クローズアップ現代

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No.36052015年1月26日(月)放送
ふるさと納税 ブームが問うものは

ふるさと納税 ブームが問うものは

“税収”が2倍!? ふるさと納税パワー

北海道・十勝地方にある、人口5,000人の上士幌町。
酪農を中心とするこの町の税収は、年間およそ7億円です。
今、町の税収7億円を上回る額の寄付金が集まってきています。



「4月からトータルで?」

企画財政課 関克身さん
「トータルで8億4,000万円。」


企画財政課 関克身さん
「人口が倍になったぐらいの収入の規模ですよね。
この町始まって以来だと思います。」



人気を集め始めたのは2年前。
地元の特産品をお礼にしたところ、雑誌の取材が相次ぎました。
町で生産される霜降り和牛です。
寄付金の5割相当をお礼に返す、気前のよさが話題になりました。

企画財政課 関克身さん
「この辺の習慣で、おおむね半返しぐらいの気持ちでという文化があるので、(寄付金の)半額ぐらいの価値のある物をお返ししている。」

ふるさと納税で集まった寄付金は、子育て支援や少子化対策に充てられています。
老朽化が進んだスクールバスを750万円かけて発注。
図書館には60万円分のDVDソフトを用意しました。

子ども
「映画好き!」

母親
「レンタルビデオ屋が遠い所にあるから、こういうのがあるとすごく助かります。」

町では今後、幼稚園の無料化や早期の英語教育などを計画。
子育て世代の支援を充実させることで、町からの人口流出を食い止めるだけでなく、新たに人を呼び込みたいと考えています。
さらに、町の産業も大きな恩恵を受けています。

お礼用の和牛の加工販売を請け負う地元の企業です。
以前は月に1頭分の肉を販売するだけでしたが、今は10頭以上の需要があります。
そのため新たにパート社員4名も雇用。
町に納める法人税も増えました。

上士幌町 町長 竹中貢さん
「大きな視点でいうと、東京一極集中をどうするかといったときに、ふるさと納税がかなり大きなきっかけになる可能性がある。」

ふるさと納税 過熱する特典競争

現在、上士幌町のようにふるさと納税に対しお礼を送っている自治体は、全国の6割に上ります。




ふるさと納税に関するポータルサイトも登場。
各自治体が掲げる政策の内容だけでなく、どんなお礼の品があるのか確認できます。



肉や魚、野菜にお酒。
お礼は種類ごとに分類。
さながら通信販売のように写真入りで紹介され、商品目当てで寄付する自治体を選ぶこともできるようになっています。
自治体の中には、より多くの寄付金を集めるため、最大8割を商品で還元するところもあります。
本来、政策に対して寄付をしてもらう、ふるさと納税。
しかし今、一部の自治体では高額商品による特典競争が過熱しています。
こうした中、制度の趣旨と特典競争の間で苦悩する自治体も現れています。

その1つ、静岡県富士市です。
ふるさと納税へのお礼は節度ある範囲にするべきだと、寄付金の3割までに抑えてきました。



ところが去年(2014年)入ってきた寄付金はおよそ100万円。
それに対し、富士市民が外の町に寄付したことで控除金300万円が出ていきました。
町は200万円の赤字に陥ったのです。


富士市財政課 課長 髙橋富晴さん
「財源がなくなるということですので、予定していた事業、住民サービスができない。」



この問題は市議会でも取り上げられ、特典の見直しを余儀なくされました。

「議会でも指摘されたとおりマイナスであるので、プラスにもっていかなければならない。」

あくまで高額なものにはせず、しかし人々の人気を得られるようなものを懸命に探し続けています。

「釜揚げ、桜えび、しらす冷凍。
大体これで3,000円ぐらい。
全部で3,000円。」

「これも?
そんなに送れる?」

東京から地方へお金を移そうと始まった、ふるさと納税。
今、地方どうしで競争せざるをえない現実に困惑が広がっています。

富士市財政課 課長 髙橋富晴さん
「東京対地方だけではなくて、地方対地方の(税金の)取り合いになる。
そういう問題がある気がしている。」

ふるさと納税 人気過熱の行方は

ゲスト宇野重規さん(東京大学社会科学研究所教授)

●ふるさと納税の本来の目的に対して、今の状況はどう映る?

ふるさと納税っていう名前が示すとおり、本来はふるさとに自分の払ってる、今は自分の住んでいる居住地域に払ってる税金の一部を自分のふるさとに還元したいという、これが自治体の側から見れば、地方で大切に人を育てて、大きくなったら都会に行ってしまって、都会で活躍し、都会で税金を納める。
そうすると、あれだけエネルギーをかけて子どもを育てた地方には、何も返ってこないことになる。
これではいくらなんでも不公平だろうということで、都市に行った人たちから、その思いの何割かを税金という形でふるさとに還元してもらうと、そういう仕組みで始まったものですから、そういう意味で、地方の自治体間の競争ばかりが激しくなっているというのは、いささかもともとの趣旨から外れてしまったと、そういうふうに思わざるをえないと思います。

●地元の住民から得られる税収よりも寄付金が上回り、地域が活性化する例もあったが?

その結果として地域の産業が発展するわけですし、こういったものを各地に送るということで雇用も生まれ出します。
そういう意味でいうと、いろんな形で地域にメリットがあるという以上、単なる商品の販売というだけではなくて、大きな意味での地域の発展の一部として見るべきだと思います。
同時に自治体の職員の間でも、やはりずいぶん雰囲気が変わると思います。
といいますのも、基本的に自治体というのはやっぱり減点主義と申しますか、何か失敗してはいけないと、とにかく国民、住民から頂いている課題をちゃんとこなしていくと、失敗してはいけないと、そこばかりに目が行きがちなのが、今度のこのふるさと納税は、何か新しいアイデアを作ってみようと、なんとか自分たちの地域の個性をアピールしてみようと1つの思い切った実験をし、さらに得たお金をしっかりとした自分たちの地域の施策に使って、その地域の発展のための新しい実験に使用することができる。
そういう意味で言うと、自治体の職員や、ひいては行政文化なんかを大きく変化させるきっかけも秘めているとは思います。

●本来は物品ではなく政策への賛同が基準であるべき?

もちろん、最初は物に関心が行くことは当然ですし、皆さんの興味を引き付けるという意味では、大変いい入り口だと思います。
でもそれは入り口にすぎないわけでありまして、本来は物の背景にある、どういう人がこういう物を作ってるのかと、こういうものを作り出す地域というのは一体どういう雰囲気に動いてるんだろうかと。
大きな意味で言えば、その地域の在り方への関心や、あるいは地域の物語、ストーリーみたいなものまで引き付けて、さらにそれに向かって自治体がどういう政策を推進しているか、そういう自治体の在り方に関心を持ち、共感を持ち、この地域が今後どうなっていくかを自分も見ていきたい。
自分もそこに参加者として、当事者として加わっていきたいと、そういうのがこのふるさと納税の趣旨ですから、単なるカタログショッピングで欲しいもの買ってるだけでは、消費者主義といわれてもしかたないと思います。
(若干その傾向が出ている?)
残念ながら、そういう傾向はあります。
ただし、こういうのはやはりコインの表裏ですから、できればこういうことで、関心のきっかけ・導入部としてはいいですけれども、そこから弊害部分が大きくなることをなんとか防ぐべく、今からこの制度のいい部分を生かして、どうやったらそれが変な方向に行くのを防ぐか、考える仕組みをみんなで努力して作り出していくべきだと思います。

ふるさと納税 政策の魅力で勝負

およそ3万400人が暮らす東京のベッドタウン、埼玉県宮代町です。
この町では、今や都会では貴重になった自然をふるさと納税によってよみがえらせ、市民の憩いの場所として整備しました。


子どもたちが遊ぶことのできる雑木林。
この日はクリスマスのリース作りが行われていました。




「うまく出来たね、やってみてどうだった?」

子ども
「楽しかった。」



町が計画を立てたのは今から2年前のこと。

宮代町 総務政策課 室越康弘さん
「人が入れるような場所になっていなかったです。」

当時、林は荒れ果て間伐など整備を行うために500万円が必要でした。
せっかく整備をするなら多くの人の共感を呼び利用してもらうようにしたい。
そこで考えたのが、ふるさと納税の仕組みを活用することでした。

宮代町 総務政策課 室越康弘さん
「ここをぜひ整備してほしいという思いのこもったお金で整備をしたほうが、後々も寄付した人たちがそこを大事にしてくれるとか、後世に残すのであればそういうやり方のほうがいいと思うし。」


ふるさと納税を呼びかけるホームページには、林の整備に必要な資金やそもそもの目的、そしてその後の利用方法など、明確なビジョンを示すように工夫しました。
子どもも大人も楽しめる場所を一緒に作ろうと呼びかけたのです。


ホームページに心を動かされた人が、東京の港区に暮らしています。
主婦の伊藤晴子さんです。
宮代町には縁もゆかりもありませんでしたが、町の掲げるビジョンに共感したといいます。
幼少期を自然豊かな田舎で過ごした経験を思い出し、計画に加わることにしたのです。

伊藤晴子さん
「山があって、畑があって、田んぼがあって。
そういう生活が当たり前だった所から、当たり前じゃない社会に今、自分はいるので、それで余計に自然環境をそのまま残してほしいという思いがある。」

呼びかけを行ってから僅か2か月で775人の賛同者が集まり、目標を大幅に超える900万円が寄付されました。
政策を具体的に公開し共感を呼ぶことができれば、町の外からも支援を得られる。
町では、ふるさと納税が新たな自治の在り方を示していると考えています。

宮代町 総務政策課 室越康弘さん
「いろいろな町の事業があるが、その中でも直接この事業に使ってほしいと。
その中で町も自治体も、事業を進めていく時代に変わっていく気がしている。」

さらに進んで、ふるさと納税を使って長期的な町の発展をねらう自治体もあります。
北海道のほぼ中央、人口8,000人の東川町です。
この町は平成の大合併の際、単独で存続することを選択しました。
地方交付税の交付金が減額され人口も増えない中、町の外の人の力を借りることにしたのです。

その手段としたのがふるさと納税。
地元のぶどうを使ったワインづくりやオリンピック選手の育成、そして森づくりなど、達成するのに長い時間のかかる事業を掲げました。


森づくりの政策に賛同し寄付を行った、鹿児島県指宿市の橋口千末さんと夫の俊一さんです。
寄付をしたあと橋口さん夫婦のもとに送られてきたのは、森の成長を見に来ませんかという東川町からの案内でした。


しかも町を訪れるための交通費を補助し、町の宿泊施設も格安で利用してほしいというのです。
こうした姿勢に押され、橋口さん夫婦は毎年東川町を訪問。
妻の千末さんは移住を夢みるほど、東川町の町づくりに関心を深めています。

橋口千末さん
「行く度に木が大きくなる。
私も年をとるけれど(木の成長が)見られる。」



「将来どれぐらい(ふるさと)納税をするつもりですか?」

橋口千末さん
「一生すると思います。」

今、町の人口8,000人に対し、橋口さんのような寄付者は3,000人。
こうした人たちが頻繁に観光に訪れ、さらに移住してくれれば、厳しい状況の中でも町の活力を維持できると考えています。

東川町 副町長 合田博さん
「年に1回遊びに行こうとか、東川に来て東川の良さを分かっていただいて、そのまま住み着くとか。
これを切り口にして自立していこう、町をこれからも発展させていこうということですね。」

地方活性の切り札? ふるさと納税

●政策に賛同した人が自分の目で見にその自治体を訪れる 息の長い取り組みになっていく?

先ほど申し上げたとおり、やはり単なる消費者だったら、カタログリストを見てこれだけっていうだけですけれども、それ以上にその地域とのつながりを持つためには、実際に行ってみると。
そこでやっぱり自分が参加者、向こうでの計画に自分自身が参加して、ある意味、先ほど「物語」と申し上げましたけれども、自分が物語の当事者の1人なんだと、そういう実感を持ってもらうということが、非常に大切だと思うんです。
そのことを通じて、それこそ私たちの使っている税金が何に使われているのか、森を復活させ、地域の子どもたちのためにどういうふうに生かされているのかと、そういうことを通じて、なんというか、自分の払ったお金がどう使われているか、自分が世の中を変えれると、自分の愛しているこの地域を変えることに、自分がささやかであれ貢献できるという、そういう意味で自分の有効性感覚、自分のやってることは意味があるんだっていう、そういう感覚を持てるんじゃないかと思うんです。

●仕掛けができ愛着を持つ地域が出てきたことで、豊かになる?

とっても私は現代的な現象だと思います。
もちろん自分の出身地であるふるさとは大切ですけれども、今や東京を含めた大都市に暮らす人は、ふるさとはない人たちが多くなっています。
そういう人たちにとってみると、改めて自分の思いを託すに値するふるさとを自分でもう一回再発見する、選び直すっていう、それが本当の意味でふるさと納税というこの制度に入っている一番の志というか、趣旨なんじゃないかと思ってます。
(それが複数選べるというのもいい?)
われわれはもう、今の時代、自分の住んでいる場所だけではなく、働く場所、学ぶ場所、遊ぶ場所、自分がいいなと思う場所、1回行っただけではなくて、何度も何度も遊びに行きたい、そこで何か自分がしたいと思っている場所。
たぶん複数の場所に自分の思いを託したいんですね。
そういう意味で、複数の地域に関わることができるという意味では非常に新しい制度だと思います。

●この制度を自治体はどう生かし、どういう関わり方をすべき?

これは私、ずっと思ってるんですけれども、日本の政治というのは一体どこから変わるかと思えば、地域から変わっていく、ローカルな場所から新しい動きが生まれてくるというふうに思っています。
なぜならば、地域がたくさんあって、それぞれの地域が自分の身の丈に合う範囲内で実験をしてみると、そしてその各地域で自分の創意や工夫によって、制度やアイデアによってアピールしていく。
そういう意味での、よい意味での競争の時代が始まるといいなと思っています。
(その競争に向けて、ふるさと納税で寄せられる志をうまく使えば大きな力になる?)
本来、われわれは民主政治というのは自分たちのお金を出して、自分たちの地域や政府を支えるという、そういう意味の実感を本当の意味で再確認するきっかけになるんじゃないかと思っております。

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