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No.35662014年10月16日(木)放送
押し寄せる老朽化 水道クライシス

押し寄せる老朽化 水道クライシス

維持できるか 水道サービス

総延長600キロの水道管を抱える埼玉県秩父市です。
休日明けの朝、水道局には住民からの電話が次々と寄せられます。

秩父市 水道部 黒澤透さん
「お電話代わりました、黒澤です。
どの辺で漏っていらっしゃいますか?」

水道管が破裂し、水が漏れ出しているので修理してほしいという依頼です。

秩父市 水道部 黒澤透さん
「現場のほう行かさせてもらいますので。」

年間700件を超える修理の依頼に対し、市の担当者はたった1人で対応しています。

秩父市 水道部 黒澤透さん
「これが今、漏水をしている状況。」




秩父市では老朽化の目安となる40年を超える水道管の割合が全国の中でも高い全体の2割120キロに達しています。

秩父市 水道部 黒澤透さん
「かなり漏れている部類になります。」

「相当な勢いですね。」

秩父市 水道部 黒澤透さん
「そうですね。
1時間あたり1トンから1.2トン漏れていると推測されます。」

実に、浄水場から各家庭に届くまでに漏れ出してしまう水は30%にもなると見られています。
壊れた水道管は整備から43年が経過。

水道水に含まれる塩素による浸食で亀裂が生じていました。

秩父市 水道部 黒澤透さん
「ちょっと漏水しているので。」


秩父市では40年目を迎える水道管が毎年10キロ生まれています。
しかし、計画に沿って現在交換できている水道管は年に6キロです。

女性
「またかい、また湖になっちゃったよ。」

秩父市 水道部 黒澤透さん
「いろいろとご不便をかけて申し訳ないです。」

女性
「今、お弁当作ったりして出さないといけない。
何時ごろ(水が)止まるのかなと。」

こうした突発の漏水には、破裂した箇所だけ応急処置するのが精いっぱいです。

秩父市 水道部 黒澤透さん
「こちら数年前に直しまして、ここ今年直しまして、ここも去年直した。」



秩父市 水道部 黒澤透さん
「本来であれば、全部替えられれば理想ですが、切りはないですけれど。」




水道管が老朽化するスピードに更新が追いつかないのはなぜか。
こうした事態を未然に防ごうと市は、11年前に水道管の更新計画を立てていました。
計画によると、老朽化した水道管の交換費用として41億円が見積もられていました。
その財源確保のために水道料金の値上げも検討されましたが、難しいという判断でした。

その代わり市が選んだのは、新規起債。
つまり借金をすることで、その多くを賄う計画でした。
借金の返済については、企業誘致などで水の使用量が増えれば料金収入も増えると予測。
返済は十分可能だと考えました。

ところが、予想とは裏腹に企業は流出、人口も減少。
料金収入は予想より落ち込んで赤字に転落し、新たな借り入れは断念せざるをえなくなりました。
計画が縮小されたことで、水道管の更新は大幅にペースダウンすることとなったのです。

秩父市 水道部長 髙橋進さん
「やはり料金改定(値上げ)になりますと、さまざまな観点から慎重な協議が必要だった。
そこまでの決断には至らなかったのではないかと。
そのときに何か手を打てれば、ここまでにはならなかったかなと。」

「40年以上経過した老朽管の図面になります。」

水道管の漏水による損失を重く見た市では、今年度中に水道料金の改定を実行しようとしています。
水道料金は平均17.5%値上げ。
さらに市の予算からも補填(ほてん)し、更新にかかる費用を賄う予定です。

秩父市 水道部長 髙橋進さん
「負担に対するご理解をいただいたうえで、我々としてもなんとか秩父の水道を安定給水にできるように努めていきたい。」

どうすれば水道事業を将来にわたって、安定的に維持していくことができるのか。
今年(2014年)国は、全国の自治体に対し水道管の更新計画を立てるよう求めました。
その費用を捻出するために料金の見直しや設備の廃止や統合、あるいは民営化といった策も検討することを求めています。

総務省 公営企業課長 大村慎一さん
「最悪の場合、施設の老朽化が放置される事態が生じたり、さらに必要なサービスが供給できない事態になっていくこともありえる。
単に今までのように供給していくということではなくて、その先を見たいろいろな工夫が必要になってくる。」

新たな更新計画を立てても一筋縄ではいかない現実もあります。
去年(2013年)、計画を立てたばかりの京都市は、次々と起こる事態への対応に追われています。

そもそも京都市が更新計画に取り組むことになったきっかけは、3年前(2011年)に起きた破裂事故でした。
周囲にあったガス管も破損したことで、市が負担したガス会社や近隣住民への賠償は10億円以上。
更新の遅れが住民負担に跳ね返る結果につながったのです。

その苦い経験を踏まえ、去年、浄水場の廃止や職員の1割削減に着手。
32年ぶりに水道の料金体系も見直し、値上げを実行するなどして81億円を捻出。
更新する水道管を年14キロから30キロへ倍増させることにしました。
ところが今、水道管が想定した更新時期より予想外に早く壊れるケースがあります。

宅地開発のために山林に作られたニュータウンで起きた破裂事故。
土地が強い酸性の土壌だったため、水道管の腐食が思いのほか早く進んでいたのです。
別の事故のケースでも、水道管の整備を急ピッチで進めたため地上に露出する構造になり、それが劣化を早めたと見られています。
市では現在の計画をさらに見直し、更新スピードを加速させていきたいと考えています。

京都市 上下水道局 水道部 小田原興さん
「配水管の更新を積極的に取り組むことにより、漏水件数を減らす努力を継続してやっていく。
今後の事業計画を立てていくうえで、さらなる更新率のアップも視野に入れていく。」

押し寄せる老朽化 水道クライシス

ゲスト太田正さん(作新学院大学教授)

●老朽化に追いついていかない更新 日本の水道システムが逆風にあるが?

そうですね。
1つの転換期にあると言っても言い過ぎじゃないと思いますね。
やはり更新投資というのは、やったからといって、それによって、増収が期待できるわけではない。
やればやるほど経営は苦しくなるという、大変厳しい、そうした選択肢になります。
そういう中で、やはりこの間、料金改定といったことで、値上げといったことを計画しようとしても、なかなか思いどおりの引き上げができなかったり、あるいは、人員の整理が進んで、そうした水道を支える人材が不足したりと、全体のそういう厳しい状況の中で、更新投資がなかなか手がつけられずに、先送りされてきたというのが実態だと思います。

●料金改定できず更新が遅れる悪循環 背景にはどんな構造があるのか?

そうですね、1つは地方公営企業というのは、管理者制度というのがございまして、経営の自立性といったものが制度的には保障されているんですけども、先ほど申し上げたように、料金改定1つとっても、議会の承認が必要であるということから、どうしても政治的に、妥協を余儀なくされるということがあったり。
(企業の判断1つではできない?)
そういうことですね。
そういう制度的に認められている経営の自立性、自主性といったものが実態的にはなかなか確保できないと。
併せて料金の設定自体も、やはりこの間、一時期は政府が物価統制的な形で、抑制してた時期もありますし、その後のデフレの中で、やっぱり住民負担といったものを加えることに対する大きな抵抗もありましたから、結果として、そうした再投資をしていく、資金を料金の中に見込むこと自体もなかなか難しかったということがあると思いますね。

●水道事業者が感じている一番の難しさとは?

一番の難しさは、やはり、更新をはからなきゃいけない中でそれがなかなかできないということに関わるんですけども、その環境自体も大きく変化してまして、例えば、人口減少といったものが、単に数だけ小さくなるということではなくて、人々が住む居住の形態が、いわば低密度分散型の居住形態が一般化してくると。
そうなると非常に事業効率が落ちてくるわけですね。
(人口密度が低くなっていく?)
そういうことですね。
ですから、東京のように、非常に過密といわれるような、そうした場所と、それから、非常に人口が分散的で、低密度な場所とでは、もともと経営効率そのものが雲泥の差があると、そういうところでなかなか経営の自立性といったものが確保しにくくなっているということですね。
(人口密度が低くなっても、水道網は同じように維持?)
そういうことですね。
ですので、ちょっと例えといえば、バスを満員で走らせるのか、あるいはがらがらの状態で走らせるのか、その効率の違いというのは、はっきりしますけども、水道の場合も同じことが言えるということですね。
(全国一律的には、全国的な基準がある?)
そうですね。
水道事業は、基本的に、市町村ごとに運営、経営されております。
ですから、現在1,700余りの市町村がありますけども、その分だけのいろいろな、さまざまな違いがあるということで、人口密度もそうですし、それから置かれた経営の状況の中で、水源が近くにあるのか、あるいは遠くにあるのか、あるいは地下水なのか、河川水なのか、さまざまな地理的な条件が全く違います。
違いますけども、そうした中で、水質基準なり、あるいは水道施設の施設基準が同一であるということなので、そうした各地域の特性を反映できないような仕組みになっているというふうに言えると思います。

水道 何を優先する? 住民たちの選択

水道管の老朽化に備え、6年前から住民を巻き込んだ事業を行ってきた岩手県矢巾(やはば)町です。
町では、全長220キロある水道管のうち、毎年5キロが耐用年数を迎えています。
しかし財源不足のため、老朽化した水道管すべてを取り替えることはできません。
そこで町が始めたのが、水道事業に住民の意見を直接反映させるミーティングです。

参加者は、町の全世帯の1割に当たる1,000軒を職員が直接訪ねて、水道の危機を訴えた人たちです。
ほかにも、抽せんで選ばれた住民に対し、町が5,000円を支払い参加してもらったこともありました。
この日、議論されたのは、町の財政が厳しい中、どの水道管を残していくべきかという問題でした。

住民
「人が多い所だとすごく困るけれど、少ない所だと何かあったら応急処置でやり続けていくのも方法かな。」

住民
「(住民が)少ないところだったら、給水車で(運べば)バケツ1つで行けるけど。」

住民
「どこでも優先順位は、我が方が一番だと思いたくなる。」

自治体 職員
「確かに平等にやりたい気持ちは分かるが、どこかで優先順位をつけなければ、今のままでは破綻してしまう。」

どの水道管を優先して更新するか。
住民自身が提案を始めました。

住民
「何かが起きたときに、ここに行けば絶対に水がもらえる場所というのは必要。
各小学校に行けば水がもらえるとか。」

住民
「そこへ行けば最低限の生活ができる場所。
そこが優先順位でいえば一番なのかな。」

こうした住民の話し合いを受け、町は優先順位をつけるための基準を選びました。
特に重視したのが、水が絶対に欠かせない病院や避難所などの重要な施設など5つの基準でした。
これらに点数をつけ、合計を100点満点で評価します。

例えば、住宅街にあるこちらの水道管。
人口が多いものの、近くに重要な施設がないことなどから
評価は100点満点中10点。



一方、町の外れにあるこちらの水道管は、災害時に避難所になる公民館に水を供給しているため50点と判定されました。
こうして町に張り巡らされている水道管に点数をつけ優先的に更新作業を行っています。
さらにミーティングでは水道料金の在り方についても検討を行ってきました。
参加者の中からは、町の水道を維持するためには、値上げもやむをえないという意見も寄せられています。
こうした住民参加によって何を諦め、何を守るのか。
議論を重ねる土壌が生まれています。

矢巾町 上下水道課 吉岡律司さん
「当たり前に使っている水道は当たり前ではないと考えたときに、自分たちがこの土地で生活していくときに水道はどうあるべきかに関わってもらいたい。
お金の使い方として納得できるのか、私たちの要求する安全を満たせるのか、双方で意見交換しながら合意形成を図っていくことが必要。」

値上げか縮小か 岐路に立つ水道

●利用者と自治体の条件を満たすやり方はそれぞれ違ってくる?

先ほど申し上げたように、水道事業は市町村ごとに運営、経営されています。
その地域の状況は千差万別なので、違いをいかに反映させながら、その地域に合った、最適なシステム、あるいは経営といったものを、どう選択していくのかということに尽きると思いますね。

●これまでは全部つないで水道網を維持 具体的にどんな選択肢があるのか?

例えば、規模を大きくして、1つにしたほうが効率的な場合もあります。
一方で、非常に起伏が激しいような、中山間地域の場合、水道の場合には、加圧して、水を、圧をかけて送水するんですけども、そうするといったん上がった水は、また下がるんですね。
谷を下がっているときに、今度は圧がかけっぱなしになりますと、噴き上がってしまいますので、減圧しなければいけません。
そういうふうなことまでして、1つに統合することがいいのかどうかと。
それはまあ、時々の状況に応じて、選択、判断していく必要があるのだろうと思いますね。
(人口密度が少なくなっているような集落や自治体の場合は?)
その場合には、大規模一元的なシステムとは別に、集落単位の小規模なシステムを組み合わせていくということも非常に有効だと思います。
あるいはそのときに、住民の方々が、そうした水道の運営に携わっていただくと。
例えば、料金を自主徴収していただくとかですね、あるいは、メンテナンスの一部を住民の方が日常的な監視をしながら、関わっていただくということも、可能になると思いますね。
(水道料金にかかるコストを抑えることもできる?)
そのとおりだと思います。
条件に合った形で、身軽な、最適なシステムっていうものを選ぶ必要があるだろうと思いますね。
(水道格差が生じることがないよう対応を考えなくてはいけない?)
おっしゃるとおりですね。

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