クローズアップ現代

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No.35622014年10月8日(水)放送
墓が捨てられる ~無縁化の先に何が~

墓が捨てられる ~無縁化の先に何が~

さまよえる墓石 行き場はどこに

淡路島の県道脇にある空き地です。

兵庫県 淡路県民局 小塩浩司環境参事
「こちらが現場になります。」

茂みの中に現れたのは、不法投棄された墓石の山。
1,500トンはあると見られています。


兵庫県 淡路県民局 小塩浩司環境参事
「やっぱりこの量ですからね、(撤去を)税金使ってやるということになりますと、なかなか予算的にも行政としても厳しい部分がございます。」


捨てられた墓石の中に小さなステッカーを見つけました。
記された店の名を頼りに探していくと、岡山県にある老舗の石材店にたどりつきました。



「それの中に…。」

「うちのだ。」

「だから何でこんなもの処分されたのかな。」

淡路島で見つかった墓石の一部は、この石材店が墓地から撤去し、運搬業者に処分を任せたものでした。

通常、不要となった墓石は運搬業者に引き渡し、処分場へ運んでもらいます。
処分場で墓石は細かく砕かれ、道路工事用の砂利などとして再利用されます。
費用は1トン5,000円から1万円。
運搬業者はこの支払いを嫌い、石材店には無断で不法投棄していたといいます。

「それはもう、びっくりしたというか。
『処分する場所があるから処分します』と(言っていた)。」



淡路島の事件が明らかになったあとも、石材店には不要となった墓を撤去してほしいという依頼が届いています。
新たに見つけた処分先は意外な所でした。
墓石を有料で引き取ろうという寺が現れたのです。

広島の山道を走ること30分。
目の前に現れたのは、整然と並べられた無数の墓石。
その数は7万本に上ります。



「こんにちは。
今日はどちらから?」

「岡山からです。」

「どれくらい来られるのですか?」

「月1回か2回、平均で。」

中国地方を中心に、250を超える業者が撤去された墓石を運び込んでいます。
寺の住職、三島覚道さんです。
14年前、石材店から墓石の引き取り先がなく困っていると相談を受け事業を始めました。

墓石を引き取る寺の住職 三島覚道さん
「どこか引き取ってくれる所がないかと。
中にはそこらに埋めておけばいいかという墓屋さんもおられるけども、僕は祭ってあげたいなと思うけれどもね、そう思って始めたことだけれども。
仏様もそう言われたからね。」

引き取り費用は相場より安い1本2,500円。
住職が供養もしてくれるとあって、遠く関西や中部地方からも墓石が持ち込まれます。

墓石を引き取る寺の住職 三島覚道さん
「これから50年、100年近く(引き取ることが)できる広さを持っていますから、みなさんがどこからでも持って来られても全部受け取れると思います。」

大量の墓石があふれ出す背景には、社会と家族の急速な変化があります。
かつて日本では、1つの墓に1人が埋葬される土葬が中心でした。
明治の民法で家の継承を重視する「家制度」が定められると、先祖代々一家がまとめて1つの墓に祭られるようになります。
墓は一族へのつながりや、みずからのアイデンティティーを確かめる場にもなっていきました。

ところが戦後、人々は次々と都会へ出て、墓も核家族化が進行。
都会で墓ブームが起きる一方で、地方の墓の守り手は減っていきました。
民間の調査機関が行ったアンケートでは、半数を超える人が墓の無縁化が心配だと答えています。

なぜ増える “無縁墓”

そして今、墓の無縁化は地方から都会へも広がり始めています。
大阪市が管理する霊園では、お盆やお彼岸でも誰もお参りに訪れない墓が増えています。

市では立て札を立てたり、戸籍の調査を行って墓の継承者を捜してきましたが、多くは連絡すら取れませんでした。
しかたなく撤去した無縁墓の数は、15年間で4,000基余り。
5億円近い費用がかかりました。


大阪市環境局 西峰光宏課長
「やはり費用が必要になってまいりますので、そこの部分は各自治体一緒かと思いますが、財政状況厳しい中でございますし、可能な限りは承継していただいて、お墓を引き継いで管理をそれぞれの使用者さんにやっていただけたらと思う。」

このまま無縁化が進めば、将来は墓地の維持管理が立ち行かなくなる事態も懸念されています。
宗教学者の山折哲雄さんは、この問題の根底には、墓を守っていくうえで重要な役割を果たしてきた家制度の崩壊があると指摘します。

宗教学者 山折哲雄さん
「これは戦前からずっと、日本人の宗教の一つの中心をなしていたのは、『家の宗教』としての先祖崇拝でした。
これがガタガタと崩れ始めた、その結果とも言えるかもしれません。
従来の伝統的な家制度の中で作られたお墓信仰は崩れざるを得ない、魂の行方を信じることができない。
現代人がそうですよね、私もそうだ。
誰も思わなくなってしまったとすれば、自分の死後の問題をどうするか、葬儀の問題をどうするかという問題に直面しているということです。
ある意味ではジレンマの時期に今さしかかっていると思います。」

墓が捨てられる 急速に進む無縁化

ゲスト小谷みどりさん(第一生命経済研究所主席研究員)

●無縁墓が増えていることについて

お墓っていうのは、そもそも民法では祭し財産と規定されていて、子々孫々継承していくことを前提にされてたわけですね。
今、誰が継承するのかということが問題になってきてるんだと思います。
例えば社会の背景で言えば、人口が非常に流動化していて、生まれ育った場所で死んでいくというライフスタイルの人っていうのがすごく少なくなってきているわけですよね。
これは都市部でも地方でも同じ現象です。
先ほどのVTRでも、捨てられているお墓の中に、新しい墓石って結構あったんですよね。
ですから10年前に建てられたお墓でも、その地に誰も住んでなくなったら、やっぱり継承する人がいなくなってしまうという問題がある、継承できなくなってしまう。
それから少子化が非常に大きな影響ですよね。
そもそもお墓を継承する人がいなくなってしまっているという問題があると思いますね。

●無縁化する状況について

そうですね、そもそも継承する人がいないっていう問題以外に、やっぱり日本人の多くが、非常に長生きをするようになったと。
例えば一昨年(2012年)の例でいいますと、一昨年に亡くなった女性のうち、80歳以上で亡くなった方って7割を超えてるんですよね。
そうすると、例えば90で亡くなった方の二十三回忌を誰がするかということを考えてみれば分かりやすいと思いますけれども、もう子どもも亡くなっている可能性が高いわけですよね。
そうすると、90で亡くなった方の二十三回忌をするのは孫ですよね。

ところが3世帯同居が非常に少なくなってきていて、会うのは年に1回という孫とおじいさん、おばあさんの関係になっていると、おじいさん、おばあさんが亡くなって二十何年後に、きちっと法事をしたり、お墓参りをするっていうのは、なかなか考えにくいですよね。
(亡くなった方を覚えている人が本当に少ないということ?)
そういうことですよね。
ですから、長生きをすれば、自分の死後、自分のことを知っていた人がこの世に生きている年数が非常に短いっていうことですよね。
ですからやっぱりお墓参りというのも、来る人なんかも非常に少なくなるということが一ついえると思いますね。

●先祖に対する考え方も影響している?

そうですね。
先祖っていうのを辞書で引くと、やっぱり始祖から代々っていうふうに出てきますけれども、辞書的な意味合いで先祖というのを捉えてらっしゃる方って、実は少ないんですね。
多くの人は自分にとっての先祖は誰かっていうと、せいぜい、ひいおじいさん、ひいおばあさんの、自分が生まれた時から知っている人なんですね、近親者なんです。
そういう意味では、家制度も崩壊したということも影響していると思いますけど、例えば女性の方にとって、先祖は誰かっていうと、家制度で言えば夫の先祖だったはずなんですけど、夫のおじいさん、おばあさん、お父さん、お母さんも自分の先祖ですけど、自分自身の親やおじいさん、おばあさんも先祖なんですね。
そういう意味で、先祖というのは非常に自分にとって近親者という感覚になっていってますよね。
(何々家の墓という形が、そういう気持ちと合わなくなってきている?)
そうですね。
先祖祭しではなくて、なぜ皆さんが墓参りというのが国民的行事として定着しているかというと、先祖に会いに行っているわけではなくて、特定の個人に会いに行ってるんですね。
ですから「先祖祭し」ではなくて、「個人祭し」に移行してしまっているということだと思います。
ですから、自分にとっての近しい人が亡くなった場合には、皆さん、多くの人は死んだ人が見守ってくれてるという感覚っていうのは非常に強いですから、お墓に行って、お墓に話しかけたりとか、手を合わせたりっていうことっていうのは、今なお続いているということだと思うんですよね。
(昔は3世代同居して、先祖の話を聞くことも?)
そうですよね。
でも核家族化が進んでいると、やっぱりおじいさん、おばあさんからそういう話を聞くっていう機会がなくなっているということがやっぱり影響していると思いますね。

墓をどうする 無縁化を防ぐには

先月(9月)、岡山市で開かれた墓の無料相談会です。
以前は墓を建てる費用の相談がほとんどでしたが、最近は墓をどう維持したらいいかという悩みが増えているといいます。



女性
「山で階段がだいぶある。
年とともにしんどくなる。」

こちらの女性は、両親の墓をもっと便利な所に移すかどうか悩んでいました。

女性
「決めかねるんですね、母と父に相談したわけじゃないし。」

こうした墓を支え切れない人たちに向けた、あるサービスの人気が高まっています。
先祖代々受け継いできた墓を処分する「墓じまい」です。



墓じまいを行う業者 宮中和也さん
「ここ2~3年の間です。
徐々に増えてきて、近年になって相談、依頼がすべて倍になってます。」


大阪府に住む田村公三さんです。
去年(2013年)、ふるさとの兵庫県にある墓をしまいました。
きっかけは娘からのひと言でした。

田村公三さん
「お父さんとお母さんが死んだとき、わたし1人ではよう行かんと。
3時間かけて、よう行かんと言うたわけ。」

去年、9人の先祖が眠る墓を撤去。
お骨は、自宅近くにある霊園で血縁関係のない人たちと一緒に納められています。
確かに子どもたちの負担はなくなりましたが、ちょっと複雑な思いも残りました。

田村公三さん
「親戚に対しては申し訳ないと思うけど、でもいろいろな面を考えて、もう僕の代でいいかなと思ってる。
悔やんでもしょうがない。
さびしいな、それだけ。」

多様化する墓へのニーズに応えるため、新しい形の墓地を用意する自治体も現れました。

浦安市 都市環境部 知久岳史さん
「こちらの方、既存の墓地の一角に、共同埋蔵式の墓地。」




浦安市では従来の墓石の代わりに、樹木を墓標とした「樹林墓地」の建設を計画しています。
血縁関係のない人たちの遺骨5,000体を、コンクリートの容器に納めます。
最初に12万円を支払えば、その後の管理はすべて市が引き受けます。

浦安市 都市環境部 知久岳史さん
「一度契約した後はいっさいお金がかからない、永代供養の墓地となっているので、市が責任を持って供養していく施設になる。
残された家族にも負担がかからない墓地になっています。」

墓は引き継がない それぞれの選択

一歩進んでそもそも墓を作らないという選択も広がり始めています。
都内に住む村上さん夫妻。
ともに84歳です。
全国各地で荒れ果てた墓を目にしたことがきっかけで、自分たちは墓を作らないと決めました。

村上五月子さん
「墓を持たない主義です。」

2人は、本人の希望どおりに死後の手続きを進めてくれるNPO法人と契約を結んでいます。
将来、村上さんたちが亡くなった場合、遺体はこの安置所に搬送されます。

村上五月子さん
「いずれお世話になる、必ずお世話になる。」

遺体は、そのまま火葬場へ送られる契約です。

村上五月子さん
「安心ですね、ここまでしっかりしてらっしゃれば。
安心しました。」

墓を持たないという選択をした村上さん夫妻。
しかし、先祖とのつながりを自分たちなりの方法で模索してきました。
居間の壁には亡くなった両親の写真が貼られています。
2人は毎日欠かさず写真に向かって手を合わせ、その日あった出来事を語りかけます。

村上五月子さん
「じいちゃん、(孫が)跡を継いでくれることになりました。
どうぞ安心してください。
乾杯。」

子どもたちにも、自分たちの写真に向かって手を合わせてもらえれば十分だと考えています。

村上五月子さん
「娘たちにも言ってあります。」

村上幸人さん
「やるでしょ、必ずやると思います。」

墓をどうする 無縁化を防ぐには

●墓じまいをされる方、非常に複雑な心境では?

そうですよね、たぶん断腸の思いで片づけてらっしゃるんだと思いますけど、私は墓じまいをされる方っていうのは、実は本当に亡くなった方を思ってらっしゃるからこそ、墓じまいをされてるんだと思うんですね。
そのまま放置をしておくと、無縁墓として撤去されてしまうか、あるいはそのまま放置されて草ぼうぼうになってしまう。
それでは非常に申し訳ないので、やっぱり自分の手で片づけて、遺骨を供養してくれる所に預け直したいという方が、こういう行動に出られているんだと思います。
だから本当に、継承できなくなってしまっているという問題は、子どもがいるいないに関わらず、多くの人が直面している問題なんだと思うんですよね。
(強制撤去された場合、遺骨はどうなる?)
強制撤去されると、敷地の中にある無縁塔、無縁塚に入れられてしまうわけですね。
無縁さんとして祭られるっていうのは、先祖に対して申し訳ないという思いっていうのは、やっぱり誰しも持ってらっしゃると思うんですよね。

●共同埋葬式墓地や墓はいらないという選択 この動きをどう見る?

お墓の機能って、2つあると思うんですね。
1つは遺骨を納める場所としての機能ですね。
2つ目は、残された人が死者と対じする場所です。
今「終活」って、終わりの活動と書く終活がブームになっていて、自分がどう死を迎えて、死んだあとどうするのかっていうのを生前に考えておこうという人たちが増えてきていますけれども、そういう視点でお墓を考えた場合、例えば誰とどこに住むかというのがお墓の在り方になるわけですよね。
(それは死後?)
死後ですね。
それと同時に、やっぱり家族に迷惑をかけたくないので、お墓はいらないとか、散骨してほしいというふうになるわけですね。
ところがお墓の機能っていうのは、残された人にとって死者と対じするっていう機能っていう、非常に大きなものがありますから、例えばお墓がないとどこに向かって手を合わせたらいいのか分からないっていう問題があったりするんですね。
(実際に悩んでいる方も?)
そうですね、例えば散骨をしてほしいと言って、海に全部ご遺族が散骨をしたら、どこに向かって手を合わせたらいいのかが分からないので、またその散骨をした地点、海の地点まで船を毎年チャーターして手を合わせて帰ってくるということもあるんですよね。
そうなると結局、亡くなっていく人は子どもに迷惑をかけたくないからお墓を建てないでって思ったはいいんですけど、残された人はやっぱり死者と対じする場所が欲しいと思うわけで、亡くなった人が迷惑だと思うことと、残された人が手間だと思うことが違うっていうことだと思います。

●調査では誰と一緒に入りたいか?

やっぱり、先祖と一緒に入りたいという人が減っているというのが最近の特徴です。
今、核家族化しているので、夫婦で入りたいとか、今の家族と一緒に入りたいっていう方が多いってことです。
ですからその分、お墓っていうのは、現代の家族の在り方を非常に反映してるっていうことだと思います。

●一番考えるべきポイントは?

お墓っていうのは、残された人がいないと、お墓っていらないんですね。
残された人が、死者を忘れないということが大事だと思います。
ですから、死んでいく人たちが残された人を見守れる存在になるか、残された人が自分を守ってくれる、お参りしてくれる存在になれるかっていうことがポイントだと思います。

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