クローズアップ現代

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No.35642014年10月14日(火)放送
防犯カメラの落とし穴 ~相次ぐ誤認逮捕~

防犯カメラの落とし穴 ~相次ぐ誤認逮捕~

ある日突然容疑者に 誤認逮捕 女性の訴え

パート従業員の41歳の女性です。
今年(2014年)3月、全く身に覚えのない窃盗事件の容疑者として逮捕されました。
突然、警察署に連れていかれ、否認したにもかかわらず、ほとんど取り合ってもらえなかったといいます。

誤認逮捕された女性
「『逮捕します』って、はい?みたいな。
即、手錠をかけられて。
『お前が盗ったろう』みたいな、決めつけられた感じで。
真っ白でしたね、頭の中。」

事件は山口県のパチンコ店で起きました。
男性客が台の上に財布を置き忘れ何者かに盗まれたのです。
店の防犯カメラの1つが、この台を捉えていました。
男性客のすぐあとに座ったのが女性でした。
席に着くと台の上の方を触り、1分後に別の台に移動しました。
警察は、女性が財布を盗って立ち去ったと判断しました。

防犯カメラにはどのように映っていたのか。
実際に私たちが、現場で女性と同じ動きを再現しました。
防犯カメラからは距離があり、手元まではしっかりと確認できませんでした。
警察は従業員への聞き込みなども行いましたが、事件翌日、防犯カメラの映像を決め手として女性を逮捕。
自白を迫ったといいます。

誤認逮捕された女性
「『何回ビデオ見ても、やっぱり(あなたが)盗ってるように見える』と言われた。
こっちは『やってない』と言ってるのに。
認めたら帰れるのかなって何回も思いましたけどね、子どもらのこととか家族のことが(頭の中に)出てきましたね。」

逮捕から7日目の朝、女性は突然釈放されました。
警察のずさんな捜査による誤認逮捕が明らかになったのです。
店の隅にあるごみ箱の裏から、盗まれた財布が見つかり、そこにある防犯カメラに別の人物が財布を捨てる姿が映っていました。

警察が犯行現場の防犯カメラを改めて確認すると、女性が席を離れた1時間20分後にその人物が財布をとる姿があり、真犯人だと判明したのです。
警察は女性に対し防犯カメラの映像を一部しか見ていなかった。
上司によるチェックが不十分でずさんな捜査だったと謝罪しました。

誤認逮捕された女性
「たまたまその事件の場所に居ただけで間違えられても困ります。
財布が見つからなかったら私はどうなってたんだろうって、しみじみ思いました。」

“決定的証拠” 防犯カメラの落とし穴

今、全国で相次ぐ防犯カメラによる誤認逮捕。
背景に何があるのか。
現役の警察官は、防犯カメラの映像は思い込みを招きやすいと証言します。

現役警察官
「我々が捜査報告書100枚つくるよりも、防犯カメラの映像1つの方が証拠として断然に強い。
防犯カメラを押収したから安心、ちょっと慢心しすぎる。」


一方で、映っているものすべてを確認するには限界があるといいます。

現役警察官
「(防犯カメラの映像を)全部見れば言うことは何もないですが、早回しで見たとしても人の力の限界。
失敗を犯してしまうということは無きにしもあらずだと思います。」

防犯カメラの映像をきっかけに逮捕されて300日間勾留され、その後、無罪となったケースもあります。
大阪・泉大津市に住む佑輔さん。
一昨年(2012年)、強盗事件の容疑者として逮捕されました。

佑輔さん
「ぱっと逮捕状を見せられたら、えっ、何の事という状態になって。
びっくりしましたね、頭が真っ白になるっていうか。」

深夜、コンビニエンスストアのレジから現金が奪われた事件。
犯行の様子を防犯カメラが捉えていました。
マスクで顔を隠した犯人が現金を奪って逃走。

警察は、犯人が自動ドアに触れていることに注目します。
指紋を採取したところ、ドアの外側から佑輔さんの指紋が見つかりました。
従業員が“目元が似ている”と証言したこともあり、佑輔さんは逮捕・起訴されました。
佑輔さんは犯行時刻とほぼ同じ頃、自宅で友人と一緒にいたと主張。

佑輔さんの友人
「これですね。」

友人はその時に撮った写真を警察に見せましたが、取り合ってもらえなかったと言います。


一方、裁判で検察は専門家に映像の鑑定を依頼。
佑輔さんの写真と防犯カメラの画像を比較し、類似度が高いと判定されました。
ところがその後、新たな証拠が見つかります。
佑輔さんの母親が弁護士を通じて防犯カメラの映像を入手し、事件当日から1週間さかのぼって確認しました。
すると、事件5日前の映像に佑輔さんが指紋が検出された場所を買い物の際に触っている様子が映っていたのです。

母親
「なんでこれを警察がしてくれないのっていう。
すごく歯がゆかったですね。
なんで私たちが調べる前に、警察がこれをするべきじゃないのって。」

結局、裁判では自動ドアの指紋が事件当日についたとは断定できないという結論が出され、佑輔さんは無罪となりました。

佑輔さん
「防犯カメラって、ありがたいけど迷惑かなっていうのが僕の心境です。
あったからこそ僕は救われたというのもありますけど、あったからこそ逮捕されたっていう事もできますしね。」

防犯カメラの落とし穴 相次ぐ誤認逮捕

ゲスト諸澤英道さん(常磐大学大学院教授)
ゲスト荒川真帆記者(NHK大阪)

●やっていないと言っても聞き入れてもらえない?

諸澤さん: これ、つまりやってないっていう証明って不可能なんですよね。
皆さんご存じの、アリバイって話ありますよね。
その犯行の時間に別の場所でいたとか、別のことやってたとかって証明すればこっちはやってないっていう、唯一これだけなんですね。
この場合は、特に防犯カメラの問題、映像がありますので、この時間そこにいたじゃないかっていうことで、やってないっていう証明は全くない。
その中で、この被疑者になってしまった人ってどういう心境かなと思うんですけども、実は犯罪者を更生させるためにはどうしたらいいかっていう研究があって、やっぱりショックを与えて、感銘させなければいけないというのが大体共通認識なんですが、最もショックを受けるのは、最初に逮捕され、勾留されたところだとよく分かってるんです。
恐らく、この誤認逮捕になった、いわゆる容疑者になってしまった方も、ものすごいショックを受けたろうし、全く孤独の、周りに誰もいない、捜査官しかいないところで、ついつい取り調べを受けて、そして証明しようにも全く方法がない。
大変お気の毒な状態になりましたよね。

●窃盗の容疑をかけられた女性、相当追い詰められていた?

荒川記者: そうですね。
取材をしてみると、パチンコ店の例以外でも、やはり誤認逮捕された方の中には、取り調べを受けるうちに罪を認めそうになったという人もいました。
それだけ映像という強い証拠を突きつけるということは、一般の人は逃れようがない、追い込んでしまうということが強いんだというふうに感じました。
それに誤認逮捕された人を取材してみると、本当に皆さん、普通の一般の方なので、たとえ釈放されたとしても、精神的な負担がかかったり、なので今も病院に通ったりですとか、仕事を休みがちだという人もいて、本当に深刻な事態だと感じましたし、誤って逮捕してしまうというと、本当に取り返しのつかないダメージを与えてしまうということを感じました。

●映像があるがゆえに捜査の傾向がずさんになる?

荒川記者: そうですね、例えばほかの誤認逮捕をされた件ですと、現場に設置された防犯カメラのこの設定時刻がずれていたと、しかし警察がその時刻をきちんと確認しないままに、結果的に、犯行時刻とは違う時間にたまたま映ってた男性を逮捕したという例がありました。
本来、防犯カメラのこの設定時刻を確認するというのは、本当に基本中の基本というか、当たり前のことなんですけれども、そういった基本の部分を怠ってしまったという、こういうずさんなケースもあったんですね。
なぜそうなってしまうのかっていうことで取材をしてみると、今、捜査現場ですと、例えば聞き込みとかしても、周辺住民への協力を求めたとしても、面倒なことに関わりたくないとか、なかなか協力を得にくくなっているというふうにも聞きます。
そうしたことがある中で、防犯カメラというのは比較的、簡単に集められますし、客観的な証拠としては引き込まれやすいのかなと感じました。
しかしそうは言っても、捜査に活用しているわりには扱いがずさんになってしまっている例もあるということを感じます。

●映像による思い込みが起きやすい背景、どう見る?

諸澤さん: 従来は人の目撃証言みたいなことがかなり有力な証拠だったんですね。
ただ、こういうものって本当は人の認知に対して非常にあやふやな部分があって、決定的な証拠にならなかった。
ところが映像みたいなものになるとですね、そうすると、なんとなくそれを信じてしまうところがあるんですね。
実は防犯カメラの映像っていうのは捜査の手がかり、端緒でしかないんだけれども、なんとなく決め手になり、証拠になっていくという問題があって、これはかなり国際的な問題にもなってるんですけども、やっぱり私たち日本における捜査を見ましても、かつては指紋であったり、血液型であったり、足紋であったりうんぬんっていう、そういう歴史をたどってますよね、今はDNAですけどね。
その時々の最先端の技術で、それを全面的に信用してた。
裁判官でさえもそれを信用して、決め手にしてたということがあります。
今は恐らくこういった映像が最先端の非常に重要な問題になってて、これ、もっと科学的、客観的証拠に高めるための努力をしなければいけないということじゃないかと思いますね。
(映像は、そこにいたということは証明するけれども…。)
そうですね、その時間に、そこにいたという証明でしかなくて、やってるところが映ってれば、多少、証明になりますけれども、通常はそうじゃなくて、逃げていくところの映像が圧倒的に多いわけですね。
しかも今、荒川記者の話にもありましたように、時間の設定がいろいろ問題になって、正確じゃない防犯カメラが非常に多いんですよね。

最新技術で誤認逮捕を防げ

警察と連携して最新技術の開発に取り組んでいる、大阪大学です。
ここでは歩き方に注目した研究を行っています。
歩幅や姿勢、腕の振り方など、無意識に出る特徴を調べることで個人を識別しようという試みです。

こちらはコンビニ強盗を捉えた防犯カメラの映像です。
犯人はマスクで顔を隠しています。
このような場合でも、犯人を取り違えないようにするのがねらいです。
まず防犯カメラの映像を取り込み、シルエットにすることで、歩き方の特徴だけを際立たせます。
そこに容疑者が歩いている画像を用意してシルエットを重ね合わせます。

大阪大学産業科学研究所 八木康史教授
「この2つを見比べる、実際には2つを重ねるように見る訳です。」



2つの映像の動きが一致した所が白。
それ以外は赤と緑で表示され、類似度が判定できます。
この技術を使えば、マスクで顔を隠している場合だけでなく、遠くからの映像でも歩く姿が映っていれば分析可能で、より精度の高い捜査につながると期待されています。

大阪大学産業科学研究所 八木康史教授
「顔が見えてなくても、歩き方が一緒であればトータルに正しい客観的な情報が入ってくるということは、捜査の信頼性を上げる、イコール誤認逮捕を減らすことにつながる。」

“防犯カメラ大国” アメリカの課題

一方、3,000万台の防犯カメラがあると言われているアメリカでは、新たな課題が生まれています。
撮影された条件によっては、映像と現実の間にずれが生じるのです。

きっかけの1つとなったのが、この映像です。
赤ん坊を激しく揺さぶっている姿が防犯カメラに映っていたことでベビーシッターが児童虐待の疑いで逮捕され大きく報道されました。

アメリカ ABCニュース
“映像には、赤ちゃんを激しく揺さぶったり、床に投げつけるような様子が捉えられていました。”

しかし映像は事実と違っていました。
撮影したカメラの性能が低く、画像が粗くなり、実際はあやしていただけなのに激しい動きに見えたのです。

これは、アメリカのテレビ局が行った実験です。
逮捕のきっかけになったビデオと同じ種類のカメラで撮影すると、動きが雑に見えることが分かります。
女性は釈放されるまで逮捕から2年がかかり、大きな問題になりました。

女性
「裁判官と正義に感謝します。」




FBI訓練担当者
「ビデオは、実際には録画の段階で加工されているのです。
最初に我々が教えるのは、映像で見えているものは事実ではないということです。」


こうした事件を受けて、アメリカでは各地から捜査員を集め、映像を分析し判断するスペシャリストの養成を始めています。

「特に画面の縦横の比率に気をつけてください。
そうでないと、体格の良い人が痩せた人に変わってしまいます。」

映像が拡大されたり、スピードが変わったりすることで、もともとの映像が間違って見えていないか確認するノウハウを学びます。

さらに映像の管理にも力を入れています。
原則、押収した防犯カメラの映像はすべてデータ化し、撮影した正確な日時や場所、使用したカメラなどの情報とともに蓄積する取り組みを始めています。
一元的に管理し、証拠として間違った使い方がされないように専門の担当者がチェックするのです。

科学捜査官フォーラム主催者
「証拠を適切に収集し、解析し、処理することの必要性が非常に高まっています。
これから先は、防犯カメラ映像に関する専門技術がますます要求されるでしょう。」

“防犯カメラ社会” 危うさとどう向き合う

●防犯カメラの映像が事実でない可能性もあると、まず考える?

諸澤さん: そうなんですね。
コンピューターグラフィックが発達したこともありますしね、一方ではすごく古いカメラがある、画素が少ないというのがありますね。
他方ではものすごく高性能なのがありますね。
特に高性能であれば、手を加えることができる。
ですから映像っていうのは、むしろ大変あやふやというか、信用しちゃいけないものなんですね。
むしろ、そういうことについて専門的な知識があって、技術を持っている人が、これを担当しなければいけないんですけれども、今の日本っていうのは、ほぼすべての捜査官が見て判断していると。
通常、指紋だったり血液型鑑定だったりは、ちゃんと鑑識なり、専門の所に持っていって、専門の人が分析しますよね。
なぜか映像だと、警察であればそれを誰でも見て判断できちゃうっていう、こういう状態がありますね。

●科学的捜査手段の1つとして、専門家を養成する必要がある?

諸澤さん: そうなんですね。
今、残念ながら日本の現状は、各警察本部ごとに取り組んでいると思うんですけども、やっぱり全国挙げて、警察を挙げて、こういう分野についての研究開発をどんどん進めなきゃいけない。
そしてまた、捜査のうえで使うルールというものですね、どういう条件をそろえていれば、それはある程度の証明力ができているんだっていう、そういうレベルのルールを作っていかなきゃいけないと思いますよね。

●デジタル映像になると加工も可能になる?

諸澤さん: 今、世界的にはコンピューターに取り込んでデータを加工しちゃうと、それ、いい点もあるんですね。
そして例えばいい点としては、映像を立体化させていくと、距離感が出てきますね。
普通、2次元の平らな静止画像がよくありますよね、そうすると、あるものの問題の前に映っている、それは犯人だろうということになりますけれども、実はそれは1メートル離れてるってこともあるわけですよね。
それをちゃんと読み取らなきゃいけない。

●どんな心構えで使うべき?

諸澤さん:だからそれだけに、怖いってことですね。
間違ったら大変なことになりますし、人権侵害の問題にもなりますね。
ですから、やっぱり警察はそれを努めてレベルを上げるし、われわれはそれについてちゃんと認識するってことだと思いますね。

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