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No.36202015年2月23日(月)放送
逆襲なるか 日本アニメ ~海外輸出・新戦略の行方~

逆襲なるか 日本アニメ ~海外輸出・新戦略の行方~

人気作品を海外へ 日本アニメの新戦略

都内にある国内最大手のアニメ制作会社。
新作アニメ映画の公開に向けて制作を進めています。
この会社の看板作品、「ドラゴンボール」です。
主人公が仲間と共に敵と戦い、成長していく物語。
29年前から、世界70か国以上でテレビ放送などがされてきました。
今回の映画は、最初から海外市場を意識し、日本に続けて世界30か国以上での公開を計画しています。
すべての国の子どもたちに受け入れてもらえるように、数あるヒット作品の中からこの人気作品を選びました。

山室直儀監督
「見ていて多分、スカッとするんだと思うんだけど。
強いものへの憧れって世界共通じゃないか。」



しかし、世界に売るためには新たな配慮が必要だといいます。
特に子ども向けアニメの場合、日本とは比較にならないほど表現に対する規制があるからです。
そのため今回は、日本で多く見られる流血の場面はできるだけ避けるようにしています。
そうした世界に広く受け入れられるようにする「標準化」を進めることで、この会社は各国のファンを獲得しようとしています。

東映アニメーション 木下浩之常務取締役
「喜んでくれる作品を作り続ける意味でも、やはりビジネスとしてうまく成立する作品というのを作っていかなければいけない。
(海外から)日本国内に還流するお金を大きくすることができるのであれば、クリエーターにも戻すことができる、原作者にも戻すことができる。」

海外人気は高いといわれてきた日本アニメですが、ここ10年近く輸出は伸び悩んできました。
日本のアニメ制作会社のアドバイザーを務めるジョン・イーサムさんは、日本がかつての成功に安住したことが、その後の低迷を引き起こした要因だと指摘しています。
イーサムさんによると、2000年代前半、「ポケットモンスター」がアメリカで大ヒットしたことで大量の作品が日本から輸出されたといいます。

日本アニメの輸出に詳しい ジョン・イーサムさん
「(ポケモンと)同じことをみんなが狙っていて、日本からたくさんの作品を買い始めた。
1話あたり10万ドル(約1,000万円)という話も当時はあった。
日本のアニメをどんどん(アメリカで)放送できました。」

その後、ブームは去ります。
黙っていても売れる状況はなくなり、アニメ作品の輸出は減少。
しかし日本企業は、売るための戦略やノウハウを蓄積できませんでした。

日本アニメの輸出に詳しい ジョン・イーサムさん
「アニメというものはキッズ向けのもの、アメリカ的にはそうだった。
残念ながら今、キッズ向けのヒットしている日本のアニメが減っている。
やはり(海外の)ターゲットをどうするかが課題だと思う。」

日本の輸出が低迷している間に標準化の海外戦略を徹底し、輸出を伸ばした国があります。
韓国です。
この作品はロボットに変身する車が主人公の大ヒットアニメ。
世界80か国以上で放送されています。

制作を手がけた会社です。
この会社は、企画段階から海外に展開することを想定しどこの国でも受け入れられやすい作品を作ることに力を傾けています。
その1つが、試写会です。
各国のバイヤーにパイロット版のフィルムを見てもらい、それぞれの国の実情に合わない部分を訂正したり削除します。
どの国に輸出しても耐えられる作品を作るために、時にはストーリー自体を変えることもあるといいます。

オム・ジュンヨン監督
「私たちの作品をできるだけ多くの国の子どもに見てもらいたいので、それぞれの国にある制約を守ることは当たり前です。
壁だとは思っていません。」


日本のお家芸ともいえるアニメを、どうしたらもっと見てもらえるのか。
あえてどの国にでも受け入れられる標準化を目指すのではなく、1つの国にとことん寄り添って売り上げを伸ばそうとする動きも現れています。

このアニメ制作会社が今、取り組んでいるのが、代表作である「ルパン三世」の新作を日本より先にイタリアで放送することです。
文化的な影響力の強いイタリアで新しいテレビシリーズを放送してブームを起こすことができれば、ヨーロッパ全域での販売につなげることができると考えました。
そのため今回、現地を調査し、イタリア人の好みに徹底的に寄り添いました。
例えば、主人公のルパン三世。
トレードマークは赤や緑のジャケットですが、調査の結果、青色に変更しました。

浄園祐プロデューサー
「イタリアの人に『ルパンはどういうジャケットの色が似合うか』と聞いたら、『青色が似合う』と即答。
アズーリ(サッカーイタリア代表)の選手も青を着ていますけれども、やはりかっこいい男の象徴みたいなところがある。」

また、物語の主な舞台は、多くのイタリア人が憧れる古都サンマリノに設定しました。
ストーリーにも一工夫。
イタリア人の好むワインやサッカーの話題も絡めています。
こうした特定の国を対象にした「現地化」戦略を進めることで、日本への波及効果も狙っているといいます。

トムス・エンタテインメント 戸塚麻美海外営業部長
「これだけ(ルパンが)人気の潜在力のあるマーケットで、最初に出していくところで起爆剤になり得るのではないかと思ったので。
もともと日本のものなのに『彼ら(イタリア人)が最初に見たんだ』という悔しさもあおりたいし、そういった意味では新しい形になって帰ってくるんじゃないかと思う。」

人気なのになぜ苦戦? 日本アニメの輸出戦略

ゲスト森祐治さん(電通コンサルティングシニアディレクター)

●日本のアニメ なぜ苦戦を強いられている?

今までは日本のアニメというのは海外ですごく人気があった、ですから海外の人たちが、どんどんどんどん日本に買いに来てたんですね。
そのため、あまり売り方というものを考えることなく、売れている、人気があるといわれているものをそのまま持っていけばお金になったという、非常にいい環境だったということが言えると思います。
あとやはり2005年、非常に売れた年なんですが、これをピークに下がってきているわけですけれども、これ実は日本のアニメだけではなくて、DVDも含めて映像作品が非常に苦しい時代に入ったという、大きな環境変化の始まった年でもあるんです。
なので、日本のアニメの人たちというのは、そういう環境の変化というのをある意味で知らなかった。
一緒に飲み込まれて、マイナスの側面のほうに、どんどんどんどん落ち込んでいってしまったというところがあるかと思います。

●今のアニメの収益 核となるメディアは?

もうDVDのほうが売れなくなりましたので、基本的に海外のバイヤーは「放映」、そして「ネットの配信」といったような、今までにはなかったような仕組みをどんどん使う、あるいは活用するということが収益の中心になっています。
特にテレビに関しては、新興国が非常にテレビの環境が整ってきたこともあって、今、アニメのような子ども向けの番組、非常に需要が大きくなってるんですね。
なので、そういったところに対して積極的に売っていくというやり方というのは、まだまだある可能性だと思っています。

●標準化・現地化という戦略が必要になってくる?

そうですね、作る側、要するに作品のほうとしても対応する必要性っていうのはあるんですが、それとは別に、やはりどういう売り方があるかということも理解をする必要があると思います。
先ほども子ども向けのアニメというお話がございましたが、別に子ども向けだけではなくて、ジブリの作品のように、いわゆるファミリー映画というものもございますし、ほかにも、やはり日本のアニメというと、どちらかというとアダルト・ヤングアダルト向けという、あるいは「オタク向け」という表現を海外ではされますが、子どもだけじゃないという部分というのは日本のアニメの特徴ですから、それぞれの固まり、あるいは分類に応じてちゃんと売っていくということが非常に大事になってきていると思います。

●子ども市場向けの売り方、海外での常識を十分認識できている?

いや、(できて)ないんですね。
やはり今までの知識というのが、基本的に蓄積されてこなかった。
買いに来てくれた人たちに対して売っているということだけだったので、日本の人たちにしてみると、きちんといい作品を作るというところに注力をしてしまったという意味では、日本の工業製品がかつて歩んだ道と同じような、わだちを踏んでいるというふうに考えてもいいと思います。

●韓国の戦略とは?

もちろん、市場に対してよく理解をしているというマーケティング発想というのはあるんですが、それとは別に、作品だけではなくて売り方そのものというのが非常に考えられているんですね。
韓国の中で売っている作品、あるいは放映されている作品のことなんですが、そこでのスポンサーと一緒になって、海外に売っていっているということがあります。
(スポンサーとアニメが一緒になっている?)
むしろアニメよりも、韓流ドラマといったほうがたくさんの人には分かると思うんですが、非常に世界的にも有名になっているドラマが特に先べんをつけたわけなんですが、まずドラマを国内でやっているスポンサーの人たちと一緒に、海外のマーケットも開拓しようという仕組みです。
それに対して、政府がまた支援をして、各国のことばに変えるといったような支援というのもするんですね。
なので、新興国、あまりお金がない放送局も多いわけなんですが、彼らが買いやすい仕組み、買いやすい環境というのを整えたというのが非常に大きなポイントだと思います。
(スポンサーもついていると、放送局は非常に安くアニメを手に入れられる?)
そうですね。
放送局にも非常に大きなメリットがあります。
そしてそういった国々のスポンサーとしてもですね、韓国の企業が一緒に乗り込めるわけです。
なので、韓国製品がやはりそういった国でも力を持つために非常にいい役割を、放送というものが役立っているというふうに考えてもいいと思うんですね。

●マーケットが広がっている今がチャンス?

そうですね。
今現在、新興国を含めて子ども向けマーケットというのはどんどん広がっている状態。
海外のやはり放送局、そしてグローバルの放送チャンネルというものが子ども向けの作品に、そして子ども向けだけではなくて、アニメというものに対しては興味があるということはまだ続いていると思います。

新市場の獲得めざす 日本アニメの挑戦

都内にある中堅のアニメ制作会社です。
自分たちが作りたいものを作って世界で稼ぐという戦略で今、注目されています。
この会社は長年、アメリカから制作を請け負ってきましたが、去年(2014年)初めて、独自の企画で日本のテレビ局に向けてアニメシリーズを制作しました。

宇宙を舞台にロボットに乗った少年少女が謎の巨大生命体と戦うストーリー。
今、作り方の主流となっている3次元のCGを使いながらも、あえて2次元のアニメのような質感を出すことにこだわり、目の肥えたファンから熱烈な支持を得ました。

しかしこの作品が放送されたのは、多くの収益が得られない深夜のみ。
テレビの放送権料だけでは制作費の回収が見込めませんでした。
そこで社長の塩田周三さんが目を付けたのは、ネットで海外配信を行う会社でした。

世界およそ50か国、5,000万人以上の会員を抱えるアメリカの大手配信会社です。
大ヒット作品だけでなく、ターゲットの小さいマイナーな作品まで豊富にそろえていることで会員数を急激に増やしています。
塩田さんは、この会社と契約することで各国に存在する熱烈なアニメファンに作品を届け、利益を上げることができました。

ポリゴン・ピクチュアズ 塩田周三社長
「日本のコンテンツって、極めて自由な風土の中で作られている。
いい意味でとんがっていたりする。
そのとんがったままの形で、当然トランスレート(翻訳)はするにせよ、直接届けられる媒体が出てきたということに大きく可能性が出てきているし、それをすることによって我々なりの差別化ができるんじゃないか。」

さらに今、ライバルどうしが手を組んで海外での販路を拡大しようという取り組みも始まっています。
去年11月、大手アニメ制作会社5社と玩具メーカー、そして官民ファンドなどが出資して新しい会社を設立しました。


狙いは、テレビで放送したアニメを各社が持ち寄り、ネットを使って共同で海外に配信することです。
これまで各社ばらばらに行っていたネット配信。



それを1つの大きなプラットホームにすることで品ぞろえを充実させ、それまでユーザーではなかった人にまでビジネスを広げることを目指しています。
さらに1つのプラットホームにすることで、関連ビジネスの拡大も図ろうとしています。
著作権を集中管理して、アニメグッズの収益を上げようと考えているのです。

アニメコンソーシアムジャパン 鵜之澤伸社長
「(海外で)まとまって日本のアニメが見られてビジネスができるためには、まず日本(の企業)同士で集まることも大切なんじゃないか。
特に今、海外から需要があり、いろいろな形でお声がかりがあるのですが、やはり自分たちの仲間同士でやるプラットホームを持っていないと、誰かに依存していると、ブームとタイミングがずれたときにビジネスができなくなる。
5年、10年、20年と、いい作品を作れる環境とビジネスモデルを作りたい。」

新市場の獲得めざす 日本アニメの挑戦

●ネット配信で活路を見いだそうという動き どう捉える?

そうですね、今までのやり方と比べれば圧倒的に海外への距離は縮まると思うんですね。
非常におもしろい、やらなきゃいけない挑戦だと思います。

●海外プラットホームの活用とオールジャパンでの海外発信、それぞれのメリット・デメリットは?

やはりたくさんの人に作品がどこにあるかということを知ってもらわなければ見てもらえないと、こういう課題というのは、いずれにせよ課題として残ると思うんですね。
であれば、なるべくすでにユーザーがいる、お客様がたくさんいるような海外のプラットホームに乗るというのは、非常にいい発想だと思います。
それに対して分かりやすい場所があって、ここに行けば日本のアニメが見れるということまで知ってもらえるかどうかということが、オールジャパンでという形で組んでも、そこが課題になってくることは間違いがないと思うんですね。

●プラットホームを作ったあと、どう展開していく?

やはりプラットホームの上で作品を知ってもらう、それから商品というものをどんどん買いたくなるという気持ち、ファンになっていただくというのが非常に大きいと思うんですね。
そのじゃあ、その商品をどうやって買ってもらえるのかというところに関してはまだまだ課題があるという状況だと思います。
特にプラットホームのプレーヤーのほうに作品を渡してしまって、その権利、あるいは売り上げを取っていかれるというような形になっていくと、不利益というものも生じる可能性もあると思います。

●日本の知財を守りつつ、よりよい作品が生まれる循環のために何が鍵になる?

よく知財、あるいはその産業の構造を理解したプロデューサーという人材は、やはり必須だと思います。
やはり、そういったプロデューサーをトップに従えた形で、アニメの業界だけではなく、広く産業、この場合もそうだと思うんですが、おもちゃやメディアといったような、あるいはもっと違う産業の人も入ったエコシステム、オールジャパンの体制というのをもう一度考え直す必要もあるかなと思います。

●日本の持っているソフトパワーの潜在力は高い?

まだまだ力はあると思います。
新しい作品、あるいは非常に優れた作品というのは作り出せる、じゃあ、あとはどうやって売っていくかという課題のほうがまだ残っていると。

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