クローズアップ現代

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No.35992015年1月14日(水)放送
モノが運べない!?“物流危機”

モノが運べない!?“物流危機”

トラック確保に奔走 “物流危機”の現場

一日に2,000台のトラックを動かす物流会社の配車センターです。
全国の食品メーカーなどからトラック輸送を請け負っています。
以前は問題なく手配できていたトラックが、今、なかなか見つからなくなってきました。

大手物流会社 配車担当者
「(ドライバー)いないの。
困ったな。」

大手物流会社 配車担当者
「もし、万が一行ける(ドライバー)がいたら。」

大手物流会社 配車担当者
「取り引きがないような(運送)業者さんにも、『車探してるんで車入れていただけませんか』と電話をしたり。
どうしても出ている物量よりもトラックが少ない。」


トラックドライバーの不足は、農作物の出荷にも影響を与え始めています。
鹿児島県では、去年(2014年)収穫した野菜を、東京など大消費地に送れないケースもあったということです。


JA鹿児島県経済連 園芸事業部 部長 末永次行さん
「運べない、届けられない、ドライバーさんがいない。
荷主としてお客さんに届けられないのは、すごく残念。」

負担増す宅配の現場 便利な暮らしの陰で

「おはようございます。」

進化する物流のサービスが人手の確保に影響を与えている現場もあります。
大手の宅配会社です。

「600個いつもより(荷物が)多いので。
お客さん待ってるから、意識持ってやってください。」

この会社が扱う荷物の数は、ネット通販の急拡大もあり、年間12億個にも上ります。
スーパーや家電量販店も参入し、あらゆるものが自宅に届けられるようになりました。

ドライバー
「こういった物も、ほとんど衣類です。」




ドライバー
「ちょっと行ってホームセンターで買うような荷物も(宅配の)荷物としてくるので、ゴミ箱とか飲料水とか、そういった物も来る。」


さらに、時間指定の宅配を希望する利用者も年々、増えています。
この営業所の場合、受け取り時間の希望は午前中と夕方以降に6割が集中。
このピークの時間帯に合わせるために、より多くのドライバーが必要になります。
去年3月の消費増税前など、繁忙期には一部で遅れも起きました。

佐川急便 千葉北営業所 所長 林省三さん
「物量の増加だけではなくてお客様の要望もすごく多様化してますので、お客様には多少ご迷惑をかけるというか、要望に応えきれない部分が出てくる。」


指定された時間に訪問しても、必ず届けられるとは限りません。
受け取り人の不在による持ち帰りです。

「けっこうな数があるんですね。」

ドライバー
「今の時期は不在が多いですね。
こちらの荷物も18時から21時(の時間指定)。」

不在の割合は共働きの家庭が増えるにつれ年々高まり、この営業所では3割に達しています。
再び配達するためには、さらに人手をかけなければなりません。

この宅配会社では、サービスを維持するために主に女性を戦力として活用。
特定の時間帯だけ自転車で荷物を運んでもらう、新たな取り組みを去年4月から始めました。
今は人手が手当てできていても、さらなる荷物の増加とサービスの進化にどう対応するのかが今後の課題だと考えています。

佐川急便 執行役員 森下琴康さん
「大昔で言えば隣のおじちゃんに預けていても大丈夫だったんですけども、今はそんなこと許されませんし、当然、受け取りたい時間に受け取りたい物を受け取るということで頼まれてますので。
これを物量の増加に合わせてどういうふうに増強しながら維持していくのか、大きな課題になってくると思います。」

どう維持する 高度な物流システム

店員
「いらっしゃいませ。」

こうした課題は宅配の現場だけでなく高度な物流システムを誇るコンビニ業界にも突きつけられています。
最大手のコンビニチェーンの配送センターです。

「こういう形で商品ごとに発注する。」





担当するエリアの店から、足りなくなった商品が発注されてきます。
必要な商品を1個でもピックアップして、店ごとの箱に入れていきます。
店の余分な在庫を減らすため、必要なときに必要なだけ配送するのです。

このコンビニチェーンでは1日当たり9回トラックが配送しています。
この配送システムを維持するために必要なトラックは、店舗数の拡大とともに増え、今では4,500台に上っています。


今、物流業界全体ではドライバーの不足が深刻になっています。
厚生労働省の調べでは、ほかの産業に比べ労働時間が長く、所得も低い水準にあります。
このためドライバーが定着しにくいのです。


このコンビニチェーンの場合配送時間は、5分単位で厳密に指定されています。
さらに荷物の積み降ろしは体力的な負担が大きいといいます。



ドライバー
「かなり物量が多いので、体力的にというか暑さでやられちゃう。
なかなか思うように時間内に終わらないということもあります。」

ドライバー
「ドライバーがもしいないってなると、店に物が届かない、届けられないって状況がこの先増えていくんじゃないかな。」

このコンビニチェーンでは、物流システムを維持する人手を今後も確保するため、ドライバーの負担を減らす対策に乗り出しています。

ドライバー
「失礼いたします。」

一度に運べるカーゴ方式の導入。



積み降ろし用のリフトを付けたトラック。
これらを今後増やしていくことを検討しています。

ドライバー
「かなり楽ですね。
例えばこれを手で降ろすとしたら、9タッチしないと降ろせないので。
タッチ数の軽減というのが肉体的な(負担)軽減になるのかな。」

セブン-イレブン・ジャパン 商品本部長 鎌田靖さん
「やはり将来に向かって、今のやり方ではいろいろな壁にぶつかる。
我々自身の革新を起こしていかないといけない。」

忍び寄る“物流危機” 便利な暮らしの陰で

ゲスト大島弘明さん(日通総合研究所主席研究員)

●今の物流の状況は?

今の状況というのは、とにかく物流の現場のドライバーを中心とした現場の社員が、なかなか募集をしても新たに集まらない、なり手がいないという状況が出てきています。
これまでの物流というのは、物流業界の努力の中で、きめ細かい物流、安全・安心な物流、そして事故が起きないような高度な品質、これが世界にも誇れるものとして提供されてきたんだと思います。
ただそこは、今までの中で物流業界が下支えをしてやってきた。
というのは、なかなか表に出ることがないので、われわれも、ものを買うなどふだんの生活がすべて物流で下支えされているということを、なかなか感じることがないのではという中で、やりくりをしてきました。
ただいかんせん、新たななり手というものが不足していることが、今の大きな問題となっているんです。

●長時間労働、賃金が安いなどの労働環境が、なり手の少ない要因となっている?

私が思うのは、やはり労働条件が他産業に比べて厳しいというようなことを、今いろいろな社会の中で皆さん、そういう状況が職業を選択する際に分かりますので、そういう点においてこの業界、あるいはこの業種というものがなかなか選択をされない。
他の産業に比べて長時間労働である、低賃金である。
また荷役、荷物の積み降ろしという厳しい現場も、まだまだ残っています。
そういう厳しい労働環境というものが、1つ大きな影響になっているのではないかと思います。
もう1つはイメージ、あるいは正しいこの業界の理解というものがなかなかされていない。
トラックのドライバー、物流の業界で働くということ、そこによさを見いだせない、理解をしていただいていないというところがあるんだと思います。
例えば、今われわれは便利に宅配、インターネットショッピング、こんなものを使うとき、じゃあ選択しようかというときに、送料無料みたいな所が表に出る。
これは実際には誰かが必ず負担をしているものであって、この送料無料の仕事をトラックドライバーがやっているのかというところに、価値観を見いだせるのかなと。
きちんとやはり誰が負担をしているのか、発荷主さん側で、この送料は当社負担であるというようなことをはじめ、実際にはわれわれ消費者側もこの一部は必ず払ってるはずですので。
これは一例ですが、そういうことをはじめとして、物流というものが正しい理解をなかなかされていないというところも、ドライバーのなり手がいない、その大きな理由の1つにもなっているのではないかと思います。

●即日配達・時間指定など利用者の要求に応えるサービスが、業界全体の負担となっている?

確かに宅配はわれわれの目に見えるところ、近いところでのものですけれども、ただこれはほんの数%、本当に一部の問題であって、実はわが国の物流全体でいいますと、工場から製品が作られ、ある工場で製品を作るための原材料を納める。
こういういろいろな物流がありまして、その物流全体の中で実は起きている話なんだというところがあると思います。
今までそれが顕在化してこなかったのは、やはり荷主さんのほうが強くて、需給のバランスでいうと供給側のほうが多かった。
それが今までのパターンであったものが、これが人手不足という中で供給側が減ってきた、そこでものが運べない、というようなことが出てきているのではないかと思います。

トラックから鉄道・船へ 進むか“モーダルシフト”

東京・品川区にあるJRの貨物列車のターミナルです。
全国から荷物を載せた貨物列車が次々と到着しています。

「これは九州から来た列車です。
食料品、化学薬品、工業製品、あとアイスクリームとか載ってる場合もあります。」

トラックドライバーが不足する中、輸送手段として見直されているのが鉄道です。
運転士1人で最大650トンの貨物輸送が可能。
大型トラックおよそ65台分に匹敵します。
減少が続いていた鉄道貨物の取り扱い量は、一昨年(2013年)の秋以降、増加に転じました。
繁忙期の先月(12月)増発された臨時便は、異例の100本以上に達しました。
長距離の輸送を、鉄道などに切り替える企業も現れています。

「こちらのコンテナ、貨物列車専用のコンテナとなっています。」

このコンテナは鉄道用。
トラックは最寄りの貨物ターミナルまで運ぶだけです。
トラックだけに頼らず安定輸送を図るねらいです。
500キロ以上の輸送は、2年後をめどに鉄道や船に全面的に切り替える方針です。
いわゆる「モーダルシフト」を進めようとしているのです。

味の素 物流企画部長 堀尾仁さん
「トラックに偏った物流体制では、安定的供給にリスクが大きい。
鉄道貨物輸送ですとか船舶輸送等の複数の経路を持って、長距離輸送力を安定化していく。」


複数の企業が連携してモーダルシフトを進める動きも出てきました。
先月には、大手スーパーや飲料メーカーなど5社が専用列車の共同運行を開始しました。


鉄道貨物は1社単独で列車を利用した場合、行きは荷物が満載でも帰りは空という事態も起きかねません。




企業が共同で利用することで、輸送効率を高めようとしているのです。
安定輸送を図るとともに輸送コストの削減にもつなげたい考えです。
ただ、鉄道輸送を担うJR貨物には課題があります。


JR貨物 運輸部長 宮城利久さん
「これが当社の(貨物)列車のダイヤです。」

簡単には貨物列車の本数を増やせないのです。



JR貨物 運輸部長 宮城利久さん
「右下の方に行くのが、東京から大阪に向かって行く(貨物)列車。
我々はJR旅客各社から線路をお借りして列車を走らせています。」

実は、貨物列車は旅客列車の線路を借りています。
旅客列車の合間を縫って走っているのが実情です。
そのため深夜と早朝を中心に走り、すでにダイヤは過密です。
旅客列車が走る日中は運行が限られ、そう簡単には列車を増やせないのです。
JR貨物では比較的余裕のある土日に貨物の量を増やすなどして、なんとかモーダルシフトの流れをつかもうとしています。

JR貨物 会長 石田忠正さん
「万一物流が止まるということが起こると、生産あるいは販売にものすごく大きな支障が生じることになります。
トラック(が物流の)90%ということからいいますと、鉄道はもっともっと頑張らなければいけない。」

どう乗り越える“物流危機”

●モーダルシフトへの動き、どれだけ期待している?

やはりその長距離ドライバーの負担を軽減をするというところにおいては、なかなかすぐというわけにはいかないんですが、中長期的に見てもその可能性というのはあるんだと思います。
ただVTRの中にあったように、輸送力というものに、やっぱり物理的な限界もあります。
ただ一方で、まだまだ空いている部分というのがないわけではありません。
ただ、これを今と同じように翌日に配送してくださいといったオーダーの中で対応しようとすると、なかなか難しい部分がありますので、必要に応じて翌々日、あるいはその3日後でもいいよというようなことを荷主さんの側がきちんと理解をして、そういうシステム作りをしていただく、条件作りをしていただくということ、これが荷主側にも本当に必要になってくる。
それによって、長距離ドライバーの負担を減らす1つとして、モーダルシフトにも期待ができるのではないかと思います。

●ドライバーを業界に引き付けるためには、どういう改善をするべき?

非常に分かりやすい言い方をすれば、ドライバーに優しい物流ということを考えていく。
例えば待ち時間ですね。
お客様に持っていっても、荷を降ろすまでに2~3時間待たされるというケースがまだまだある。
それから10トン車というトラック、これにまだ手積み・手降ろしをするという現場であったり、また長距離輸送であれば、一方で優しくするためには途中で乗り継ぎをして自分のところに帰ってくる、東京・大阪からそれぞれ出発をしてというようなことで、荷物の載せ替えをして、それから自分のところに戻ってくれば、寝るのは自宅で休むことができるというようなことであったり。
あとは将来的かもしれませんけれども、「無人構想」というようなこともですね、考えていく。
すなわちドライバーに優しい物流というのを考えていく必要があるのではないかなと思います。
(「無人構想」とは、自動運転のような?)
自動運転ですね。
ただ、これはかなり遠い将来の話かなというふうには思います。

●物流コストについては、どう考えていくべき?

やはり高度なサービスを得た場合は、高度なその分のコストを支払っていくというようなところの認識は、これからは少し高めていかなければいけないのかなと。
ただ、全体の物流コストアップというのは、なかなか世の中で容認されるものではないというところもありますので、現場での運賃などを上げたとしても、輸送全体でコストをカバーするような物流の効率(アップ)、これを引き続き続けていくことが必要ではないかなと思います。
(日本経済にとっても大事?)
そうですね。
経済を支える物流という意味でも、それは非常に大切なことだと思います。

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