クローズアップ現代

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No.36212015年2月24日(火)放送
どう守る 妊娠中の働く女性

どう守る 妊娠中の働く女性

“安心して産めない” 働く女性の悲鳴

「神奈川労働局雇用均等室です。」

今、各地の労働局に、妊娠中の働く女性からの相談が相次いでいます。
この日も、勤務配慮を受けられず体調を崩したという女性が訪れました。

「休憩もろくに取れない?」

女性
「そうですね。」

「9時間、10時間?」

女性
「はい、やっぱり結構つらいです。
休んじゃいけないみたいな。
病気じゃないんだからと言われるので。」

昨年度、全国の労働局には妊娠中に十分な勤務配慮を受けられなかったという相談がおよそ1,300件寄せられました。
前の年より2割近く増えています。

神奈川労働局 雇用均等室 横山ちひろさん
「皆さん我慢されて、しょうがないのかなと思われて、無理したり退職したり。
氷山の一角。」

“安心して産めない” 届かない非正規雇用の声

全国の労働局への相談で目立つのが、非正規雇用の女性からの訴えです。
妊娠中に体調不良を伝えたところ、退職を勧められるなどして無理をしてしまうケースが多いといいます。


非正規の契約社員として外回りの営業をしていた飯田智美さん(仮名)です。
妊娠4か月ごろ、おなかに違和感を覚えるようになりました。
しかし、毎月のノルマを達成できないと契約を打ち切られるため、無理を押して働き続けたといいます。

飯田智美さん(仮名)
「毎日のように(ノルマの紙を)見て、契約が取れてなくて、常にプレッシャーとストレスと。」

妊娠6か月のとき、このままでは赤ちゃんが未熟な状態で出てきてしまうおそれがあると診断されました。
担当した医師は婦人科系の病気も経験しているため、早産の危険が高いと注意しました。

診察した医師 櫻庭志乃さん
「お休みしないと(早産の危険が)どんどん進んでいく可能性がある、とにかく休んでくださいと。」



飯田さんは診断結果を職場に伝えましたが、ノルマは減らされず、勤務時間も短縮されなかったといいます。

法律では、妊娠中の女性は医師の指導に基づいて勤務時間の変更や勤務の軽減を受けられることが定められています。
これはすべての女性労働者が対象となり、非正規雇用の女性も含まれます。
しかし、飯田さんも職場の担当者も、そのことを知りませんでした。


おなかの痛みに耐えながら働き続けた飯田さん。
早産の危険がさらに高まり、自宅での安静を医師に指示されました。
結局、出産までの3か月間をほとんどベッドの上で過ごさざるをえませんでした。


飯田智美さん(仮名)
「今ここで生まれてしまったら、(赤ちゃんが)生きられるかどうかわからない。
すごく怖かった。
もっと早く(法律を)知っていれば、おかしいじゃないですかと言えた。」

番組では連合のアンケートのデータを、日本医科大学の中井章人教授に依頼し、詳細に分析してもらいました。
飯田さんのように、早産の危険があると診断されながら勤務配慮を受けられなかったケースはどのぐらいあるのか。



「早産の危険がある」と診断された人は95人。
そのうち26人が「十分に勤務配慮を受けられなかった」と回答。
3割近くに上ることが分かりました。

日本医科大学(産婦人科) 中井章人教授
「安静を取れない、従来どおりの仕事を続けるというのは“早産してください”と言っているようなものですから。
これはもう憤りを感じます。」

“安心して産めない” 正社員のプレッシャー

連合のアンケートからは、雇用が安定しているとされる正社員の妊娠中の働き方についても新たな課題が見えてきました。
正社員の女性の4人に1人が妊娠中も残業をしていて、中には1日に3時間以上残業していた人もいました。



社員数およそ100人の会社に正社員として勤めていた、盛田明子さん(仮名)です。
妊娠4か月で流産しました。
盛田さんは当時、長年希望してきた花形部署に女性第1号として抜てきされ、プロジェクトを任されていました。
妊娠したのは30代半ば。
上司たちからは、“子どもを産んで深夜残業ができなくなるなら、この部署から離れてもらうしかない”という声も上がりました。
盛田さんは、上司に認めてもらうためには今のうちに頑張るしかないと、毎日遅くまで仕事をしました。

盛田明子さん(仮名)
「木曜日が23時30分に帰って、金曜日は終電ギリギリの0時まで仕事をしていました。
クオリティーが悪いものも出せない。
やっぱり実績を、産休に入るまでは作っておきたいという気持ちもあった。」

夫も明子さんを心配していたといいます。


「会社の中で活躍できていないと(ダメだと)ずっと気にしていて、安定期に入ったから、遅くなっても大丈夫かなと言って。」



深夜残業が1週間ほど続いたある日、盛田さんは夜中に突然破水。
翌日、流産しました。
妊娠14週のことでした。

盛田明子さん(仮名)
「まさか、そんなに突然流産が発生するなんて思っていなかったですね。
職場の方も男性だらけなので、もちろんみんな分からなかった。」

盛田さんのように、妊娠12週以降の流産については母親の働き方を含む生活環境などが原因といわれています。
今回のアンケートでは、流産した109人のうち12%が12週以降に流産していました。



日本医科大学(産婦人科) 中井章人教授
「きつい仕事をする人なども、当然ここに入る可能性がある。
仕事の仕方や状態で、流産しなくて済んだ可能性は十分あると思う。」


盛田さんは今も、当時の働き方を後悔しています。

盛田明子さん(仮名)
「ごめんね、もっと赤ちゃんを気遣って仕事を減らすなりしておけばよかった。」

どう守る 妊娠中の働く女性

ゲスト中林正雄さん(愛育病院医師)

●連合が行った妊娠時に働いていた女性の大規模調査 データどう捉えた?

まずひと言で言いますと、まだこういうことがあるのは大変残念だなぁということですね。
働く女性に対する法律や、いろいろな規約はずいぶん整備されたんですけれども、実際にはこういうことがまだ起きているということで、大変残念な感じはいたしますね。
(数字が一般と比べて高いのかどうか、判断がつかないが?)

そうですね、一つ流産率に関しては、今回の調査で13%ぐらい出ておりましたので、一般的には10~15%といわれているので、これはまあまあ普通だろうと思いますが、その中でも、今回の調査では12週以降の流産率が10%以上あるということで、これは妊娠、ごく初期の流産は多くは胎児の染色体異常で起きてくるといわれていますが、12週以降になりますと、その他の環境とか働き方とか、そういうものが関係してくると思われるので、これはもう少し、よく医学的に検討していかなければいけない問題ではないかというふうに感じました。

●妊娠中の女性に対してリスクの高い働き方を強いる職場環境、なぜこうなる?

一つは、働く女性が増えてきて、また昔は男性ばかりが行っていた仕事にも女性が進出してきたということが、基本にはあるんでしょうけれども、やはり妊娠する年齢が高くなったことでリスクが増えてきたということも考えられますね。

そして、私たちの今まで行った研究で、どういうものがリスクになるかといいますと、これは立ち仕事の長い方、それから長時間労働する方ですね、それからストレスの多い仕事、上司が怖いなんていうこともあるかもしれませんね。
それから自分の意思では仕事が止められなくて休めない仕事、これはもうストレスになると思うんです。
これは、妊娠というのは、言ってみれば5キロから10キロぐらいの荷物を持って、長い坂道を歩かなければいけないということですから、一部の人は途中で疲れてしまって、止まらざるをえないということが起きるわけですね。
(一部の方々というのはどれぐらいの割合?)
これがですね、10人中8人はおおむね正常にお産までいきます。
ところが2割ぐらいの方は、流産、早産、妊娠高血圧症候群というような病気で、赤ちゃんが小さく生まれて、亡くしたり、また母児共に危険になったりということが起こりえるわけですね。

●適正な働き方とは?

これは一概に言うことはできないんですけれども、例えば個人個人に体力に差があるのと同じように、ある人にとっては十分耐えられることだけれども、ある2割ぐらいの人にとっては耐えられないというのが妊娠だとしますと、妊娠中には、ふだんの仕事の大体7、8割ぐらいの仕事に制限していただくと、あまり大きな異常は出てこないだろうと。
出てきたとしても、定期的な妊婦健診等を受けていれば、そういうことが察知できて予防ができるのではないかと思うわけですね。
(予防できる?)
そうですね。
現在、早産に関しては、子宮収縮を抑制する薬とか、安静とかいうことで、抑えることができますし、妊娠高血圧症候群に関しては、塩分を制限したり、安静にしたり、血圧を下げたりというようなことで、かなりの治療ができてくるわけですね。
予防効果が非常に高いということが、妊娠中の状態だということができると思いますね。

妊娠中の女性を守れ 模索する企業

全国に支店を持つ大手運送会社です。
この会社では女性配達員が妊娠した場合、速やかに業務を変更しています。



この女性は妊娠6か月。
もともとは配達員をしていましたが、妊娠を報告した直後に、伝票整理など内勤の仕事に変わりました。



野口咲絵さん(妊娠6か月)
「(荷物が)重いのもありますし、体に負担かけるのも赤ちゃんに良くないので、本当(妊娠)初期に言って対応してもらって良かったなと思います。」



この会社は7年間で女性社員が倍増。
配達員のうち、11%を女性が占めるようになりました。
妊娠中の女性配達員が仕事を辞めるケースが相次ぎ、対応を迫られたのです。


労務担当(当時) 兵藤美穂さん
「運転職などは特に、荷物を持って上り下りしたり、走ったりするようなこともありますので、切迫早産、(切迫)流産と診断されたケースというのは耳にするようになりました。」


こうした状況を改善しようと、4年前から対策に乗り出しました。
女性配達員が妊娠した場合、直ちに負担の少ない業務に変更します。
欠員は近隣の支店などと連携して補う仕組みです。
確実に実行するため、女性社員が妊娠したことを上司がきちんと把握するというルールを作りました。

「みなさんは一番現場に近い役職です。
妊娠したことを言い出しやすい環境を整えておくことが、一番大事なんですよ。」

制度が導入された直後は、現場で人手が足りなくなるのではないかと懸念する声も上がりました。
しかし、以前は妊娠を機に辞める女性がほとんどでしたが、辞めずに出産後戻ってくる女性が増え、以前の経験が生かされ、業務がスムーズに進むようになりました。

人事部 部長 山本竜彦さん
「会社を辞められることは会社にとっても損失ですし、(出産後)戻ってきたら即戦力として働いてもらえることは、会社にとって大きなメリットである。」



20年以上かけて妊娠中の女性が働きやすい環境を整えてきた企業もあります。
神戸に本社がある大手家庭用品メーカー。
総合職の4割が女性です。
以前は、妊娠中に無理をして体調を崩す人がいました。

小川琴音さん(妊娠8か月)
「おはようございます。」

上司
“おはようございます。”

そこで始めたのが、妊娠した女性社員が無理をしていないか上司が頻繁に確認する仕組みです。
東京支社で働く小川琴音さん、現在妊娠8か月です。

上司
“特に大事な時期なので調整して進めないと、健康じゃなかったらいい仕事もできないと思うので。”

社員は妊娠してからも基本的に同じ業務を担当しますが、体調に合わせて仕事を調整することが認められています。

小川さんのケースです。
妊娠する前は、本社のある神戸に出張する場合、始発で東京を出て朝から仕事をしていました。
しかし妊娠後は、体調を見極めるため午前中は東京で仕事をし、本社での仕事を午後に設定。
1泊して帰るようにしました。

体調が悪ければ、出張をキャンセルして在宅勤務に切り替えることもできます。
それすら難しいときは、情報を常に共有しているため、上司や同僚が仕事を代わることができる仕組みです。



小川琴音さん(妊娠8か月)
「非常に安心ですし、(体調に合わせて)時間のやりくりがしやすいので助かっています。」



さらに、妊娠中に働き方を調整しても、人事評価に影響させないよう徹底しています。
その結果、働き過ぎで妊娠中に体調を崩す人は今ではほとんどいなくなったといいます。

人事統括本部 労務担当 榎本千尋さん
「本人が『大丈夫』と言っているから信じてしまって、やらせた結果、体調を崩してしまったことがやっぱりあったんです。
そうではなくて、本当にちゃんと声を上げて、(職場で)一番最初の人は勇気がいるとは思うんですけれど、必ずそれは根づく。」

どう守る 妊娠中の働く女性

●データでは3人に1人が職場への妊娠の報告にためらいがあったという結果だったが?

本来は、職場と女性職員の間にコミュニケーションができていれば大変いいことなんですけれども、それは今の状況では、なかなか全部の企業が実施することができないと。




もし体調を崩してしまったら、私どもはその職場と個人をつなぐために、「母性健康管理指導事項連絡カード」というものを作っておりまして、医師が症状に丸をつけますと、その人がどういう働き方をしたらいいかということが分かるようにしてるんですね。
それを使っていただくと、職場に勤務配慮を求めるためのコミュニケーションツールとしてはいいのではないかと思います。
(それは母子手帳の最後のほうに?)
母子手帳の裏に縮小版が載ってますし、また病院にも置いてありますので、言っていただければすぐ出せると思います。

(企業はそこに書いてある医師のアドバイス、指導、診断を受け止める義務がある?)
これは守らないと、法律違反になってきます。

●妊娠はどの時点で企業に伝えるべき?

私どもの考えでは、妊娠が分かって、6週ぐらいで分かると思うんですけど、それ以降、7、8週で赤ちゃんの心拍が見えてから伝えていただくのが、ちょうどいいのかなというふうには考えています。

●コミュニケーションがとれていれば、万一流産などの結果になったとしても受け止め方は違う?

そうですね。
これまではどちらかというと生まれたあとの育児とか、そういうことに注目があったわけですけれども、これからは妊娠・出産時に、かなりの人が仕事を辞められるということを考えると、そのへんをもっと研究し、またその方々に、たとえ流産したとしても十分に勤務配慮があったうえでの結果であるということで、次の妊娠に希望を持って働き続けられるというふうにすることが、女性にとっても職場にとっても必要なのではないかというふうに思いますが。

●ここまで妊娠期への配慮が欠けていたことに、初めて気付かされたが?

やはり仕事と妊娠というのは大変重要なテーマですので、これからもしっかり研究していきたいというふうに思います。

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