クローズアップ現代

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No.35972015年1月8日(木)放送
不登校12万人のかげで ~広がる子どもの睡眠障害~

不登校12万人のかげで ~広がる子どもの睡眠障害~

朝起きられない 突然襲う睡眠障害

母親
「起きれる?
起きれへん?」

睡眠障害に苦しむ中学1年生のアイさん。
この日も9時間近く寝ていますが、全く起きることができません。

母親
「学校は?まだ行かない?寝る?
『イエス』ならギューして。」

母親が10分置きに起こそうとしますが、アイさんは体に力が入らず声を出すことさえできないといいます。

母親
「『私は起きたい、起きたいけど起きられない』と常日頃言うから、本当につらいですよ。」

アイさんは幼いころから活発な女の子でした。
小学生のときはバスケットボールチームのキャプテンを務め、学校に行くことが何よりの楽しみでした。
ところが半年前、めまいや胃の痛みを感じるようになり、ある日突然、朝起きられなくなりました。

アイさん
「お母さんが『アイ、起きなさい』とか言ってるのはすごい聞こえるけど、ほんとに体が動かない。」

結局、この日は9時に起き2時間目の途中から登校。
たびたび遅刻するため、周囲から冷たい目で見られることもあるといいます。

アイさん
「『絶対あいつ朝来ないから』って言われたりとか、『怠けてんじゃねえの』みたいな。
傷ついたりはする。」

なぜ、朝起きられないのか。
いくつもの病院を回った末たどりついたのが、子どもの睡眠を専門とする病院です。



この日、診察にあたった医師はアイさんがこれまでどのように睡眠をとってきたのか詳しく聞き取りました。

母親
「高学年は遅くなったね。
たぶん11時くらいに寝て、7時20分に起きてた。」

センター長 小西行郎医師
「中学校は?」

母親
「中学校は朝の6時(起き)。」

アイさんは、小学校高学年のときは夜11時に寝て、朝7時過ぎに起きていました。
中学に入ると塾通いが始まり、寝るのは12時に。
一方、起床は部活の朝練のため6時に早まりました。
小学生のころから慢性的に睡眠が不足がちだったアイさん。
中学に入り、さらに1日2時間睡眠時間を削ってしまったことが起きられなくなった原因だと伝えられました。

センター長 小西行郎医師
「これは気持ちじゃなくて、あなたの体が言うこときかなくなってる証拠。」

本来、夜になると脳の中で眠りを促すホルモンが分泌して眠くなり、朝になると覚醒ホルモンが出て目覚めます。




しかしアイさんの場合、睡眠不足がきっかけで分泌されるリズムが乱れ、夜眠れなくなり、朝起きられなくなっていたのです。
「概日リズム睡眠障害」と診断されました。

センター長 小西行郎医師
「今の生活を変えないと、ちょっともたなくなるかな。
学校へは行けなくなる可能性が強い。」

母親
「成長期の自律神経のバランスの乱れから、こういうのも仕方がないのかなと思ってたんですけど、きちんと先生からのお話頂いたので、治していこうかなと思います。」

子どもの睡眠障害 原因は“リズム”の乱れ

睡眠に悩みを抱え、この病院に駆け込む子どもたちの数は年々増加。
今では年間延べ3,700人に上ります。
その多くは不登校を経験しています。

今回、病院が入院患者100人を対象に睡眠障害になった背景を調べたところ、多くが部活動や塾が要因となっていました。
年々、部活動や塾が深夜・早朝にまで及び、真面目に打ち込む子どもほど睡眠障害に陥る環境が加速していると医師は指摘しています。

センター長 小西行郎医師
「真面目な子が(睡眠障害になる)というのは、確かにそうですよね。
サボったりとか適当に出来ない。
(大人が)負荷をかけて、それで子どもたちが頑張れば良い子に育つというのは限度があります。」

この病院では2か月の入院により、正しい睡眠リズムを取り戻す治療を行います。
その1つ、朝、強い光を浴びる光治療。
目覚めのホルモンの分泌を促します。


さらに、規則正しい運動や食事で一日の生活リズムを取り戻していきます。
不登校になった仲間どうし語り合うことも、大切な治療の1つ。
こうした入院生活により症状が改善し、再び学校に通えるようになります。

子ども
「今はもうスッキリした状態で、朝もテキパキ動ける感じになって、入院前と比べたらまったく良くなっていますね。」

しかし退院後、再び睡眠障害に陥る子どもも少なくありません。
入退院を繰り返してきたタロウさん(仮名)です。
治療で一時的に症状が改善してもしばらくすると再び朝起きられなくなるといいます。
睡眠障害になったことで自律神経のリズムまで乱れてしまい、眠っても脳や体の疲労が取れなくなっていたのです。

タロウさん(仮名)
「良くなったと思って家に帰って、しばらく良い状態が続いたとしても、その後、急に崩れることもある。
いつ良くなるかっていうのがまったく見えないですし、ゴールが来たと思ったら実はゴールじゃなかったりするので。」

最新の研究では、睡眠リズムの乱れが深刻な病気につながる可能性も分かってきました。
この病院で睡眠障害の子どもの血糖値の変化を調べたところ、4人に1人が糖尿病のリスクが高いという結果が出たのです。

センター長 小西行郎医師
「睡眠をみていると体全体の問題だと。
一般の方の『子どもの睡眠障害』に対する考え方は、非常に軽いと思います。」

子どもの睡眠障害 心身に及ぶ悪影響

ゲスト白川修一郎さん(国立精神・神経医療研究センター客員研究員)

●起きたいのに突然体が動かなくなったアイさんのケース、一体何が起きた?

実は、睡眠は脳の疲労の回復の役割を持っています。
この子は睡眠不足がずっと続いて睡眠障害になってしまって、脳の一種の過労状態になってしまったんですね。
だから結局、起きたくても起きられない。
一方でまた同時に、やはり睡眠中には成長ホルモンなどの分泌があります。
その分泌がうまくいっていないと。
あと、自律神経の乱れもかなり生じてきています。
だから自律神経失調がたぶん起こっています。
自律神経の失調が起こると、血圧がちゃんと睡眠時に下がらないとか、体温がしっかり下がらないとか、そういうことがあって、睡眠を長い時間とっても疲労の回復という働きをちゃんとしない。
それからもう1つは、とりわけ子どもにとっては、睡眠というのは疲労の回復とか、今言った自律系の再調節をする、非常に大切なものなんですね。

●発達途上にある子どもたちの脳が発達するうえで、睡眠にはどのような役割がある?

睡眠は、実はもともと一番最初に影響しやすいのが前頭葉なんですね。
睡眠不足があると。
前頭葉とは、例えばものを判断したり、それから例えば意欲に関係していたり、あるいは記憶に関係していたり、それから記憶を引き出す働きがあります。
それから記憶に関係するものとしては、特に海馬にも、この発達の途上で、やはりこの睡眠がいいか悪いか、足りるかどうかで、その海馬の発達にも関係しているという報告もあります。
こういうことがありますので、やはり脳の、例えば前頭葉、海馬みたいな記憶に関係しているものに、すごく睡眠は影響します。

(糖尿病を引き起こすことも?)
糖尿病もありますね。
例えばインシュリンに対する抵抗性が上がるという報告がありますので、糖尿病になるリスクも高くなってきます。

●子どもにとってのよい睡眠とは、量をしっかり確保すること?

実はそれだけではないんですね。
睡眠というのは、量と質、そして質はどちらかというと睡眠のリズムにすごく影響されます。
だから「量」と「リズム」があります。
だから逆にいえば、朝登校の時刻から逆算して、その子どもにとって必要な睡眠時間をまず計算し、そして、寝る時間って決まりますよね。
寝る時間と起きる時間がある程度、毎日規則正しくちゃんとしていれば、本当は睡眠のリズムは規則正しいものになります。
そうしますと、睡眠の質もよくなります。

●自分の子どもが睡眠不足かどうかを測る目安は?

実は子どもっていうのは、夜しっかり寝ていれば、昼間全く眠くならないですね。
寝ようと思っても、なかなか寝れないです。
それが1つの目安ですよね。
もう1つは、登校日と休日の起床時刻の差が2時間以上あるようだと、やはり登校日に睡眠が不足していますね。
リズムが逆に、かなり乱れてきているという1つの証拠です。
だからそのへんを保護者の方は気をつけると、簡単に分かると思います。

●受験シーズンで睡眠を削りながら一生懸命勉強している人は多いのでは?

そうですね。
実際、睡眠を削ってしまいますと、睡眠自身は知識の固定、学習に密接に関係しています。
しっかり眠ることが、本当は受験期の知識の引き出しに関わってきますので、そういう意味では睡眠削ってもっていうのは、ちょっとまずい面があるんですね。
(学んだことが、夜寝ている間に定着する?)
睡眠はまさにそういう働きを持っています。
睡眠をとっていたほうが成績がいいことは分かってますので、削るのは問題になります。

子どもの睡眠障害 “眠育”で不登校防ぐ

福井県西部の美浜町です。

教師
「“睡眠チェック”、先につけてしまいましょう。」



この地域では、すべての小中学校で睡眠の大切さを教える教育、「眠育」に取り組んでいます。
子どもたちが記入しているのは自分の睡眠表。
夜寝た時間と朝起きた時間を記録し、睡眠リズムに乱れがないか確認します。

子ども
「(自分の)生活リズムとか分かって、悪いところがあったら直そうと思えるし、結構いいんじゃないかと思う。」



この取り組みを始めたのは小学校の元校長、前田勉さんです。
前田さんは学校と連携し、地域の小中学生1,000人分の睡眠表をチェックしています。
睡眠リズムが乱れがちな子どもをいち早く見つけて、不登校を未然に防ぐのがねらいです。
子ども一人一人に合わせて、睡眠リズムを守るためのアドバイスを書いて渡しています。

NPO法人 里豊夢わかさ 代表 前田勉さん
「睡眠表をつけてみると自分の睡眠の特徴が出てくるんですよ、夜更かしをする習慣になってるとか。
だからおうちの人もそうだし、子ども自身もこれを自分で気づいてほしい。」

前田さんが眠育を始めたきっかけは、自分の教え子たちが中学に進学したあと、急に不登校になるケースが相次いだことでした。
不登校に詳しい医師に相談すると、睡眠との関係を指摘されました。
実際に調査したところ、その結果に驚いたといいます。

NPO法人 里豊夢わかさ 代表 前田勉さん
「不登校の多い学校と、不登校のいない学校の違いというのが、明らかに睡眠によって違うんですよね。
先生が言ってることが間違いないという確信を、私自身が持てたので。」

子どもの睡眠障害 地域ぐるみで眠りを守る

子どもの睡眠を守るにはどうしたらいいのか。
前田さんが力を入れてきたのが、教師や親など、大人への指導です。
子どもが記録した睡眠表で気になる兆候を見つけたときには学校に出向き、個別面談を行います。

この日、面談したのは小学4年の子どもを持つ桶野さんです。
前田さんは、桶野さんの子どもが習い事のために夜寝る時間が遅く、睡眠が不足していると伝えました。



NPO法人 里豊夢わかさ 代表 前田勉さん
「こんだけ週に3日間も(習い事に)行って遅寝をする状態は、この子にとってはマイナス。
この時期は十分しっかり睡眠とってやってあげないと。」

その上で、睡眠リズムが乱れると体にどんな影響を与えるか具体的に伝え、理解を求めていきます。

桶野明子さん
「元気にしてるってことで、すごく安心はしてたんですけども、もっと早く寝させないとダメなんだなって、しみじみ思っている。」

睡眠の大切さを再認識した桶野さん。
寝るまでの過ごし方を見直すことにしました。
桶野さんの長女・想乃(ここの)さんです。
週3回、水泳教室に通っているため帰宅時間は9時過ぎになります。

想乃さん
「ただいま!」

以前は、水泳のあとに宿題をしていたため、10時過ぎまで起きていた想乃さん。
今は水泳の前に宿題を済ませ、帰宅後は翌日の準備だけですぐ寝るようにしました。

「コートも脱がずにすごいね。」

想乃さん
「早く寝なきゃいけないって、お母さんに言われたから。
睡眠がないと(勉強が)覚えられないとか、体力が消耗してしまう。」

桶野さんは声をかけながら、娘の想乃さんがリズムをつかめるように促していきます。

桶野明子さん
「忘れ物ない?大丈夫?
お風呂いこうか。」

桶野明子さん
「9時半よ。」

想乃さん
「おやすみ。」

今は30分以上早く寝られるようになりました。

桶野明子さん
「(娘は)自分のペースを崩される方が、まだ正直嫌みたいな感じなんですけど、そこをぐっとこらえていいリズムの方向にもっていきたい。」


子どもの睡眠を守る取り組みは地域にも広がり始めています。
美浜町には、小学生を対象としたスポーツクラブが20以上あります。
親からの要望で教育委員会が動き、クラブの終わる時間を早める方針を打ち出したのです。

スポーツクラブ コーチ
「小学生、帰る準備して。」

夜9時まで練習していたこのスポーツクラブも、今は8時半に切り上げるようになりました。

スポーツクラブ コーチ
「こうやって夢中になると何時までってことになりますので、きっちり大人の方が時間を決めないといけないと思う。」



子どもの睡眠を守るために、生活環境そのものを変える模索が続いています。

子どもの睡眠障害 地域ぐるみで眠りを守る

●「眠育」で、小学校卒業後に不登校になる生徒の数が5年間でゼロになったそうだが?

とにかくやっぱり、知識が大切なんですね。
例えばVTRにもありましたが、親に伝えて納得してもらってますよね。
親はまた、子どもと一緒に話しながら、子どもも納得してる。
もう1つ、子どもの睡眠を可視化してるっていうのがこれ、重要なんですよね。
本当は親も一緒に可視化してほしいんですけど。
やっぱりそれが、親が子どもにうまく伝えられやすい状態を作ってくれてるんだと思います。

●ふだん塾やクラブ活動が夜に行われているが、実は弊害だった?

弊害なんですね。
これが逆に睡眠を削ることによって、むしろバーンアウトにつながるようなおそれもありますので、頑張ってる子どもほど危険なんですね。
だからこれは親もそうですし、学校の施設もそうだったんですけど、例えば塾の先生とか、あるいはクラブ活動の指導者とか、こういう人みんな、社会でやはり睡眠の知識を共有することが大切なんだろうと思うんです。
ここは、それを共有しながらやっているのは非常に感銘を受けますよね。

●「眠育」の取り組み、どれぐらい広がっている?

まだ始まったばっかりなんですね。
例えば富山県なんかは少し全県的に始めているんですね。
学校の先生を研修するときに、睡眠のプログラムを入れるとか。
それから長野なんかでも学校によっては、例えば朝の朝練をある程度セーブするとか、そういうこともやっています。
場合によっては、休日にちゃんとお休みをとるということもやってます。
国もやはり眠育を始めようとしているんですね。
文部科学省なんかも、早寝早起き朝ごはんとか、あるいは中高生の2万人の調査だとか、そういうものをやっていたり、厚生労働省もやっぱり睡眠の健康推進機構を立ち上げて、眠りの日を「睡眠の日」と設定したりしています。
そういう意味で、やっと少し始まったばかりだと思います。

●先進国の平均睡眠時間、日本は韓国に次いで短いが、子どもたちの睡眠障害は大人の生活のパターンに引きずられて起きている?

恐らくそうですね。
やっぱり親の背中を見て子どもは育ちますので、大人の感覚で子どもの睡眠を見ている可能性が高いんですね。
例えば、私はこんなふうに寝ているから子どももこのくらいで十分だとか、知識がないのにそういうことが起こっています。
大人が作った子どもの睡眠障害である可能性も結構高いんですね。
やっぱり子どもの睡眠は大人の睡眠とちょっと別なんだと、子どもっていうのは睡眠をちゃんととっていないと、本当は将来を担うパワーをちゃんと持てないんだということが、今回の睡眠障害などで出てきています。
まず自分の睡眠を知って、知識をちゃんと持って、そして睡眠をとることが大切です。

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