クローズアップ現代

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No.36272015年3月5日(木)放送
子どもの心が折れていく ~震災4年 被災地で何が~

子どもの心が折れていく ~震災4年 被災地で何が~

長引く避難生活 子どもの心に異変

今も、およそ1万3,000人が仮設住宅で暮らす宮城県石巻市。
子どもたちに遊び場を提供しているNPOです。
長期にわたる避難生活に、子どもたちはストレスをため込んでいると言います。


NPO法人にじいろクレヨン 柴田滋紀代表
「ほとんどの時間を仮設住宅で過ごしているので、そうなるとしんどいですよね。
安定していない子どもは、たくさんいるなと感じています。」


NPOが気にかけている1人、小学3年生の達也君(仮名)です。
達也くんは、自宅を津波で流され、3年余りにわたって仮設住宅で暮らしてきました。
もともと、誰とでもすぐに仲よくなる穏やかな性格だったという達也君。

変化が見え始めたのは、去年(2014年)のことでした。
自分の手をかみ傷つけるようになったのです。




怒りっぽくなり、鉛筆もぼろぼろになるまでかんでしまいます。

母親
「体育でもいいしさ。」

達也君(仮名)
「もう頭狂ってきたからもう無理、それ。
もうやだ。
寝る、おやすみ。」

母親
「『イライラするから』と言う、本人は。
『イライラしなければ、かまない』と言うけど。
そのイライラをどこに発散していいかわからないから、そうなるのかなと思って。」

母親は、避難生活が長引く中で、達也君が孤独感を募らせていると感じています。
達也君は、仮設住宅から車で30分ほどの学校に通っています。
震災前にもともと住んでいた地区の学校です。
すぐに地元に戻れると思っていたからです。
しかし、災害公営住宅の建設が思うように進まず、戻れる見通しは立っていません。

達也君は、学校から帰ってくると一緒に遊ぶ友達はほとんどいません。
仮設住宅にはさまざまな地域の住民が入居しているため、子どもたちが通う小学校もばらばらです。
仲のよい友達もいましたが、家が再建されて引っ越していきました。

母親
「地元の子は遊べるのに、自分は遊べないのは負担なのかな。
ちょっとかわいそうかな。」

「友達が近くにいたら何して遊ぶ?」

達也君(仮名)
「わからない、考えたことない。」

“心配かけたくない” 親を気遣う子どもたち

親への気遣いから我慢を続けて、ストレスをため込む子どももいます。
小学4年生の徹君(仮名)と母親の美香さん(仮名)です。
原発事故の影響で福島県双葉町から避難し、3年前からいわき市の仮設住宅に暮らしています。
震災前に離婚していた美香さん。
郵便局で働きながら徹君を育ててきました。
震災で仕事と住まいを一度に失いました。
預金を取り崩しながらの生活。
仕事を探していますが見つからず、焦りと不安が募ります。

美香さん(仮名)
「これは2箱目ですよ。
胃が痛くなったりとか考えすぎて、ちょっと悩んで。
不安になったときは無性に涙が出てくるので、ひとりで寝る前に泣いたり。」

母親の悩みを、徹君は敏感に感じ取っています。

「お母さんのこと考えているんだ、いろいろ。」

徹君(仮名)
「生活、お金が少しなくなってきてるから結構。」

「そういうの心配してるんだ。」

徹君(仮名)
「うん。」

最近では、学校であった嫌な出来事も母親には話さないと言います。

徹君(仮名)
「迷惑かけたくないから。
(お母さんを)疲れさせたくないから。」

「お母さん疲れているの?」

徹君(仮名)
「最近、ちょっと疲れている。」

悩みを吐き出せずにいる徹君。
夜中に目が覚めて眠れなくなることもあり、生活が不規則になりました。
この半年余りで体重は10キロ増えました。

子ども
「お願いします。」

子どもたち
「お願いします!」

徹君は週に2回、NPOが開いている学習教室に通っています。
しかし、睡眠不足から、勉強にも集中できなくなっています。

徹君(仮名)
「疲れている。」

「なんでそんなに疲れているの?」

徹君(仮名)
「イライラするから。」

“心が折れていく” 被災地の子どもに何が

ゲスト本間博彰さん(宮城県子ども総合センター所長)

●子どもたちの心の状況をどのように見るか?

時間とともに改善していく子どもがいる一方で、時間とともに悪化していく、複雑になっていく、そういう子どもたちが目に付くようになったのが、この4年目だったですね。



●改善する理由と深刻化する理由 両者を分けているものは?

子ども自身の問題は抜きにして、子どもの環境から見ると、例えばご家族が、生活が大変苦しかったり、余裕がなくなったり、あるいは中には、家族が壊れていく、そういう子どもを育てていく機能が低下していく、そういうところの子どもさんというのは、非常にリスクが高くなっていきます。
その一方で、家族が頑張っている、家族がいろんな力を使って、あるいは、うまく周りの援助を得ていく家族のところの子どもは、着実に改善していく。
そういうことが言えると思います。

●震災で受けた心の傷が癒えていないのか、癒えた後に親の生活環境が悪くなり深刻な状況になっているのか?

そこはなかなか難しいんですが、今現在、いろんな問題を出す子どもたちは、恐らくですよ、2011年3月、あの震災で、たぶん傷ついてるんですよね。
その傷を周りに気付かれないままに、時間がたち、そしてまたそこに環境の問題、親の問題とか、周囲の荒れた環境とか、それが付け加わってきて、そして今の状態が作られている、そういうふうに考えられます。

●心の不安から自分を傷つけるような行動に出るのはなぜか?

たぶん自傷、傷つけたり、いろんなことがあるんですね、かんだり、あるいは髪の毛を抜いたりする子どもたちがいるんです。
リストカットをする子どもたちもいます。
その子どもたちは、心の中、もやもやなんですね。
自分が本当に苦しくて苦しくて、そのときに傷つけると、瞬間的に楽になるんですね。
かい離という、意識が分断される状態になって、少し楽になるんですね。
そのために傷つける、傷つけ続けるということが起こります。

●どんなふうに接して子どもの心を和らげているのか?

実はですね、子どものそばにいる人たち、一番大事なのは親なんですね。
その次に学校の先生、保育士さん。
その先生方が、子どもと穏やかに接して、なおかつ子どものいろんなサインに、うまく応答してくれる。
そうすると、子どもは安心感というものを持ちます。
ですから、われわれもまた子どもと接するときには、できるだけ子どもが安心、リラックスして、安心できるような、そういう関係作りに、かなり力を入れます。

●具体的にどんな言葉をかけるのか?

例えば、子どもは人と相談する、自分の心のことを語ることって経験ないですよね。
人に相談することもないですね。
ですから、子どもは常に緊張してきますので、子どもが安心するように、答えられやすい、答えるのが楽な質問をします。
“今日は朝、何時に起きてここに来たの?
ここまで来るのに電車で来たの?
お母さんと車で来たの?
そして、お母さんの運転はどうだった?
君は、前の席に乗ってたの?
後ろの席に乗ってたの?”
そういうことで聞いていきますと、子どもは答えられますよね。
そうすると答えるってことができるようになってきますね。
それからいろいろ、子どもたちから子どもの心の中のことを、少しずつ聞いていきますよね。

●どれぐらい時間がかかるのか?

私が見ている重い子が1人いるんですね、お父さんを亡くした子。
その子の場合は、そうですね、今現在、4年近くつきあっているんですが、彼と本当に、そのお父さんの亡くなったことについて触れられたのは、2年ぐらいしてから、そのお父さんの亡くなったことについて触れることができました。
それは彼のほうからしゃべってきました。
例えば、自分のお父さんの好きだったおかずはこれだったとか。
そんなことからお父さんのことを語るようになって、そうすると、あっ、しめたもんだ。
ここから彼の心のケアができるなと思ったんですね。

家庭を支えて 子どもを救う

仙台市に住む母親と2人の息子の家族です。
母親は、職場が被災して失業。
その後、職を得ましたが、収入は以前の半分ほどに減りました。
体調を崩しがちになった母親に代わり、兄弟2人で家事をすることが増えました。
家族全員余裕を失っていきました。

息子
「お母さんが急に具合悪くなって、病院に行く数も増えて、ここでいつも横で寝ている姿を見て、なんでこんな不幸なんだろうなとか、いろんなことを思って。」

その厳しい状況に変化が訪れます。
兄が通っていたNPOの学習教室がきっかけでした。
事情を知ったスタッフが、生活を支援する別のNPOを紹介してくれたのです。


今、家族のもとにはNPOから毎月8,000円分ほどの食料が届けられています。
支援を受けるようになって、精神的にも支えられているという安心感が生まれたと言います。
家族で食卓を囲み、ゆっくり過ごす時間も増えました。

母親
「仕事がまだまだという家庭では、正直、続けていただければありがたいし、うちだけではないと思うんです。」

食料支援を行っているNPOです。
NPOどうしの連携で支援につながったケースは、これまでに100世帯余り。
子どもたちを支えていくには、さまざまな機関の連携が欠かせないと言います。

NPO法人 ふうどばんく東北AGAIN 髙橋陽佑事務局長
「団体どうしがつながることによって、食料だけじゃない、学習だけじゃない、それ以外の支援にもつながる可能性が増えてくると思う。
複数の支援や行政のサービスとつながりながら、各家庭に関わるようにしている。」

学校での子どもの様子から、異変にいち早く気付き、支援につなげる仕組み作りも進められています。
宮城県は、教育や福祉の知識を持ったスクールソーシャルワーカーを増やしました。
復興予算を活用し、震災前の3倍に増員しています。
スクールソーシャルワーカーは、依頼を受けた学校を訪問し、子どもたちの異変を聞き取ります。

教師
「今の日常生活が成り立ってない。
やりたくないような場に家庭がなっている。」

学校からの報告を受けたスクールソーシャルワーカーは、保護者と面談。
家庭が抱えている問題を把握し、病院や児童相談所など地域の専門機関と連携して必要な支援を行います。


宮城県スクールソーシャルワーカー運営協議会 阿部正孝さん
「ご両親が揺れているところにこそ、子どもたちの揺れが常につきまとう。
生活をもう一度回復させる。
それが子どもたちの元気回復の大きな要素になると思います。」

去年、不登校になった気仙沼市の小学4年生の女の子です。

スクールソーシャルワーカー
「私がやればやる?
一緒にやろうか。
じゃあ、三角折りにしましょう。」

スクールソーシャルワーカーの勧めで、不登校の子どもを支援する教室に通っています。

スクールソーシャルワーカー
「勉強してたの?
じゃあ、運動は?」

小学4年生の女の子
「(うなずく)」

スクールソーシャルワーカー
「やってた。」

女の子の両親は、共に震災で仕事を失いました。
母親は、将来への不安から娘を叱ることが増えたと言います。

スクールソーシャルワーカー
「こんにちは。
久しぶりです。」

スクールソーシャルワーカー
「お邪魔します。」

女の子の母親です。
スクールソーシャルワーカーとの話し合いの中で、自分を客観的に見ることができるようになったと言います。

母親
「私が一番パニックになっていた。
自分がいっぱいいっぱいだから、娘が不安なとき気付いてあげられなかった。
それが一番の原因だと思う。」

母親に、気持ちを打ち明けるようになった女の子。
学校にも少しずつ通い始めました。

母親
「『これが出来たんだよ』とか、『今日、これが1つ出来た』とか。
娘がそう話します。」

スクールソーシャルワーカー
「お母さんに報告してくれるんですね。」

スクールソーシャルワーカー
「それでお母さんが褒めたりすることで、お子さん、すごくうれしいと思います。」

母親
「1人じゃ考えがまとまらないから、アドバイスをくれる人がほしい。
一緒に助け合ってくれる人がほしい。」

スクールソーシャルワーカー
「気をつけてね。
かぜひかないでね。
お母さんも。」

母親
「はい。」

被災地でニーズが高まるスクールソーシャルワーカー。
しかし、震災発生から時間がたつ中で、復興予算に支えられているこの取り組みがいつまで続けられるのか見通しは立っていません。

被災地の子ども 支えていくために

●子どもの心の状況を改善していくうえで何が大事な対応だと思うか?

親のアプローチというのはとても大事なことなんですが、親も含めて学校の先生も、大人がまず精神的に動揺しない、大人がまず揺れ動かないということが、子どもにとって、最も大事なことだと思います。


●子どもの心を安心した状況に変えていくには、何がカギになるか?

私は学校がカギだと思う。
学校が、被災地はどこの被災地も社会的な資源が乏しいところです。
学校が最も社会的な資源があって、学校が心のケアの最前線であり、基地だと思います。
その学校にできるだけの応援をするということです。
(応援とは具体的に?)
例えば学校はかなり疲弊しています。
先生が少なくて、ですから、例えば養護教員が複数いるとか、あるいは、もうちょっと外からいろんなスクールカウンセラーもスクールソーシャルワーカーも応援をする。
そして、できれば学校を応援するような、きちんとしたセンターみたいなものが後ろにあると、学校はもっと力を発揮できると思います。

●学校の先生が本間さんに相談することとは?

いろんな相談が来るんですが、先生方の中で勉強したいことの中の1つに、子どもたちに自尊心とか有用感をどういうふうに育てたらいいんだろうかという、そういう勉強の依頼が来ます。

●子どもに向き合い不安を解きほぐすために、どんなアドバイスをするか?

私は、先生方が少しでも、落ち着いた気持ちで、子どもの話をよく聞いてほしいと。
子どもっていうのは、自分の話を聞いてもらったときにすごく安定します。
小さな子どもであれば、不安なときにだっこしてもらう、触れてもらうということが子どもにとって安心します。
大きな子どもだと、やっぱり聞いてもらう、最後まで聞いてもらうというところが子どもに安心感、そして有用感につながってきます。

●誰か自分を気にかけてくれる人がいると安心?

気にかけてくれる大人がそばにいると、そのことだけで子どもは安心して、自分の力を発揮していきます。
それがこれからやらなければならないことだと思っています。

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