クローズアップ現代

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No.35822014年11月17日(月)放送
“ギャンブル依存症” 明らかになる病の実態

“ギャンブル依存症” 明らかになる病の実態

家族も巻き込む“ギャンブル依存症”

ギャンブル依存症の専門病棟がある、福岡県の病院です。
入院中の患者Aさんです。
これまで、ギャンブルをやめようとしては失敗を繰り返してきました。
2か月間治療に専念していますが、時折、落ち着きがなくなり不眠に悩まされるといいます。

Aさん
「ある程度はやっぱりイライラしたりとか。
今までやっていたものを急にやめる、薬もなくやめるわけなので眠れなくなる。」

Aさんがパチンコを始めたのは大学に通っていた20歳の頃。
就職後もやめられず、同僚から借金を繰り返すようになります。
返済をそのつど肩代わりしてきたのが、Aさんの両親でした。
Aさんはさまざまな理由を言い立てては両親からお金を引き出していました。

Aさんの母
「うそつき、本当うそつきだなあと。
1から10までずっと今までうそばかりつかれてきました。
(借金を)ずっと返してきたんです、もう1,000万円は超していると思う。
人生狂っていく、家族も。」

うそに気付いた両親はお金を渡すのをやめ、Aさんも入院治療を受けるなどパチンコをやめる努力をします。
しかし、衝動が収まらなかったAさん。
家財道具を勝手に質屋に入れて換金し、パチンコの資金にし始めます。

Aさんの父
「ゴルフクラブがない。
たまたま高いのを買った、それが消えている。
それから今度はパソコンがない、帰ってきたら。
下の息子がテレビもなくなるんじゃないって、まさかと思っていたらやっぱりテレビがない。」

Aさんの母
「もうびっくりした。」

Aさんは、もはや自分が異常な行動を取っていることが分からなくなっていました。
自宅に居づらくなり家を飛び出してしまいます。

Aさんの父
「(家を出て)1週間目ぐらいだったかな、結局もうお金がなくなったから裏口に立っていた。」

Aさんの母
「私が朝、裏から出たらびっくりして、裏に立っていた。
もう本当、自分の子どもじゃないみたい。」

入院していたAさんは、退院後、再び働き始め、少しずつ親に借金を返しています。
同じ悩みを抱える自助グループの仲間と共に回復を目指していますが、再発の不安と闘っています。

いったんギャンブルにのめり込むと、なぜやめられなくなるのか。
右側の画像は、一般の人の脳が周囲の刺激に対し、赤く活発に活動している様子を示しています。
一方、左側の依存症患者の脳では活動が低下しています。
ギャンブルにだけ過剰に反応するようになり、脳の機能のバランスが崩れてしまったのです。

京都大学大学院医学研究科 医師 鶴身孝介さん
「意志の問題で片づけられてしまいがちだが、脳にも明らかな変化が起きている。
(ギャンブル依存症の)影響は大きい。」


本人の資質の問題とされがちだったギャンブル依存症。
これを精神疾患と捉え本格的な治療を訴えてきたのが、精神科医の森山成彬(なりあきら)さんです。

精神科医 森山成彬さん
「なまやさしい病気じゃないんです。
ギャンブル障害になったら脳が変わる。」

森山さんは9年前、正確な実態を知ろうと、患者100人に対して日本で初めてのギャンブル依存症の調査を行いました。
平均的な姿は、20歳でギャンブルを始め、28歳で依存症の兆候である借金をし始めます。
ところが、病院で受診したのは10年余りあとの39歳。
周囲の人が依存症の兆候にいち早く気付き、本人に治療を受けさせることが重要ですが、見過ごされているのが実態です。
依存症患者がつぎ込んだ金額は平均1,293万円。
中には1億円を超えてもなおやめられない人もいました。

精神科医 森山成彬さん
「嗜癖(しへき)でたくあんになった脳みそは、二度と大根には戻らないと患者には言っている。
それぐらい残る、脳の変化が。
だから一生の闘い、治療と思った方がいい。」

本人だけでなく家族も巻き込むギャンブル依存症。
追いつめられた父親が、依存症の30代の息子を殺害するという事件が起きました。
父親の弁護士によれば、年金生活を送っていた父親は、このまま息子の金の無心が続けば将来の蓄えがなくなると不安を覚え、衝動的に犯行に及んだと語ったといいます。
息子は地元の自助グループに通い、回復を目指していました。
同じギャンブル依存症で悩む仲間たちと、体験を正直に語り合います。
これまで他人には話せなかった、借金で親に迷惑をかけた話をする仲間の姿を、息子は治療の励みにしていました。

自助グループのメンバー
「『自分はしゃべらなかったが、思いやりという言葉が非常に胸にきた』という電話があった。
ですからやっぱり本人なりに変えていこうとしていたと思う。」

そんな中、母親が体調を崩し、入院。
1人で息子を支えることになった父親は孤立感を深めていたといいます。

自助グループのメンバー
「家族、両親にとっても今まで我慢して限界だったということも、今まで理解しようとしてやってこられたことも重々分かる。」

父親は息子を殺害したあと遺書を書き、自殺を図ろうとしましたが、死にきれず車で夜の街をさまよっていたところを警察に発見されました。

“ギャンブル依存症” 明らかになる病の実態”

ゲスト田辺等さん(北海道立精神保健福祉センター所長)

●脳は具体的にどう変化する?

ギャンブルで勝った体験が、強烈に脳の記憶に刻印されてしまうんですね。
そのために、繰り返しその刺激を求めていくと。
ギャンブルで勝った時の体験がイメージされて、それが強烈な欲求になってくると。
結果として、ほかの娯楽や、ほかのゲームでの快感というものがあまり感じられなくなって、そういうギャンブルに特異的に反応するような、脳の機能変化が起きてくるんですね。

●どんな人がギャンブル依存症に陥る?

8割方はごく平凡なサラリーマン、公務員、主婦、大学生、あるいは年金生活者です。
ギャンブルの問題が始まるまではごくごく普通に生活を営んでいた人が8割方で、2割方には、少しうつのような方もいらっしゃいます。
ですが、ほとんどの方は、このギャンブルの問題が始まるまでは、ごく平凡な主婦であったり、サラリーマンであった。
ですから私のところに相談に来たご家族が、こんなふうなギャンブル依存症なんて病気はなかなか認められない、先生の言うことは信じられない、だけども私の妻がお金を持ち出して、パチンコやスロットをやって、たくさんの借金を作って帰ってくる。
それがだめだと言って、立ち直ると約束しても、まだ陰で隠れてやっている。
あげくの果てにほかの人の玉にまで手をつけようとする、そのようなことを説明するのには、これはギャンブルの病気になったと受け入れるしかないと、そんなふうにおっしゃるんですね。
もちろん息子さんの場合でも、大学生の息子が、高校まではスポーツも学業も、それから生徒会の役員もやってた。
なんであれが、うちの息子なんだろうというような、そういうこともあるんですね。
そのぐらい病前は普通の方が多いです。

●家族が抱え込んでしまうことで、発見・治療を遅らせることになる?

家族だったら、なんとか家族の力の中で解決して、そしてそれを本人に深く反省してもらって、再出発してもらいたいと思いますよね。
ですから、借金だったら早く返して、もう二度とするなよというふうに肩代わりしてしまうと。
しかしそれは、問題を先送りしてしまうことになるんですね。
ご本人もそこは反省するんですが、ギャンブルに反応しやすくなっている、その脳の体質のようなものは変わりませんので、何かのきっかけでまたやりたくなるんです。
そうすると、問題がまた再燃してくると。
家族は疲れきってしまって、本当にそこで家族自身がいろいろな精神的な悩みを抱えたり、パニック障害、強迫性障害なんていう病気を持つ場合もあるんですね。
(家族全体、本人の生活なども崩壊することがある?)
そうですね。
そのことでうそをついたり、お金を持ち出して失踪したり、責任を取って死のうと思ったりというようなことも起きてきます。

“ギャンブル依存症” 治療のカギは家族

ギャンブル依存の人の家族を対象とした、長崎の自助グループです。
ギャンブルにのめり込む身内とどう接すればいいのか。
月に2回開かれるミーティングでその悩みや苦しみを語り分かち合っています。

夫がギャンブル依存症
「主人も入院してこれから良くなるぞと思って、頑張ろうとしている時にけんかをして。」

夫がギャンブル依存症
「自分の家庭を守るのに一生懸命でした。」

この会を立ち上げたBさんです。
数百万円に上る息子の借金を肩代わりし、たび重なる金の要求におびえて警察に通報したこともあったといいます。
しかしBさんは息子への接し方を変えたことで、ギャンブル依存症の回復につなげることができました。

Bさん
「どこまでもどこまでも管理していっても、お互いに地獄に入っていくだけ。
私は方向転換をして、こういう生き方もあると自分で分かった。」

Bさんが考え方を変えるきっかけになったのが、8年前に訪れた精神科でした。
この病院では、ギャンブル依存症患者を抱える家族を対象にケアを行ってきました。
担当した医師は、息子ではなく抑うつ状態だったBさんを入院させ、治療することにしたのです。

精神科医 松元志朗さん
「依存症者である息子さんは困っていない。
だから治療しなければという必要にも迫られていない。
お母さんが疲れて困り果てているので、まず治療につなげるのが大事でした。
家族が変わると、家族と本人の間の関係が変わる。
そうすると結果的に本人が変わる。」

治療に加え、Bさんと息子の距離を取らせることも医師のねらいでした。
入院中、一日に何度も息子から金を無心する電話がかかってきましたが応じないよう指示しました。
さらに、治療の一環としてBさんはグループミーティングに参加。
患者とその家族の経験談を聞く中で、Bさんは自分が息子の回復を遠ざけていたことに気付かされたのです。

Bさん
「こちらが見ていられなくて自分が苦しいから助けているだけ、息子のためと言いながら。
(私が)手を出すのは良くないんだと思って、手を引くことを知った。」

退院後、Bさんはある決断をします。
自宅を売却して新たな住まいに移り住み、息子とは一切会わないことにしました。
あえて経済的な援助ができないようにしたのです。

Bさん
「(家を)売らないでくれとずっと言ってきていた。
それでも私は売りますと(メールを)発信した。
鬼って言われました、言われましたよ鬼って。」

Bさんの息子です。
親元を離れ、1人で暮らさざるをえなくなりました。

Bさんの息子
「逆恨みみたいな気持ちでいました、最初は。
(ギャンブルを)できない状態にさせられたという感じ。」

親の金に頼れなくなったことでパチンコ漬けの生活が変わり、ようやく治療に取り組むようになりました。

Bさんの息子
「やっぱりギャンブル依存症ということで失ったものが多くて。
でも人にお金を借りた後ろめたさも今はない、それだけでも幸せかなと。」

Bさん
「結局、助けると目の前の問題は解決する、一時的に息子は助かるわけだから。
その助かる息子を見てほっとしてた。
でもそれは目先の救いでしかなかった。
もし今、私にできることがあるなら、息子を助けないことが唯一私にできること。」

“ギャンブル依存症” 治療のカギは家族

●家族が変わることが近道になる?

そうですね。
家族が自分の力でなんとかしようということをやめてですね、ギャンブルということの問題は、病気であり、責任は本人に返すという態度を取ることが、非常にきっかけになります。
(親御さんたちは病気なんだということを知ることで、どうして強く向き合えるようになる?)
病気だからこそ、回復する可能性があるということを、相談された先生とか、相談者からきちっと説明を受けると、少し整理がつきますね。
それから家族自身が、ほかの家族の方と会えるような、「ギャマノン」というグループがあるんですけれども、そういう家族当事者の会に行くと、同じような体験をして、立ち直った家族を見ることができます。
そうしますと、家族は、これは自分が勝手にとらわれていたことであり、問題の責任は本人に返すほうが、結果はいいんだということを学習して、家族は少しすっきりして、心強くなれるわけです。

●自助グループに参加することでどんな変化が起きる?

本人は、同じ体験をしたグループの中で、自分は最初話せなくても、ほかの人の体験を聞くことによって、だんだんと自分の行動を、内省を深めていきます。
いかにギャンブルでうそをつき、周囲の人との人間関係を悪くしたか、そして自己中心的なお金の使い方になっていたか、あるいは父親として、母親として、あるいは子どもとしての役割を果たせなかったか、そういうことを学習していきます。
そしてギャンブルがなくても、実はトマトのポット150円を育てて幸せになれるとか、2人で温泉に行くのに、本当に僅かなお金しかかからないんだとか、そういうことを学習して、ギャンブルのない人生を幸せに生きることで、うそのない生活とは、こんなにも安心して生きていけるのかという、人生の生き直しを学んでいくんですね。

●本人の背中をまずどうやって押す?

そうですね、家族は1人で悩まないで、もう1人のご家族、あるいはご家族でなくても、とても信頼できる友人、そういう方と、このギャンブルに実は問題あるんだと、私の家庭にはということをお話されて、インターネットとか書籍とか、情報を検索されたらいいと思うんです。
そこの中で、身近な所で、地元で行ける、依存症を治療している病院やクリニック、それから私どもがやっている精神保健福祉センターの相談、こういった所にまず相談に出かけてください。
そして、そのご家族の問題がギャンブルの病気という問題であるかどうかということをしっかり確かめて、そしてそれから取るべき行動を考えていってください。

●カジノ解禁についての議論もあるが、何を大事に考えるべき?

社会の中で、ギャンブルの依存症者ができるような仕組みといいますか、そういうギャンブル依存者を作り出すことは非常に簡単なんですね。
でもそれを回復させる仕組み、あるいは回復させることを支援する人を育てるのは、大変なことなんです。
ですから、依存症というリスクがあるということを知って、予防とか教育、そして、依存症者への対策というものを充足させないといけないと思います。

ギャンブル障害 チェックシート

ギャンブル障害 チェックシート(出典:アメリカ精神医学会「DSM-5」)

A.臨床的に意味のある機能障害または苦痛を引き起こすに至る持続的かつ反復性の問題賭博行動で、その人が過去12か月間に以下のうち4つ(またはそれ以上)を示している。

(1)興奮を得たいがために、掛け金の額を増やして賭博をする欲求
(2)賭博をするのを中断したり、または中止したりすると落ち着かなくなる、またはいらだつ
(3)賭博をするのを制限する、減らす、または中止するなどの努力を繰り返し成功しなかったことがある
(4)しばしば賭博に心を奪われている(例:次の賭けの計画を立てること、賭博をするための金銭を得る方法を考えること、を絶えず考えている)
(5)苦痛の気分(例:無気力、罪悪感、不安、抑うつ)のときに、賭博をすることが多い
(6)賭博で金をすった後、別の日にそれを取り戻しに帰ってくることが多い(失った金を“深追いする”)
(7)賭博へののめり込みを隠すために、嘘をつく
(8)賭博のために、重要な人間関係、仕事、教育、または職業上の機会を危険にさらし、または失ったことがある
(9)賭博によって引き起こされた絶望的な経済状況を免れるために、他人に金を出してくれるよう頼む

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