クローズアップ現代

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No.36072015年1月28日(水)放送
増える豪雪被害 ~温暖化の新たな脅威~

増える豪雪被害 ~温暖化の新たな脅威~

各地で多発 突然の大雪被害

先月(12月)初め、徳島県西部を襲った記録的な大雪。
最大で800世帯、1,500人以上が孤立状態となり、死者も出ました。



女性
「お水がないのと、洗濯ができないの、お風呂もないの。
一晩寝られなかった。」



岐阜県高山市では雪による倒木で電線が切れ、1週間にわたって停電が続きました。




この日の積雪量をグラフで表したものです。
高山市は、日本海側の豪雪地帯に比べ積雪が少ないにもかかわらず、大きな被害が出たことが分かります。
ふだん雪が少なく備えが手薄なところに短時間で大量の雪が降ったため、大混乱に陥ったのです。

“爆弾低気圧”の猛威 その時人々は

大雪被害が相次ぐ、この冬。
中でも、先月17日には2つの巨大低気圧が北海道付近で合体。
台風並みの勢力に発達した、いわゆる「爆弾低気圧」です。



この低気圧の接近に、ひときわ危機感を強めていた自治体がありました。
北海道東部の中標津町です。
役場には災害対応本部が設置され、8人の職員が泊り込みで警戒にあたりました。


中標津町暴風雪災害対応本部 矢本正信本部長
「過去にあまり例のない、かなり勢力があるということですので心配しているところです。」



中標津町が低気圧を警戒するのには特別な理由があります。
2年前、暴風雪で立往生する車が続出。
車内に閉じ込められた4人が犠牲となったからです。

中標津町暴風雪災害対応本部 矢本正信本部長
「二度と死亡事故を起こしてはならないということでやっていますので。」

“爆弾低気圧” 新たな脅威のメカニズム

地球の温暖化が進んでいるといわれているにもかかわらず、なぜ冬の大雪被害が相次ぐのか。
実は最新の研究から、地球温暖化が進むことで、逆に大雪をもたらす爆弾低気圧が増える可能性があることが分かってきました。

東京大学大気海洋研究所の木本昌秀教授です。
木本さんは、過去30年に日本付近で発生したすべての爆弾低気圧の経路を調べました。
すると、日本近海で特に冬の巨大低気圧の発生が増えていることが分かったのです。

原因を分析したところ、日本近海の海水温の上昇が関係していることが分かりました。
今後、地球温暖化が進めば、爆弾低気圧の増加に拍車がかかると木本さんは考えています。


東京大学大気海洋研究所 木本昌秀教授
「大量の水蒸気を含んだ低気圧が急発達したりいたしますと、今まで以上にですね、ドカ雪、しかもベタ雪でドカ雪みたいなことになる頻度が増えてくると思います。
雪害に対する対策を今以上に周到に取っていただかなくちゃいかん。」

“爆弾低気圧” 大雪被害どう防ぐ

北海道中標津町役場の低気圧への警戒は2日目に入っていました。
2年前の事故を受け、中標津町は北海道などと共に大雪に備えた新たな対策を始めました。



吹雪で事故や立往生が起こりやすい道路をあらかじめ指定。
雪による被害が予想された時点で、早々と道路を閉鎖することにしたのです。
対応本部には、次々と通行止めの連絡が入りました。

「(通行止め)何時から何時まで?」

「5時半から。」

爆弾低気圧が最も接近する8時間前には、町のほぼすべての主要道路が通行できなくなりました。
道路の早期封鎖という新たな対策で、今回、町は犠牲者を出すことなく低気圧を乗り切ることができました。

中標津町暴風雪災害対応本部 矢本正信本部長
「疲れましたね、少しね。
大きな事故もなく、よかったと思っております。」

事故防止に効力を発揮する道路の早期封鎖。
ところが、新たな課題も浮かび上がっています。
1年前、道路封鎖によって町の基幹産業の酪農が打撃を受けたのです。
260頭の乳牛を飼育する、田中洋希さんです。
1日2回、毎日4トンの生乳を搾っています。

酪農家 田中洋希さん
「この大きい道路の道道ですから、これがずっと通行止めになってしまったので。」



去年2月、低気圧が接近した時点で田中さんの牧場の周囲にある道路は次々と閉鎖。
搾った生乳を出荷することができなくなりました。
タンクで保存できる生乳はおよそ2日分。
やむをえず田中さんは2トンの生乳を廃棄しました。
このときの道路封鎖により、北海道東部だけで100トンを超える生乳が廃棄されたと見られています。

酪農家 田中洋希さん
「せっかくエサ代、電気代、いろいろかけて一銭にもならないと、衝撃は結構うけましたけど、やっぱり人命が一番大事なんでしかたないことなんですけど。
早めに農協なり、生産者に通行止めする情報を入れてほしいなと思っております。」

人命を最優先にしながら、経済活動への影響も最小限に抑える。
道路の通行規制を決める行政機関は、今、難しいかじ取りを迫られています。

北海道釧路総合振興局 須藤純弘管理課長
「非常に難しい問題だと考えております。
各関係者が情報共有していくことにより、地域経済活動への影響を少しでも抑えることができると思っております。」

温暖化のはずがなぜ 多発する大雪被害

ゲスト上石勲さん(防災科学技術研究所雪氷防災研究センター長)

●温暖化によって雪が減るわけではない?

そうですね、昨年2月の関東甲信の大雪をもたらした低気圧も爆弾低気圧の一種なんですが、そういうことも結構起きているということもあるかなと思います。

●低気圧の影響、実感としては?

私は新潟県の長岡に住んでいるんですが、つい最近10年は、結構大雪になる年も多くて、その前は結構雪が少なかったんですが、また多くなっているというのが実感としてあります。
それからあとは、先ほどの南岸低気圧の雪みたいに集中的に降るなんていうのも感じられるところで、集中的に降るのも、位置的にも、それから時間的にも集中して降ると、そういうところが感じられると思います。

●雪の質について

雪の質もなかなか定量的なことは難しいんですけれども、非常に重たいというのが実感としてあります。
こちらの(結晶が見える)ほうですね、新雪、降ったばかりの雪。
そうですね、降った雪がそうです。
それからあと時間がたって、普通は融雪期になると、こういうざらめ雪という、非常に丸い雪に。
(右はとけた状況?)
粒が丸くなってとけてくると、粒が大きくなって、ざらめ雪になります。
通常、新雪は重さが1立方メートル当たり100キロぐらいなんですが、このざらめ雪になると、1立方メートル当たり400キロという、かなり重たい雪になります。
ですので、そういう重たい雪ですから、例えば屋根の雪にそういう雪が乗っかると、建物が倒壊するとか、そんな害も起きてきてしまいますね。

●雪害が増えている、その背景には何が?

1つは、最近雪が多いということが大きなことだと思います。
それと、あとは社会的状況としては、やはり高齢化ですね、やっぱりお年寄りが1人で雪かきをするとか、雪下ろしをするとか、そういうふうにならざるをえないとか、昔でしたら若い人が担い手としていましたので、そういう除雪もしていたんですが、高齢者の方の単独の除雪によって、そういう事故も増えているというように思います。

●そういった中で孤立すると大変な状況になる?

そうですね。
なかなか雪国ではない所に雪が降っていますので、そういうところも結構大きくて、道路の構造とか、集落の位置とか、そういうものがもともと雪の仕様ではないという所もあると思います。

●人命優先と経済、両立が難しい?

そうですね、非常に悲惨な事故がありましたので、人命が第一ということがあるんでしょうけれども、実際ふぶいてから道路を止めるというのは、ふぶいていてそこにはもう管理者の人が行けない状態ですから、止められないという状態です。
という意味で、例えばいつまでその吹雪が始まっていつまで続くかとか、それからどこで一番激しいとか、そういう情報なんかがあれば、だいぶ軽減はできるかなと思います。
(もう少しきめ細かく道路の封鎖などを決められるようになる?)
どの路線を開けて、どの路線を止めるかっていうのが、もう少し計画的にできる。
それには、もう少しいろいろと精度を上げるとか、そんな課題があるんですけれども、そういうことも将来的にはやっていけたらなというふうに思ってます。

突然の大雪 どう備える

群馬県前橋市。
例年、雪がほとんど降らないこの町を、去年、未曽有の大雪が襲いました。
従来の記録を大幅に上回る、73センチの積雪。
交通や物流が完全に寸断されました。

大雪は市の対応力をはるかに超え、主要道路の全面開通までに1週間もかかりました。
もっと早く除雪をすることはできなかったのか。
除雪業者へのアンケートから、行政の縦割りが除雪の障害になっていることが浮かび上がってきました。

道路の除雪は国道、県道、市道とそれぞれ別の業者が担当することになっています。
未曽有の大雪を前にしても、業者は自分が担当する道路しか除雪できませんでした。
その結果、病院など重要な施設への道がいつまでも除雪されないケースが多発したのです。

群馬県建設業協会 青柳剛会長
「国、県、市だとか、その辺のところはちゃんと調整ができていなかった。
指揮系統というのをきちんとしておいてくれないと、あれだけの大雪の時には非常に困る。」


こうした反省から、国道を管理する国土交通省は、自治体や除雪業者と共に対策を話し合ってきました。
この冬、大雪に備えた除雪の新体制が作られました。



今回、新たに定めたのが除雪の優先順位です。
病院など重要施設の周りの道路を優先除雪区間に指定。
大雪が降ったとき、除雪車は担当にかかわらず、まず近接する優先区間の除雪を行うことにしたのです。


国土交通省関東地方整備局 高崎河川国道事務所
信太啓貴事務所長
「縦割りの弊害みたいなものを少し取っ払う形でですね、県内に保有している除雪力を最大限、効率的に発揮してもらえるような体制を作るというのが大きいポイントだと思っています。」

一方、行政の手が回らない場所を市民ボランティアの手で除雪する体制作りも進んでいます。
前橋市社会福祉協議会の高山弘毅さんです。



高山さんがモデルにしているのは、去年の大雪のときに活躍した雪かきボランティアの組織です。

前橋市社会福祉協議会 高山弘毅主任
「実際始めた時には、物もないし、人もいないし、お金もないしっていうところからのスタートだったので、それをどうやって調達していくかっていうのは、はじめはちょっと大変でした。」

不慣れな除雪の力になったのは、豪雪地帯から道具を持って駆けつけたボランティアたちでした。
さらにインターネットを使って市民に参加を呼びかけたところ、700人以上が集まりました。


このとき集まった市民がそれぞれの専門性を発揮したことで、僅か3日でボランティアの組織が動きだしました。
コミュニティFMに勤務する若者が、ボランティアセンターの利用をラジオで呼びかけました。
看板業者が集合場所の看板を作りました。
どこから雪かきを行うか、ニーズの把握は牛乳配達で地域を回っている人が担いました。
無償で知識や道具を提供したボランティアの活躍で、雪かきができない障害者や高齢者など400人以上が助けられました。

前橋市社会福祉協議会 高山弘毅主任
「市民の中に多様な力を持ってる方がいらっしゃるし、そういう方々と協力しながら運営していくというのが今日的なあり方だと思っているので、今後もそういうふうにしていきたいなと思っています。」


大雪による経済的ダメージを減らす新たな対策も始まっています。
去年2月の大雪では、群馬県全体で3万棟以上の農業用ハウスが壊れ、被害総額は200億円を超えました。
大雪にも耐えられるハウスを作るには1,000万円以上かかります。
しかし、頻度の低い大雪のためにそこまでのコストはかけられません。
そこで群馬県は僅か数万円で買える鉄パイプなどでハウスを補強する方法を指導しています。

イチゴ農家 松井俊彦さん
「補強材はそんなにお金のかかる物じゃないので、材料かき集めてきて、自分で建てました。」



大雪でも壊れなかったハウスを調査した結果、柱や筋交いなどを追加することで強度が飛躍的に増すことが分かったのです。
限られた予算と人材で、いかに大雪の被害を減らすことができるか。
新たな時代のリスクへの対応が模索されています。

突然の大雪 どう備える

●前橋のボランティアによって僅か3日で組織が動き出した例、何がよかった?

もともと、雪国じゃない仕様のボランティアの組織はたぶんあったと思うんですけど、それが今回の大雪で大変だということで、すぐに雪害に対応できたというところがすごいと思っています。

●雪害を経験していない所が今後備えるには何が大事?

そうですね、日本の雪国から、そういう知識を共有できればなというように思っています。
その知識というのは、例えば除雪方法、ボランティアの方の除雪方法だとか、それから道具だとか、そんなものの知恵が共有できればいいですね。
(共有するには何が大事になってくる?)
やはり日頃のつながりが大事かなと。
顔の見える間柄になっているというのが大事かなと思います。
それは自治体さんもそうですし、それから助けられるほうと助ける側の、例えば除雪業者さんとか、それからあとはボランティアさんとか、そういうところもやはり常に、常にというか、情報交換をしていて、顔の見える間柄になっていて、そういう知恵をぜひとも、うまく生かしていくということを学んでいただくというか、そういう場ができればいいかなと思いますね。
(雪が降ってない所でも、いつ降るか分からないという意識が重要?)
そうですね、雪害がどこで起きてもおかしくない、重たい雪が、それから湿った雪が降っていろんな雪害が起きる、それがどこで起きてもおかしくないという状況になっているかなというふうに思いますね。

●予測する手だてはある?

私どもの研究機関も、雪の災害の予測を今、始めているところです。
それは例えば、吹雪なんですけれども、吹雪の発生がいつ起きるかとか、いつ終わるかっていうのを、例えば1日先まで予測するというのを、試験的に新潟市さんとか、中標津さんなんかに今、情報提供してるんですが、そういうものをうまく利用して、そういうものができれば災害を少しでも減らしていけるんじゃないかなというふうに思っています。
(現状の精度は?)
今はメッシュ、「5キロメッシュ」みたいな、その範囲なんですけれども、そのメッシュの中で、どのぐらい見通しが悪くなっているのか、そういう1日先までの予測を出しているというところですね。
(先が分かれば、中標津町の例のように生産調整などにもつながる可能性はある?)
そうですね。
もうちょっと精度を上げなくちゃいけないという所、当然あると思うんですけれども、そういうところが分かれば生産調整するとか、ほかの対策なんかもできる可能性があるかなというふうに思っています。

●雪害を減らすことはできる?

そういういろんなことを、知恵を集めればなんとか減らしていけるのが雪害だと思っていますので、これからもいろいろと私どもはやっていかなくちゃいけないかなと思っています。

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