期の漁の批判を受けた山陰旋網漁協は、漁獲量の上限を設定するなど自主的な規制の導入も図ってきました。
しかし、マグロ漁は夏場の地域の基幹産業でもあり、これ以上の規制は厳しいといいます。


山陰旋網漁業協同組合 相田仁組合長
「夏になるとマグロ以外の魚種は取れなくなってくるので、この辺の操業を支える上では(漁獲量を減らすのは)大変厳しい。
それを仕事にして日銭で生活している人もいっぱいいますから、そういう人のことも考えれば『減らしたくはない』というのが地域の思い。」

魚が取れない! 資源保護の取り組みは

ゲスト勝川俊雄さん(東京海洋大学准教授)

●漁業の危機的な現状について

かつては本当に豊かだったんですけれども、今の漁業者の話を聞いてみますと、昔はこんなに取れたのにとか、そういう話ばかりですね。
現実的には漁獲量も減り、またサイズが小さくなっていることから、値段も下がって経営が苦しい。
そうなると、自分の子どもに漁業の後を継がせられないんですよね。
結果として漁業の後継者がいなくなって、高齢化が進んでるといったような状況です。

●日本は1997年に7魚種に関して漁獲規制を行ったが、効果は?

残念ながら、効果はほとんどないです。
といいますのも、漁業経営が厳しいということを勘案して、頑張っても取りきれない高い漁獲枠が設定されているので、実際に漁獲にブレーキをかける効果がほとんどないんですね。
ですから魚が減ってきたときに、そのまま減り続けてしまうということに残念ながらなってしまってます。

●小さいサバも取らざるをえないという話もあったが、漁獲量の減少を止める方法は?

やはり現場では、魚が減ってるということ、そしてこんなに小さいのを取ったらもったいないなというそういう感覚は、皆あるんですね。
ただ、これ漁業者のモラルの問題ではなくて現在の制度の問題なんですけれども、取らざるをえない状況になってしまってるんです。
皆さんも自分が漁業者だったらどうするかっていうことを考えていただきたいんですけれども、乗組員の給料を払わなきゃいけない、生活がかかっているわけですね。
そして今、小さい魚しかいない。
2~3年までは大きくなって利益が出る。
でも2~3年先には、その魚は誰かが取って残ってないんです。
そういう状況だったら取らざるをえないんですよね。
そうやって考えてみると漁業者のモラルの問題ではなくて、取り残す制度がない、きちんとした規制がないということの、漁業者は被害者なんですよね。
そして今、現在は漁獲のテクノロジーというのがどんどん進化して、減った魚、小さい魚を効率的に取れるようになってしまっています。
ですから漁業の能力が上がる、それに応じてきちんと魚を残すための制度も進化させていかなければいけない。
車でいうと、エンジンはどんどん強化してきたけれどもブレーキは江戸時代から変わっていませんと、それが今の日本の漁業の現実なんですね。
ですから最新の漁獲テクノロジーを使う以上、それを使ってもきちんと魚が残るような規制もしていく必要があると思います。

●海外の船が取り過ぎているともいわれているが?

そうですね、特に中国、韓国に関していうと、日本海の西側のほうの漁場というのは、中国、韓国と資源を共有しているもの、たくさんあります。
そういったようなものに関しては、そういった国と共同で資源管理していかなければいけないものが多いですね。
ただ一方で、北海道とか太平洋側、瀬戸内海、そういった所は日本だけで資源を利用できますので、日本がその気になれば資源管理できるんですよね。
ただ、残念ながら日本海も瀬戸内海も太平洋も、資源は同じように悪いです。
ということはやはり、日本がきちんとできるところからやっていくことが重要だなと思います。

海の資源どう守る 始まった漁獲規制

大西洋クロマグロの漁場、地中海です。
資源量が減少し、絶滅危惧種に指定された大西洋クロマグロ。
2008年、国際管理機関・ICCAT(大西洋まぐろ類保存国際委員会)は、科学者の提言を受け規制を強化しました。

およそ6万トンだった漁獲量を実質8割削減。
重要なのは、船ごとに漁獲量を割り当てたことです。
さらに3歳未満の幼魚は原則漁獲禁止。
産卵場となる地中海では、巻き網の漁期を1年から1か月に縮めました。

漁には監視員が同行し、違反が見つかると罰金などのペナルティーが科されます。
厳しい規制で廃業に追い込まれる漁業者も相次ぎました。



しかし、徹底した管理のおかげで、大西洋クロマグロの資源量は6年で3倍以上に回復したのです。
今では価格が安定し、漁業者の収入も増えたといいます。



前ICCAT科学委員長 ジョス・サンティアゴさん
「漁業関係者は本当に身を切る思いをしてきました。
しかし今は、こうしたことが結局自分たちの利益になると気づき始めています。
漁獲規制をしないと乱獲を招きます。
バランスのとれた持続可能な漁業にしなくてはいけません。」

この成功を受けて、日本でも国が主導して太平洋クロマグロの規制に乗り出しました。
規制の対象はこちら。

「本マグロ(クロマグロ)の幼魚です。」

3歳未満の幼魚で、繁殖能力はまだありません。




日本で水揚げされるクロマグロの漁獲数のうち、およそ98%を3歳未満の幼魚が占めています。




これまで国による規制がなかった幼魚の漁獲量。
今年始まった規制では、以前の半分に制限されました。
しかし、大西洋クロマグロとは異なり、船ごとの上限規制などには踏み込めていません。


回遊魚ではないものの、船ごとの漁獲規制の試みを日本でも始めた所があります。
対象はアマエビ。
新潟県が決めた漁獲量を3隻に分配し、それを上限とします。


さらに、捕獲用の籠を新調。
繁殖能力のない小さなエビを逃がすため、網目を大きくしました。




すると、特に小さなサイズのエビはほとんど取れなくなりました。
その代わり、単価の高い大きいエビの割合が年々増加。
夏場には3割も増加しました。

「大きさは大きくなりました。
少し我慢すれば、ほとんど大きいサイズで取れる。」

漁獲量は減りましたが、単価の高いエビが増えたため、収入を維持することができました。

アマエビ漁師 中川定雄さん
「やってみて良かったと思ってます。
魚を増やすとか、今後漁業経営を豊かにするためには、間違いなくいい制度だと思います。」

資源をいかし 持続可能な漁業へ

●海を回復させるには待つことが大事?

そうですね。
ちょっと待てば、価値が上がる魚って非常に多いんですね。
例えば、サバの場合も小さいサイズで取ると養殖の餌にしかならないんですけど、あれはあと2年待てば大きな鮮魚サイズになるんですね。
そうすると高く売れるし、また消費者もおいしい国産のサバを食べられるようになるんですね。
ただ、アマエビの場合はきちんとした規制ができたおかげで、取らなかったものはあとで自分たちが取れる、だから漁業者は取り組めるんですけれども、サバの場合はそういう制度がないので、自分たちが取らなかったら誰か取っちゃう、これじゃできないんですよね。
ですから、ちゃんと取り残したものをあとで我慢した人たちが取れるような、そういう仕組みを早く導入してほしいですね。

●ヨーロッパの例、この厳しい取り組みはどうすればできる?

海外を見てみましても、最初に規制を入れる際には、どの国も非常に苦労してますね。
漁業者は、どこの国の漁業者もそうなんですけど、規制を最初に入れるときは大反対するんですね。
今でも生活が苦しいのに規制まで入ったらやっていけないと、そう思うのは自然なことだと思うんですよ。
ただ実際に漁獲規制が始まってみると、大体5年もしないうちに漁業がもうかるようになるので、漁業者が漁業管理を支持するようになるんですけど、やはり最初の政治的なハードルの高さというものはありますね。
例えばマグロの場合、ああいう小さいサイズで取ってしまってるんですけど、実はあれ、もうちょっと待つと非常に大きな価値を生むようになるんです。
3キロのマグロがビデオで出てきましたけれども、あれ、6年間海に泳がしておくと100キロになるんですね。
そしてまた1キロ当たりの単価も、1キロ500円だったのが5,000円になりますから、そういう形で体重が30倍、そしてまた単価も10倍になる。
ということは、6年待つだけで価値が大幅に増える。
ただ、6年間魚が残ってないから、小さいうちに取らなきゃいけないというふうになってしまってるんですね。
ですからきちんとした規制を入れて、6年間大きくしてから取れるような形にしてあげれば漁業ももうかるようになるし、消費者もより多くのマグロを今よりも安く食べられるようになるんですね。
ですから、一時的に消費者も漁業者も我慢をする。
そしてその一時的な我慢をできるような、そういうのを支援するような形で政治が支えると、そういったようなことが必要だと思います。
よくいわれるのが、厳しい漁獲規制をすると漁業者がかわいそうだということをよくいわれるんですけれども、実際は逆なんですね。
漁獲規制がないから魚が減って、漁業者がかわいそうな状況になってしまうんですね。
むしろ規制があることによって漁業は成長産業になるし、漁業者もハッピーになる。
これは、海外のきちんと漁獲規制をやっている国で起こっていることです。
日本も早くそういうふうになってほしいなと思います。
(その背中を押すには何が大事?)
やはり、ちゃんと残せば全体の利益が増えるというビジョン、これを共有することと、我慢した人たちがちゃんと報われるような、そういう制度だと思います。

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