クローズアップ現代

毎週月曜から木曜 総合 午後10:00

Menu
No.35852014年11月26日(水)放送
忍び寄る病 ~“COPD”の脅威~

忍び寄る病 ~“COPD”の脅威~

COPDと闘う 桂歌丸さん

落語家の桂歌丸さん、78歳。
5年前にCOPDと診断されました。
数メートル歩くだけで息切れするため、高座までは車いすで向かいます。


熱演1時間。
息苦しさが限界に達します。

「お疲れ様でした。」

落語家 桂歌丸さん
「今、ちょっと苦しいんで、ちょっと待って。」

酸素吸入器を使ってようやく治まりました。

落語家 桂歌丸さん
「動くと息苦しくなっちゃうんですよ。
鼻をつままれてしゃべっている、動いてるって感じ。」



妻 冨士子さん
「大変ですよね、見ててもね。
一日中、寝てても(酸素吸入器を)つけてなくちゃならない。」



若いころから50年以上たばこを吸っていた歌丸さん。
体の異変に気付いたのは10年ほど前。
最初は、風邪に似た症状でした。

落語家 桂歌丸さん
「変に空せきが出たり、たんが絡んだりしてたんです。
かかりつけのお医者さんいますからかかってましたけど、精密検査しませんからね。
ただの風邪だってことで風邪薬飲まされたり、あるいは注射、あるいは点滴、そんなもんでしたからね。」

専門医の診断でCOPDと分かったのは、それから5年以上あとのこと。
症状はさらに進んでいました。

落語家 桂歌丸さん
「COPDって言われて、今まで聞いたことのないような病気で、何が1番の元だっていうと、先生はタバコだって言うんですね。
だから今考えてみれば、もっと早く(タバコを)やめていればよかった。」

突然肺が… 忍び寄る病

なぜ、たばこがCOPDを引き起こすのか。
原因は、煙に含まれる100分の1ミリにも満たない有害な微粒子です。
微粒子が肺の中に入ると気管支が刺激され、炎症を起こし、空気が通る気道が狭くなります。

また微粒子は、気管支の先にある肺胞にも影響を及ぼします。
肺胞の内部では、肺胞壁と呼ばれる場所で酸素を取り込み、二酸化炭素を排出するガス交換が行われています。
微粒子によってこの肺胞壁が破壊され、ガス交換ができなくなります。
ひとたび破壊された肺機能は、元には戻りません。
強い息切れや呼吸困難に至るのです。

このCOPD、診断で分かった時には進行しているケースが少なくありません。
都内の呼吸器専門病院を訪れた、73歳の男性です。



COPDに詳しい 日本医科大学 呼吸ケアクリニック
木田厚瑞医師
「特に上の方がやられてますよね。」

CT画像を見ると、男性の肺は広範囲に破壊され、肺機能が正常な人の3割に低下していました。


男性はこれまで、別の病院でレントゲンの検査を受けたことがありました。
しかし、初期のCOPDはレントゲンでは見落とされることが多いと言います。



COPDに詳しい 日本医科大学 呼吸ケアクリニック
木田厚瑞医師
「これ見てCOPDかなって、全然無理、区別つかない。
『COPDかもしれない』ということが(医師の)頭の中にちょっとでもなければ、なかなかむずかしいと思います。」

COPDには、本人の自覚がないまま、忘れたころに発症する恐ろしさもあります。
小野寺寿枝子さんです。
2年前、胸の痛みを訴えて訪れた病院で、初期のCOPDと診断されました。
今までたばこを吸ったことがなかった小野寺さん。
医師からは、亡くなった夫のたばこが原因ではないかと指摘されました。
夫の死去からすでに10年が経っていました。
今、小野寺さんは専門医のもとで治療を受けています。

小野寺寿枝子さん
「これに入れて吸入するんです、1日1回。」

狭くなった気管支を薬によって広げ、症状を抑えています。



小野寺寿枝子さん
「主人が吸ってる煙を間接的に吸ってたってことですよね。
長い月日の積み重ねっていうのは、そういうことだと思う。
恐ろしいですよね。」

中国で患者急増 PM2.5が影響?

さらに今、たばこに加え、新たな微粒子の脅威が迫っています。
PM2.5による大気汚染です。




今月(11月)初め、中国で開かれた呼吸器学会で専門家が危機感を表明しました。

「PM2.5によって重度のCOPDが引き起こされる。」

すでにCOPDの患者が4,000万人いると言われる中国。
PM2.5の深刻化とともに患者が増え続けています。
専門医は、PM2.5がたばこによるCOPDの潜在患者の症状を悪化させているためだと見ています。

広州呼吸疾病研究所 鐘南山所長
「PM2.5の濃度が高まると、外来患者が増えたり入院患者の症状が悪化します。
大気汚染がCOPDに関連していることは明らかです。」

忍び寄る病 COPDの脅威

ゲスト西村正治さん(日本呼吸器学会理事)

●COPDは気付きにくい病?

おっしゃるとおりだと思います。
せき・たんとはいいましても、例えばたばこを吸ってる方は、もともと、せき・たんが多かれ少なかれあるんですね。
その状態と、病気になった時のCOPDと、うんと違いがあるかというと、あまりないんです。
そこに境界はないですから、自然と病気になっていくには、そこが気付かれにくいことが1つ。
もう1つは、息切れがとても大事な病気ですけれども、この息切れも、基本的には年を取ってから起こってきますので、皆さん、自分が年のせいで、階段を上れないんじゃないか、あるいは速く走れないんじゃないかと思ってしまう、そのために病気に気付きにくいということが、非常にこの病気の気付かれない特徴の1つだと思います。

●肺のどの部分で、どんなことが起きている?

この病気は、基本的に肺の末しょうで起こる病気です。
末しょうという意味は、肺は気管があって、気管支があって、どんどんどんどん枝分かれして、その先に空気の袋である肺胞があります。
先ほど説明がありましたように、肺胞の壁が壊れるというのが、1つですね。
これは肺気腫と呼ばれるようです。
もう1つは空気の通り道の病気なんですけれども、ぜんそくは比較的、太い気道の病気で、こういう所が炎症を起こして、気道が収縮する、それがぜんそくであるのに対して、この病気はもっと末しょう、つまり枝分かれ、ずっと枝分かれしてから起こる、われわれ「細気管支」と呼んでおります、抹しょう気道と呼ぶんですけれども、そういう所の病変として、気道が狭くなる、分泌物が増える、結果として肺が息を吐く時に気道が潰れやすくなる、そういったことが起こります。
ですから肺の末しょうの病気だというふうにご理解いただければと思います。

●患者が訴える一番の苦しみは?

これは基本的に、労作時息切れといいまして、静かにしている時、安静にしてると、相当病気が進んでも平気なんです。
ところが、階段を上ったり、あるいは駆けたり、急いだり、急ぎ足で歩いたりすると、息切れを感じます。
それはどうしてかというと、先ほど言いましたように、肺の抹しょうの病気のために、息を吐こうとしても勢いよく吐けない。
吐けないだけじゃなくて、空気がそもそも出ていかないという現象が起こります。
(空気が出ていかない?)
そうなんです。
(なぜ?)
それは末しょうの気道が、息を吐こうとしたとき、特に勢いよく吐こうとすればするほど、その気道が潰れちゃうんです。
そのために、こういう末しょうの気道が潰れちゃうために、その先にある空気の袋の肺胞からの空気が出ていかないという現象が起きる。
これがこの病気の一番大事な特徴で、イメージした時に、息を普通に吐いて息を吸うのでは問題ないんですけれども、途中まで吐いて息を吸おうとすると、なんとなく苦しいイメージがありますよね。
それと同じようなことが起こる。
(吐ききれない?)
そうです。
そういうことが肺の中で起こっているために、息切れが起こる。
ですからこの病気の一番の特徴は、せき・たんと並んで、息切れ、特に体を動かした時息が特徴です。

●COPDかどうか、どうやって診断する?

これはレントゲン写真でも、病気が進むと、ある程度、特に呼吸器の先生であれば推定することはできます。
ところが、病気が比較的軽いうちは、肺の働きを調べる検査法をやらないと、やはりこの病気は診断ができません。
(呼吸器の?)
そうです。

私ども、スパイロメトリーという検査があるんですけれども、大きく息を吸っといて、勢いよく吐き出す、この検査が、この病気の、疾患の診断のためには、大変重要です。
(具体的に何を見ている?)
スパイロメトリーというのは、大きく2つの指標を見ています。
1つは肺活量ですね。
これは肺がどのぐらい大きいか、どのぐらい大きく吸ったり吐いたりできるかです。

もう1つは吐く勢い。
この吐く息を、どういう指標で調べてるかというと、最初の1秒間でどれだけ吐き出せるかです。
最初の1秒間に、はーって吐いた時に、その1秒で吐いた量を1秒量といいます。
その1秒量を肺活量で割った値が1秒率です。
これがこの病気の診断するうえで、大変大事な指標です。
(何%吐き出すことができれば大丈夫?)
普通、健康な方ですと、少なくとも最初の1秒間で肺活量の70%以上の空気を吐き出すことができます。
それが70%以下になってしまう。
特に診断基準としては、気管支拡張薬を使ったうえで、この検査をやって、70%以下であればこの病気というふうに、普通は診断します。

●自分が喫煙者でなくても、受動喫煙や環境によって起きる可能性もある?

先ほどの例にもありますように、間接喫煙というのは大変重要です。
例えば職場ですとか、あるいは自宅でも、たばこ吸ってる方がたくさんいらっしゃる部屋の中にはたくさんの煙がありますから、そういうものでも実際病気になるということが分かっていますし、日本でも、かつては今の中国のように大気汚染が非常に深刻な時代がありましたから、そういうものの影響というのは今でも残っている可能性があります。

“肺チェック”でCOPD 早期発見

今月(11月)、COPDの予防を呼びかける日に合わせ、ある取り組みが行われました。
100人を超える市民が専用の機械で肺機能を測定。
肺年齢を割り出します。

「頑張れ頑張れ、まだですよ。」

「肺年齢63歳。」

46歳の男性
「え~。」


正常な人の場合は、吸った空気を最初の1秒間でほとんど吐き出します。
これに対し、COPDの疑いがある人はすべて吐き出すまでに長い時間がかかり、最初の1秒間では70%に届きません。


毎日40本たばこを吸っていた、この男性。
吐き出した空気の量は36.8%。
肺年齢は95歳でした。



医師
「絶対に(精密検査を)受けたほうがいいですよ。」

その後、男性は初期のCOPDであることが判明しました。
測定会を行った、吹田市民病院の辻文生医師です。
去年(2013年)は700人余りを検査し、1割を超える人にCOPDの疑いがあることを発見。
治療につなげてきました。

市立吹田市民病院 呼吸器・アレルギー内科 辻文生医師
「COPDの疑いがある人っていうのは非常に多いとすごく実感しています。
早期のうちに治療に介入していくことを考えていかないといけない。」

運動と食事でCOPD悪化を防げ

COPDだと分かった時、どう症状の悪化を食い止め、日常生活を維持していけばいいのか。
医師のアドバイスを受けながら取り組んでいる人がいます。
長野達人さん、70歳です。
2年前、階段を上るにも息切れが激しくなり、COPDと診断されました。
それまで、呼吸が苦しくなるため運動を避けていた長野さん。
このままでは体力が低下し、数年で寝たきりになると言われました。

長野達人さん
「本当にショックを受けました。
動くのがしんどくて、ハーハーって息切れもしますし。」

「よーい、スタート。」

毎日20本吸っていたたばこをやめ、始めたのが運動時の呼吸トレーニングです。



「呼吸法の指導をしていきます。」

口をすぼめ、ゆっくりと息を吐き出すことで、呼吸が楽になるといいます。
長野さんのようなCOPDの患者は、呼吸するだけで普通の人の10倍以上のエネルギーを消費します。

「いただきます。」

そのため欠かせないのが食事療法です。
長野さんは1日2,500~3,000キロカロリーをとるよう医師から指導されています。
同年代の1.5倍です。

妻 晴子さん
「ごはんがやっぱり、完全にこれだけ食べられないですね。
でも食べるので補わないといけないから。」

こうした治療を続けて2年。
今では週3回、スポーツジムで汗を流すまでになりました。

長野達人さん
「これ大体60分くらいやります。」

肺の症状は変わっていませんが、息切れすることは少なくなったといいます。

長野達人さん
「治すよりも現状を維持する。
肺をいまさら、どうのこうの出来ない。
そのためには運動して、酸素吸入器つけてでもやっていかないといけない。」

COPD 悪化をどう防ぐ

●なるべく健康な人と同じような生活をするための一番の鍵は?

1つは、たばこをやめられた。
2つ目が薬物療法ですね。
3つ目が、今まさにそうであったように、体を動かすことなんです。
この病気はかつては、静かに、息が苦しいですから、家で静かにしてなさいという指導をしたんですけれども、今は全く考え方が逆で、むしろ体を動かすことによって食欲も出る、食欲も出ることによって、体を維持することになります。
この病気の場合、なぜたくさん食べなければならないかというと、呼吸をするのにエネルギーを使うんです。
普通、息を吸ったり吐いたりする時は、そんなにたくさんのエネルギーを使わないんですけれども、この病気の場合には、息を吐く時に力がいりますから、そのためにエネルギーを使う、その分、食べることによって、そして運動することによってカバーしなきゃならない、そういうことです。

●高齢化社会の中、これからCOPDで亡くなる人は増える?

基本的には、この病気は高齢者に起こる病気ですし、かつての日本の高い喫煙率を考えますと、今、仮にやめたとしても、高齢とともに病気が起こる可能性があるんですよね。
ですから、COPDの死因も増えるだろうと思います。
ただ、それと同時にもう1つ大変大事なポイントは、今、出ているように、日本では今、肺炎の死因が第3位です。
これも圧倒的に高齢者なんです。
この背景にCOPDが隠れて診断されてないであるだろうということは、多くの呼吸器の先生が感じていることであります。
その点からも、COPDを早く見つけるということが重要です。

●早期発見すると症状の悪化を食い止められる?

そのとおりです。
この病気は、壊れてしまった肺を戻すことはできません。
しかしながら先ほど申し上げたような薬物治療、運動療法、栄養療法、さまざまな治療を駆使することで、今出ているようにCOPDによって起こる肺の機能の低下をある程度、抑えることができます。
そのことがとても大事です。
しかもそれは早ければ早いほど抑えることができますから、早期発見がいかに大事かということを、改めて申し上げたいと思います。

●喫煙をしていたり受動喫煙の心配がある人には、早く診断を受けてほしい?

そうですね、ちょっとでも気になることがあれば、やはりスパイロメトリーといって、先ほど申し上げような検査をぜひ受けていただきたいというふうに思います。

あわせて読みたい

PVランキング

注目のトピックス